スタンリーの「RTF」な最新作
ベーシストのリーダー作は聴いていて面白い。ベースという楽器の性格上、ジャズ演奏において、フロント楽器を担うことは無い。音のバリエーションが狭いので、旋律弾きを担当することはあるが、相当なテクニックの持ち主に限る。リーダーとして、グループサウンズにケアしつつ、自分のやりたいジャズの演奏トレンドを追求するケースがほとんどになる。
Stanley Clarke Band『The Message』(写真左)。今年6月のリリース、フュージョン・ジャズ系のベーシストのレジェンド、スタンリー・クラークの4年振りの新作。スタンリー・クラークと言えば、1960年代後半、ニュータイプの純ジャズ・ベーシストとして頭角を現し、1970年代前半には、チック・コリアのReturn to Forever(RTF)を結成。アコベとエレベの両刀遣いのバカテク・ベーシストとして人気を博した。
1970年代後半には、ジャズ・ファンクをメインにスタイルを鞍替え。1980年代に入ると、ほとんどブラコン化して、ジャズ・ベーシストとしての面影は無くなった。同時に僕自身、彼のベースには全く興味が無くなって、その名前も忘れ去っていた。が、この5〜6年前から、コンテンポラリーな純ジャズに戻って来たみたいで、まだまだブラコンの影がちらつくが、まずまずのリーダー作をリリースし始めた。そして、今回の最新作である。聴いて思わず「ニンマリ」。
これって「RTF」やん。昔々、自分のリーダー作では「もうRTFの音は追求しない。RTFの音はチックの音だ」なんて拗ねていた。しかし、彼のアコベとエレベの両刀遣いのバカテク・ベースは、RTFの音の中でこそ活きる、というか、RTFの音の中でこそ映える。ブラコン的な音の中では、他のバカテク・ベーシストとの違いが出てこない。しかもパターンが画一化していて、はっきり言って面白く無い。
若手メンバーを中心にしたメンバー構成で、これもスタンリー・クラークには珍しいこと。今までは、気心知れた先輩〜同年代のミュージシャンとの共演がほとんどだったので、彼がリーダーとして、若手ジャズメンとガップリ組んだアルバムを作るとは思わなかった。そう、スタンリー・クラークは、このアルバムで「リーダーとして、グループサウンズにケアしつつ、自分のやりたいジャズの演奏トレンドを追求」しているのだ。
この最新作に詰まっている、現代の「RTFの音」のイメージに思わず、ウキウキ。コンテンポラリーな純ジャズに回帰した様なスタンリー・クラークの最新作はなかなか良い内容だ。スタンリーいわく「私の話より、バンド・メンバーの話を紹介してほしいんだ」。確かに、若手メンバーをメインにした演奏はなかなかのレベル。次の作品が期待出来ます。
東日本大震災から7年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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