楽器が鳴るということは重要
ジャズにおいて「楽器が鳴る」ということは重要なことである。「楽器が良く鳴る」ということは、フレーズが乱れること無く、割れること無く、揺らぐこと無く、しっかりスッと通る。ストレートにフレーズのニュアンスが伝わる。加えて「楽器が鳴る」ということは、それだけの優れたテクニックがあるということだ。
Charles Sullivan『Re-Entry』(写真左)。1976年8月17日の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Sullivan (tp), Rene Mclean (as, ts), Kenny Barron (p), Buster Williams (b), Billy Hart (ds)。トランペッターのチャールズ・サリヴァンがリーダーのクインテット構成。我が国のトリオ・レコードのスタッフがニューヨークで録音した盤である。
サリヴァンのトランペットが良く鳴っている。ブラスのブリリアントな響きが実に魅力的だ。この良く鳴るトランペットがこのアルバムの最大の聴きどころ。速いフレーズのバップ曲、ゆったりとスローなバラード曲、思わず体が動くスインギーな曲、それぞれに「良く鳴るトランペット」が映える。ほんと、良い音で鳴るトランペットである。この盤、楽器が良く鳴っているのは、サリヴァンだけでは無い。
若かりしケニー・バロンのピアノも良く鳴っている。バロンがこれだけダイナミックでドライブ感のあるバップ・ピアノを弾きまくっていたとは。バスター・ウィリアムスのベースも良く鳴っている。重心の低い、しなりのあるベース音は官能的ですらある。ビリー・ハートのドラムもよく鳴っている。趣味の良いポリリズムがバンド全体を鼓舞する。おっと、サックスのレーン・マクリーン(ジャッキー・マクリーンの息子)は健闘している。ちょっとしんどそうなところがあるが「健闘」している。
この盤が録音された1976年、ジャズ界はフュージョン・ジャズが興隆を極め始めた頃。そんな中、こういう硬派な純ジャズ盤がリリースされていたとは知らなかったなあ。いや〜、ジャズは奥が深い。しかもこの盤、日本のレーベルからのリリースなんだが、日本のレーベル主導の「企画もの」臭さが無い。好盤です。
チャールズ・サリヴァンは、1944年11月8日、米国NY生まれ。今年で74歳になる。これだけ良い音、良いテクニックなトランペットなのにリーダー作は3作ほどしかない。Tolliver、Hannibal、Shawと並ぶ70年代を代表するトランペッターとして忘れてはならない存在と言われるが、どうにも過小評価なトランペッターである。
東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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