全くの自然体のハードバップ
ジャズの定番スタイルといえば、やはり「ハードバップ」だろう。1950年代後半がピーク。ビ・バップの自由さとリズム&ブルースが持つ大衆性の両方が共存した、いわゆる「俗っぽさ」と「芸術性」のブレンド。演奏のテクニックとしては「特にソロのアドリブ演奏面で、ホットでハードドライビングしながらも、メロディアスに洗練されたスタイル」である(Wikipediaより)。
ジャズが一番ジャズらしい演奏スタイルが「ハードバップ」。その後、モード、フリーと進化したが、進化の代償としてキャッチーさ、大衆性が失われたが故に1960年代後半以降、ハードバップは一旦衰退する。しかし、1980年代半ば、当時大流行の後、衰退を始めたフュージョン・ジャズと取って代わるように復活した。いまでは「ネオ・ハードバップ」として、一定のトレンドを維持している。
Joris Teepe『Bottom Line』(写真左)。1995年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Don Braden (ts), Tom Harrell (tp), Darrell Grant (p), Joris Teepe (b), Carl Allan (ds)。リーダーは「Joris Teepe」=ヨリス・テーぺ、と読む。オランダ出身の敏腕ベーシスト。ドン・ブラッデンのテナーとトム・ハレルとのトランペットの2管フロントのクインテット構成。
ベーシストがリーダーのジャズ盤になる。ベースという楽器の性格上、ジャズ演奏において、フロント楽器を担うことは無い。音のバリエーションが狭いので、旋律弾きを担当することはあるが、相当なテクニックの持ち主に限る。リーダーとして、グループサウンズにケアしつつ、自分のやりたいジャズの演奏トレンドを追求する。
この盤での演奏トレンドは「ネオ・ハードバップ」。コードをベースに展開する、伝統的なハードバップと、モード奏法をベースとしたモード・ジャズ。この2つのハードバップなジャズを混ぜ合わせた様な音世界。グループ・サウンドは端正かつ躍動的。メリハリがきっちり着いて、アドリブの展開は爽快。これが現代のハードバップ、そう「ネオ・ハードバップ」である。
1995年でこの演奏である。全くの自然体のハードバップ。素晴らしい。全く「作られた」感じが無い、自然体のハードバップ。この盤を聴くと、ハードバップって作られるものでは無く、生み出されるものなんだなあ、って思う。理屈で作るものでもなければ、頼まれて作るものでも無い。つまりは「ジャズ」ってそういうものなんだろう。この盤を聴いていて、つくづく思う。
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