デンマークでの邂逅セッション
ホレス・パーランのピアノを聴き直している。パーランのピアノの個性は判り難い。といって「テクニック豊かで端正」という総合力で勝負するピアノでは無い。明らかに右手と左手に個性が宿っていて、パーランは明快な個性で勝負するピアノ。では、パーランのピノの個性とは、と問われると、ちょっと自信が無い。だから、パーランのリーダー作を聴き直している。
パーランの個性は「少年時代にポリオを患い、そのために部分的に右手が変形した。障碍の代償として独自の演奏技巧を発展させ、左手のとりわけ「刺戟的な」コード進行を、一方の、右手の著しくリズミカルなフレーズと対置している」(Wikipediaより)と書かれることがほとんど。しかし、左手と右手の個性がはっきりと聴き取れるほど、特徴的では無いのだ。
Horace Parlan『Arrival』(写真左)。1973年12月21&22日、デンマークはコペンハーゲンの「Rosenberg Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Horace Parlan (p), Idrees Sulieman (tp), Bent Jædig (ts), Hugo Rasmussen (b), Ed Thigpen (ds)。テナー&トランペット2管フロントのクインテット構成。
パーランは新天地を求めて、1973年にアメリカ合衆国を去ってデンマークに渡り、それからは首都コペンハーゲンに定住している。この『Arrival』はデンマークに渡った頃に、Steeplechaseレーベルに録音したものだと思われる。
この盤でのパーランは安定した、堅実なピアノを聴かせてくれる。変形したと言われる右手の転がる様に流麗なフレーズと左手のブロックコードがパーランのスタイルなんだが、右手の転がる様なフレーズのストロークが短く、この短いストロークを連続させることで流麗なイメージを創り出している。左手のブロックコードは、右手の流麗なフレーズに向けたアクセントとして響く。
右手が変形しているなんて、まったく感じない。右手が変形しているが故の「弾き回しの個性」を聴きとろうとすると失敗する。右手のハンディは意識せずに、純粋にピアニストとしての個性を愛でる、という姿勢で十分である。加えて、この盤、他の共演ジャズメンがユニーク。
トランペットのイドリース・スリーマンは米国出身。ビ・バップ期からハードバップ期に活躍したが、1964年にコペンハーゲンに移り住んでいる。ドラムのエド・シグペンも米国出身だが、1974年にコペンハーゲンに移住している。サックスのベント・イェーデックとベースのヒューゴ・ラスムーセンは共にデンマーク出身。いわゆる「現地のジャズメン」である。
米国からの移住ジャズメン3人と現地のジャズメン2名がガッチリ組んだ、魅力的な演奏がてんこ盛りのハードバップ盤。米国出身のパーラン+シグペンと現地出身のヒューゴのリズム・セクションについては、ファンクネスが希薄でヨーロピアンな響きがメインなのが面白い。パーランの個性を愛で、デンマークでの邂逅セッションを愛でる。好盤である。
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