円熟の「ジャムバンド仕様」盤
今日は最近リリースされた新盤から。現代のメンストリーム・ジャズのエレギについては、メセニー、スコフィールド、フリゼールの3人がお気に入り。21世紀に入っても、まだまだ若手のエレギ使いが出てきているが、当然、まだ先の3人の域には達していない。よくよく振り返れば、メセニー、スコフィールドは1970年代後半から、フリゼールは1990年代半ばから聴いている。思えば長い付き合いである。
John Scofield『Combo 66』(写真左)。先月の末、その「エレギ3人衆」の中の一人、ジョン・スコフィールド(John Scofield・愛称「ジョンスコ」)が新盤をリリースした。2018年4月9日の録音。ちなみにパーソネルは、John Scofield (g), Gerald Clayton (p), Vicente Archer (b), Bill Stewart (ds)。スコフィールドをフロントに据えたカルテット構成。ジャケットも渋い。
2016年の『Past Present』、2017年の『Country For Old Men』で2年連続ベスト・ジャズ・アルバムをグラミー賞で獲得していて、現在、ジョンスコは絶好調である。デビュー当時から、メンストリーム・ジャズ、ジャズ・ファンク、ジャムバンド、この3つの演奏トレンドを行ったり来たりして、数々の好盤を送り出してきた。今回の新盤は「ジャムバンド」が音の傾向。
ジョンスコのエレギは個性が強い。太くて丸いが音のエッジは立っていて、繰り出すフレーズは全て「捻れて」いる。この「捻れが一番の「個性」。あまりに個性が強いので、普通にアルバムを作ったのでは、聴く側は2〜3作で「飽きる」。そこで考えたのが、メンストリーム・ジャズ、ジャズ・ファンク、ジャムバンド、この3つの演奏トレンドを行ったり来たりしながら、企画盤を出したり、セッション盤を出したりして、その「飽き」を避ける工夫。
今回は「ジャムバンド」。全曲ジョンスコのオリジナル曲で占められているが、どれも「ジャムバンド」の演奏対象としては良い曲ばかりで、聴いていて、結構、爽やかな気分になれる。カルテットとしての演奏のレベルが高く、かつ流麗。バックのリズム・セクションも内容充実。ジョンスコの「捻れ」エレギの個性が浮かび上がる様な、硬軟自在、変幻自在なリズム・セクションは聴き応えが十分。
ジョンスコは1951年生まれなので、今年で67歳。もう大ベテラン、レジェンドの域に達しつつある。しかし、奏でる音はまだまだ「一線級」。捻れのフレーズに磨きがかかり、聴き心地がとても良い。演奏トレンドを変えながら、自らもマンネリを避け、聴き手の「飽き」を避ける。そうしながら、ジョンスコは好盤をリリースし続ける。円熟の境地である。
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