ピアノ・トリオの代表的名盤・75
昨日の『Body & Soul』から続いて、テテ・モントリューのピアノ・トリオ盤のご紹介。テテ・モントリューは、スペインのカタロニア出身のジャズ・ピアニスト。テテのピアノはハイ・テクニックで流麗で「多弁」。乗ってきたら、速いフレーズをガンガンに弾きまくる。テクニックが伴っているのと、紡ぎ出されるフレーズが流麗なので、あまり耳に付かない。タッチが確実なのでバラードの演奏については、アドリブ・フレーズがクッキリ浮かび出て、とても聴き易い。
Tete Montoliu『Recordando a Line』(写真左)。邦題『リネの想い出』。1972年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Tete Montoliu (p), Erich Peter (b), Joe Nay (ds)。昨日ご紹介した『Body & Soul』の次に来る位置づけのピアノ・トリオ盤。これがまあ、テテ・モントリューの初期の傑作の一枚なのだ。
テテのピアノは「多弁」。弾きすぎる、という批判もある位なのだが、テクニックが優秀なので耳に付かない。しかし、この盤ではテテは少し抑え気味に速いフレーズを弾く。これが「品がある」音なのだ。ピアノ・ソロもトリオ演奏も、この盤のテテはいつにも増して品がある。力強い確かなタッチに品が備わって、それはそれは素敵な音のピアノ・トリオ盤に仕上がっている。
加えて、選曲が良い。テテの品の備わった、力強い確かなタッチが映えに映えるスタンダード曲がズラリと並ぶ。しかも「失恋のラヴ・ソング」が多い。これがこの盤の「ミソ」なのだ。テテが「少し抑え気味に速いフレーズを弾く」のは、この「失恋のラヴ・ソング」の歌詞をしっかりと噛みしめるように弾き進めるためなのだ。僕はそう理解した。合点がいった。
この盤のキャッチフレーズにも挙がっている2曲が特に優秀。しっとりとした品の良いタッチが白眉の「アイ・シュッド・ケア」、ブロッサム・ディアリーのオリジナル・バラードを優れたテクニックで速弾きワルツに仕立て直した、疾走感&爽快感が素敵な「スウィート・ジョージイ・フェイム」。そうそう、シンプルなアレンジでスッとした佇まいの「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」も印象的な出来。収録されたスタンダード曲の全てが良い感じなのだ。
誰もいない海でひとり佇むテテ。1933年生まれのテテはこの盤の録音時は31歳。若手から中堅へとステップアップする時期での素晴らしいトリオ盤である。我が国では人気があるとは言えないテテ・モントリューではあるが、このトリオ盤を聴けば、その印象は完全に払拭される。ピアノ・トリオ演奏の良いところがギッシリと詰まった好盤である。
★東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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