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2018年9月11日 (火曜日)

Standard Timeシリーズって...

ウィントン・マルサリスの「Standard Time」シリーズって何だったんだろうなあ、と思わず、この盤を聴いて思った。Wynton Marsalis『Standard Time, Vol.6 : Mr. Jelly Lord』(写真左)。1999年のリリース。そうそう、『Standard Time, Vol.5:The Midnight Blues』(2014年4月28日のブログ参照)はウィズ・ストリングス盤であった。ウィントンのトランペットがとても素敵に鳴っている盤であるが、何故ウィズ・ストリングスなのか、その必然性が良く判らなかった。

この『Standard Time, Vol. 6: Mr. Jelly Lord』は、ジェリー・ロール・モートンの音楽を再現したもの。ジェリー・ロール・モートンはピアニスト。「ジャズの創始者は自分である」と発言し、当時のジャズ批評家の反感をかった人。ジャズ黎明期の代表的ジャズメンで、ニューオーリンズ・ジャズ、1920年代のジャズの古典を代表するピアニストであった。

そんなモートンのニューオリンズ・ジャズを、ウィントンが1999年に、ニューオリンズでおなじみのミュージシャンを多数集めて再現した盤がこの『Standard Time, Vol.6 : Mr. Jelly Lord』。ウィントンのトランペット中心にニューオリンズ・ジャズが展開されるのだが、とにかく上手い。80年のジャズ演奏の進歩が凄く良く判る。1920年代のレトロな音の雰囲気も器用に醸し出している。
 

Standard_time_vol6

 
しかしなあ。現代において、ニューオリンズ・ジャズを現代の一流ジャズメンを集めて再現する必要があるんだろうか。1920年代のニューオリンズ・ジャズについては録音は残っているし、ジェリー・ロール・モートン自身の演奏の録音も残っている。そんな環境下で、ニューオリンズ・ジャズを再現し、アルバムにし、リリースする意義というのが、僕にはどうも判らない。

ウィントンの「Standard Time」シリーズを振り返ってみると、Vol.1は「ハードバップ」、Vol.2は「スイング〜中間派」、Vol.3はバラード&歌もの、Vol.4はモンク集、Vol.5はウィズ・ストリングス、そして、Vol.6はニューオリンズ・ジャズ。これって、ウィントンにとっての「良きジャズ」「正統なジャズ」というものを再現しただけのものではなかったか。つまり、リスナーの我々はウィントンの趣味性にアルバム6枚お付き合いした訳。

ジャズ者の我々は自分なりの「良きジャズ」「正統なジャズ」のイメージを持っていて、ウィントンにこれは絶対良いのだ、と迫られ ても、諸手を挙げて合意する訳にはいかない。ということで、このウィントンの「Standard Time」シリーズって何だったんだろう、とふと思うのだ。それが故、実はこのウィントンの「Standard Time」シリーズって、内容はとても良いのに、なかなか聴き直す機会が少ないのだ。

 
 

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