« 2018年11月 | トップページ | 2019年1月 »

2018年12月の記事

2018年12月31日 (月曜日)

大晦日です、それでは良い年を

今年も今日で終わり、大晦日です。2018年もあっという間に終わります。特に今年の夏があまり暑くて、暑さ対策で忙殺され、印象に残る出来事に触れることが少なかったせいもあると思います。特に6月以降はあっという間でした。

ジャズ鑑賞の世界も、今年のCDリイシューでは目立ったものは無かったかと思います。CDリイシューの世界も一段落なんでしょうか。しかし、ネットの世界はどんどん変わってきています。今年の目玉は「ECMレーベル」のストリーミング解禁でした。ECMは独特の音世界を持ったジャズ・レーベル、ストリーミングの世界は以前からその音質に問題があり、ECMはストリーミングに全く無関心だったと思います。それがいきなり「解禁」。ビックリしました。

他のジャズの有名レーベルも、所有しているカタログ音源を全部、そろそろ全面的にストリーミング解禁して欲しいですね。どうもCDでは売れ筋のアルバムしかリイシューされず、売れ筋のアルバムの狭間の「知る人ぞ知る隠れ好盤」が日の目を見ずに眠っているんですよね。そんな「知る人ぞ知る音源」がストリーミングで突如としてリイシューされていたりします。やるんだったら、「知る人ぞしる音源」のストリーミング解禁は一気にやってほしいですね。
 

Ditokuji_001

 
来年は個人的に色々楽しみのある年になりそうです。「ECMレーベル」のストリーミング解禁にて、ECMレーベルのカタログ全アルバムの一気聴きにチャレンジしたいと思っていますし、ジャズの最先端を行く「新しい響きを持つジャズ」にも、今年にも増してチャレンジ聴きしていきたいと思っています。メインのステレオアンプも新調されたので、サウンド的にも楽しみが増えました。ジャズも着々と深化していますし、飽きることは無いですね。

さて、今年も我がバーチャル音楽喫茶『松和』をご愛顧いただき、ありがとうございました。来年も「現状維持」を目標にブログ運営を継続していきますので、よろしくお願いします。それでは良いお年を。

 
 
東日本大震災から7年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。 
 

2018年12月30日 (日曜日)

猫のジャケットがとても可愛い

いよいよ今年もあと一日。今年もジャズは深化し続けている。従来の好盤のリイシューも一段落の感があって、CDについては特筆する様なアルバムは無かったような気がする。しかし、ストリーミングの世界は、ジャズ盤についてはどんどん充実している感がある。CDでは入手困難な音源が音楽のダウンロード・サイトにあったりする。ジャズ盤鑑賞の世界はどんどん拡がっている。

師走の朝。今日は厳寒。こういう日は外出することが憚られる。こういう日は暖かい室内でジャズ盤鑑賞である。この5年ほど、イタリア・ジャズに興味を持って、様々なジャズメンのリーダー作を聴き漁っている。イタリア・ジャズは、本場の米国よりも硬派で実直な「ネオ・ハードバップ」が定着〜深化しているように感じる。硬派な純ジャズを聴きたいときは、以外と「イタリア・ジャズ盤」を選択している。

Enrico Rava『Bella』(写真左)。1990年のリリース。ちなみにパーソネルは、Enrico Rava (tp), Enrico Pieranunzi (p), Enzo Pietropaoli (b), Roberto Gatto (ds)。 当時のイタリア・ジャズの精鋭部隊。エンリコ・ラヴァのトランペットがワンヒーンのカルテット構成。伊の純ジャズ。タイトルの「Bella」は、女性への「美しい」という褒め言葉らしい。
 

Bella_rava  

 
エンリコ・ラヴァとエンリコ・ピエラヌンツィの「ダブル・エンリコ」が集結した好盤。ラヴァのトランペットの音が流麗。艶やかで明るくきらびやかな音。センチメンタルな雰囲気の中に、一本筋の通った明確で切れ味の良いフレーズが柔らかく切れ込んでくる。リリカルかつスリリングなアドリブ展開が素晴らしい。これだけ端正で流麗なトランペットはなかなかいない。聴き応え満点である。

バックのピアノのピエラヌンツィ率いるトリオは柔軟で端正なリズム隊。ネオ・ハードバップあり、軽いフリーな展開ありの硬派な純ジャズ演奏。もともとピエラヌンツィの奏でるアコピのフレーズは「美メロの宝庫」。それでも演奏全体の雰囲気は明るく、フロント・ワンホーンのラヴァのトランペットをしっかりと支え、鼓舞する。

イタリア・ジャズの歴史を揺るがすような「歴史的な名盤」では無いが、個人的には繰り返し聴いても飽きの来ない「長年のヘビロテ盤」です。猫のジャケットがとっても可愛い。このジャケットを見ているだけでも、ホンワカ幸せな気分に浸れます。師走の厳冬の日に暖かい室内で聴く、トランペットがワンホーン・カルテット盤。好盤です。

 
 

日本大震災から7年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。 
 

2018年12月29日 (土曜日)

ECMが考えるエレ・ジャズ

ジャズ盤鑑賞の今年のトピックの1つは、「ECMレーベル」のストリーミング解禁である。「静寂の次に美しい音(The Most Beautiful Sound Next To Silence)」を合言葉に、ジャズを主とした作品を次々にリリース。透明感のある音と洗練されたジャケット・デザインで人気を博したレーベルで、ストリーミングには難色を示したままであったのだが、突如、解禁に踏み切ったのだ。この報にはビックリした。

「ECMが推奨するメディアはこれまで通りCDとレコードですが、まず優先すべきことは音楽を聴いてもらうことです。CDやレコードなどのフィジカル・カタログと著作者は私たちにとって極めて重要なものです。しかし、近年、我々ECMとそのミュージシャンたちは、無許可のストリーミングやビデオのシェア、ブートレッグ、非合法ダウンロードなどに悩まされてきました。著作権が正しく尊重される範囲で、我々の楽曲にアクセスできるようにすることが重要だったのです」

以上がストリーミング解禁に至った公式見解。なるほど、著作権を守るにはこれしか無かった、ということか。納得。しかし、我々、ジャズ盤鑑賞者については、実に喜ばしいことであった。CDでは未リリースや廃盤状態にあるものがあったのだが、ECMレーベルのカタログに挙がった盤のほとんどがストリーミングで鑑賞できるのだ。こんな時代が来るとは思わなかった。早速、カタログの最初からECM盤を聴き直しである。
 

Drum_ode_ecm  

 
Dave Liebman『Drum Ode』(写真)。1974年5月の録音。ECMの1046番。ちなみにパーソネルは、Dave Liebman (ss, ts, alto-fl), Richard Beirach (el-p), Gene Perla (b), John Abercrombie (g), Bob Moses, Jeff Williams (ds)のダブル・ドラムのクインテット構成に、コンガやタブラ、ボンゴ、その他パーカッションが絡む。ボーカルも参加している。エレ・マイルスのグループに参加していたサックス奏者、デイブ・リーヴマンのECMでのリーダー作である。

ECMとリーヴマン、ってなんかイメージが合わないのだが、確かにこの盤の内容、ECMレーベルとしては「異色盤」である。タイトル通りリズムに重点が置かれ、パーカッション+ドラムだけで総勢8名が名を連ねている。ビートをメインに添えたエレ・ジャズ。当時のエレ・マイルスから、ファンクネスと重量感を落として、スッキリ判り易くした感じの内容。それをバックにリーヴマンがエレ・マイルスのグループに参加している時と同じイメージでサックスを吹く。

この盤では、デイブ・リーヴマンのサックスがしっかりと目立っている。吹くフレーズは今となっては「金太郎飴」なんだが、当時の「時代の音」であり、エレ・マイルスの傍らにいたリーブマンの「エレ・ジャズとしての回答」と感じている。意外とバイラークのエレピが良い響き。ECMレーベルが考える「エレクトリック・ジャズ」として、聴き応えのある内容である。

 
 
東日本大震災から7年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月28日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・136

大寒波が来襲している。ここ千葉県北西部地方は朝から猛烈な北風。朝の気温は2度程度なんだが、風が強いので体感気温は氷点下。昨日まで、意外と長閑な気温だったので、この気温の急変にはビックリ。もちろん術後の体はついていかない。何となく体調が優れないまま、年末の買い物や病院通いで、ほぼ一日の半分が潰れた。落ち着いて音楽を聴ける状態になったのは夕方、日が暮れてからである。

つい最近のことであるが、なかなか小粋で端正なピアノ・トリオに出会った。トリオ演奏の雰囲気は三者対等のインタープレイがメインで、これってビル・エヴァンスかなあ、とも思ったが、ビル・エヴァンスよりもファンクネスが強く、ブルージーなピアノの響きが耳に残る。これは、ビル・エヴァンスでは無い。では誰なのか。

そのタッチは切れ味は良いが、ガーンゴーンといった叩く印象は無い。鍵盤をしっかりと押さえつつ、流麗なフレーズを紡ぎ出すさまは誰なのか、思いもつかない。判らない。誰なんだ、このピアノは。加えて、ベースは堅実なビートを供給しつつ、バリエーション豊かなアドリブ・レースを繰り出している。ドラムもふるっていて、自由度の高いフレーズを繰り出しつつ、リズム&ビートの根底をしっかりと押さえている。なかなかの内容のピアノ・トリオではないか。
 

Blues_everywhere_shirley_scott

 
Shirley Scott『Blues Everywhere』(写真左)。1991年11月22日、ニューヨークはバードランドでのライブ録音。新生キャンディド・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Shirley Scott (p), Arthur Harper (b), Mickey Roker (ds)。パーソネルを見てやっと、この魅力的なピアノが、シャーリー・スコットなのが判った。けど、シャーリー・スコットはオルガン奏者じゃなかったのか、と思いつつ、このライブ盤でのスコットのピアノって絶品なのだから、思わず納得。

アーサー・ハーパーというベーシストは知らなかった。でも、紡ぎ出されるベースの音は、どこかエディ・ゴメスを想起させる。繊細なゴメスという感じ。ドラムはミッキー・ローカーでした。繊細さとダイナミズムを併せ持ち、結構、テクニックを駆使して、自由度の高いリズム&ビートを供給する。このベースとドラムのリズム隊は「職人芸」が滲み出る、玄人好みなもの。このリズム隊のリズム&ビートだけでも「聴きもの」である。

従来からのピアノ・トリオのメインストリームなスタイルと展開を押さえていて、実に粋である。正統派な音世界ではあるが、レトロな響きに傾くこと無く、1990年代のネオ・ハードバップな音の響きに通じているところに感心する。1950年代のハードバップ時代のオルガニストが、ピアノ・トリオな演奏に真摯に取り組んだ、繰り返し聴いても飽きの来ない好盤です。
 
 
 
東日本大震災から7年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月27日 (木曜日)

ショウのトランペットが実に良い

今年のレジェンド・クラスの成果は「ウディ・ショウ(Woody Shaw)」。僕は1970年代後半からジャズを聴き始めたのだが、ウディ・ショウの名前をジャズ盤紹介本やジャズ雑誌で見ることは少なかった。その名前に触れた時は彼の評価は芳しく無く、フレディ・ハバードのコピー的存在という評価を鵜呑みにして、ショウのアルバムは手にすることは無かった。

そして、つい最近まで、ショウのアルバムをしっかりと聴き込むことは無かった。が、今年は聴いた。やっとウディ・ショウのアルバムを4〜5枚、しっかりと聴いた。で、感じたのが「誰がフレディ・ハバードのコピー的存在」などという間違った印象を広めたのか、ということ。まず一言、ウディ・ショウはフレディ・ハバードのコピー的存在では全く無い。全く「似て非なるもの」である。

『Woody Shaw With Tone Jansa Quartet』(写真左)。1985年4月3日、オランダでの録音。ちなみにパーソネルは、Woody Shaw (tp, flh), Tone Janša (ts, ss, fl), Renato Chicco (p), Peter Herbert (b), Dragan Gajić (ds)。ショウ以外、全く知らない名前が並ぶが、それもそのはず、当地のカルテットとの共演盤である。
 

Woody_shaw_with_tone_jansa  

 
1985年の演奏。端正でモーダルなハードバップ。ショウのトランペットは流麗に唄う。テクニックも高度、イマージネーションは豊か。理知的なアドリブ・フレーズが実に良い。硬軟自在、遅速自在、自由度の高い、内容の濃いモード・ジャズが展開されている。とにかく、ハバードよりも端正で理知的なショウのトランペットが素晴らしい。

バックのオランダ隊も大健闘。トーン・ヤンシャのテナー・サックスが素晴らしい。ショウのトランペットを向こうに回して、対等に吹きまくる。レナート・キッコのピアノをベースとしたリズム・セクションも好調。まるでレギュラー・グループであるかのような、息の合ったアンサンブルとバンド全体の疾走感が素晴らしい。

1985年のヨーロッパツアーの途中オランダでサックス奏者トーン・ヤンシャのグループに客演した時の記録。この盤での演奏を聴いて、ウディ・ショウのトラペットの素晴らしさを実感した。なぜ我が国ではショウは不当な評価に甘んじることになったのか、残念でならない。しかし、音の記録は嘘をつかない。この盤に記録された演奏は、ショウの実力の高さをストレートに教えてくれる。

 
 
東日本大震災から7年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月26日 (水曜日)

先端を行くダンス・ミュージック

「ジャズの深化」の1つのキーワードが「エレクトロニカ」。従来のエレクトリック・ジャズがファンク・ビートやワールド・ミュージックなビートをベースにエレクトロニカと融合、新しい響きのフュージョン・ジャズが出現している。この新しい響きは印象的であり官能的であり、現代のスピリチュアル・ジャズにも通じる、新しい響きである。

Sons of Kemet『Your Queen Is a Reptile』(写真左)。今年のリリース。聴けば判るが、これは壮大な現代のエレクトリック・ジャズである。音的には、カリブやアフロなどのワールド・ミュージックなビート、ジャジーでエスニックな旋律、即興部分はニューオーリンズのストリートを練り歩くブラスバンドに近い雰囲気を醸し出している。

インパルス・レーベルからのリリースであるが、この盤は現代英国ジャズを代表する「サンズ・オブ・ケメット(Sons of Kemet)」のアルバムである。これが英国ジャズの「今」なのか。英国ジャズといえば、頑固にまでに、硬派な「ビ・バップ」もしくは「ハードバップ」のみをジャズとしているかと思っていた。これは現代の先端を行く「ダンス・ミュージック」である。
 

Your_queen_is_a_reptile_1  

 
Sons of Kemet(サンズ・オブ・ケメット)とは、ロンドンで活動するサックス奏者で、昨今のUKジャズの中心人物の一人、Shabaka Hutchings(シャバカ・ハッチングス)のテナー・サックスを軸に、テオン・クロスのチューバ、トム・スキナーとセブ・ロシュフォードによるダブル・ドラムで編成されたバンド。二人のリズム隊に2本の金管楽器だけというシンプルな編成で、圧倒的に疾走感のある演奏をする。

危険な香りのするテンション溢れる強烈なビート、ポジティヴに不穏なチューバの響き、華々しいテナー・サックスの輝き。この盤は新しい響きに満ちている。チューバとドラムによる分厚く揺らぐビート。自由自在に吹き上げるテナー・サックス。ニューオーリンズからカリブ、ロンドン、中東、ワールドワイドに拡がるワールド・ミュージック的な響き。

新しい。実に新しい響き。僕は思わず聴き入ってしまった。明らかに現代の先端を行く「ダンス・ミュージック」。即興演奏の妙を前面に押し出して、これもまた「ジャズ」。これは、フュージョン・ジャズが、ワールド・ミュージックなビートをベースにエレクトロニカと融合した「ダンス・ミュージック」である。いや〜素晴らしい内容である。今年の屈指の好盤であろう。

 
 
東日本大震災から7年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月25日 (火曜日)

連弾によるジャズ・アンサンブル

今年もあと1週間を切った。来週の火曜日って、来年の元旦なんですよね。2018年、平成30年もあっと言う間だったなあ。今年のジャズ盤のヒヤリングを振り返ってみて、やっぱりジャズは深化しているなあ、と実感したし、静的で印象的なスピリチュアル・ジャズが浸透してきたなあ、とも感じた。様々な新人がデビューしてきたし、ジャズってまだまだ終わってないよな〜、と嬉しくもなった。

NIRA『Noxious Revival』(写真左)。このアルバムはダウンロード・サイトで試聴して「これは」と思って、思わず、いきなりフルアルバムを聴き通した。ピアノというか、キーボードの連弾である。うわ〜珍しい。しかも上手い。キーボードの連弾のジャズなんて、あまり聴いたことが無い。しかも日本人である。女性である。とても聴き応えのある連弾ジャズである。

エレクトロニカ+ユーロビート+フュージョン・ジャズ。この盤を一言で言うと、そんな音で溢れている。明らかに新しい響きである。しかも、キーボードの連弾である。無茶苦茶、個性的な演奏である。テーマ部のユニゾン&ハーモニーが連弾ならでは、の響きであり、それぞれが別々に担当するアドリブ部は、それぞれに個性があって面白い。
 

Nira_noxious_revival  

 
音の響き、フレーズの展開は時折「静的で印象的なスピリチュアル・ジャズ」と化す。連弾ピアノの音が実に印象的で、実にスピリチュアルなのだ。レトロチックで懐かしいような、もの寂しくもあり、暖かくもあり、とても印象的な、深いエコーを伴ったアコースティック・ピアノの音がとても心地良い。スピード感も爽快感も十分にあって、アルバム全編聴き終えると、なんだか清々しい気分になる。

漢字一文字で表された楽曲全10曲。「贈」「気」「羅」「母」「王」「吹」「漢」「飛」「震」「続 」。どの曲もこの漢字一文字から来るイメージが溢れ出ていて、聴いていてとても楽しい。感心したのは、連弾ピアノという特殊なフォーマットでありながら、全10曲、マンネリに陥らず、手癖フレーズの使い回しも無く、全く飽きが来ないこと。これって、この連弾デュオの高いテクニックと豊かな音楽性の成せる技なのであろう。

「Noxious Revival」は直訳する「有毒の蘇生」。ものものしいタイトルであるが、バンド名のNIRAは、藤崎姉妹(藤崎ふみ・藤崎しおり)がメイン。彼女らが奏でる、連弾による変拍子ジャズアンサンブル、は実に個性的。この独特の連弾ピアノでのジャズは、まだまだ色々なフォーマット、色々な楽曲に展開出来そうで、まだまだ、これからが楽しみです。要注目な新人です。

 
 
東日本大震災から7年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月24日 (月曜日)

ブルース・ロックなクリスマス盤

この3連休は忙しかった。実家の婆ちゃんが体調不良にて、急遽、様子を見に行きがてら、いろいろと手筈を付ける。そして、何か忘れてるなあ、と思っていて、フッと年賀状を作るのを忘れていたのに気がついた。急遽、実家から舞い戻って、年賀状作りに没頭。ということで、この3連休、バーチャル音楽喫茶『松和』の活動は全面ストップでした。

で、年賀状を作り終えて、やっとこさ、音楽が落ち着いて聴ける。そう言えば、今日はクリスマス・イヴだった。もうこの歳になると、クリスマス・イヴもへったくりも無いのだが、近くの大手ショッピングセンターへの道はどこも渋滞、行き交う家族連れはみなケーキかチキンのボックスを抱えていて、やっぱりクリスマス・イヴかなあ、ということで、今日はクリスマス・ソングを聴くことに。

で、この歳になると、普通のクリスマス・ソングなど、こっぱずかしくて聴けない。なんか小粋で渋いクリスマス・ソング盤はないのかなあ、と探していたら、ありました、ありました。Eric Clapton『Happy Xmas』(写真左)。今年のクリスマスに合わせてリリースされた、ブルース・ロックのレジェンド、エリック・クラプトンのクリスマス・ソング盤である。1970年代からクラプトンを聴き続けて来た者にとっては、なんか「仰け反り」たくなる。今更、クラプトンがクリスマス・ソングでもないだろう、と。
 

Happy_xmas  

 
でも、長年、クラプトン者をやってきた自分については、やっぱり、一度は聴きたくなる。裏切られた気分になっても、だ。で、思い切って聴いてみた。ら、これがまあ、小粋で渋いクリスマス・ソング集になっている。有名なクリスマス・ソングをバリバリのブルース・ロック風にアレンジしているのだ。もともと、クリスマス・ソングって、ブルース・ロック風にアレンジし易いコード進行をしているのだが、まさか、クラプトンがこれをやってのけるとは思わなかった。

とにかくヘビーで渋くてブルージー。スローハンド・クラプトンなエレギは渋い音を響き渡らせ、ブルージーなクラプトンのボーカルがこれまた渋い。一言で言うと「大人のクリスマス・ソング盤」ですな。特に冒頭の「ホワイト・クリスマス」は絶品。ビング・クロスビーの歌唱が定番なんだが、このヘビーなブルース・ロック風のアレンジもありやなあ、と思わず感心しました。「きよしこの夜」はちょっとやり過ぎかな。聴いていて、ちょっと赤面します(笑)。

しかし、クラプトンのボーカルは渋いなあ。この渋い低音のクラプトンのボーカルが、甘々なクリスマス・ソングをちょっとビターで硬派なブルース・ロックに仕立てていて、そこにクラプトンのブルージーでヘビーなギターが絡めば、もうそこは「クラプトンの音世界」。ジャズの合間の耳休めに格好のブルース・ロック盤です。「Merry Christmas」。

 
 
東日本大震災から7年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月21日 (金曜日)

グリーンの隠れた代表作です。

マイケル・カスクーナによって発掘されたブルーノートの未発表音源シリーズ「Blue Note Classic LT series」。こんな音源があったんや、とか、こんな演奏が残ってたのか、なんて、聴いてビックリすることもしばしば。どうしてお蔵入りになったのか不思議なくらいな良質セッションがズラリと並ぶ。

Grant Green『Nigeria』(写真)。LT-1032番。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Sonny Clark (p), Sam Jones (b), Art Blakey (ds)。いや〜、魅力的なパーソネルですね〜。4人とも、僕の大好きなジャズメンばかり。収録された曲は全て1962年1月13日の録音。つまり、1枚のアルバム全ての音源がお蔵入りになった、ということになる。

しかし、興味深い盤である。1962年という、ハードバップからファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズ、フリー・ジャズと、ジャズが多様化していった、ジャズがポップス化していった時代に、コッテコテ硬派なハードバップなジャズメンで固めた「スタンダード曲集」。リーダーのギタリスト、グラント・グリーンがピアノのソニー・クラークをフィーチュア、ロリンズの名曲「Airegin」やおなじみのスタンダードを演奏している。
 

Nigeria_grant_green

 
スタンダード曲集なので、イージーリスニング風な演奏内容なのかと思いきや、めっちゃ硬派ですっきりファンキーなハードバップな内容にビックリする。グリーンのパッキパキ硬質なシングルトーンが、なかなか小粋で渋いスタンダード曲の旋律を弾き進めていく。そして、アドリブ部に突入すれば、自由度高く、イマージネーション豊かに展開する。スタンダード曲を硬派にストイックにアレンジして、硬質なシングルトーンで決める。これが格好良い。

意外とストレートアヘッドなジャズが展開されていて、思わず聴き入ってしまう。冒頭の「Airegin」や「It Ain't Necessarily So」が、むっちゃ格好良い。そして、どの曲でもドラムのブレイキーの好演が耳を惹く。グリーンのギターとクラークのピアノが、ブレイキーのドラムに鼓舞された、徐々にノリ良く、白熱している様子が聴いていてよく判ります。

この音源がアルバム一枚分まるごとお蔵入りとはなあ。意味分からん(笑)。スタンダード曲をあまりに硬派にストイックにハードバップし過ぎたのでしょうか。確かに、この盤の演奏の数々、スタンダード曲がメインなんですが意外と骨太な演奏で、ながら聴きには全く向きません。聴き始めると思わず耳を峙たせて、思わず聴き入ってしまいます。グリーンの隠れた代表作と言って良い好盤です。

 
 
東日本大震災から7年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月20日 (木曜日)

バートンの欧州なニュージャズ

ジャズ・ヴァイブの大レジェンド「ミルト・ジャクソン」。ジャズ・ヴァイブと言えば、先ずは「ミルト・ジャクソン」と言われる位の大きな存在である。では、その「ミルト・ジャクソン」の後を継ぐ者は誰か。ゲイリー・バートンとボビー・ハッチャーソン、1960年代後半から1970年代に頭角を現したこの二人に絞られる。

一昨日、そう書いて、ボビー・ハッチャーソンの『Total Eclipse』をご紹介したのだが、今日は「ゲイリー・バートン」。4本マレット奏法という新しい技を編み出し、音的には「ニュージャズ」の代表格。1970年代は、欧州のニュージャズがメインのECMレーベルに所属し、一聴すれば直ぐにそれと判る「4本マレット奏法」を駆使して、印象的な好盤を多数リリースしてきた。

Ralph Towner & Gary Burton『Matchbook』(写真左)。1974年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Ralph Towner (12-string g, classical g), Gary Burton (vib)。12弦ギターの魔術師、ラルフ・タウナーとのデュオ。よほど相性が良いのだろう、4本マレット奏法を駆使した、クリスタルで躍動感のあるバートンのヴァイブの魅力が、ラルフ・タウナーのアコースティック・ギターによって増幅されている。
 

Match_book_ecm  

 
米国東海岸のハードバップを聴いた耳には違和感のあるジャズ。ファンクネスは皆無、オフビートで躍動感はあるが粘りは全く無い。テクニックは優秀だがポップな要素には無縁。どちらかと言えば、クラシックの演奏に通じる、シリアスで切れ味の良いジャズ。ハードバップ命の硬派なベテラン・ジャズ者の方々からすると「ジャズじゃない」。しかし、楽譜を前提としない、即興演奏をメインとする演奏からすると、コレはジャズ、と言い切ってしまえば、これは「ジャズ」である。

タウナーとバートンの即興をメインとした演奏が凛としていて美しい。ピッタリと寄り添うようなアンサンブル、表裏一体、ピッタリと合致したユニゾン&ハーモニー、流れる様な唄う様にメロディアスなアドリブ・パフォーマンス。従来の米国中心のジャズとは全く異なる、欧州の「ニュージャズ」。クラシックに通じるクリスタルで切れ味のよい音の響き。

米国東海岸のハードバップを聴き慣れた耳には違和感だろうが、僕はジャズを聴き始めた頃に、この欧州のニュージャズに出会ったので、先入観無く、スッと入れたのでラッキーだった。欧州ジャズの典型的な演奏と響きがこの盤に詰まっている。そんな欧州のニュージャズにバートンのヴァイブがピッタリと合うのだ。ヴァイブという楽器の音の個性であり、不思議な個性でもある。そんな不思議な個性をバートンのヴァイブは我々に聴かせてくれるのだ。

 
 
東日本大震災から7年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月19日 (水曜日)

ジミー・スミスの未発表音源集

希少なブルーノートの未発表音源を収めた『ブルーノートBNLT999シリーズ』。それぞれの盤を聴き進めて行くと「おおこれは」と思わず耳をそばだててしまう音源にしばしば出会う。この音源って、どの時代の録音だろう、とか、どのアルバムの未発表音源なんだろう、とか想像しながら聴くのがとても楽しい。

Jimmy Smith『Confirmation』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), George Coleman (tracks: A1, B), Lou Donaldson (tracks: A2) (as), Art Blakey (ds), Kenny Burrell (g), Tina Brooks (tracks: A2) (ts), Trombone – Curtis Fuller (tracks: A1, B) (tb), Lee Morgan (tp)。録音日は「Confirmation」が1958年2月25日、その他2曲は 1957年8月25日。

聴いてみて、なんかどっかで聴いた編成やなあ、とか、どっかの盤で聴いたよな、という感覚を持ったので、これって、ブルーノートでの既発表のアルバムの未発表音源だなあ、と。で、どのアルバムの未発表音源なのか、とライナーノーツなどを読みあさる。収録された3曲とも、ジミー・スミスのオールスター・ジャム・セッション収録の『House Party』『The Sermon!』の未発表音源。
 

Comfirmation_jimmy_smith  

 
聴いていて、このテナーは誰か、このアルトは誰か、と思うのだが、全く判らない。これは誰かと思ったテナーはティナ・ブルックス、これは誰かと思ったアルトはジョージ・コールマンでした。この盤、録音の少ないブルックスや、アルトを吹いている初期のコールマンの演奏が聴けるんですね。アルト・サックスのジョージ・コールマンなんて、想像も出来ませんでした。

『House Party』『The Sermon!』の未発表音源なので、内容は素晴らしいです。お蔵入りになったのは、かなりの長尺演奏なのと、ジミー・スミスがあまり目立っていないところかと想像しています。ジミー・スミスって、かなり自己顕示欲が旺盛な方だったらしいので、自分が思いっきり目立たない音源ってオミットだったのでしょうか。本当だったら、その未発表音源となった理由って、人間臭くて僕は好きです。

目立たない、と言っても、要所要所で素晴らしいソロを展開しているので、この未発表音源についても、ジミー・スミスのオルガンは素晴らしいです。他のサイドメンの演奏も負けずに素晴らしい。そんな内容ある演奏で、しかも長尺。かなり迫力のある演奏で、この盤のリリースによって陽の目を見たのは、幸運なことだったと思います。

 
 
東日本大震災から7年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月18日 (火曜日)

ハッチャーソンのニュージャズ

ジャズ・ヴァイブの人材は少ない。ジャズの歴史全体で見渡すと、やはりナンバーワンな存在は「ミルト・ジャクソン」に落ち着くだろう。ハードバップをメインのスタイルにした、ファンキーでソウルフルなヴァイブはオールラウンダー。いつでもどこでも、高度なテクニックを含め、最高のジャズ・ヴァイブを聴かせてくれる。

それではその次を継ぐ者はだれか。1960年代後半から1970年代に頭角を現したこの二人に絞られる。ゲイリー・バートンとボビー・ハッチャーソンである。バートンは4本マレット奏法という新しい技を編み出し、音的には「ニュー・ジャズ」の範疇。ハッチャーソンは伝統的な奏法ではあるが、ジャジーでファンキーな「ニュー・ジャズ」な聴かせてくれる希有な存在。

バートンは1970年代前半にいち早く「ニュー・ジャズ」の総本山であるECMレーベルに移籍し、次々と秀作をリリースした。一方、ハッチャーソンと言えば、米米リバティー社傘下のブルーノート・レーベルに留まり、バートンと同様、次々と秀作をリリースした。が、気の毒ではあるが、なぜかハッチャーソンが大きく割を食っている。
 

Total_eclipse_bn  

 
Bobby Hutcherson『Total Eclipse』(写真左)。1968年7月12日の録音。ブルーノートの4291番。ちなみにパーソネルは、    Bobby Hutcherson (vib, marimba), Harold Land (sax), Chick Corea (p), Joe Chambers (ds), Reggie Johnson (b)。まず、パーソネルを見渡すと、当時、ニュー・ジャズの筆頭を張った一人、チック・コリアの参加が目を引く。他のメンバーは、ハードバックど真ん中の時代から活躍する「曲者」ジャズメン揃い。

また、選曲を見渡すと、全5曲中4曲がハッチャーソンの作。そして、残りの1曲「Matrix」はチックの名曲。5曲ともモードを駆使した自由度の高い、ネオ・ハードバップな演奏であり、スタンダード曲の採用が全くないのがこの番の特徴でもある。確かに聴いてみると、モード奏法全開で、ハッチャーソンのヴァイブとランドのサックスが疾走する。チックのピアノはツボを押さえた好バッキングでフロントの二人を支える。

この盤、当時、最先端の、かなり尖ったモードジャズを展開している「ニュー・ジャズ」な盤である。しかし、ジャケットを見るとお判りかと思うが、このハッチャーソンの顔を前面に押し出したジャケットで「損」をしている、残念な好盤である。内容が硬派で尖ったモードジャズを展開しているにも拘わらず、このジャケット・デザインは無いよなあ、と溜息が出る。でも、中身は一級品なので、是非とも一度は聴いて貰いたい「ニュー・ジャズ」な好盤です。

 
 
東日本大震災から7年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月17日 (月曜日)

いかにも欧州的であり北欧的

ECMレーベルは欧州発の「ニュー・ジャズ」の宝庫。ECMレーベルのカタログには、本場米国のジャズとは趣が異なる、オフビートではあるがファンクネス皆無、透明度の高い硬質な音、深めでクリスタルなエコーが個性な「ニュー・ジャズ」が多く存在する。そして、本場米国では全く無名の、欧州ジャズならではのジャズメンが多くリーダー作をリリースしている。

Jan Garbarek with Bobo Stenson Quartet『Dansere』(写真左)。1975年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Jan Garbarek (sax), Bobo Stenson (p), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds)。実にECMレーベルらしいパーソネル。リーダーでテナーのヤン・ガルバレクとドラムのヨン・クリステンセンはノルウェー、ピアノのボボ・ステンソンとベースのパレ・ダニエルソンはスウェーデン。ノルウェー出身とスウェーデン出身の混成カルテット。

いかにもECMレーベルらしい、いかにも北欧ジャズらしい響きの「ニュー・ジャズ」が展開される。まず、リーダーのヤン・ガルバレクのサックスが硬質で濁りの無い、シュッとしていて心地良い。こんなに硬質で真っ直ぐなテナーの音って欧州ジャズならでは、である。淀みの無いストレートな音。ゆったりと吹いているが、テクニックは非常に優れているのがとても良く判る。
 

Dansere_ecm  

 
ピアノのボボ・ステンソンもいかにも欧州的。ガルバレクのサックスと同様に、硬質で濁りの無い、シュッとしていて心地良いピアノ。クラシック・ピアノに通じる上品な響きもいかにも欧州的。このガルバレクのサックスとステンソンのピアノが織りなす「ニュー・ジャズ」な演奏の数々は、典型的なECMレーベルの音である。深めでクリスタルなエコーがとても心地良い。

典型的な北欧ジャズの音がここにある。適度なテンションの下、モーダルな展開から軽くフリーな展開へと自由度の高いアドリブ演奏が素晴らしい。どれだけテンションの高い演奏になっても、熱くなることは無い。汗が飛び散る様な「赤く」燃える演奏では決して無い。冷静にクールに「青白く」燃える炎の様な演奏。

一聴すればすぐにガルバレクだ、ステンソンだ、と判る個性的な音。一度聴いたら忘れられないほどの個性。僕はそんな北欧ジャズの音がお気に入り。ジャズを聴き始めた頃、ECMレーベルの音に出会って以来、ずっとお気に入りのジャズとして、ずっと追いかけているレーベルの音。いかにも欧州的、いかにも北欧的な音が実に愛おしい。

 
 
東日本大震災から7年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月16日 (日曜日)

バカテク・ポップ路線の集大成

日本発のフュージョン・バンド「Casiopea(カシオペア)」。1980年代前半から中盤にかけてが、商業的に一番成功した時期である。メンバーは、野呂一生 (g), 櫻井哲夫 (b), 向谷実 (key), 神保彰 (ds)。音楽誌『ADLiB』での上々の評価、連載企画「ブラインド・フォールド・テスト」での海外有名フュージョン・プレイヤーの高い評価もあって、人気は不動のものとなっていく。

Casiopea『Photographs』(写真左)。1983年のリリース。このアルバムのリリースから、我が国における「カシオペア人気」が高まっていく。野呂がインド、向谷がヨーロッパ、桜井が南米、神保がアメリカへと武者修行の一人旅に出た後に制作されたアルバムで、その成果が反映された音作りがなされている、という評価もあるが、それは違うと思う。

しっかり聴いてみると判るが、あまりそれぞれの旅先の特色ある音が反映されている内容では無い。どちらかと言えばファンク色をやや強めながらも、爽快感と疾走感溢れるバカテク・フュージョン集団という従来のカシオペアの音をしっかりと踏襲している。従来のカシオペアの音の最初の「集大成」的な音作りが堪らない。
 

Photographs_casiopea  

 
強力なアドリブ・フレーズのフロント隊とタイトで堅実なリズム隊が上手くフィットして、メンバー全員のハイ・テクニックと相まって、カシオペア独特の音世界を創出している。野呂のスキャットや櫻井+野呂によるデュエットなど、従来のカシオペアからすると意外な遊び心もあり、メンバー全員の音作りに対する余裕を感じる。そんな余裕が良い方向に作用した好盤だろう。

特にこのアルバムに収録された曲を聴いていて感じるのは「アレンジの素晴らしさ」。この盤、どの曲もアレンジが優れている。アレンジのアイデアもなかなかのもので、聴いていてメリハリが効いていて飽きが来ることが無い。4人のメンバーが4者4様、それぞれの個性を発揮しつつ、台頭の立場で競い合っている、そんな感じの適度なテンションが心地良い。

いわゆるカシオペアの最大の個性である「バカテク・ポップ路線」の集大成。この後、カシオペアはファンク度を高め、米国マーケットを狙う様な音作りに変化していく。日本人の日本人による日本人の為のフュージョン・バンドのピークを捉えたアルバムとして評価出来る秀作です。

 
 
東日本大震災から7年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月15日 (土曜日)

バリバリ新主流派のグリーン

1970年代中盤から80年代にかけて、マイケル・カスクーナによって発掘されたブルーノートの未発表音源シリーズが「Blue Note Classic LT series」(略称:BNLT)。ジャズの常識として、未発表音源と言えば、正式にリリースされた音源に比べると、何かどこかに問題があってお蔵入りになった音源というイメージがある。しかし、このBNLTシリーズは違う。

音源によっては正式にリリースされた音源を内容的に凌駕するものはざらにあるし、そのジャズメンの違った側面が聴かれる興味深い音源もある。未発表音源だからといって、何かどこかに問題があってお蔵入りになったという訳ではないものが殆ど。ブルーノートの総帥、アルフレッド・ライオンに未発表音源盤を一枚一枚手に取って、お蔵入りになった理由をとくと訊きたいくらいだ。

さて、この未発表音源盤は「そのジャズメンの違った側面が聴かれる興味深い音源」の類である。Grant Green『Solid』(写真)。LT-990番。1964年6月12日の録音。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), James Spaulding (as), Joe Henderson (ts), McCoy Tyner (p), Bob Cranshaw (b), Elvin Jones (ds)。ジャズ者のベテランの方々であれば、このパーソネルを見渡せば、ちょっとした違和感を感じるのではないだろうか。
 

Solid_grant_green_7

 
そう、グラント・グリーンを取り巻くメンバーは、いわゆる「新主流派」の代表ジャズメンばかり。従来のハードバップとは異なる、モーダルな演奏をメインにした先進的な演奏を想像する。聴いてみれば判るのだが、この盤の演奏の雰囲気は明らかに「モード・ジャズ」。グラント・グリーンはファンクネス溢れる、パッキパキなシングルトーンが個性の「ファンキー・ジャズ」なギタリスト。そんなグリーンが新主流派のメンバーに混じって、モード・ジャズをやるのだ。

これがまあ意外にも、内容の濃い硬派でシリアスなモード・ジャズなのだ。リーダーのグラント・グリーンが全く以て「モード・ジャズ」に適応している。特に急速ナンバーでは、コルトレーン・カルテットから招聘したマッコイのピアノ、エルヴィンのドラムを向こうに回して、丁々発止とモード・ジャズを展開する。このモード・ジャズに適応したグラント・グリーンを聴いて、彼のテクニックの高さを痛感した。

決して、お気楽なファンキー・ギタリストでは無かったグラント・グリーン。そんなグリーンの新境地を記録した意欲盤。当時特有の新主流派的な演奏が耳新しく響く。これだけ、グリーンのギターの従来からのイメージを覆しているのだ。当時は評価が定まらなかったのだろう。セールスを重んじるようになった時代、お蔵入りもやむなし、である。しかし、こうやってカスクーナに発掘され、音源化されたことは幸運だった。

 
 
東日本大震災から7年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月14日 (金曜日)

BNLTシリーズのモーガンは無敵

1970年代中盤から1980年代にかけて、マイケル・カスクーナによって発掘されたブルーノートの未発表音源シリーズが「Blue Note Classic LT series」。略称は「BNLT」。ジャケットは、統一感のある当時のUSA盤LPが基本(写真右)。どうしてお蔵入りになったのか不思議なくらいな良質セッションがズラリと並ぶ。

Lee Morgan『Sonic Boom』(写真)。LT-987番。1967年4月14日の録音。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), David Newman (ts), Cedar Walton (p), Ron Carter (b), Billy Higgins (ds)。当時はお蔵入り。ノリノリでソウルフルでハードにバリバリ吹きまくるモーガン。どこがお蔵入りなのかが判らない。天才モーガン、ここにあり。

1967年4月の録音だから、その3ヶ月後、ジャズ界ではジョン・コルトレーンが逝去。ジャズ界はポップなソウル・ジャズや相対するフリー・ジャズが「ない交ぜ」になって混沌とした時代。そんな時代に、こんなコッテコテのモーダルなハードバップな演奏があったとは。ハードバップ初期から大活躍してきたリー・モーガンが新主流派の音にしっかりと馴染んでいる。
 

Sonic_boom_lt987

 
1967年のリー・モーガンのリーダー作と言えば『The Sixth Sense』(BN4335番)が正式にリリースされただけ。他の録音は全てお蔵入り。そのお蔵入り音源の1つがこの『Sonic Boom』。この『Sonic Boom』の出来を聴けば、他の録音の内容も推して知るべし。なぜこれだけ優れた内容の「ファンキー+モード・ジャズ」が軒並みお蔵入りになったのか。謎は深まるばかりです。

モーガンにとって、テナーのデヴィッド・ニューマンの参加が良い刺激となっているようだ。ニューマンのテナーは典型的な「テキサス・テナー」。骨太でスピード感豊かに大らかにスケールの大きいテナーを吹き上げる。ノリノリ元気印のヒギンスのドラミングはフロント楽器を思いっきり鼓舞する。

そこにバイタルでソウルフルでハードなモーガンのトランペットが思いっきり絡んでくる。もうノリノリのモーガン。この盤でのモーガンは無敵である。ファンキーでソウルフルなトランペットがモーダルに舞い、モーダルに飛翔する。BNLTシリーズのモーガンは捨て曲無し。しかし・・・。当時、何故お蔵入りになったのか。やはり「謎」である。

 
 
東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月13日 (木曜日)

マイケルの個性全開のセカンド盤

マイケル・ブレッカーのテナーは個性的だった。宣伝では「コルトレーンの再来」なんて表現されたが、どうして、ストレートなブロウがコルトレーンと同じだけで、アドリブ・フレーズの展開、モーダルな音の選び方、運指の癖、どれもが個性的で、コルトレーンとは似ても似つかぬもの。しかも、フュージョン・ジャズにも通じる、コンテンポラリーな純ジャズの音世界が、1970年代〜1980年代のテナー奏者ならでは、と強く感じる。

Michael Brecker『Don't Try This at Home』(写真左)。Impulseレーベルからの2ndアルバム。1988年のリリース。ちなみにパーソネルは、Michael Brecker (ts, EWI), Mike Sternx(g), Don Grolnick (p), Charlie Haden, Jeff Andrews (b), Jack DeJohnette, Adam Nussbaum, Peter Erskine (ds), Mark O'Connor (vln), Herbie Hancock, Joey Calderazzo (p), Judd Miller, Jim Beard (syn)。豪華メンバーが脇を固めて、どんな曲でもどんとこい、という布陣。

初ソロ盤に比べて、オリジナリティ豊かなサウンドが展開されている。4ビートに拘らない、新しい感覚のニュー・ジャズが心地良い。エレクトリックなのかアコースティックなのか、4ビートなのか16ビートなのかといった固定概念に拘らない、柔軟で多様な音世界が実にユニーク。1988年なので、純ジャズ復古後のネオ・アコースティックに手を染めるかと思いきや、マイケルはそんな当時のジャズ界のトレンドに目もくれず、1970年代以降のニュー・ジャズの音世界に没入している。
 

Dont_try_this_at_home  

 
恐らく、Impulseレーベルとしては「現代のJohn Coltrane」としてセールス的にも大きな期待を寄せていたはずで、この期待と自分のやりたいことの狭間で、マイケルは結構揺らいでいたのかなあ、と思う。この盤はどちらかといえば「やりたいことをやる」マイケルが存在していて、後の1990年代のマイケルの音世界に直結する、オリジナリティ豊かなニュー・ジャズなサウンドがなかなか個性的。

この盤を聴いていて、マイケルってウェザー・リポートが好きだったのかなあ、とも感じます。良く似た音の展開が見え隠れするんですが、そこはマイケル、展開のコピーに終始すること無く、ウェザー・リポートよりもマイルドでアーバンな音世界を展開していて、これはこれで実に個性的な仕上がりになっている。こういうところがマイケルの非凡なところ。

アルバム全体の印象は、マイケルの音世界のプロトタイプという印象だが、演奏全体も充実していて、とても内容の濃いコンテンポラリーな純ジャズに仕上がっている。マイケルはEWIをかなり使用しているので、硬派なジャズ者の方々には受けが悪いのかもしれません。が、このEWIの音が僕は大好物。電気楽器も効果的に使用されていて、1980年代のコンテンポラリーな純ジャズ盤として、意外と僕は愛聴しています。

 
 
東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月12日 (水曜日)

マイケルの初リーダー作です。

2007年1月13日、マイケル・ブレッカーの急逝はジャズ・テナー界における大きな損失であった。当時57歳。あまりに若すぎる死であった。ジャズ界で57歳と言えば「中堅」。「ベテラン」の域に向けての端境期での逝去であった。コルトレーン〜ショーター〜ブレッカーと引き継がれてきたジャズ・テナーの系譜(ロリンズは孤高のテナーとして別格扱い)がいきなり途切れた。今ではジャズ・テナー界は「群雄割拠」の時代。

マイケル・ブレッカーはテナー・サックス奏者。1949年、フィラデルフィア生まれ。1970年代から頭角を現したがソロでは活動せず、兄のランディと共に「ブレッカー・ブラザース」を結成。コ・リーダーとして活躍。その後、1970年代の終わりから「ステップス・アヘッド」を結成し、ここでもコ・リーダーとして活躍。なかなかソロでの活動には踏み出さず、ソロとして初のリーダー作をリリースしたのは1987年の事であった。

その初リーダー作が『Michael Brecker』(写真左)。1987年のリリース。ちなみにパーソネルは、    Michael Brecker (ts, EWI), Pat Metheny (g), Kenny Kirkland (key), Charlie Haden (b), Jack DeJohnette (ds)。どちらかと言えば、フュージョン・ジャズ畑を歩いてきたマイケルにとって、コンテンポラリーな純ジャズのファーストコール・ジャズメンばかり、とても素晴らしいサイドメンに恵まれている。
 

Michael_brecker_album

 
この盤にはマイケルのやりたかった事が全て詰め込まれている印象。ちょっとバラエティーの富みすぎれているかな、と思うが、マイケル自身、そして、バックのサイドメンの全てが個性派揃いで、どんなジャズ演奏のトレンドにも「ぶれない」。故にバラエティーに富んだ内容ながら、散漫な印象を感じることは無い。特に、マイケルのテナーについては一本筋が通っていて、しっかりとマイケルならではのテナーを吹き上げていて立派だ。

確かにテナーのスタイルはコルトレーンのスタイルを継ぐものだが、これって、当時も今も変わらないものであって、今となっては重要なことではないだろう。この盤でのマイケルのテナーは、コルトレーンの奏法を踏襲してはいるが、フレーズの節回しやバラードのニュアンスなど、マイケルの個性で固められている。コルトレーンの雰囲気をカヴァーするものでは全く無い。そういう意味では、ジャズ・テナーのスタイリストとして唯一無二な個性を確立していた、と言える。

そんなマイケルの唯一無二の個性をこの初リーダー作で確認することが出来る。この盤にコルトレーンは存在しない。ましてやショーターも存在しない。明らかにマイケルのテナーだけが存在していて、その個性は「今後を十分に期待させてくれる」ものであった。1987年当時の最先端のコンテンポラリーな純ジャズを追求していることに頼もしさを感じる。好盤です。

 
 
東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月11日 (火曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・75

昨日の『Body & Soul』から続いて、テテ・モントリューのピアノ・トリオ盤のご紹介。テテ・モントリューは、スペインのカタロニア出身のジャズ・ピアニスト。テテのピアノはハイ・テクニックで流麗で「多弁」。乗ってきたら、速いフレーズをガンガンに弾きまくる。テクニックが伴っているのと、紡ぎ出されるフレーズが流麗なので、あまり耳に付かない。タッチが確実なのでバラードの演奏については、アドリブ・フレーズがクッキリ浮かび出て、とても聴き易い。

Tete Montoliu『Recordando a Line』(写真左)。邦題『リネの想い出』。1972年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Tete Montoliu (p), Erich Peter (b), Joe Nay (ds)。昨日ご紹介した『Body & Soul』の次に来る位置づけのピアノ・トリオ盤。これがまあ、テテ・モントリューの初期の傑作の一枚なのだ。

テテのピアノは「多弁」。弾きすぎる、という批判もある位なのだが、テクニックが優秀なので耳に付かない。しかし、この盤ではテテは少し抑え気味に速いフレーズを弾く。これが「品がある」音なのだ。ピアノ・ソロもトリオ演奏も、この盤のテテはいつにも増して品がある。力強い確かなタッチに品が備わって、それはそれは素敵な音のピアノ・トリオ盤に仕上がっている。
  

Recordando_a_line  

 
加えて、選曲が良い。テテの品の備わった、力強い確かなタッチが映えに映えるスタンダード曲がズラリと並ぶ。しかも「失恋のラヴ・ソング」が多い。これがこの盤の「ミソ」なのだ。テテが「少し抑え気味に速いフレーズを弾く」のは、この「失恋のラヴ・ソング」の歌詞をしっかりと噛みしめるように弾き進めるためなのだ。僕はそう理解した。合点がいった。

この盤のキャッチフレーズにも挙がっている2曲が特に優秀。しっとりとした品の良いタッチが白眉の「アイ・シュッド・ケア」、ブロッサム・ディアリーのオリジナル・バラードを優れたテクニックで速弾きワルツに仕立て直した、疾走感&爽快感が素敵な「スウィート・ジョージイ・フェイム」。そうそう、シンプルなアレンジでスッとした佇まいの「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」も印象的な出来。収録されたスタンダード曲の全てが良い感じなのだ。

誰もいない海でひとり佇むテテ。1933年生まれのテテはこの盤の録音時は31歳。若手から中堅へとステップアップする時期での素晴らしいトリオ盤である。我が国では人気があるとは言えないテテ・モントリューではあるが、このトリオ盤を聴けば、その印象は完全に払拭される。ピアノ・トリオ演奏の良いところがギッシリと詰まった好盤である。

 
 
東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月10日 (月曜日)

テテの初期の傑作ライブ盤

テテ・モントリューは、スペインのカタロニア出身のジャズ・ピアニスト。生まれた時から盲目であったが、彼のプレイを聴くと判るが、とても盲目のピアニストとは思えない、速弾きで多弁なフレーズが得意中の得意。彼が盲目と知ったのは、彼のプレイに出会ってから15年も経った後だったが、盲目と知った時は思わず「絶句」した。1933年生まれなので、生きていれば85歳。しかしながら、1997年、64歳で鬼籍に入っている。

テテのピアノはハイ・テクニックで「多弁」。乗ってきたら、速いフレーズをガンガンに弾きまくる。ただ、テクニックが伴っているのと、紡ぎ出されるフレーズが流麗なので、あまり耳に付かない。タッチが確実なのでバラードの演奏については、アドリブ・フレーズがクッキリ浮かび出て、とても聴き易い。

Tete Montoliu『Body & Soul』(写真左)。1971年4月、ミュンヘン「ドミシル」でのライブ録音。1983年にドイツのジャズ・レーベル「Enja Records」からリリースされている。ちなみにパーソネルは、Tete Montoliu (p), George Mraz (b), Joe Nay (ds)。ピアノのテテはスペイン、ベースのムラーツはチェコ、ドラムのネイはドイツ。さすがは欧州ジャズ、多国籍ピアノ・トリオである。
 

Tete_body_soul

 
ソロ演奏とトリオ演奏の混成であるが、どちらも聴きどころ満載。テテ特有の多弁で流麗なフレーズが心ゆくまで楽しめる。とにかくテクニックに優れていて、速弾きが素晴らしい。揺らぎやミスタッチが皆無なのだ。テテって盲目なんです。このカッ飛んだ高速フレーズの正確さってどうよ、って驚くことしきり。この盤では、そんな速弾きをちょっと抑え気味で展開しているので、その凄みが倍増して聴き応え満点。

バックの演奏も聴きもの。ムラーツのベースは硬質で粘りがあって骨太なベース。鋼の様なしなりでブンブン胴鳴りをさせたウォーキング・ベースは迫力満点。ノイのドラムは多彩で堅実、丁寧だがダイナミック。ムラーツのベースもノイのドラムもテテの多弁で流麗な、迫力あるピアノに決して負けていない。

3者対等のピアノ・トリオ。その演奏の迫力たるや、素晴らしいものがある。録音した年は1971年。米国では商業ロックの台頭により、ジャズは混沌とした時代に入り、ポップス音楽としてのシェアを急速に落としていった頃。そんな時代に欧州ではこんなに内容のある純ジャズが演奏されていたんですね。ライブ会場の雰囲気も良く、少しマイルドになったテテのピアノがとても素敵に響きます。好盤です。

 
 
東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月 9日 (日曜日)

38回目のジョンの命日である

忘れもしない。1980年12月8日 (月) 22:50 (EST)、1980年(昭和55年)12月9日(火) 12:50 (JST)、ジョン・レノンは凶弾に倒れた。パトカーの後部に乗せられて、ルーズベルト病院へ搬送。そして、失血性ショックにより死去。享年40歳。あれから今年で38年が経ったことになる。ジョンが生きていれば78歳。どんな翁になっていたんだろう。見てみたかったなあ。

当時、僕は22歳。大学三回生。大学の生協のラジオで「ジョンが撃たれた」との報を聞く。まさか4発の銃弾を浴びているとは思わず、恐らくジョンは大丈夫、と思っていた。そして、15時前だったと記憶しているが、同じ大学生協のテレビでNHKの緊急ニュースにて、ジョンが逝去したことを知った。暫く、テレビの前で立ち尽くした。今から38年前の今日の昼下がりの出来事である。

当時、相当な精神的ショックを受けたことを覚えている。「なぜジョンが撃たれなければならなかったのか」。今でもその想いは変わらない。1980年11月に『ダブル・ファンタジー』をリリースした直後の出来事だった。「It'll be just like starting over」と唄い、その約1ヶ月後、ジョンはこの世を去った。今、振り返っても、この事実がとても無念である。

ジョンに関わるアルバムのリリースと言えば、今年は『Imagine : The Ultimate Collection』(写真左)がある。140曲にも及ぶリミックス、リマスター、ライヴ、アウトテイク等を収録した4CD+2ブルーレイ入りと充実した内容で、『Imagine』の全てがわかるボックス・セットになっている。オリジナルMixと2018年Mixが比較して聴けるのだが、意外とこの「2018年Mix」が良い感じで、僕はかなり気に入っている。

 
John_lennon_imegne
 

12月8日、今年もジョンの命日がやって来た。そして、約3週間後にはクリスマスがやって来る。この季節、僕の頭の中のジョンの曲の流れは「(Just Like) Starting Over」〜「Imagne」〜「Happy Xmas (War Is Over)」。ジョンが亡くなってから、38年経つが、あの頃と世界はあんまり変わっていない。漠然とこの事実が無念である。

 

So this is Xmas And what have you done
Another year over And a new one just begun
And so this is Xmas I hope you have fun
The near and the dear one The old and the young

A very Merry Xmas And a happy New Year
Let's hope it's a good one Without any fear

And so this is Xmas (war is over)
For weak and for strong (if you want it)
For rich and the poor ones (war is over)
The world is so wrong (now)
And so happy Xmas (war is over)
For black and for white (if you want it)
For yellow and red ones (war is over)
Let's stop all the fight (now)

・・・・・・・・・

War is over, if you want it War is over now
Happy Xmas

 
 
東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月 8日 (土曜日)

伝説のハイノート・ヒッター

アメリカンなビッグバンドは基本的に白人中心。一聴すると直ぐに判る。明るくメリハリが効いていてダイナミック、その展開やソロについてはキャッチャーで「ウケてなんぼ」的。ショー的な要素も見え隠れする。ファンクネスは希薄で、都会的で洗練されたアレンジ。1970年代には電気楽器を率先して導入。流行に節操なく追従する「脳天気」さも見え隠れ。そんな「あっけらかん」としたアメリカンなビッグバンドは聴き応え満点である。

『The Maynard Ferguson Sextet』(写真左)。1965年9月の録音。セクステット=6人編成なのでビッグバンドでは無いのだが、アレンジ含め、演奏全体の雰囲気が思いっきり「ビッグバンド」しているので、今回取り上げさせて頂いた。加えて、リーダーの「メイナード・ファーガソン」はビッグバンドの主宰者でもあり、ビッグバンドのトランペッターによくある「ハイノート・ヒッター」の代表格でもある。

パーソネルを見渡しても、ファーガソン以外、知っている顔は一人もいない。しかし、アルバムを聴いて思うのは、皆、上手い。6人編成でありながら、ビッグバンドと聴き間違えそうなほどの「迫力」と「音の独特な重ね方」が聴いて取れる。演奏はそれぞれ、明るくメリハリが効いてダイナミック。明らかに、アメリカンなビッグバンドの音の雰囲気である。なんだか聴いていて楽しくなってくる。
  

Maynard_ferguson_sextet  

  
ファーガソンはハイノート・ヒッター。彼のトランペットのハイノートは「成層圏まで轟くハイ・トーン」と形容される。これがまあ、耳をつんざく鋭いもので、不慣れの人には完全に「ノイズ」だろう。この「成層圏まで轟くハイ・トーン」がいわゆるアメリカンなビッグバンドの「ウケてなんぼ」なショー的要素の代表的なもの。ファーガソンはこのハイノートでビッグバンドの人気者になった。

とにかくアメリカンなビッグバンドの演奏は「派手」。この「派手」さが我が国のジャズ者の方々にはウケないのか、アメリカンなビッグバンドや、伝説のハイノート・ヒッター、メイナード・ファーガソンは意外と我が国では人気が無い。このアルバムだって、ジャズ盤紹介本にそのタイトルが挙がることは先ず無い。でもなあ、あっけらかんとしていて明るくて、聴いていて楽しいけどなあ。

メイナード・ファーガソンは1928年5月、カナダ・ケベック州生まれ。2006年8月にこの世を去った。1949年、21歳の時にアメリカに移住し、スタン・ケントン楽団で活躍。その後、パラマウント・ピクチャーズに入り、『十戒』などの映画でリードトランペットを担当。1976年のモントリオールオリンピックの閉会式では、トランペットのソリストを務めている。つまり、米国ではトランペッターとして有名な存在なのだ。我が国で今一度、再評価されてしかるべき、伝説のトランペッターである。

 
 
東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月 7日 (金曜日)

WRのビッグバンド・アレンジ

唐突ではあるが、僕は「Weather Report」(以降WRと略す)というバンドが大好きである。ジャズを聴く切っ掛けを作ってくれた大学時代の友人宅で、『Heavy Weather』を聴かせて貰って「おったまげた」。それまでロック一辺倒だった僕が、まずはフュージョン・ジャズに目覚めた瞬間であった。演奏テクニックといい、演奏の迫力といい、これは凄いぞ、と思った。

そのWRのリーダーは「ジョー・ザヴィヌル」と「ウェイン・ショーター」。僕はキーボードが好きなので、ジョー・ザヴィヌルがお気に入り。もともとザヴィヌルはワールド・ミュージック系の音がお気に入りらしく、WRの中期、1973年の『Sweetnighter』辺りから、ちょくちょく、ビートの効いたワールド・ミュージック系の音が入ってくる。特に、WR解散後、ソロになってからはその傾向がより強くなった。

Joe Zawinul with WDR Big Band Koln『Brown Street』(写真左)。地元ウイーンのザヴィヌル自身のライヴスポット「Birdland」での2005年10月のライヴ演奏を収録。ちなみにパーソネルは、Joe Zawinul (kb,vocorder), Alex Acuna (perc), Victor Bailey (b), Nathaniel Townsley (ds) 。このザヴィヌルのカルテットに、WDR Big Band Kolnが共演する。収録曲を見渡すと、WRの楽曲をメインに演奏している。
 

Brown_street  

 
WRの楽曲はビッグバンドに向く。WRにおけるザヴィヌルのキーボードは「ひとりビッグバンド」と言われるほど、音の重ね方が重厚かつダイナミック。そのザヴィヌルの「ひとりビックバンド」の部分を、WDR Big Band Kolnが受け持って、WRの楽曲をビッグバンド・アレンジで演奏しているのだ。これが絶品。躍動感溢れ、メロディアスで「爽快感+疾走感」が抜群。

加えて、選択されたWRの楽曲が、ワールド・ミュージック系で固められており、これがまた聴いていて心地良い。ワールド・ミュージック系の曲とビートって、ビッグバンド・アレンジにとっても合うのだ。これは初めての体験。ビッグバンドの躍動感がプラスの方向に作用し、爽快感+疾走感が洗練された雰囲気を醸し出し、アーバンでシュッとしたワールド・ミュージックを聴かせてくれる。

このビッグバンド・アレンジで聴くと、改めてWRの楽曲って、良い曲が多いなあ、と感心する。WDR Big Band Kolnの音は秀逸。スピード感抜群、アンサンブルの切れ味は見事、魅惑的なダイナミズム、などなど、ビッグバンドの良いとこ取りをしていて聴いていてとても楽しい。ザヴィヌルのキーボード・ワークも素晴らしい。ノリノリである。ビッグバンド者の方々にもお勧め。
 
 
 

東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月 6日 (木曜日)

硬質でグルーヴィーなヴァイブ

先週の土曜日だったか、ウォルト・ディッカーソンをご紹介した。ジャズ・ヴァイブの二枚看板、ミルト・ジャクソンとゲイリー・バートン。ミルトはジャジーでファンキーな正統派ジャズのヴァイブ、バートンはニュー・ジャズな響きが個性のヴァイブ。ウォルト・ディッカーソンは、この代表的なヴァイブ奏者2人とは全く異なる個性の持ち主であった。

もう一人、代表的なヴァイブ奏者2人とは全く異なる個性の持ち主が存在する。デイブ・パイク(Dave Pike)である。米国はデトロイト出身のヴァイブ奏者。1938年生まれ。2015年に77歳で没している。ファクネスは希薄に、硬質で切れ味の良い音で、ブルージーさは薄いがライトなグルーブ感がそこはかとなく漂っている。シングルトーンがメインで、疾走感と爽快感を兼ね備えた、ちょっと理知的なヴァイブ。

Dave Pike『Pike’s Peak』(写真左)。1961年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Dave Pike (vib), Bill Evans (p), Herbie Lewis (b), Walter Perkins (ds)。デイブ・パイクの秀作。ジャズ盤紹介本に時たま顔を出す、知る人ぞ知る、ちょっとマニアックな盤。パーソネルを眺めれば判るが、ジャズ・ピアノの巨匠、ビル・エヴァンスが参加している。
 

Pikes_peak  

 
このビル・エヴァンスの参加だけがクローズアップされる評価もあるが、この盤はやはりリーダーのデイブ・パイクの硬質でクールなヴァイブを愛でるべきだろう。パイクのヴァイブはジャジーでグルーヴィー。硬質で爽快感が溢れ、切れ味が良い。響きは西海岸ジャズを彷彿とさせる、小粋な節回しでちょっと理知的。シングルトーンは聴き易く、しっかりと耳に馴染む。

エヴァンスの参加が目を惹くが、どうして、エヴァンスのピアノより、パイクのヴァイブの方が明らかに目立っている。パイクのヴァイブの良さが横溢していて、聴いていてとても心地良い。アドリブ・フレーズは正統派なもので、唄うが如くの節回し。パイクのヴァイブの基本はハードバップであることが良く判る。聴き心地がとても良い。

タイトルが「パイクのピーク」。そう、この盤、デイヴ・パイクというヴァイブ弾きのキャリアのピークを捉えた盤なんですよね。パイクはキース・ジャレットの様に唸るが何故か気にならない。それだけパイクのヴァイブには爽快感が溢れているのだ。

 
 

東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月 5日 (水曜日)

ビッグバンド・ジャズは楽し・46

日本のジャズ者の方々は硬派な方が多い。「ジャズはかくあるべし」とか「テナーはこうでないと」とか「ビッグバンドは侘び寂びがないと」とか、いろいろと自分なりの基準を持って、様々なジャンル、トレンドのジャズをバッサリと一刀両断。好みのジャズは思い切り聴くが、それ以外はまず聴く耳を持たない、という、竹で割ったような方々が多い。

これって、意外と日本人のジャズ者、共通の傾向っぽい。僕みたいにジャズの好みについて節奏の無いのは「あかん」のやろなあ。そういう傾向が故に、米国では人気があるのに日本ではサッパリ、というジャズメンが多くいる。例えば「バディ・リッチ(Buddy Rich)」など、そういうジャズメンの最右翼なのではないだろうか。バディ・リッチはドラマー。驚異的なテクニックと高速ドラミングで歴史上最も偉大なジャズドラマーの一人と言われる。

が、我が国での人気はイマイチ。ジャズ盤紹介本でもその名が挙がることは本当に少ない。彼のシングル・ストロークはとにかく速く正確で、かつ素晴らしい音色を持っている。自己のバンドを持ち、特に1970年代にはビッグバンドも主宰して人気を博した。米国では相当な人気だったらしいが、1970年代、僕がジャズを聴き始めた頃、バディ・リッチの名を聞いたことは無かった。たまに、NHKのFMで数曲かかる位だったと記憶している。
 

The_roar_of_74_buddy_rich  

 
Buddy Rich『The Roar of '74』(写真左)。1973年のリリース。リッチ率いるビッグバンドでの録音である。聴けば直ぐ判るが、正統派のビッグバンドである。時は1973年なので、エレギやエレベを活用して、ソリッドで硬質なメリハリのある音がメイン。とにかくド迫力かつ切れ味の良い、明らかに「ヤンキー」なビッグバンドの音、1970年代の音。バディ・リッチのドラミングに鼓舞されて、ドライブ感豊かに疾走するビッグバンド。躍動感と疾走感。

明らかにアメリカナイズされたビッグバンドの音で、侘び寂び、よりはメリハリの効いたパンチのある、ちょっとキャッチャーなところが、硬派な日本人のジャズ者の方々には受けないのかなあ、と思ったりする。エレギやエレベなど、ビッグバンド・ジャズに以ての外の電気楽器の活用。これも受けないなあ、きっと。でも、リッチのドラミングは凄い。細かく刻んだビートを、速く限りなく正確に叩き続ける「高速ドラミング」。これだけでも聴きものだと思うがなあ。

「Speedwin」の車から身を乗り出す Buddy Rich のジャケットも秀逸。このジャケットも思い切りアメリカンしていて、逆にジャズらしからぬジャケット。これも受けない理由かなあ。でも、この盤のビッグバンドの音、バディ・リッチのドラミングと併せて、相当な聴きものだと思います。ビッグバンド好きにはちろん、ジャズ者の方々全般に聴いていただきたい、出来れば再評価して頂きたい好盤です。

 
 

東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月 3日 (月曜日)

SteepleChaseのコルトレーン

最近、SteepleChaseレーベルの盤をあれこれ聴いている。SteepleChaseレーベルは、マイルス・コレクターとして有名な、デンマークのニルス・ウインターが、1972年立ち上げたジャズ・レーベル。1970〜80年代を中心に、ジャズ史に残る名盤を数多く生み出した欧州ジャズ・レーベルの老舗である。

SteepleChaseレーベルは、欧州のレーベルとしては比較的、米国系のレーベルに近い演奏の色や雰囲気を持っていて、ハードバップ系の演奏に秀作が多い。さしずめ欧州の「ブルーノート」と言っても良い「欧州発ハードバップ」の宝庫。それでも欧州のレーベルなので、カタログを眺めていると「これは誰だ」という感じのジャズメンが名を連ねているから興味津々。

例えばこの盤など、その良い例だ。Frank Strozier Quintet『What's Goin' On』(写真左)。1977年11月5日の録音。SteepleChaseレーベルからのリリースではあるが、録音場所はNY。わざわざ、ニルス・ウインターが渡米しての録音である。

ちなみにパーソネルは、Frank Strozier (as, fl), Danny Moore (tp), Harold Mabern (p), Stafford James (b), Louis Hayes (ds)。もともとこの盤に着目したのは、タイトル曲の「What's Goin' On」。この曲、R&Bのレジェンド、マーヴィン・ゲイの大ヒット曲で、僕はこの曲が大好き。

 

Whats_goin_on_frank_strozier  

 
へ〜、こんなR&Bのヒット曲をジャズ化カヴァーしてるんや、と軽いノリで盤をゲット。ラスト曲の「Psalm for John Coltrane」を見て、おっこれはもしや「コルトレーン・トリビュート」な盤か、なんて予想を立てる。で、聴いてみると、明らかに「コルトレーン・トリビュート」な演奏がギッシリ。

コルトレーンはテナー・サックスの中高音を上手く使ってフレーズを吹く人だったのだが、ちょうどアルト・サックスの中低音がコルトレーンのテナーの音域にフィットするみたいで、リーダーのフランク・ストロジャーのアルト・サックスが、まるでコルトレーンが吹いている様に聴こえる。

ハロルド・メイバーンのピアノは、マッコイ・タイナーの様に「ガーンゴーン」とハンマー奏法を繰り出し、ルイ・ヘイズのドラムは、エルビン・ジョーンズの様に複合リズムを叩き出す。何気なく聴き流していると、本当にコルトレーン・カルテットの音と間違えそう。

この盤、あまりにコルトレーンに追従しているので、個性が無いとか単調とか、否定的な評価も目にするが、録音当時は、サックス吹きはこぞってコルトレーンを追いかけた訳で、何もストロジャーだけが特別では無い。そういう観点で先入観無くこの盤を聴くと、コルトレーン・トリビュートの盤としてはまずまずの出来ではないか、と思うのだ。「あっさりとしたコルトレーン」という感じで、ライトな気分で聴ける。 

 

東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月 2日 (日曜日)

こんなアルバムあったんや・107

デクスター・ゴードン(Dexter Gordon・愛称「デックス」)のテナーは、僕にとっては「永遠のお気に入り」。彼の大らかで朗々と鳴るテナーは、ジャズを聴き始めた頃、『Our Man in Paris』を聴いて痺れて以来、折に触れて親しみを持って聴き続けてきた「永遠のお気に入り」である。意外と日本のジャズ者の方々の中ではちょっとマイナーな扱いであるが、マニアなジャズ者の方々には結構受けているみたいだ。

実はデックスは結構な数の音源を残している。1950年代から1960年代前半についてはブルーノート、1960年代から1970年代前半についてはスティープルチェイス、1970年代中盤から1980年代初頭についてはコロンビアに、それぞれ結構な数のアルバムを残している。特にスティープルチェイスのアルバムは、コペンハーゲンはモンマルトルのライブ録音盤が多数あり、デックスのライブでのパフォーマンスはとても魅力的だったことを十分に追体験出来る。

そんなデックスのライブ音源が発掘され、今年の10月にCD化されている。Dexter Gordon『Espace Cardin 1977』(写真左)。1977年9月25日、パリのEspace Pierre Cardin (Théâtre de la Ville)でのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts, ss-M2), Al Haig (p), Pierre Michelot (b), Kenny Clarke (ds)。いやはや、とってもとっても渋い渋すぎるパーソネルである。
 

Espace_cardin_1977_live

 
デックスは1976年、1962年以来、14年続いた長い長い欧州生活を切り上げ、米国へ戻ったのだが、その後もしばしば渡欧している。このライブ盤は、1977年にパリを再訪、そんな渡欧の機会を捉えた、パリでのライブ録音である。とりわけパーソネルが渋い。まず、ピエール・ミシュロとケニー・クラークは1949年にクラークが初めて渡仏したときから共演している仲。そして、アル・ヘイグはバップ・ピアニストとして、大ベテランの域に達している。

さぞかし、オールド・スタイルで小粋なハードバップが展開されているんだろうなあ、と思いながら、CDプレイヤーのスタートボタンを押すんですが、これがまあ、ビックリぽんですわ。結構、熱気溢れる緊張感溢れるプレイが展開されている。加えて、この大ベテランのパーソネルで、モーダルな演奏も展開されていて、これがまた結構、爽快感抜群なパフォーマンスだったりする。

デックスのテナーは全く変わらないですけどね。大らかで朗々と唄う様に朗読する様に、豪快なブロウを展開する。コードだろうがモードだろうがお構いなし。めったに味わえないデックスのソプラノ・サックスが2曲目の「A La Modal」で体験できるところもこのライブ盤の美味しいところ。こんな音源がまだ残っているのだから、ジャズって隅に置けないなあ、と改めて感心することしきり、である。

 
 

東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年12月 1日 (土曜日)

唯一無二な「モード・ヴァイブ」

僕がジャズを聴き始めた頃、今を去ること40年前。ジャズ・ヴァイブについては、ミルト・ジャクソン、以上、だった。しかし、当時、チック・コリアとのデュオで人気の出た、ゲイリー・バートンのヴァイブの方が僕は好きだった。でも、ミルトは別格だったなあ。きっと今でも、ジャズ・ヴァイブの代表的ジャズメンは誰か、と問えば、ミルト・ジャクソンとゲイリー・バートンの二人に落ち着くんだろうなあ。

ジャズを聴き進めて行くと、他にもジャズ・ヴァイブの魅力的な演奏家がいることに気がつく。ミルトはジャジーでファンキーな正統派ジャズのヴァイブ、バートンはニュー・ジャズな響きが個性のヴァイブ。この代表的なヴァイブ奏者2人とは全く異なる個性の持ち主が幾人か存在する。そんな中の一人が「ウォルト・ディッカーソン(Walt Dickerson)」。

ウォルト・ディッカーソンは米国フィラデルフィア出身。1928年生まれで2008年、80歳で鬼籍に入っている。彼のヴァイブの個性を表すキャッチーフレーズが「ヴァイブのコルトレーン」。基本がモーダルなヴァイブで、ジャジーではあるがファンクネスは希薄。いわゆる1960年代の「新主流派」の音がメインのヴァイブなのだ。
 

This_is_walt_dick  

 
『This Is Walt Dickerson』(写真・ジャケ違い)。1961年3月7日の録音。ちなみにパーソネルは、    Walt Dickerson (vib), Austin Crowe (p), Bob Lewis (b), Andrew Cyrille (ds)。タイトルから判る様に、この盤はウォルト・ディッカーソンの初リーダー作である。パーソネルについては、ディッカーソン以外、知らない名前ばかり。どんな音が飛び出すやら想像がつかない。

演奏はモーダルな自由度の高い、ストイックでカッチリとしたメインストリーム・ジャズ。ディッカーソンのヴァイブは、モーダルな演奏特有の浮遊感溢れる展開、思索的な理屈っぽいサウンドが特徴。「ヴァイブのコルトレーン」と形容されている様だが、ちょっとそれは違うかな。モーダルな演奏の部分は同じと言えば同じだが、コルトレーンより思索的で理屈っぽい。それでもヴァイブのフレーズはしっかりと明確で好感度は高い。

この初リーダー作にして、当時、ジャズ・ヴァイブの第一人者であったミルト・ジャクソンとの差別化に成功している。ただ、ファンキーな要素が希薄で、キャッチャーなフレーズが少ないが故、取っ付き難い演奏ではあるが、非常にカッチリとした、正統なモード・ジャズなので、慣れてくるにつれ味わいが出てくる。実にストイックでスタイリッシュな「モード・ヴァイブ」である。

 
 

東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

« 2018年11月 | トップページ | 2019年1月 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、 ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で、不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 青春のかけら達(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでのジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で、不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。         
2019年10月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

カテゴリー