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2018年10月26日 (金曜日)

PMGのピークを捉えたライヴ盤 『Travels』

パット・メセニーは従来のジャズの臭いがしない、新しいタイプのジャズ・ギタリストだった。まず、ファンクネスが皆無。そして、オフビートが軽い。1970年代のフュージョン・ジャズのギターであれば、ジャズ・ファンク風に弾きまくるのだが、パットは違う。パットのギターは軽やかで爽快。当時、明らかに「ニュー・ジャズ」な音世界は賛否両論の議論を生んだ。

今でも「パット・メセニーが嫌い」というジャズ者の方々も結構いる。「あれはジャズじゃない」とバッサリ。別にジャズか否かを決めつける必要な無いと思うんだが、確かに従来のジャズの音世界では無いのは事実。しかし、即興演奏をメインとする演奏の展開は、やはりジャズだろう。ファンクネスが皆無なジャズは欧州に多く存在し、オフビートが軽いジャズについては、例えば日本のジャズがそうである。

Pat Metheny Group『Travels』(写真)。1983年のリリース。改めてパーソネルは、Pat Metheny (g), Lyle Mays (key), Steve Rodby (b), Danny Gottlieb (ds)。Nana Vasconcelos (perc)。1982年7月から11月にかけてのツアーから、フィラデルフィア、ダラス、サクラメント、ハートフォードでのライブ音源が収められている。
 

Travels1_2

 
素晴らしい内容のライブ盤である。音も良い。演奏も良い。PMGのピークを捉えた名ライブ盤である。PMGの音世界は2つの側面がある。1つは米国の田舎の風景、広がりのある高い空、小麦畑、牧場、遠くに連なる山々を想起させるもの。僕はこれを勝手に「ネイチャー・ジャズ」と呼んでいる。そして、PMGの音世界のもう一つの側面は、アダルト・オリエンテッドで小粋なフュージョン・ジャズ。

PMGの2つの音世界が程良くブレンドされて、タイトで躍動感溢れる演奏と相まって、素晴らしい音世界が展開されている。パットのアドリブ展開もイマージネーション溢れる素晴らしいもの。この即興性は明らかにジャズである。ファンクネス皆無、軽やかなオフビート。従来のジャズの音世界では無いが、明らかに新しい響きのする「ニュー・ジャズ」である。

ちなみにこのライブ盤が日本で初めてリリースされた時の帯紙のキャッチコピーが「いつかどこかで、君が感じたあの想い、あの香り」。なんじゃこりゃ〜。こういうことをしているから、パット・メセニーはジャズじゃない、と言われるんだ。当時のトリオレコードの責任は大きいよな〜。

 
 

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Never_giveup_4

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コメント

今更この記事になんて感じかもですが、還暦過ぎたこの年齢、音楽漬けの人生ここまでしてきてこれまではパットメセニーにはあまりはまりませんでした。周囲には若い頃から熱狂的な彼のファンがいたり、当時の私のように少し距離を置いていた人間も同等いたように記憶してます。でも、70年代のフュージョンブームのなかでサンロレンツォのアルバムはなんか繰り返し聴いてました。その後もなんとなく気になれば多少他のアルバムも。ただはまってはいない。でも、ギタリストとしての評価は凄い。好きになる良さを探す必要もあるなんて義務感めいたところに自分を勝手に追い込んでいたときもあるかもしれません。それがここ最近突然自然に彼のサウンドが頭に残る。なんだか気持ちいい。となってPMGのみならずパットが参加のアルバムをむさぼり始めました。立て続けでも全く嫌にならないほど彼のサウンド身体に宿りました。この歳になってこんなこともあるんかと思いながら。実は色々なことを綿密にそして即座に表現していることに気づかされました。やはり熟練の塊、凡人は追い付けない天才なのだなと。今後は彼の作品の多くがライブラリーの先頭に君臨しそうです。このPMGの初期の集大成ライブも。失礼しました。

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