なんだか扱いが難しいモンク集
ウィントン・マルサリスの「Standard Time」シリーズは全6作。ウィントンの考える「スタンダード曲の演奏」がズラリと並ぶ。スタイルは、オールド・スタイルからネオ・ハードバップ。いわゆるデキシーランド・ジャズからハードバップまで。どうも、ウィントンのジャズの範疇は、この「デキシーランド・ジャズからハードバップまで」らしい。
しかも、このスタンダード曲集はどれもが「作り込んだ感」が満載。過去のハードバップを研究し、自分にとって良い響きのハードバップの良いところを寄せ集め、考え抜いたアレンジに乗せる。感性に任せた即興演奏の産物ではない。「頭を使ったジャズ」である。演奏自体もハイテクニックな非の打ち所のないもの。クールを通り越して人工的ですらある。
Wynton Marsalis『Standard Time, Vol. 4: Marsalis Plays Monk』(写真左)。1999年のリリース。ちなみにパーソネルは、Wynton Marsalis (tp), Wessell Anderson (as), Wycliffe Gordon (tb), Eric Reed (p), Ben Wolfe, Reginald Veal (b), Herlin Riley (ds), Walter Blanding, Victor Goines (ts)。う〜ん、ほとんど知らないジャズメンばかり。辛うじて、ピアノのエリック・リードはお気に入りのピアニストの一人。
このスタンダード・タイムの4作目はタイトル通り「セロニアス・モンク集」。セロニアス・モンクのオリジナル曲が13曲。圧巻である。このセロニアス・モンク集でも「頭を使ったジャズ」は全開。過去のセロニアス・モンクの演奏をよく聴き込み、セロニアス・モンクの曲をよく研究している。セロニアス・モンクの曲の良いところを集めて凝縮し、新しい響きのセロニアス・モンクを「再構築」している。即興演奏の香りはあまりしない。
頭で考え、頭で演奏した「セロニアス・モンク」。モンク独特の響き、音の飛び方がいかにも「人工的」。知力を尽くして、今までのセロニアス・モンクの演奏の中で、ウィントンが好きな音を、ウィントン好みのアレンジと高テクニックで再現している。理路整然としたセロニアス・モンク。しっかりとアレンジされているので、モンク本人の様な「サプライズ」は全く無い。
ここまで、理路整然とされると、セロニアス・モンク集と言われても、どこがセロニアス・モンクなんだろう、と思ってしまう。確かによく考え、よく作り込んだなあ、と感心する。内容はなかなかのもの。でも、モンクの曲と演奏を理路整然と再構築するには無理があると思うなあ。よって、聴いてみると、上手いんだが、なんだかつまらない雰囲気が漂う。モンクの曲を理路整然と演奏してもなあ。でも、中の演奏は高度で内容の濃いもの。なんだか扱いが難しいアルバムです。
東日本大震災から7年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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