纐纈歩美のボサノバ・ジャズ
日本のジャズ・シーンについて、若手ミュージシャンについては「女高男低」。女性のジャズ・ミュージシャンは優れものがどんどん出てきたが、男性はさっぱりである。何故かなあ。もともと男尊女卑的な感覚は持ち合わせてはいないので、それでも良いかなあ、と最近は思う。何故ならこの10年にデビューした女性ジャズ・ミュージシャンの中で、今でもコンスタントにアルバムをリリースしている「現役」は、皆、優れた中堅として活躍している。
纐纈歩美『O PATO』(写真左)。2018年10月17日のリリース。女性ボサノバ・ミュージシャンの草分け、小野リサがプロデュースを担当している。ちなみにパーソネルは、纐纈 歩美(as), フェビアン・レザ・パネ (p), 馬場 孝喜(g), 佐藤 慎一(b), 藤井 摂(ds), 小野リサ(produce,arrange,g)。パーソネルやアルバム・ジャケットを見れば「これはボサノバ・ジャズの企画盤やな」と想像がつく。いかにもボサノバって感じのジャケットが良い。
纐纈歩美(こうけつあゆみ)は1988年生まれ。今年で30歳。ジャズ界ではやっと中堅の仲間入りを果たしたところか。纐纈(こうけつ)は女性でありながら、チャラチャラしたところが無い。堅実質素、シュッとした出で立ちで、硬派なアルト・サックスを吹くのだ。纐纈のアルトは「正統であり本格派」なもの。そのアルトの音が纐纈のものであると知らされなければ、日本男性の優れたアルト奏者の音だと感じると思う。
それほどまでに「正統で本格的」なアルトを吹く。が、ボサノバ・ジャズを吹くには、この「正統で本格的な」アルトが必須なのだ。ボサノバ・ジャズの旋律は鼻歌を唄うように吹く。といって、適当に緩やかに吹けば良いというものでは無い。旋律をしっかりと表現するには、緩やかに力強くアルトを吹く必要がある。これには結構なテクニックを要するのだ。特に呼吸。纐纈は男性ばりの呼吸でアルトを吹く。音の濃淡や強弱がしっかり出る。
この纐纈のアルトがボサノバ・ジャズに最適。この最新作のボサノバ・ジャズ集については、どの曲についても、纐纈のアルトの素性の良さ、テクニックの確かさが実感出来る。うっかり聴いていると、ナベサダさんのボサノバ・ジャズ集かしら、と間違えてしまうほど。ほんと、纐纈はジャズとして、素性の良い、確かなアルト・サックスを吹く。聴いていても心地良く、清々しさを感じるほどだ。
演奏全体の雰囲気は「しっかりとボサノバしている」。それもそのはず、プロデュースとアレンジを小野リサが担当している訳で、この小野リサの起用が全面的に成功している。誰にでも出来そうで、誰にでも出来ないボサノバ・ジャズ。特に金管楽器の奏者にとっては、自らの素性とテクニックを試される、実は厄介な音楽ジャンル。そんなボサノバ・ジャズを相手に纐纈のアルト・サックスは十分に適応している。
東日本大震災から7年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
« 再掲『ジム・ホールの想い出 』 | トップページ | ジャズ喫茶で流したい・132 »
コメント