山下洋輔『30光年の浮遊』です
山下洋輔はジャズを聴き始めた頃から聴いている。全くのジャズ初心者なので、ハードバップの名盤を大人しく聴き進めて行けば良いものを、やっぱりハードなフリー・ジャズこそが「真のジャズ」なのではないか、などという大いなる曲解をして、フリー・ジャズを聴こうとする。そういう時は「やはりまずは日本人のフリー・ジャズを」などという変な解釈をして、山下洋輔に出会った。
そんな山下洋輔、当時、完璧なフリー・ジャズの最右翼であったが、何故かジャズ者初心者の僕には聴き易かった。何故かは判らない。『寿限無』『キアズマ』『ミナのセカンド・テーマ』『木喰』など、彼のアルバムを密かに聴いていた。そう、当時、フリー・ジャズを聴いているなんて他人に言えない。変人扱いされて終わりである(笑)。
山下のタッチは明快。弾き回しのテクニックは秀逸。フリーな展開になっても、アドリブ・フレーズの底にはしっかりとしたビートが流れ、その演奏が破綻することは「まれ」。破綻するときは、ご本人の体調が悪い時だけでしょう(笑)。体調良く、真剣に弾き倒す時の山下洋輔は「無敵」である。そういう山下洋輔を長きに渡って聴き続けて来た。
そして、今年の新盤である。山下洋輔『30光年の浮遊』(写真左)。山下洋輔ニューヨーク・トリオ結成30周年記念アルバム。ちなみにパーソネルは、Yosuke Yamashita (p), Cecil McBee (b), Pheeroan akLaff (ds)。「ドバラダ2018」「チャタリング」「ワン・フォー・T」といった山下のセルフ・カヴァーも含まれる。どんな音が出てくるか。
聴き始めて、あれっ、と思う。カッ飛ぶようなフリー・ジャズでは無い。メインストリームな純ジャズである。モーダルで自由で、現代の新しい響きのする純ジャズ。統制が取れ、抑制も効いている。決して走らない、じっくりと、現代の「王道を行く純ジャズ」がどんどん湧き出てくる。うお〜、山下洋輔がいよいよメインストーム・ジャズに手を染め出した。そう感じた。
山下洋輔も、1942年生まれなので、今年で76歳になる。76歳にもなって、カッ飛ぶようなフリー・ジャズも無い様な気がする。この『30光年の浮遊』には、山下洋輔ニューヨーク・トリオの抑制の効いた、それでいて枯れていない、クールな躍動感のある純ジャズがぎっしり詰まっている。そして、ラストの「早春賦」で心がホンワカ穏やかになる。この曲がジャズになるなんて思わなかった。まさに柔軟性溢れる山下洋輔ニューヨーク・トリオである。まだまだ隅に置けない存在である。
東日本大震災から7年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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