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2018年12月20日 (木曜日)

バートンの欧州なニュージャズ

ジャズ・ヴァイブの大レジェンド「ミルト・ジャクソン」。ジャズ・ヴァイブと言えば、先ずは「ミルト・ジャクソン」と言われる位の大きな存在である。では、その「ミルト・ジャクソン」の後を継ぐ者は誰か。ゲイリー・バートンとボビー・ハッチャーソン、1960年代後半から1970年代に頭角を現したこの二人に絞られる。

一昨日、そう書いて、ボビー・ハッチャーソンの『Total Eclipse』をご紹介したのだが、今日は「ゲイリー・バートン」。4本マレット奏法という新しい技を編み出し、音的には「ニュージャズ」の代表格。1970年代は、欧州のニュージャズがメインのECMレーベルに所属し、一聴すれば直ぐにそれと判る「4本マレット奏法」を駆使して、印象的な好盤を多数リリースしてきた。

Ralph Towner & Gary Burton『Matchbook』(写真左)。1974年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Ralph Towner (12-string g, classical g), Gary Burton (vib)。12弦ギターの魔術師、ラルフ・タウナーとのデュオ。よほど相性が良いのだろう、4本マレット奏法を駆使した、クリスタルで躍動感のあるバートンのヴァイブの魅力が、ラルフ・タウナーのアコースティック・ギターによって増幅されている。
 

Match_book_ecm

 
米国東海岸のハードバップを聴いた耳には違和感のあるジャズ。ファンクネスは皆無、オフビートで躍動感はあるが粘りは全く無い。テクニックは優秀だがポップな要素には無縁。どちらかと言えば、クラシックの演奏に通じる、シリアスで切れ味の良いジャズ。ハードバップ命の硬派なベテラン・ジャズ者の方々からすると「ジャズじゃない」。しかし、楽譜を前提としない、即興演奏をメインとする演奏からすると、コレはジャズ、と言い切ってしまえば、これは「ジャズ」である。

タウナーとバートンの即興をメインとした演奏が凛としていて美しい。ピッタリと寄り添うようなアンサンブル、表裏一体、ピッタリと合致したユニゾン&ハーモニー、流れる様な唄う様にメロディアスなアドリブ・パフォーマンス。従来の米国中心のジャズとは全く異なる、欧州の「ニュージャズ」。クラシックに通じるクリスタルで切れ味のよい音の響き。

米国東海岸のハードバップを聴き慣れた耳には違和感だろうが、僕はジャズを聴き始めた頃に、この欧州のニュージャズに出会ったので、先入観無く、スッと入れたのでラッキーだった。欧州ジャズの典型的な演奏と響きがこの盤に詰まっている。そんな欧州のニュージャズにバートンのヴァイブがピッタリと合うのだ。ヴァイブという楽器の音の個性であり、不思議な個性でもある。そんな不思議な個性をバートンのヴァイブは我々に聴かせてくれるのだ。
 
 
 
★東日本大震災から7年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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