ジャズ喫茶で流したい・135
21世紀も既に20年が経とうとしている。21世紀に入ってもジャズは深化している。そして、最近ではスピリチュアル・ジャズが気になっている。昔はフリー・ジャズとスピリチュアル・ジャズはイコールだと思っていた。しかし、今は違う。最低限の決め事の中で、感情とテクニックの赴くままに吹きまくるのがフリー・ジャズ。フレーズに印象的なものは「まず無い」。
スピリチュアル・ジャズはしっかりとした決め事に則って、限りなく自由度の高い演奏の中で、フレーズが印象的で官能的。しっかりとした決め事のメインは「モード」、ところどころでアブストラクトに陥るが、決してフリー・ジャズに帰結することは無い。穏やかでモーダルな「印象的フレーズ」で聴く者に訴求する。
そんな中、なかなか素敵な「現代のスピリチュアル・ジャズ」の好盤に出会った。Mats Gustafsson & Otomo Yoshihide's New Jazz Quintet 『ONJQ Live In Lisbon』(写真左)。大友良英ニュー・ジャズ・クインテット(以降ONJQ)のライブ盤。2004年リスボンで行われた、現時点でONJQの最後になるライブ演奏を捉えたもの。ちなみに「Lisbon」は国内の喫茶店の名前。ポルトガルの首都では無い(笑)。
ちなみにパーソネルは、大友良英 (g), マツ・グスタフソン (ts, bs), 津上研太 (ts, ss), 水谷浩章 (b), 芳垣安洋 (ds, tp)。基本はモード。限りなく自由度の高いモーダルなアドリブ・フレーズが美しい。そこにアブストラクトな展開が入ってくるが、決して、そのままフリーに走ることは無い。再び、自由度の高いモーダルな演奏に立ち戻り、そのフレーズは印象的であり官能的である。
つまりは「耳に馴染む」のだ。自由度が高いのでフリーの様に聴くに疲れるフレーズがやってくるのか、と構えていると、モーダルだが耳に馴染む、どこか感傷的な、どこかエモーショナルなアドリブ・フレーズが流麗に流れ込む。リズム・セクションも力任せに自由に叩きまくることは無く、調性豊かにワイルドでありながら、ほど良くラフに整えられたリズム&ビートを効果的に供給する。
そして、大友良英のギターとグスタフソンのサックスがスピリチュアルな雰囲気を増幅する。これだけ自由度の高い演奏でありながら、耳に馴染み、心に印象的に響く。現代のスピリチュアル・ジャズの演奏の良好な先駆的演奏がここにある。2004年にもう既に新しいタイプのスピチュアル・ジャズが展開されていたとは。目から鱗、いや、耳から鱗とはこのことである(笑)。
東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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