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2018年11月28日 (水曜日)

ジャズ大衆化のアンチテーゼ

確かにこの人のテナーはユニークやなあ、と思う。良い音をさせて正統なテナーを吹く。しかもフルートはクラシックの教育を正式に受けている。しかし、ジャジーではあるがファンクネスは希薄。フレーズのそこかしこに中近東のオリエンタルなフレーズが顔を見せ、エキゾチックな雰囲気を漂わせる。欧州から中央アジアまでのフレーズをごちゃ混ぜにしたジャズ。

Yusef Lateef『The Centaur and the Phoenix』(写真左)。1960年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Yusef Lateef (ts, flute, arghul, oboe), Richard Williams (tp), Clark Terry (flh, tp), Curtis Fuller (tb), Josea Taylor (bassoon). Tate Houston (bs), Joe Zawinul (p), Ben Tucker (b), Lex Humphries (ds)。新旧の癖のあるジャズメン大集合という感じのノネット編成。

基本はモード、時々アバンギャルド。それでも、フルートを吹く時は、まるでクラシックの様な端正で確かな純ジャズ。ファンクネスが希薄で、リズム&ビートもポリリズミックで複雑なので、決して「ハードバップ」には聴こえない。モードをベースに吹き上げるテナーは明らかに自由度は高いが、フレーズのそこかしこにオリエンタルなフレーズが織り込まれて、通常のジャズの音では無い、ワールド・ミュージックを融合した、唯一無二のユセフ・ラティーフ独特の音世界。
 

The_centaur_the_phoenix  

 
そんなラティーフ独特の音世界を支える、バックのユニークなジャズメン。まず、ピアノに後のウェザー・リポートの双頭リーダーの一人、ジョー・ザヴィヌル。もともとザヴィヌルはワールド・ミュージック志向なところがある。この盤でも結構エキゾチックなフレーズをさりげなく弾いている。ジョシア・テイラーのバズーンとテイト・ハウストンのバリトン・サックスが思いっきり効いている。エキゾチックな低音を振り撒いて、怪しげな雰囲気を醸し出す。

逆にトランペット2本+トロンボーンの金管楽器隊は、正統なハードバップ風の輝かしい音で、エキゾチックに傾く音世界から、正統な純ジャズっぽい音世界に連れ戻す。良い音するトランペットやなあ、と名前を見れば、リチャード・ウィリアムスとクラーク・テリー。味のあるトロンボーンやなあ、と名前を見れば、カーティス・フラーではないか。ハードバップど真ん中な金管楽器隊がラティーフと共演している。不思議と言えば不思議。

エキゾチックでスピリチュアルな演奏とクラシックの様に端正でヨーロピアンな演奏とごちゃ混ぜになっている中に、オリエンタルなフレーズが見え隠れする。そこが実にユニークで、一度ハマったら、結構、病みつきになる。ハードバップでは無い、エキゾチックな雰囲気が見え隠れするモードな「ニュー・ジャズ」の走り。1960年、ジャズが大衆化する中、アンチテーゼの様なアルバム。アーティスティックである。

 
 

東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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