ジャズの「異国性」と「正統性」
ジャズの「異国性」を追求し続けた、マルチ・リード奏者にしてエキゾチックな音世界をジャズにもたらした第一人者ユセフ・ラティーフ(写真右)。コルトレーンに東洋思想をはじめとする多大な影響を与えたと言われる。そんなラティーフのアルバムをしっかり聴き直し始めた。もともとアルバムが入手し難い時期が長かったということもあって、今までしっかり聴いたことが無かった。
Yusef Lateef『Eastern Sounds』(写真左)。1961年9月5日の録音。プレスティッジ・レーベルの傍系レーベルMoodsvilleからのリリース。ちなみにパーソネルは、Yusef Lateef (fl, oboe, ts, xun), Barry Harris (p), Ernie Farrow (b, Rabaab), Lex Humphries (ds)。xun=Chinese globular fluteや、Rabaab=Rabat という聴き馴れない楽器を操っていて、この得体の知れない楽器が中近東風の音世界の表現に一役買っている。
リズムについてはアフリカ、音階については中近東からインドの複雑な音階を巧みに取り入れている。タイトルは和訳すると「当方のサウンド」になるが、中国や日本などの「極東」までは及んでいない。あくまで、中近東のイスラム圏、そしてインド止まり。それでも、その複雑な音階は独特の響きで、聴けば直ぐに判るほど。これが、ユセフ・ラティーフの最大の個性である。
フルートにせよオーボエにせよ、彼はオーケストラのマエストロの門を叩いてアカデミックな音楽教育のなかで演奏技術を習得しているとのこと。これが素晴らしい。当時、まだまだジャズの演奏家は我流が多く、楽器のテクニック的には僅かながらも、押し並べて問題を抱えていたかと思う。ラティーフについてはこれが無い。フルートなど端正かつ堅実。採用する音階はユニークだが、それを演奏する楽器テクニックは確かなもの。
しかし、ラティーフはエキゾチックな音世界だけが「売り」では無い。4曲目の「Don't Blame Me」、5曲目の「Love Theme from Spartacus"」などのスタンダード曲でのラティーフのテナーは正統派なもの。エキゾチックな響きはモーダルな奏法からくるもので、あくまで伝統的でメインストリームな「骨太テナー」が素晴らしい。
「異国性」と「正統派」を両立させているラティーフの演奏は実にユニーク。実はこの盤、さすがプレスティッジ・レーベルといえるもので、パーソネルのジャズメンの名前を見れば、ラティーフを取り巻くバックのジャズメンに統一感が希薄。このセッションが意外とプレスティッジお得意の「寄せ集め」セッションであることが良く判る。そんななか、ハードバップなピアノのハリスとドラムのハンフリーまでもが「異国情緒豊かな」演奏に染まっているのが面白い。
東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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