ジミー・スミスの「別の顔」
オルガン・ジャズを聴き進める上では、ジミー・スミス(Jimmy Smith)は外せない。ジミー・スミスは、オルガン・ジャズの祖であり、最大のレジェンドである。オルガン・ジャズと言えば、ジミー・スミス。オルガン・ジャズについては、ジミー・スミスだけを聴いていれば良い、とまで極論するジャズ者の方もいるくらいである。
確かにそれはあながち間違いではない。ジミー・スミスのアルバムに入っている、オルガンの弾き方、音色、雰囲気の全てが、オルガン・ジャズのお手本となるものばかり。ジミー・スミス以降のオルガン・ジャズは、ジミー・スミスの弾き方、音色、雰囲気を踏襲した「フォロワー」ばかり。ジミー・スミスの個性を踏襲しながら自らの個性を織り交ぜる「変化、深化」の積み上げである。そんなジミー・スミスのリーダー作であるが、どれが良いのか。
実はどれもが良いので、オルガン・ジャズを極めるには、ジミー・スミスのリーダー作を全部聴いて下さい、と言った方が早い、と思っている。事実、僕も今までにジミー・スミスのリーダー作は結構な数を聴き込んでいる。彼のリーダー作の7割は聴いたことがあるかな。ジミー・スミスのリーダー作には駄盤は無い。どれもが水準以上のもの。晩年のプレイはちょっとマンネリ気味ではあったが、それでも演奏テクニックやアドリブの弾き回しは超一品であった。
さて、そんなジミー・スミスのリーダー作の中で、最近のお気に入りは、Jimmy Smith『Root Down』(写真)。1972年2月8日、ロサンゼルスは、The Bombay Bicycle Clubでのライブ録音。目を引くのは、Wilton Felder (b)。クルセイダーズのベーシストウィルトン・フェルダーがベースを担当している。ということは、R&B志向のオルガン・ジャズかな、と思うんだが ・・・。
冒頭の「Sagg Shootin' His Arrow」のオルガンを聴くと、これってプログレッシブ・ロックか、と感じる。ドラムもロック調の乾いたオフビードなもの。そこに、ウィルトン・フェルダーの粘るベースが絡んでくる。そして、極めつけは、アダムスのエレギ。ワウワウ・ペタルを駆使しつつ、攻撃的でファンキーなリフを繰り返す。思わずエレ・マイルスを彷彿とさせる、エレクトリック・ジャズの響き。リズム&ビートは乾いたロック・ビート。コレってプログレやん(笑)。
攻撃的なプログレ的雰囲気を内包しながら、この盤の音世界は「ジャズ・ロックなオルガン・ジャズ」。エレ・マイルスに刺激を受けたのか、1970年代前半のロック・ムーブメントに触発されたのか、このジミー・スミスのリーダー作はかなりロックしている。あのこってこてファンキーなオルガン・ジャズが得意のジミー・スミスがこんな攻撃的なプログレ風のオルガンを弾き倒すとは。ジミー・スミスのアナザー・サイドを楽しむ事の出来る「好ライブ盤」である。
東日本大震災から7年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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