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2018年9月の記事

2018年9月30日 (日曜日)

ボブの純ジャズ・トリオ盤です

ボブ・ジェームスと言えば、フュージョン・ジャズの大御所。1960年代後半、元々は前衛が入ったフリー・スタイルなジャズ・ピアニストであったが、1970年代に入って、ほどなくクロスオーバー・ジャズに転身。特にアレンジの才が開花し、クロスオーバー・ジャズのアレンジャー兼キーボード奏者として頭角を現す。1970年代後半には、押しも押されぬフュージョン・ジャズの第一人者となった。

ボブ・ジェームスはその後、1980年代から今に至るまで、フュージョン・ジャズの第一人者として活躍してきた。が、21世紀に入った辺りから、純ジャズに取り組み始めている。恐らく、原点回帰であろう。ボブ・ジェームスも今年で79歳。音楽人生の総決算として、純ジャズに取り組んでいるのだ、と想像している。

Bob James『Espresso』(写真左)。今年8月末のリリース。 ちなみにパーソネルは、Bob James (ac-p, el-p), Billy Kilson (ds), Michael Palazzolo (b)。バリバリ硬派なピアノ・トリオである。ボブ・ジェームスとしては、アコースティック・ピアノ(略して「アコピ」)がメインの純ジャズ系のピアノ・トリオとしては実績に乏しい。それでも1996年の『Straight Up』は素敵なピアノ・トリオ盤であった。
 

Espresso_bob_james

 
ボブ・ジェームスのアコピは「総合力」で勝負するタイプ。一聴しただけでは誰のアコピか判らない。アコピの響きが美しい、流麗で耽美的、それでいてタッチはしっかりしている、いわゆる「エバンス派」のアコピである。テクニックもあり、フレーズは端正。唯一、ボブ・ジェームスの個性かなと感じるのは、フュージョン盤でのアコピのソロに通じる、間を活かしたミッドテンポのフレーズとアコピの豊かな響き。

途中、エレクトリック・ピアノ(略して「エレピ」)を活かした、ハイブリッドなトリオ演奏があるのだが、エレピのトリオ演奏に先導されたアコピのソロは明らかに「ボブ・ジェームス」。さすがはフュージョン・ジャズの大御所。フュージョン系の伴奏をバックにすると、アコピの個性が露わになる。アコピだけだと強烈な個性は現れないんだが、エレピの伴奏をバックにすると、たちまち、アコピの個性が現れる。

アコピの純ジャズ・トリオ演奏としては及第点かな。アルバムに収録された楽曲それぞれのアレンジはやはり優秀で、アコピ演奏の「総合力」は高いものがある。お供のベースとドラムもその演奏力は高い。トータルでなかなか充実したトリオ演奏では無いでしょうか。もう少し、アルバム構成としてメリハリかテーマ性が欲しいです。そろそろ、純ジャズ路線の「渾身の一枚」を出して欲しいですね。それでも、この盤、好盤だと思います。

 
 

東日本大震災から7年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年9月29日 (土曜日)

フィニアスの初リーダー作である

若かりし頃、僕はこの人のピアノがちょっと苦手だった。弾き回すフレーズはどれもがハイテンション。パフォーマンス全てに緊張感が漂う。その緊張感がどこか普通のニュアンスと違う。ちょっと妖気漂う様な緊張感。触れば切れそうな、鋭利な刃物のように研ぎ澄まされた音のエッジ。聴いていて、そのテンションの高さゆえ、耳が疲れてくる。

彼のテクニックは素晴らしい。好調であれば、恐らくバド・パウエルに比肩する、もしくは部分的に凌駕するのでは無いか。しかし、この好調な時期は、バド・パウエルのそれより期間が短い。よって、彼の好調時を捉えたリーダー作が数少ないのも仕方が無い。その彼とは「Phineas Newborn Jr.(フィニアス・ニューボーン・ジュニア)」。ここではフィニアスと呼ぶ。

フィニアスは「ジャズシーンにおけるゴッホ」と形容されることがある。フィニアスとゴッホとは、生前認められないという焦燥感から精神に異常をきたしたということが悲しい類似点がある。その悲しい類似点が「妖気漂う緊張感」を醸し出し、異常なまでに研ぎ澄まされた緊張感を引き出したと言える。そんな背景を全く知らないまま、僕はフィニアスのピアノに出会った。
 

Here_is_phineas  

 
Phineas Newborn Jr.『Here Is Phineas』(写真左)。1956年5月の録音。ちなみにパーソネルは、    Phineas Newborn Jr. (p), Calvin Newborn (g), Oscar Pettiford (b), Kenny Clarke (ds)。フィニアスのソロとトリオ演奏とギター入りのカルテットの演奏で構成されるフィニアスの初リーダー作である。

聴けば判るが、この盤の「鑑賞ポイント」は、フィニアスのピアノの個性を愛でる、その一点に尽きる。トリオ&カルテットの演奏もあるが、バックの演奏は完全に「付け足し」である。極端に言えば「無くても良い」。それほどフィニアスのピアノは凄い。基本は「ビ・バップ」。バド・パウエルを彷彿とさせるが、この盤でのフィニアスはパウエルのピアノよりも整っていて、流麗である。いわゆる「無敵のバップ・ピアノ」。

この初リーダー作を聴く限り、フィニアスのピアノは「素晴らしい」の一言。妖気漂う緊張感と研ぎ澄まされた音のエッジはもうこの初リーダー作に聴くことは出来るが、「狂気」という禁断の領域には踏み込んでいない。天才バップ・ピアニストの姿が正確に記録されている。「メジャーになりきれなかった天才」の初々しいパフォーマンスに思わず耳を傾ける。フィニアスの個性が溢れている好盤です。

 
 

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2018年9月28日 (金曜日)

ウォルドロンのソロ・ピアノ

ジャズにおいて、ソロ・ピアノはそれを弾くピアニストの個性が凄く良く判る。もともと、ジャズの楽器演奏というのは個性の塊である。同じ楽器で他のミュージシャンと同じ音、同じスタイルというのは、まず無い。エバンス派とかパウエル派とか、祖となるピアニストのスタイルを踏襲していても、どこかで他と違う個性を追求していたりする。

ソロ・ピアノは、個性の強いピアニストほど面白くなる。個性が強くなればなるほど、その個性がビンビンに伝わってくるのだ。テクニック、端正さ、流麗さなど総合力で勝負するピアニストのソロ・ピアノは基本的にあまり面白く無い。総合力で勝負するピアニストのソロ・ピアノは、皆、同じに聴こえるのだ。そういう意味で、コッテコテ個性の強いピアニストのソロ・ピアノが絶対に面白い。

Mal Waldron『All Alone』(写真左)。「黒い情念」と形容される個性派ピアニスト、マル・ウォルドロンのソロ・ピアノ盤である。1966年3月1日、イタリアはミラノでのソロ・パフォーマンスの記録。「1968年度 スイングジャーナル ジャズ・ディスク大賞 銀賞」を受賞した好盤である。ピアノを弾くマルの写真をあしらったジャケットも渋い。
 

All_alone  

 
この盤、マルの個性が満載である。低音を活かした左手。重心が低く、しっかりとしたタッチでピアノの重低音部をガーン、ゴーンと響かせる。この重低音が推進エンジンとなって、強くて深いタッチの右手がメロディを奏でる。強くて深いタッチでありながら、よく回る右手。ピアノ・ソロ全体に重心が低く、音の粒立ちが太くて切れている。

右手のフレーズは「哀愁が色濃く漂うエレジーな音感」。そこはかとなく哀しさが漂い、それでいて強くて深いタッチが、弾き進めるメロディを明確にする。輪郭クッキリな右手のフレーズ。左手のブロックコードは重低音。ピアノの低いキーを積極的に活用する、他のピアニストには無い、思いっきり個性的な左手。右手のフレーズは哀愁感漂うコードを渡り歩く。

マイナーで不思議な響きを持つ、東ヨーロッパやイスラムを想起させる独特のキーで展開されるモーダルな曲もなかなか魅力的。ブルースに頼らない、マル独特の感性と音感をもって、このピアノ・ソロは展開される。哀愁感は強いがタッチが明快で、感情に流されることは無い。優雅さや滑らかさとは全く無縁。骨太で雄々しい、ダンディズム溢れるソロ・ピアノである。

 
 

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2018年9月27日 (木曜日)

ウェザー・リポートのフォロワー

昔からベーシストのリーダー作を聴くのが好きである。ベースのテクニックをメインにした盤は当たり前なんだが、ベースという楽器のポジションを活かした「グループ・サウンド」をプロデュースしコントロールした盤が良い感じだ。ベーシストの好みの音の傾向、音の個性をバンドメンバーに浸透させ、グループ・サウンドを創成する。これがなかなかに味わい深い。

今日聴いたベーシストのリーダー作が『ARC Trio』(写真左)。つい先月のリリース。ちなみにパーソネルは、Jimmy Haslip (b), Scott Kinsey (key), Gergö Borlai (ds)。ベーシスト、ジミー・ハスリップがリーダーのトリオ作。ジミー・ハスリップは、イエロージャケッツのオリジナルメンバーとしても知られる腕利きベーシストである。

ジミー・ハスリップは1951年生まれなので、今年で67歳。大ベテランの域である。しかし、この盤ではエレベを現代ジャズにおける最新の音で弾きまくる。音だけ聴くと30歳代の若手中堅バリバリのベーシストの弾く音かと思った。さすがベーシストがリーダーの盤、適度に捻れた、ベースの特徴あるフレーズが前面に出ていて、聴いていてとても楽しい。
 

Arc_trio_album

 
ハスリップのベースは、ジャコほどのバカテクでは無いが、相当に高度なテクニックを駆使しながら、コンテンポラリーで流麗なアドリブ・ラインを事も無げに弾き回している。このクールで熱いアドリブ・ラインが良い。キンゼイのキーボードが凄い。その表現力と音の厚みの出し方、流麗な弾き回し、素晴らしいの一言。そこに、現代の最新のポリリズムが聴いて楽しいボーライのドラム。

この盤を一言で表現すると「現代のウェザー・リポート」。ウェザー・リポートのジャコ期の音の個性がそこはかとなく漂う。しかも、これがトリオの演奏か、と驚く位に音の厚みがある。音の厚みがありながら、シンプルでクールに疾走する躍動感。このトリオにショーターばりのテナーが入れば、完璧にウェザーの音。このウェザーの音を彷彿とさせる展開が意外と「新しい」。

ウェザーのジャコ期が1970年代後半から1980年代初頭だから、あれからもう既に約40年経つ。この盤の音はウェザーをパクったのでは無く、正統なウェザー・リポートのフォロワーの音である。音の重ね方や音の捻り方などは現代のジャズの香りが充満していて、ウェザーのフォロワーな音とは言え、古さは全く感じ無い。現代のコンテンポラリーな純ジャズとしての秀作である。

 
 

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2018年9月26日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・129

ジャズにはいろいろな演奏スタイルがある。それぞれの時代で流行ったスタイル、ジャズの発展の中で変遷していったスタイル、様々なスタイルがある。そんなジャズの発祥は「ニューオリンズ」というのが定説。マーチングバンドとダンス音楽をベースにした「ディキシーランド・ジャズ」が最初の流行のスタイル。

ダーティー・ダズン・ブラス・バンド(Dirty Dozen Brass Band)というバンドがある。ニューオーリンズ・スタイルのブラスバンド。ブラスバンドをベースに、ファンクやソウルの要素を取り込んだ「現代のブラスバンド・ジャズ」である。1977年に結成、1984年にレコード・デビュー。今も元気に活動している。

The Dirty Dozen Brass Band『Live : Mardi Gras in Montreux』(写真左)。1985年モントルーでのライヴ録音盤。総勢6名のラッパ隊がバリバリに吹きまくり、バックのリズム隊が叩きまくり、うねりまくる。ニューオリンズのお祭りバンドの面目躍如。どの演奏も凄い。ド迫力のブラス、叩きまくるリズム、切れ味良く切れまくるギター。モダン・ジャズ、ファンク、ソウルをごった煮にして、ブラスバンド化した凄まじき音の洪水。
 

Live_mardi_gras_in_montreux  

 
ブラス・セクションが凄い。地響きの様に響き渡るスーザフォン。様々なホーン楽器の迫力のユニゾン&ハーモニー。このラッパ隊のド迫力。思わず腰が浮く。これは凄い。ソウルフルなユニゾン&ハーモニー。ブルブルブルとブラスの響きが耳にダイレクトに伝わるような、アグレッシブでダイナミックなホーンの響き。この生々しさが堪らない。これぞ「ホーン楽器」的な響きに惚れ惚れする。

リズム・セクションも凄い。バスドラ、スネアをドカドカ、ボコボコ叩きまくって、それはもうファンキーなリズムの洪水、ジャジーなリズムの饗宴。これだけファンキーなリズム&ビートをバックに従えたブラスバンドなんてない。こってこてファンキーな、切れ味抜群なダンス音楽。いや〜、これもジャズなんですね。

ニューオーリンズ・サウンドの代表格となっているブラスバンドって、古き良き時代の伝統音楽って印象しかなかったから、初めて聴いた時、ほんとビックリした。ファンク・ビートとソウル・ミュージックの積極導入の結果、ブラスバンド的な響きすらも新しい音として聴こえる、新しいブラスバンド・ジャズの誕生。好盤です。

 
 

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2018年9月25日 (火曜日)

デンマークでの邂逅セッション

ホレス・パーランのピアノを聴き直している。パーランのピアノの個性は判り難い。といって「テクニック豊かで端正」という総合力で勝負するピアノでは無い。明らかに右手と左手に個性が宿っていて、パーランは明快な個性で勝負するピアノ。では、パーランのピノの個性とは、と問われると、ちょっと自信が無い。だから、パーランのリーダー作を聴き直している。

パーランの個性は「少年時代にポリオを患い、そのために部分的に右手が変形した。障碍の代償として独自の演奏技巧を発展させ、左手のとりわけ「刺戟的な」コード進行を、一方の、右手の著しくリズミカルなフレーズと対置している」(Wikipediaより)と書かれることがほとんど。しかし、左手と右手の個性がはっきりと聴き取れるほど、特徴的では無いのだ。

Horace Parlan『Arrival』(写真左)。December 21 & 22, 1973年12月21&22日、デンマークはコペンハーゲンの「Rosenberg Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Horace Parlan (p), Idrees Sulieman (tp), Bent Jædig (ts), Hugo Rasmussen (b), Ed Thigpen (ds)。テナー&トランペット2管フロントのクインテット構成。

パーランは新天地を求めて、1973年にアメリカ合衆国を去ってデンマークに渡り、それからは首都コペンハーゲンに定住している。この『Arrival』はデンマークに渡った頃に、Steeplechaseレーベルに録音したものだと思われる。
 

Horace_parlan_arrival  

 
この盤でのパーランは安定した、堅実なピアノを聴かせてくれる。変形したと言われる右手の転がる様に流麗なフレーズと左手のブロックコードがパーランのスタイルなんだが、右手の転がる様なフレーズのストロークが短く、この短いストロークを連続させることで流麗なイメージを創り出している。左手のブロックコードは、右手の流麗なフレーズに向けたアクセントとして響く。

右手が変形しているなんて、まったく感じない。右手が変形しているが故の「弾き回しの個性」を聴きとろうとすると失敗する。右手のハンディは意識せずに、純粋にピアニストとしての個性を愛でる、という姿勢で十分である。加えて、この盤、他の共演ジャズメンがユニーク。

トランペットのイドリース・スリーマンは米国出身。ビ・バップ期からハードバップ期に活躍したが、1964年にコペンハーゲンに移り住んでいる。ドラムのエド・シグペンも米国出身だが、1974年にコペンハーゲンに移住している。サックスのベント・イェーデックとベースのヒューゴ・ラスムーセンは共にデンマーク出身。いわゆる「現地のジャズメン」である。 

米国からの移住ジャズメン3人と現地のジャズメン2名がガッチリ組んだ、魅力的な演奏がてんこ盛りのハードバップ盤。米国出身のパーラン+シグペンと現地出身のヒューゴのリズム・セクションについては、ファンクネスが希薄でヨーロピアンな響きがメインなのが面白い。パーランの個性を愛で、デンマークでの邂逅セッションを愛でる。好盤である。

 
 

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2018年9月24日 (月曜日)

「これは聴いてみよ」な盤・1

ジャズの歴史が100年という。その100年の中で、ジャズのアルバムって、ほんと凄い枚数がリリースされている。最近、ネットのダウンドード・サイトが充実してきて、様々なジャズのアルバムが聴くことが出来るようになった。そんなサイトをお目当てのジャズメンのアルバムを検索している途中で、これは聴いてみよ、とビビッとくるアルバムに出くわすことがある。

Roy Hargrove『With The Tenors Of Our Time』(写真左)。今回出会った「これは聴いてみよ」盤である。1994年のリリース。タイトルの通り、ネオ・ハードバップで優れた中堅トランペッター、ロイ・ハーグローヴが歴代のテナー・マンをゲストに迎えて演奏する企画盤である。メインのハーグローヴのカルテットのパーソネルは、Roy Hargrove (tp,flh),  Ron Blake (ss, ts), Cyrus Chestnut (p), Rodney Whitaker (b), Gregory Hutchinson (ds)。

客演したテナーマンは、以下の5人。Johnny Griffin, Joe Henderson, Branford Marsalis,  Joshua Redman, Stanley Turrentine。大ベテランから中堅まで、渋いマニア好みの大御所的なテナーマンが客演している。これは魅力的だ。実はこの盤、今まで聴いたことが無くて、ハーグローヴのトランペットが好きなのと、このテナーマンのラインナップに魅力を感じて、今回、初聴きした次第。
 

Roy_hargrove_with_the_tenors_of_our  

 
メインのハーグローヴの演奏自体が実に充実している。まず、ハーグローヴのトランペットが端正で艶やかで流麗でとても良い。我が国で人気がイマイチなのかが理解出来ないほど、この盤では充実したトランペットを聴かせてくれる。サイラス・チェスナットをピアノに据えたリズム・セクションも歌心があって堅実で端正。このハーグローヴのカルテット演奏だけでも、この盤、十分に聴ける。

そこに、魅力的なテナーマンが加わるのだ。悪かろう筈が無い。大御所達を前にブレイクも脇に回って、アンサンブル役に徹している。これが好客演のテナーがバンドサウンドとして溶け込む切っ掛けとなっていて、良いアクセントになっています。5人の大御所テナーマンはさすがで、それぞれ、しっかりとした個性が素晴らしい。聴いていて、これはグリフィンかな、これはヘンダーソンとはっきり判る位の個性はやっぱり凄い。

この5人とテナーマンの明確な個性が、この盤のそれぞれの演奏に彩りと特徴を与えていて、この盤の演奏はどれもがバリエーションに富んでいて、聴いていてとれても楽しい。今まで、この盤の存在を全く知らなかったのだが、これが本当に得した気分。良い盤に出会いました。ハーグローヴの素敵なトランペットと共に、聴き応えのある企画盤です。

 
 

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2018年9月21日 (金曜日)

こんなアルバムあったんや・103

ジャズは死んだ、なんて言われて、結構な年月が経った様な気がする。しかし、それどころか、21世紀に入ってジャズはまだまだ深化している。新人ジャズメンも順調に出てくる。新しいジャズの演奏トレンドも幾つか現れ出でた。新しいアルバムも毎月、結構な数がリリースされている。そんなにジャズって需要があるのかなあ、と心配になるが、ジャズはまだまだ元気である。

Sean Jones『Gemini』(写真左)。2005年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Sean Jones (tp), Kenny Davis (b), Corey Rawls, E.J. Strickland (ds), Tia Fuller (as, fl), Orrin Evans (key), Mulgrew Miller (p), Ron Blake, Walter Smith III (ts), Andre Hayward (tb)。有望な若手〜中堅ジャズメンがずらりである。

ショーン・ジョーンズは、1978年5月の生まれ。今年で40歳になる。このアルバムのトランペットのプレイを聴くと、ジャズの楽器の演奏テクニックについても、年々進化しているのが良く判る。昔、ウィントン・マルサリスが登場した時、彼のトランペット・プレイを聴いて「これは神の領域だ、もう彼以上のトランペッターは現れない」と言い切った人がいたが、このショーン・ジョーンズのプレイを聴くと、これってウィントン以上とちゃう? って思ってしまう。
 

Sean_jones_gemini  

 
テクニックは申し分無い。フレーズの流麗さも申し分無い。オープンもミュートもいける。歌心も十分、緩急、どちらもいける。トランペットの音の滑らかさという点ではウィントンを凌ぐと思う。客観的に見て、ショーンのトランペットはウィントンと同等、部分的にそれ以上のものだと感じている。ほんと、ええ音出してる。思わず聴き入ってしまう。

そして、ピアノはマルグリュー・ミラー。僕はこの人のピアノが大好きで、この盤ではミラーは絶好調。華々しさは無いが、堅実で粋な、素朴な中に煌めくフレーズが実に美しい。エレクトリック・キーボードを担当するオリン・エヴァンスも良い音を出している。前半がマルグリュー・ミラーをフューチャーしたアコースティック・サイド、後半がオリン・エヴァンスのキーボートを軸にしたエレクトリック・サイドになっていて、キーボード好きにはたまりません。

他のメンバーもテクニックは確か、アドリブ展開も優秀。収録された曲の出来も良いものばかりで、現代のジャズ曲って感じで聴き応えがあります。演奏の雰囲気は、一言「格好良い」。アコースティック・サイドとエレクトリック・サイドを通じて、サウンドに統一感があって、最後まで一気に聴き切ってしまいます。ショーン・ジョーンズの他のアルバムを聴いてみたくなりました。

 
 

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2018年9月19日 (水曜日)

カシオペアの「最高の演奏」盤

Casiopea(カシオペア)は、日本発のフュージョン・バンド。1979年11月、セカンド盤の『Super FlightL』で出会って以来、ずっとリアルタイムで聴き続けている。爽快感溢れる、高テクニックで流麗なフレーズ、タイトでシャープなリズム&ビート。疾走感溢れる、カッ飛ぶバンド・サウンド。今でも大好きなフュージョン・ジャズ・バンドである。

Casiopea『Mint Jams』(写真)。1982年5月のリリース。カシオペアの7枚目のアルバム。ちなみにパーソネルは、野呂一生 (g), 向谷実 (key), 櫻井哲夫 (b), 神保彰 (ds)。この盤はライブ盤である。が、聴けば判るが、観客のノイズ(拍手や掛け声)がほとんど無い。非常に人工的なライブ盤である。しかしながら、この作りで聴くカシオペア・サウンドがいかにも「カシオペアらしい」。

「ライブの迫力とスタジオ録音の緻密さが一緒になった盤」がコンセプトで、アルバム制作のマテリアルとして、築地会館における2日間の単独ライブ音源が使用され、入念なリミックスが施されている。スタジオで一部、トリートメント処理はなされているが、オーバー・ダビングは一切無いとのこと。そして、観客のノイズを「Domino Line」と「Swear」の一部を除きカット。
 

Mint_jams  

 
以上の様な経緯を経て、スタジオ録音の様な緻密さとライブ録音の様な演奏の迫力が両立した、素晴らしい内容のアルバムに仕上がっている。選曲もふるっていて、当時のベスト盤的な選曲で、特にライブ映えする楽曲がズラリと並んでいる。「Take Me」「Asayake」「Time Limit」「Domino Line」など、爽快感抜群。何から何まで「カシオペア・サウンド」である。

このライブ盤、音がとても良い。ライブ音源をベースにしているが、楽器の分離も良い。ギターの音は切れ味良く、キーボードの音は疾走感溢れ、ドラムの音はスピード感抜群。これだけ、楽器の音の分離が良い分、演奏全体のダイナミズムは半端ない。聴き始めたらあっと言う間の37分。収録された秀逸な楽曲と相まって、この盤、今でもお気に入りです。

アルバム・タイトルの『Mint Jams』、mint-condition (作りたての、真新しいの意) の「mint」と jam-session(ジャム・セッション)の「jam」を合わせた造語で「最高の演奏」を意味するとのこと。なるほど、この盤に詰まっている音を聴けば、その「最高の演奏」の意味するところが良く判る。カシオペアのベスト盤の位置づけとして、今でもお気に入り盤の一枚です。

 
 

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2018年9月18日 (火曜日)

唄う様なアルト・サックスを堪能

昨日から、Grover Washington, Jr.(グローバー・ワシントン・ジュニア、略して「ワシントン・ジュニア」)がブームである。昔から、彼独特のアルト・サックスのトーンと手数に走らない落ち着いたフレーズが好みで、もう一人のフュージョン・アルトの雄、デイヴィッド・サンボーンと併せて、僕にとっては「双璧の二人」である。

今日、聞いた「ワシントン・ジュニア」は、Grover Washington, Jr.『Strawberry Moon』(写真左)。1987年のリリース。B.B.キングがギターとボーカルで客演していたり、マーカス・ミラーが「Summer Nights」という曲をプロデュースしていたり、オルガンの雄、ジョーイ・デフランセスコがキーボードで参加していたり、今の目でパーソネルを見渡せば、意外に話題に事欠かないアルバムである。

1987年といえば、アルバムの録音環境は1970年代と大きく変わり、デジタル録音が主流となって、ほぼ定着した時期である。長年アナログ録音に慣れ親しんだジャズメンにとっては、このデジタル録音環境は難物で、音がペラペラになったり、音のエッジがケバケバになったり、中間音域が飛んで、とんでもないドンシャリになったりで大わらわ。しかし、この盤の音はデジタル臭がほとんどしない。良い録音である。
 

Strawberry_moon  

 
さて、この盤の音の傾向は一言で言うと「スムース・ジャズへの移行中」。アレンジは明らかにスムース・ジャズ基調なんだが、演奏はまだまだフュージョン風の音がメインで、フュージョン・ジャズをリアルタイムで聴いてきた僕にとっては違和感がほとんど無い。リズムも打ち込み風では無く、ちょっぴりアナルグ風の音がそこはかとなく伝わってきた、聴いていて「良い感じやなあ」と思わず呟いてしまうほど。

この頃のワシントン・ジュニアは『クワイエットストーム』+『ソウルジャズ』といった音作りで、この『ソウルジャズ』の雰囲気の部分が僕は好きだ。そんな『ソウルジャズ』な雰囲気を、テクニックに頼らず速い節回しも全くせず、手数に走らない落ち着いたフレーズでしっとりと吹き上げていく様はとても聴き応えがある。

タイトルが『Strawberry Moon』、もともとは「夕陽のよう赤みがかった満月、毎年6月の満月」のことですが、日本語に直訳すると「いちごの月」となんとなく甘ったるい感じがするんで、どうにも誤解されがちな盤ですが、内容的には、スムースな傾向が仄かに香るシッカリしたフュージョン・ジャズです。唄う様なアルト・サックスをご堪能あれ。

 
 

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2018年9月17日 (月曜日)

ワシントン・ジュニア晩年の好盤

やっと涼しくなった千葉県北西部地方。今日はちょっと暑くて、真夏日になったみたいだが、朝と夜は、これは涼しくなったなあ、と感じるくらい涼しくなった。気温的にはまだ夏の終わりくらいで、9月中旬の気温としては高いんだが、今年の夏の暑さは半端なかったので、最高気温が30度を下回ったら「涼しくなったなあ」と感じてしまう。今年の酷暑に洗脳されたなあ(笑)。

涼しくなってきたので、やっとストレス無く、ジャズが聴ける様になったのは喜ばしいことである。特に、ビートの効いたクロスオーバー&フュージョン・ジャズが抵抗なく聴ける様になった。ということで、このところ、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの隠れ好盤や有名レーベルのアルバムを聴き漁っている。

Grover Washington,Jr.『Soulful Strut』(写真左)。1996年のリリース。グローヴァー・ワシントン・ジュニアの晩年の好盤である。ワシントン・ジュニアは1999年に逝去してしまったので、この盤はその逝去3年前のリーダー盤になる。ワシントン・ジュニアは、フュージョン・ジャズのアルトの名手の一人。代表盤として『Winelight』がある。
 

Soulful_strut  

 
さて、この『Soulful Strut』という盤、1996年のリリースなので、一派一絡げに「スムース・ジャズ」の括りに含まれることが多いのだが、この盤、スムース・ジャズと言うが、テイストはフュージョン・ジャズ。リズム&ビートが確実にフュージョンしていて、決して「ムード優先」の音作りには走っていない。あくまで高テクニックを前提とした演奏がメイン、演奏の底にしっかりとジャズが潜んでいる。

ワシントン・ジュニアは「Just the Two of Us」(邦題:『クリスタルの恋人たち』)の大ヒットで、ムーディーなフュージョン・ジャズ、スムース・ジャズの先駆というイメージを植え付けられて損をしているが、彼のサックスは決してムーディー優先では無い。ジャジーでファンキーでアタックの効いた、結構、硬派なアルトを吹き鳴らしている。

そんな硬派なアルトが耳につかないのは、彼独特のアルト・サックスのトーンと手数に走らない落ち着いたフレーズが故。特に、テクニックはかなり高いものがあるのに、それに頼らず、印象的なフレーズを落ちついて吹き上げるところが実に心地良い。この盤はそんなワシントン・ジュニアのアルトを十分に堪能出来る。ジャケットも往年のフュージョン全盛期を想起させるイメージで、思わず頬が緩む。好盤です。

 
 

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2018年9月16日 (日曜日)

T-スクエア者として外せない盤

日本発のフュージョン・グループといえば、カシオペアとT-スクエア。この2つのバンドはリアルタイムでずっと聴き続けて来た。T-スクエアって、最初は「ザ・スクエア」って読んでいたんですよね。もともと、バンドメンバーが4人だから「ザ・スクエア」のノリで命名されたらしいのだが、1989年に「T-スクエア」に改名している。

それは米国でこのアルバムを発売するにあたって、米国では既に、同じ様な名前のバンド「SQUARES」があったため、米国で「T-SQUARE」と名乗り、そのバンド名をそのままに、日本でも活動するようになった。その年が1989年。そして、その改名のきっかけになったアルバムとは、T-SQUARE『TRUTH』(写真)である。日本では1987年4月のリリース。

この『TRUTH』というアルバム、T-スクエアといえば『TRUTH』と言われるくらい、T-スクエアを代表するアルバムである。T-スクエアのバンド・サウンドが成熟し、完成した時期の録音であり、そんなT-スクエアの良い部分がこのアルバムに充満している。当人たちが自らを「ポップ・インストゥメンタル・バンド」と呼んでいるが、まさにこの盤は「ポップ・インストゥメンタル・バンド」の面目躍如である。
 

Tsquare_truth

 
この盤のタイトル曲「TRUTH」、この曲のとても印象的なイントロを聴けば、一般の方々も「これは聴いたことがある」となるのではないか。そう、フジテレビ系の「F1グランプリ」のテーマ曲である。この曲は本当によく出来た曲で、T-スクエアのバンドの個性を凝縮したような名曲である。他の曲もその出来は大変良い。「TRUTH」ばかりがクローズアップされる盤ではあるが、他の曲も含めて、この盤の内容は濃い。

音作りの面でも大きな変化がある。それまでのデッドな録音が、リバーブ(残響)が深い録音に変わっている。いわゆる純日本風の録音から米国風の録音への変化。メリハリが思いっきり効いて、演奏自体の躍動感が飛躍的に向上したように感じる。デッドな録音が悪いと言っている訳では無い。この頃のT-スクエアのバンド・サウンドには、このリバーブ(残響)が深い録音の方がより適している、と感じるのだ。

この盤は、ザ・スクェアとしてリリースされたアルバムの12枚目。この盤で、T-スクエアのバンド・サウンドが成熟し完成した。そして、バンド名を「T-スクエア」と改名。T-スクエアにとって、この盤はバンドとして「記念碑」的な盤であり、マイルストーン的な盤である。ということで、T-スクエアを愛でる上で、T-スクエア者(T-スクエアのファン)として、この『TRUTH』は絶対に避けられない盤なのだ。
 
 
 

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2018年9月15日 (土曜日)

典型的なECMの音とジャケット

ECMレーベルのアルバムをカタログ番号順に聞き直していると、ECMって本当に音の傾向に統一感があって、暫く聴いていると「これって、ECMの音やね〜」すぐに判る。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。そんな、アイヒャー自らの監修・判断による強烈な「美意識」が、この「音」にも反映されている。

The Gary Burton Quintet with Eberhard Weber『Ring』(写真左)。1974年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Michael Goodrick (g), Pat Metheny (g), Steve Swallow (b-g), Eberhard Weber (b), Bob Moses (perc)。ジャケットに書かれている様に、バートンのカルテットにベースのウェーバーが客演した形。

しかし、このパーソネルを見渡すと、当時、ECMレーベルで活躍していたミュージシャン揃い。特に、ゲイリー・バートン(写真右)のヴァイブの音は透明度が高く切れ味が良く、クラシカルな響きを持つもので、ECMレーベルの音の傾向にピッタリとフィットする、典型的なECMの音である。この盤においても、このバートンのヴァイブの音がアルバム全体の音の傾向を決定付けている。
 

Ring  

 
ギターの音を聴いていると、このくすんだ、少し捻れた特徴のある音はパット・メセニーだと直ぐ判る。このパットのギターの音が不思議とバートンのヴァイブと抜群に相性が良いのだから面白い。まったく違和感の無い、まったく同化した様な相性の良い音の組合せ。明らかに米国ジャズの音とは異なる、欧州独特の音の響きが芳しい。

客演のウェーバーのベースの音が興味深い。粘りの無い、強靱で弾けるような、堅実で重心の低い音。欧州系のアコベの音って、とっても綺麗な音なんですよね。とにかくピッチがしっかりと合っている。ベースについては、特にこれは大切なことだと思っていて、ピッチの合っていないベースの音を長く聴いていると気持ちが悪くなる(笑)。ウェーバーの音は「良い」。

音と相まって、ECMレーベルらしいのが「ジャケット・デザイン」。この現代の印象画の様なイメージはECMレーベル初期のものに多い。このデザインは米国ジャズにはほとんど見られない。というか、ECMレーベル独特と言えるかな。
 
この『Ring』という盤、音そして、ジャケット・デザイン共々、ECMレーベル初期を代表する好盤と言えるでしょう。ECMの音ってどんなの? と問われたら、この盤をかける確率が高い好盤です。

 
 

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2018年9月14日 (金曜日)

「新主流派」な演奏がギッシリ

ジョーヘン(ジョー・ヘンダーソン/Joe Henderson)のブルーノート以降のリーダー作を聴き直している。聴き直すというのも、昔、一度は聴いているはずなんだが、当時、ジョーヘンについては苦手意識があって、あんまり気合いを入れずに聴き流していたようである。反省することしきり、である。そこで、今回は気合いを入れて聴いている。

Joe Henderson『Power to the People』(写真左)。1969年5月の録音。Milestoneレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Joe Henderson (ts), Mike Lawrence (tp), Herbie Hancock (ac-p, el-p), Ron Carter (b), Jack DeJohnette (ds)。このパーソネルを見れば、当時の最先端をいく新主流派の音が聴こえてくる。

そう、この盤は当時の最先端をいく「新主流派」な演奏がギッシリ詰まった好盤である。主役のジョー・ヘンダーソンは、ヘンにフニャフニャうねうねなテナーを封印し、圧倒的にモーダルでクールなテナーを吹き回している。決して熱くブロウすることは無い。あくまでクールに、あくまで冷静にモーダルで限りなくフリーなフレーズを吹き回していく。
 

Power_to_the_people  

 
ハービーも圧倒的に新主流派な響きのアコピ、エレピを弾き分けている。モーダルな展開に切れ味がある、と言う感じで、アドリブ・プレイは鬼気迫るものがある。当時のハービーのベスト・プレイの1つでではないか。しかし、良く聴くとこの頃のハービーって、アコピもエレピも同じ弾き方をしているみたい。それでも、フレーズは実に先進的で美しいので、アコピとエレピと同じ弾き方というのは「ご愛嬌」。

加えて、ドラムのデジョネットのポリリズミックなドラミングが凄い。このドラミングは当時最先端だろう。今の耳にも新しく響くリズム&ビートは凄い。思わず聞き耳を立てる。そして、この盤で一番感心したのがロンのベース。まず「ピッチが合っている」。そして、ベースの音が引き締まって、鋼の様に固くて「しなやか」。こんなに整ってダイナミックなロンのベースはなかなか聴くことが出来ない。

この盤は、ジョーヘンを愛でるというよりは、この盤にギッシリ詰まっている、当時最先端の新主流派な音の響きを心ゆくまで愛でる盤ことが出来る好盤。ジョーヘンのテナーもニャフニャうねうねすること無く、シンプルで判り易い、クールなテナーに仕上がっている。この盤にして、ジョーヘンのフレーズはもはや「コルトレーンの再来」とは形容されない。ジョーヘンはジョーヘン。この盤では、ジョーヘンの個性の最終形が記録されている。

 
 

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2018年9月13日 (木曜日)

改めて聴く『Tête à Tete』

このところ、テテ・モントリューを聴き直している。というか、もともとちゃんと聴き込んでいなかったらしく、テテのピアノを聴いて、最初は違和感だらけ。テテはスペイン出身なので、もう少しスパニッシュな響きがフレーズに反映されていると思っていたのだが、意外とあっさりしている。耽美的な弾き回しかと思っていたら、バリバリ、ダイナミックに弾きまくる。あれれ、どうもこれは勉強の仕直しですな。

Tete Montoliu『Tête à Tete』(写真左)。1976年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Tete Montoliu (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Albert Heath (ds)。
 
テテ・モントリューはスペインはカタロニア出身、ベースのペデルセンはデンマーク出身、ドラムのアルバート・ヒースは米国出身ながら、1974年にスウェーデンに移住している。ということで、このピアノ・トリオはヨーロピアンなピアノ・トリオである。

このテテのピアノ・トリオ盤はジャズを聴き始めた頃に入手している。でも、当時、まだヨーロピアンなピアノ・トリオ盤に慣れていなかったことと、ジャズ者初心者が故に、米国ジャズ偏重の傾向があったため、この盤はあまり聴き込まなかった。不明を恥じるばかりである。当時、スティープルチェイス盤ってなかなか手に入らなかったのに勿体ない話である。
 

Tete_a_tete  

 
いきなり冒頭の「What's New」の出だしのピアノのフレーズを聴くだけで、この盤は「いけてる」盤だと確信する。堅実で深いタッチ、爽快感溢れる弾き回し、よく回る指。しっかりとフレーズが響き、速い弾き回しも破綻が無い。これは良い。改めて、この『Tête à Tete』を聴いて、テテ・モントリューのピアノがとても魅力的に耳に響く。

ペデルセンのベースが凄く良い音。鋼の様な硬質な響きを振り撒きながら、ブンブンと唸るようにウォーキング・ベースを弾き進める。しかも、ピッチはバッチリ合っていて、リズム感もバッチリ合っていて揺らぎが無い。この魅力的な欧州的ベースを得て、テテは気持ちよさそうに弾き回す。
 
アルバート・ヒースのドラムも良い。ソリッドで粘らない、タイトで硬質なドラミングは明らかに欧州的。コーン、カーンと乾いた新のあるスネアの音が気持ち良く響く。多彩な技を繰り出してもリズム&ビートが破綻することは無い。

そう、テテのピアノ・トリオって、テテのピアノを始めとして、ペデルセンのベースもヒースのドラムも「良い音」してるんですよね。良い音に勝るジャズは無い。この『Tête à Tete』を改めて聴いて、感心することしきり。さあ、頑張ってテテのリーダー作を聴き直すぞ。 

 

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2018年9月12日 (水曜日)

カシオペアの高いポテンシャル

日本発のフュージョン・バンド、カシオペア(CASIOPEA)。カシオペアは、僕がジャズを聴き始めた頃、1979年にデビュー盤をリリース。それを聴いて一発で好きになって、リアルタイムでずっと聴き続けて来た。昨年辺りから、またまたカシオペアが聴きたくなって、順番にオリジナル盤を聴き直している。今は1980年代に入って1982年である。

CASIOPEA『4×4 FOUR BY FOUR』(写真)。1982年10月12日の録音。アルファ・レコード時代のカシオペア作品集の第2弾。カシオペアが、来日公演を行う直前だったリー・リトナーのグループと共演した、珍しい内容のアルバムである。カシオペアのメンバー4人とリトナー・グループのメンバー4人でのセッションだったので「4×4」というアルバム・タイトルになった。

ちなみにカシオペアのメンバーは、野呂一生 (g), 向谷実 (key), 櫻井哲夫 (b, per), 神保彰 (ds)、リトナー・グループのメンバーは、 Lee Ritenour (g), Don Grusin (key), Nathan East (b), Harvey Mason (ds)。いやはや、リトナー・グループのメンバーは凄腕揃い。セッションするに相手に不足は無い、どころか、相手が凄すぎるのではないか、という不安がよぎるくらいの凄腕揃い。
 

Casiopea_44  

 
冒頭の「Mid-Manhattan」は聴けば、思わず「おおっ」と思う。凄腕揃いのリトナー・グループを向こうに回して、カシオペアのメンバーは全くひけを取らない演奏を繰り広げている。1982年当時、僕はこのアルバムを聴いて、この日本発のフュージョン・バンドは政界的に十分に通用するレベルなんだ、と確信した。それにしても「Mid-Manhattan」って良い曲ですよね。

2曲目の「亡き王女のためのパヴァーヌ」(Pavane -Pour Une Infante Dẻfunte-)が素晴らしい。2つの優秀なフュージョン・バンドを一体となって融合した演奏は官能的でかつ、実に印象的。リトナーと野呂の泣きのギターの共演は今の耳で聴いても惚れ惚れする。そうそう、メイソンと神保のダブル・ドラムを素晴らしい。弾け飛ぶようなビートはまさに爽快。

このレコーディング・セッションは「リハーサル無し、僅か9時間で演奏を終了」と当時、雑誌で読んだかと思う。当時、リハーサル無しにはビックリした。リハーサル無しでこれだけのクオリティーの演奏を叩き出せるとは、カシオペアというバンドの高いポテンシャルを再認識したアルバムであった。もう迷うことは無い、カシオペアについては解散するまでついていこう、この盤を聴いて、そう思った。

 
 

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2018年9月11日 (火曜日)

Standard Timeシリーズって...

ウィントン・マルサリスの「Standard Time」シリーズって何だったんだろうなあ、と思わず、この盤を聴いて思った。Wynton Marsalis『Standard Time, Vol.6 : Mr. Jelly Lord』(写真左)。1999年のリリース。そうそう、『Standard Time, Vol.5:The Midnight Blues』(2014年4月28日のブログ参照)はウィズ・ストリングス盤であった。ウィントンのトランペットがとても素敵に鳴っている盤であるが、何故ウィズ・ストリングスなのか、その必然性が良く判らなかった。

この『Standard Time, Vol. 6: Mr. Jelly Lord』は、ジェリー・ロール・モートンの音楽を再現したもの。ジェリー・ロール・モートンはピアニスト。「ジャズの創始者は自分である」と発言し、当時のジャズ批評家の反感をかった人。ジャズ黎明期の代表的ジャズメンで、ニューオーリンズ・ジャズ、1920年代のジャズの古典を代表するピアニストであった。

そんなモートンのニューオリンズ・ジャズを、ウィントンが1999年に、ニューオリンズでおなじみのミュージシャンを多数集めて再現した盤がこの『Standard Time, Vol.6 : Mr. Jelly Lord』。ウィントンのトランペット中心にニューオリンズ・ジャズが展開されるのだが、とにかく上手い。80年のジャズ演奏の進歩が凄く良く判る。1920年代のレトロな音の雰囲気も器用に醸し出している。
 

Standard_time_vol6  

 
しかしなあ。現代において、ニューオリンズ・ジャズを現代の一流ジャズメンを集めて再現する必要があるんだろうか。1920年代のニューオリンズ・ジャズについては録音は残っているし、ジェリー・ロール・モートン自身の演奏の録音も残っている。そんな環境下で、ニューオリンズ・ジャズを再現し、アルバムにし、リリースする意義というのが、僕にはどうも判らない。

ウィントンの「Standard Time」シリーズを振り返ってみると、Vol.1は「ハードバップ」、Vol.2は「スイング〜中間派」、Vol.3はバラード&歌もの、Vol.4はモンク集、Vol.5はウィズ・ストリングス、そして、Vol.6はニューオリンズ・ジャズ。これって、ウィントンにとっての「良きジャズ」「正統なジャズ」というものを再現しただけのものではなかったか。つまり、リスナーの我々はウィントンの趣味性にアルバム6枚お付き合いした訳。

ジャズ者の我々は自分なりの「良きジャズ」「正統なジャズ」のイメージを持っていて、ウィントンにこれは絶対良いのだ、と迫られ ても、諸手を挙げて合意する訳にはいかない。ということで、このウィントンの「Standard Time」シリーズって何だったんだろう、とふと思うのだ。それが故、実はこのウィントンの「Standard Time」シリーズって、内容はとても良いのに、なかなか聴き直す機会が少ないのだ。

 
 

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2018年9月10日 (月曜日)

聴いて楽しいネオ・ハードバップ

アート・ブレイキーの『バードランドの夜』を久し振りに聴いた。やっぱりハードバップはええなあ、と感じ入る。ということで、今日は「ハードバップが聴きたい日」。といって、1950年代のバリバリど真ん中のハードバップ盤を聴いても当たり前やしなあ。と思いつつ閃いたのが「そうだ、1990年代以降のネオ・ハードバップ盤を聴こう」。

One For All『Too Soon to Tell』(写真左)。1997年2月25日の録音。同年、結成されたネオ・ハードバップ・バンド「ワン・フォー・オール」のデビュー盤である。One For Allのメンバーは、Eric Alexander (ts), Jim Rotondi (tp), Steve Davis (tb), David Hazeltine (p), John Webber (b), Joe Farnsworth (ds)。テナー+トランペット+トロンボーンの3管フロントのセクステット構成。

ワン・フォー・オールは、ニューヨークのライブハウス「Samlls」で結成された。メンバーの名前を今の目で見れば、これは絶対に良い音を出す、ネオ・ハードバップなバンドだ、と確信する。今では中堅ジャズメンとして活躍しているメンバーばかりである。当然、それぞれの持つテクニックは素晴らしく、バンド全体の演奏力はかなり高い。このデビュー盤を聴けば、それが直ぐに判る。
 

One_for_all_too_soon_to_tell  

 
このアルバムには、“ワン・フォー・オール・フィーチャリング・エリック・アレキサンダー”とクレジットされている。このデビュー盤の一番の聴きどころはアレキサンダー。全編に渡って、模範的なジャズ・テナーを展開している。しかし、その音は、テナーマンといえばほとんどがそうであった「コルトレーンのフォロワー」では無い。コルトレーンの様なストレートなブロウの底に、オールド・スタイルな音が潜んでいて、喩えて言うなら「温故知新」なジャズ・テナーである、

ジム・ロトンティのトランペットも良い音を出している。このトランペットもジャズとしてオーソドックスな音で、この徹頭徹尾、オーソドックスなところがロトンディのトランペットの良いところ。スティーブ・デイヴィスのふくよかなトロンボーンは3管フロントの効果的なアクセント。そう、この盤の3管フロントは、そのテクニックの高さを駆使してのユニゾン&ハーモニーが半端無い。アレンジもバッチリ決まっている。

リズム・セクションは「デヴィッド・ヘイゼルタイン・トリオ」。耽美的ではあるが、芯のあるバップなピアノをコアに、堅実かつダイナミック、そして多彩な表現力が素晴らしいベース&ドラムが絡んだ、ネオ・ハードバップなピアノ・トリオ。そう、このワン・フォー・オールのデビュー盤には、ネオ・ハードバップな「新しい音」がギッシリと詰まっている。聴いて楽しい「ネオ・ハードバップ盤」である。

 
 

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2018年9月 9日 (日曜日)

モーガンの思索的なトランペット

意外とリー・モーガンのリーダー作の中で、地味なのが「Vee-Jay三部作」。1960年の録音なんで、リー・モーガンのトランペットのプレイのレベルからしても悪くは絶対に無いと思うのだが、あんまり人気がある扱いをされているとは思えない。ちょっとレトロなジャケットで損をしていると単純に思っているのだが、聴いてみると、その内容に「おっ」と思うこと請け合い。

Lee Morgan『Expoobident』(写真左)。「Vee-Jay三部作」の2作目。1960年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Clifford Jordan (ts), Eddie Higgins (p), Art Davis (b), Art Blakey (ds)。痛快な好盤、前作の『Here's Lee Morgan』と比べると、ピアニストとベーシストが異なる。

ピアノが、ウィントン・ケリーからエディ・ヒギンスに、ベースが、ポール・チェンバースからアート・デイヴィスに変わっている。その影響なのだろう、演奏全体の雰囲気が、明るいメリハリの効いたハードバップから、ちょっとモードに傾いた、新主流派な思索的でクールな雰囲気に変わっている。
 

Expoobident  

 
その変化のせいだと思うのだが、この盤でのリー・モーガンのトランペットは、前作の『Here's Lee Morgan』と比べると、抑制が効いて、ちょっと大人しいプレイになっている。この辺が、前作よりも人気が無い理由なのかなあ、と思うのだが、これはこれで聴き応えがある。ジャズのトレンドの最先端を意識した「モーガンの考えるジャズ」の姿を捉えていて、実に興味深い。

モーガンは、鯔背なハードバップなトランペットを吹きまくる、というのが固定観念で、「抑制」や「思索的」とは無縁のプレイヤーと思われがちなんだが、それは当たらない。意外とその時その時のジャズの演奏の「流行」というのを意識している。まあ、それが当時のジャズ者リスナーに受けたのかどうかは別として、考えるトランペッターであったことは、この辺りのアルバムを聴くと良く判る。

あまり上等とは思えぬディレクター・チェアに股を開いて尊大に腰掛けるモーガン。トランペッターとしての自信の現れ、と僕は捉えているが、この『Expoobident』と前作『Here's Lee Morgan』とは兄弟盤みたいな存在で、どちらの盤でも主役のリー・モーガンは自由奔放にトランペットを鳴らしている。それこそが、この盤の一番の魅力だろう。好盤です。

 
 

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2018年9月 8日 (土曜日)

トランペットの教科書的好演です

リー・モーガン(Lee Morgan)のリーダー作を聴き直している。リー・モーガンのトランペットは、テクニックに優れ、ちょっと捻れたフレーズが鯔背で、ポジティヴでブリリアントな音色が個性。ジャズ・トランペットって、こうやって鳴らすのが理想的なんだ、という感じの、実に「模範的な」トランペット。芯がシッカリ入った、聴き心地がとても良いトランペットである。

Lee Morgan『Here's Lee Morgan』。1960年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Clifford Jordan (ts), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Art Blakey (ds)。メンバーを見渡すと、この盤、絶対ええ音だしてるに決まってる、と確信する。ジャケットはちょっとレトロっぽくて平凡、これでちょっと損をしているが、内容は折り紙付き。

一言で言うと、モーガンのリーダー作はかなりの枚数が残されているが、この盤はモーガンのトランペットの魅力が最大限に発揮された傑作の一枚である。リーダーのモーガン、そしてサイドメン、それぞれのコンディションが良く、相性が良かったのだろう。とりわけ、モーガンのトランペットは絶好調。オープンにミュートにその妙技を存分に発揮している。
 

Heres_lee_morgan  

 
モーガンのミュート・トランペットを愛でることの出来る盤って、意外と少ないのだが、この盤ではモーガンのミュート・プレイをしっかりと確認出来る。バラードの「I'm A Fool To Want You」でのミュート・プレイは絶品。マイルスのミュート・プレイとは全く異なるイメージの、ブリリアントで切れ込む様な、明るくバイタルなミュートが聴ける。

バックのサイドメンの演奏も見事である。ケリーのピアノはクールに、ブレイキーのドラムは熱く、特に、モーガンとケリーとの絡みは相性抜群。この盤の他に共演盤が少ないのが残念。ブレイキーの煽りもモーガンには心地良いと感じる様だ。ブレイキーが煽れば煽るだけ、モーガンは素敵なトランペットを吹き上げていく。そして、ベースのチェンバースは何時になく熱気溢れるベースラインを聴かせてくれる。

ほんと、この盤ではモーガンのトランペットが良い音を出している。これだけ良い音を出していたら、どんな曲を演奏したって、それは好演になる。この盤と「Expoobident」「The Young Lions」を僕は勝手にVee-Jay三部作と読んでいるが、いずれの盤でも、モーガンのトランペットは絶好調。最初に効くにはこの『Here's Lee Morgan』が良い。ジャズ・トランペットの教科書的好演がギッシリ詰まった好盤である。

 
 

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2018年9月 7日 (金曜日)

なんだか扱いが難しいモンク集

ウィントン・マルサリスの「Standard Time」シリーズは全6作。ウィントンの考える「スタンダード曲の演奏」がズラリと並ぶ。スタイルは、オールド・スタイルからネオ・ハードバップ。いわゆるデキシーランド・ジャズからハードバップまで。どうも、ウィントンのジャズの範疇は、この「デキシーランド・ジャズからハードバップまで」らしい。

しかも、このスタンダード曲集はどれもが「作り込んだ感」が満載。過去のハードバップを研究し、自分にとって良い響きのハードバップの良いところを寄せ集め、考え抜いたアレンジに乗せる。感性に任せた即興演奏の産物ではない。「頭を使ったジャズ」である。演奏自体もハイテクニックな非の打ち所のないもの。クールを通り越して人工的ですらある。

Wynton Marsalis『Standard Time, Vol. 4: Marsalis Plays Monk』(写真左)。1999年のリリース。ちなみにパーソネルは、Wynton Marsalis (tp), Wessell Anderson (as), Wycliffe Gordon (tb), Eric Reed (p), Ben Wolfe, Reginald Veal (b), Herlin Riley (ds), Walter Blanding, Victor Goines (ts)。う〜ん、ほとんど知らないジャズメンばかり。辛うじて、ピアノのエリック・リードはお気に入りのピアニストの一人。
 

Standard_time_vol4

 
このスタンダード・タイムの4作目はタイトル通り「セロニアス・モンク集」。セロニアス・モンクのオリジナル曲が13曲。圧巻である。このセロニアス・モンク集でも「頭を使ったジャズ」は全開。過去のセロニアス・モンクの演奏をよく聴き込み、セロニアス・モンクの曲をよく研究している。セロニアス・モンクの曲の良いところを集めて凝縮し、新しい響きのセロニアス・モンクを「再構築」している。即興演奏の香りはあまりしない。

頭で考え、頭で演奏した「セロニアス・モンク」。モンク独特の響き、音の飛び方がいかにも「人工的」。知力を尽くして、今までのセロニアス・モンクの演奏の中で、ウィントンが好きな音を、ウィントン好みのアレンジと高テクニックで再現している。理路整然としたセロニアス・モンク。しっかりとアレンジされているので、モンク本人の様な「サプライズ」は全く無い。

ここまで、理路整然とされると、セロニアス・モンク集と言われても、どこがセロニアス・モンクなんだろう、と思ってしまう。確かによく考え、よく作り込んだなあ、と感心する。内容はなかなかのもの。でも、モンクの曲と演奏を理路整然と再構築するには無理があると思うなあ。よって、聴いてみると、上手いんだが、なんだかつまらない雰囲気が漂う。モンクの曲を理路整然と演奏してもなあ。でも、中の演奏は高度で内容の濃いもの。なんだか扱いが難しいアルバムです。

 
 

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2018年9月 6日 (木曜日)

ジャズ演奏の優れた例のひとつ

ジャズにとって「スタンダード曲」は無くてはならない存在で、この「スタンダード曲」を通じて、それぞれのジャズメンの個性の違いを確認したり、それぞれのジャズメンの解釈を楽しんだりする。テーマ部の旋律は同じだけれど解釈も違う。アドリブ部に入ると、テーマ部の旋律のコード進行から発展したり、基音からモーダルなアドリブが展開されたりする。これがまあ、それぞれ演奏毎に違っていて、いわゆる「ジャズの醍醐味」の1つである。

新伝承派のリーダー、ウィントン・マルサリスは、このスタンダード曲だけを採用した企画盤を6枚出している。ジャズとして、一番優れた演奏・アレンジ・展開を提示した格好になっているが、今から振り返ると、このウィントンのスタンダード曲の演奏・アレンジ・展開は、ジャズの「スタンダード曲」を基にした演奏の「優れた例のひとつ」に留まっている。そう、ジャズは懐深く、裾野が広い。優れたジャズ演奏といっても、1つのパターンに収束することはあり得ない。

Wynton Marsalis『Standard Time, Vol. 3: The Resolution of Romance』(写真左)。1990年5月のリリース。ちなみにパーソネルは、Wynton Marsalis (tp, vo), Ellis Marsalis Jr. (p), Reginald Veal (b), Herlin Riley (ds)。ウィントンの父君である、エリス・マルサリスがピアノで共演している。スタンダード曲だけを採用した企画盤の3枚目になる。
 

Standard_time_vol3  

 
サブタイトルが「The Resolution of Romance」なので、リリカルでロマンチックなバラード曲やスロー〜ミッドテンポな曲で固められている。刺激的なところは全く無い、耳当たりの良い、暖かい演奏が展開される。聴いていて思うのは、選曲にも配慮行き届き、アレンジも十分に練られ、演奏も十分にリハーサルを積んだ、しっかり、じっくりと作り込まれたスタンダード曲のジャズ演奏という感じが強く出ている。ジャズの即興性を追求するというよりは、ジャズ演奏の良いところばかりをグッと凝縮した企画盤である。

そんなウィントンのアルバム・コンセプトに従い、父君エリスのピアノが実に良い雰囲気を出している。控えめながらよく唄うピアノで、コードな展開もモードな展開もそれぞれの個性を織り込んで、実に渋く、硬派にメインストリームなジャズ・ピアノを展開為ている。父君エリスは、ハードなモード演奏もこなす「オールマイティー」なジャズ・ピアノなんだが、ここでは実にきめ細やかでリリカル、タッチは堅実でありながら、ロマン溢れるフレーズを供給してくれる。

そんな父君のピアノをバックに、ウィントンのトランペットは相変わらず、ハイテクニックで優等生的な音の伸びと輝き。作り込み感満載なんだが、企画盤として、これは「アリ」でしょう。ジャズの「スタンダード曲」を基にした演奏の「優れた例のひとつ」。作られたジャズという雰囲気が強くする内容で、何度も繰り返し聴く様な盤ではない。意外と「困ったちゃん」なアルバムである。

 
 

東日本大震災から7年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年9月 5日 (水曜日)

この盤でやっとジョーヘンを理解

40年以上、ジャズを聴き続けてきて、それでも疎遠なジャズメンというのが幾人かいる。そもそも、聴く機会が無かった、つまり縁が無かった、というジャズメンもいれば、若い頃、聴いてはみたんだが、どうにもこうにも耳にフィットせずに、そのまま疎遠になってしまったジャズメンもいる。

ジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson・略して「ジョーヘン」)というテナーマンがいる。このテナーマンは、さきほどの疎遠なジャズメンの一人で、その疎遠になった動機は後者。ジャズ者初心者の頃、ブルーノートの諸作をジャズ喫茶で聴かせてもらったのだが、これがどうにもこうにも耳にフィットしない。フニャフニャうねうね、という感じに聴こえて、何が良いのか判らなかったのだ。

それから38年。それまで時々、ブルーノートのジョーヘンについては聴いてはみたが、やはり、どうもピンとこない。それでも、ジャズ盤紹介本でも、ジャズ雑誌でも、ネットのブログでも、ジョーヘンは良い、という表現をよく見る。う〜ん、そうかなあ、と悩んでいたら、そうか、ブルーノート以外のジョーヘンを聴いてみよう、と思い立って、ブルーノート以降のジョーヘンを聴くことにした。
 

Joe_henderson_tetragon  

 
Joe Henderson『Tetragon』(写真左)。1967年9月(#4, 6-7)と1968年5月(#1-3, 5)の2回の録音に分かれる。ちなみにパーソネルは、Joe Henderson (ts), Ron Carter (b) は全曲共通、ピアノとドラムは録音日によって分かれていて、(#1-3, 5)では、Don Friedman (p), Jack DeJohnette (ds)、(#4, 6-7)は、Kenny Barron (p), Louis Hayes (ds)。マイルストーン・レーベルからのリリース。

聴いての第一声は「ブルーノートの諸作に比べて、かなり聴き易くて判り易い」。それまでの「フニャフニャうねうね」なテナーを吹いていない。カッチリとした堅実で判り易いアドリブ・ソロを吹いている。シュッとして聴き易く判り易いコルトレーン、といった風情のテナーに思わず「おおっ」と思う。ブルーノート時代のアドリブ・ソロに芯がグッと入ったような感じで、とにかくこの盤のジョーヘンは「よく判る」。

1968年のリリースだからなのか、ジャケットのデザインが奇抜で、これはこれで「ひく」のだが「ひいてはならない」(笑)。他のジャズ者の方々の評判を確認させてもらって、やはり、この盤、ジョーヘンのリーダー作の中でも判り易い盤とのこと。なるほどねえ。この盤のジョーヘンは良く判る。シュッとして聴き易く判り易いコルトレーン+芯がグッと入ったような「フニャフニャうねうね」ソロ。彼の個性はこれだ。ということで、この盤から以降のリーダー作を聴き進めることにする。

 
 

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2018年9月 4日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・128

現代の日本ジャズは完全な「女性上位」。女子ジャズ・ミュージシャンがどんどんデビューし、しかも、その力量は確かなもの。加えて、美形が多く、魅力的な女性ばかり。日本男子はどうしたのか、と思うのだが、如何せん少数派。一昔前は女性ジャズ・ミュージシャンはピアノが多かったのだが、今では様々な楽器に広がっている。

寺島さんのジャズ本を読んでいて、纐纈歩美(こうけつあゆみ)は良いぞ、良いぞ、とあっちこっちで書いていて、そんなに良いのか、と思いながら聴いたアルバムが『Daybreak』(ここをクリック)。彼女のセカンド盤である。この盤で、纐纈歩美のアルトは、ナベサダさんのフォロワーだと僕は解釈した。が、寺島さんは違う、と書く。正統なメインストリームなアルトだと書く。

で、それはどのアルバムを聴いてそう思ったのか、と調べてみたら、このアルバムだと見定めた。纐纈歩美『Struttin'』(写真左)。彼女のデビュー盤である。デビュー盤だったので軽く見ていた。セカンド盤がかなり良い出来だったので、彼女のポテンシャルを確認出来て、それで満足してしまったこともある。このデビュー盤には思いが及ばなかった。
 

Ayumi_kohketsu_struttin  

 
で、この『Struttin'』、纐纈(こうけつ)のアルト・サックスが躍動感溢れて、ブリリアントに響き渡る。運指のテクニックも申し分無く、ストレート・アヘッドなアルト・サックスが全編に渡って響き渡る。いや〜、これにはビックリした。とにかく、良い音してるんですよ、纐纈のアルト・サックスが。全編に渡って、とても気持ち良く聴き通すことが出来ます。

この盤のパーソネルは、纐纈歩美 (as), 納谷嘉彦 (p), 俵山昌之 (b), マーク・テイラー (ds)。納屋+俵山+テイラーのリズム・セクションも良好。しっかりと純ジャズ風のリズム&ビートを供給しています。速いテンポの曲もバラードも聴き応えのあるアレンジと演奏で、聴く我々を飽きさせません。アルトの雰囲気的には、誰かに似ているなあ、と思って聴いていたのですが、そうそう「アート・ペッパー」風ですね。テクニックと歌心、ペッパーのブロウを想起しました。

若手、新人、女性ジャズ・ミュージシャンという「色眼鏡」を取り去って、このアルバムだけ、ジャズ喫茶で流したら、結構な数のジャズ者の方々がジャケットを見に来るんじゃないですかね。それほど、この盤はコンテンポラリーな純ジャズとしてなかなかの好盤だと思います。決して、コマーシャルに留まらない、志の高いデビュー盤です。

 
 

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2018年9月 3日 (月曜日)

山下洋輔『30光年の浮遊』です

山下洋輔はジャズを聴き始めた頃から聴いている。全くのジャズ初心者なので、ハードバップの名盤を大人しく聴き進めて行けば良いものを、やっぱりハードなフリー・ジャズこそが「真のジャズ」なのではないか、などという大いなる曲解をして、フリー・ジャズを聴こうとする。そういう時は「やはりまずは日本人のフリー・ジャズを」などという変な解釈をして、山下洋輔に出会った。

そんな山下洋輔、当時、完璧なフリー・ジャズの最右翼であったが、何故かジャズ者初心者の僕には聴き易かった。何故かは判らない。『寿限無』『キアズマ』『ミナのセカンド・テーマ』『木喰』など、彼のアルバムを密かに聴いていた。そう、当時、フリー・ジャズを聴いているなんて他人に言えない。変人扱いされて終わりである(笑)。

山下のタッチは明快。弾き回しのテクニックは秀逸。フリーな展開になっても、アドリブ・フレーズの底にはしっかりとしたビートが流れ、その演奏が破綻することは「まれ」。破綻するときは、ご本人の体調が悪い時だけでしょう(笑)。体調良く、真剣に弾き倒す時の山下洋輔は「無敵」である。そういう山下洋輔を長きに渡って聴き続けて来た。
 

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そして、今年の新盤である。山下洋輔『30光年の浮遊』(写真左)。山下洋輔ニューヨーク・トリオ結成30周年記念アルバム。ちなみにパーソネルは、Yosuke Yamashita (p), Cecil McBee (b), Pheeroan akLaff (ds)。「ドバラダ2018」「チャタリング」「ワン・フォー・T」といった山下のセルフ・カヴァーも含まれる。どんな音が出てくるか。

聴き始めて、あれっ、と思う。カッ飛ぶようなフリー・ジャズでは無い。メインストリームな純ジャズである。モーダルで自由で、現代の新しい響きのする純ジャズ。統制が取れ、抑制も効いている。決して走らない、じっくりと、現代の「王道を行く純ジャズ」がどんどん湧き出てくる。うお〜、山下洋輔がいよいよメインストーム・ジャズに手を染め出した。そう感じた。

山下洋輔も、1942年生まれなので、今年で76歳になる。76歳にもなって、カッ飛ぶようなフリー・ジャズも無い様な気がする。この『30光年の浮遊』には、山下洋輔ニューヨーク・トリオの抑制の効いた、それでいて枯れていない、クールな躍動感のある純ジャズがぎっしり詰まっている。そして、ラストの「早春賦」で心がホンワカ穏やかになる。この曲がジャズになるなんて思わなかった。まさに柔軟性溢れる山下洋輔ニューヨーク・トリオである。まだまだ隅に置けない存在である。

 
 

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2018年9月 2日 (日曜日)

1970年代の先駆け的ギタリスト

昨日から涼しくなった千葉県北西部地方。今日などは半袖でじっとしていると肌寒いくらいだ。台風が西日本に接近しつつあるので、天気は良くないのだが、これだけ涼しくなると、ジャズ盤鑑賞の幅も広がるし、ジャズを聴いていても汗ばむことも無い。今年の夏は酷暑続きだったので、ジャズ鑑賞も辛かったですね。というか、まず体調が思わしく無い日が多かったなあ。

そこで、ジャズ・ギターである。熱く弾きまくるジャズ・ギター、クールに弾き進めるジャズ・ギター。様々なパターンのジャズ・ギターを聴き比べたくなる。ジャズ・ギターは、エレギとそのアタッチメントの進歩によって、表現の幅が広がった。今ではホーン楽器と変わらない、音のバリエーションと強弱を手に入れている。

そんなジャズ・ギター、ギタリストによって個性が明らかに異なるので、聴いていて楽しい。今日は、George Benson『Giblet Gravy』(写真左)を選盤。1968年2月の録音。1968年の録音とは言え、曲毎にミュージシャンを選んで録音する、という、1970年代の録音手法が取られていて、録音時、リーダー以外、パーマネントなメンバーは存在しない。
 

Giblet_gravy

 
それでもパーソネルを見渡すと、Eric Gale (g), Herbie Hancock (p), Ron Carter, Bob Cranshaw (b), Billy Cobham (ds) らの名前が確認出来て、ジャズロック〜クロスオーバーな音が顕著である。フュージョン・ジャズ全盛時にはソフト&メロウなフュージョン・ギターがウリのベンソンではあるが、この盤が録音されたのは1968年。まだまだバリバリに弾きまくっている。

そう、ベンソンは1960年代後半はソウル・ジャズ、ラテン・ジャズに大活躍。かなりハードなエレギに惚れ惚れする。これだけハードだとジャズよりはちょっとロックに寄っている雰囲気。聴き応え抜群である。特に、アドリブ展開におけるグルーヴ感とドライブ感が半端ない。このエレギの音を聴くと、当時、マイルスがセッションに呼んだ理由が理解できるような気がする。

ジャケ写を見れば時代を感じるんだが、若き日のギラギラしたベンソンが実に精悍。この頃のベンソンについては、単にウエス・モンゴメリーの後継者という切り口では無く、ハードバップを越え1970年代への橋渡しとなる、クロスオーバー〜フュージョン・ジャズなエレギの先駆者という位置づけで、もっと語られるべきギタリストであると僕は思う。

 
 

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2018年9月 1日 (土曜日)

適用性の高さこそが最大の個性

何もジャズ盤紹介本やジャズ雑誌の特集のアルバム紹介に挙がる盤ばかりが「好盤」では無い。最近ではジャズに関する単行本が結構、出版されるようになったので、この単行本からも「好盤」の情報を得ることが出来るようになった。しかし、最終的には、自分の目と手でアルバムを探索し、自分の耳で聴いて、自分なりの「好盤」を探し出す。これが、ジャズ盤コレクターの醍醐味である。

この盤は、ジャズ・ベーシストのリーダー作を物色していた時、ジョン・パティトゥッチ(John Patitucci)の名に出くわし、このベーシストのリーダー作を聴き進めていって、出会った盤である。John Patitucci『Sketchbook』(写真左)。凄腕ベーシスト、パティトゥッチ、この盤では、エレクトリック・ベースによるプレイがメイン。超絶技巧を活かしたギター・ライクな多弦ベースによるプレイがソロが魅力的。

1990年のリリース。時代は純ジャズ復古の後、メインストリームな純ジャズと、フュージョン〜スムース・ジャズがバランス良く存在していた時代。ちなみにパーソネルは、John Patitucci (b), Michael Brecker (ts), John Scofield (g), Peter Erskine (ds), Vinnie Caliuta (ds), Terri Lyne Carrington (ds), Alex Acuna (per), John Beasley (p), David Witham (synth), Jon Crosse (ss), Dori Caymmi (vo), Ricardo Silveira (g), Paulinho Da Costa (per), Judd Miller (synth)。

 

John_patitucci_sketchbook  

 

フュージョン・ジャズ系の強者どもを集めた力作。個人的にはまだまだやりたいジャズのイメージが沢山あったみたいで、この盤について、かなりバリエーションに富んだ内容になっている。明確なフュージョン・ジャズあり、コンテンポラリーな純ジャズ風の演奏あり、といろいろやっているのだが、パティトゥッチのエレクトリック・ベースの個性は、どんな内容のジャズにおいても一貫しているので、アルバム全体の統一感は損なわれていない。

彼のエレベはこの盤で聴くと、ほぼ完成の域に達した、といって良いだろう。彼の超絶技巧を活かしたギター・ライクな多弦ベースによるプレイがアルバム全体でフィーチャーされていて、彼のベーシストとしての力量が良く判る内容になっている。あれもできる、これもできる、で器用貧乏とか、八方美人的とか、一貫性が無いとか揶揄されるが、僕はそうは思わない。その多様性、適用性の高さこそが、パティトゥッチのベースの最大の個性だろう。

これだけ適用力の高いベーシストであれば、フロントを張る楽器も活き活きとしたパフォーマンスを発揮する。この盤でも、テナーのマイケル・ブレッカー、エレギのジョン・スコフィールドが胸のすくような快演を展開している。そうそう、ビニー・カリウタのドラムもパティトゥッチのベースに触発されて躍動感抜群。演奏のリズム&ビートを支える役割のベース。演奏全体の出来不出来は、このベースに依るところが結構あるんだろう。そういう意味で、この盤はベーシストのリーダー作として優れた内容の好盤と言える。

 
 

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