硬質でグルーヴィーなヴァイブ
先週の土曜日だったか、ウォルト・ディッカーソンをご紹介した。ジャズ・ヴァイブの二枚看板、ミルト・ジャクソンとゲイリー・バートン。ミルトはジャジーでファンキーな正統派ジャズのヴァイブ、バートンはニュー・ジャズな響きが個性のヴァイブ。ウォルト・ディッカーソンは、この代表的なヴァイブ奏者2人とは全く異なる個性の持ち主であった。
もう一人、代表的なヴァイブ奏者2人とは全く異なる個性の持ち主が存在する。デイブ・パイク(Dave Pike)である。米国はデトロイト出身のヴァイブ奏者。1938年生まれ。2015年に77歳で没している。ファクネスは希薄に、硬質で切れ味の良い音で、ブルージーさは薄いがライトなグルーブ感がそこはかとなく漂っている。シングルトーンがメインで、疾走感と爽快感を兼ね備えた、ちょっと理知的なヴァイブ。
Dave Pike『Pike’s Peak』(写真左)。1961年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Dave Pike (vib), Bill Evans (p), Herbie Lewis (b), Walter Perkins (ds)。デイブ・パイクの秀作。ジャズ盤紹介本に時たま顔を出す、知る人ぞ知る、ちょっとマニアックな盤。パーソネルを眺めれば判るが、ジャズ・ピアノの巨匠、ビル・エヴァンスが参加している。
このビル・エヴァンスの参加だけがクローズアップされる評価もあるが、この盤はやはりリーダーのデイブ・パイクの硬質でクールなヴァイブを愛でるべきだろう。パイクのヴァイブはジャジーでグルーヴィー。硬質で爽快感が溢れ、切れ味が良い。響きは西海岸ジャズを彷彿とさせる、小粋な節回しでちょっと理知的。シングルトーンは聴き易く、しっかりと耳に馴染む。
エヴァンスの参加が目を惹くが、どうして、エヴァンスのピアノより、パイクのヴァイブの方が明らかに目立っている。パイクのヴァイブの良さが横溢していて、聴いていてとても心地良い。アドリブ・フレーズは正統派なもので、唄うが如くの節回し。パイクのヴァイブの基本はハードバップであることが良く判る。聴き心地がとても良い。
タイトルが「パイクのピーク」。そう、この盤、デイヴ・パイクというヴァイブ弾きのキャリアのピークを捉えた盤なんですよね。パイクはキース・ジャレットの様に唸るが何故か気にならない。それだけパイクのヴァイブには爽快感が溢れているのだ。
東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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