これも魅力的なジャズ・ベース盤
ジャズ・ベーシストのリーダー作は幾つかのケースに分かれるが、聴き応えがあるのは、リーダーとして自分の音世界をプロデューサーの様に創造していくケースだろう。自らのベースはあまり前面に出ることは無くて、ベースのテクニックを披露するのは要所要所に留める。自らはその音世界の創造を支える側に回るのだが、セルフ・プロデュースの手腕が優れていればいるほど、優れたジャズ・ベーシストのリーダー作として成立する。
例えば、この盤はそういう系統のジャズ・ベーシストのリーダー作だろう。Tom Kennedy『Just Play』(写真左)。2012年9月25日の録音。2013年のリリース。トム・ケネディは、アコベとエレベの両刀使い。特にこの盤ではアコベが素晴らしい。ちなみにパーソネルは、Tom Kennedy(b) Dave Weckl(ds) Renee Rosnes(p) George Garzone(ts)のカルテットをメインに、Mike Stern, Lee Ritenour(g) Tim Hagens(tp) John Allred(tb) Steve Wirtsz(ts)が曲毎に客演しています 。
中堅どころの強者揃い。これだけのメンバーが揃えば、アルバムの良し悪しについては、後はリーダーのプロデュース能力次第ということになるのですが、この盤、トム・ケネディのリーダーシップについては申し分ありません。それぞれの楽器が、それぞれの個性通りに魅力的なパフォーマンスを展開してくれています。これは、このレコーディング・セッションの「狙いと基本的考え方」が明確で、メンバー全員の一致した理解によるものだと思います。
この盤では、リーダーのトム・ケネディはアコースティック・ベースに専念しているのだが、このアコベが実に良い。音も良い、テクニックも良好、特に、演奏の底を支えるビート感が抜群に良い。これはフロントに立つ楽器としてはやりやすいでしょうね。それが証拠に、この盤、選曲としては、スタンダード曲+ジャズメン・オリジナル曲で構成されていますが、特にスタンダード曲のクールな躍動感が魅力的です。トム・ケネディのアコベのビートが実に見事に効いています。
リズム・セクションのパートナーとしては、共演歴の長いデイヴ・ウェックルがドラムを担当し、理知的でリリカルなピアノにリニー・ロスネスが座ります。このリズム・セクションが強力で、堅実でオーソドックスなリズム&ビートを供給しつつ、意外と今の新しいネオ・ハードバップの響きを供給してくれています。意外とファンクネスがしっかり漂うところも良いなあ。
最近の純ジャズって、ファンクネス排除、スイング感排除な音作りが多いのですが、この盤は例外で、かなりオーソドックスな純ジャズの響きです。冒頭からの「Airegin」「Moanin' 」「he Night Has A Thousand Eyes」の大スタンダード曲3連発は何度聴いてもグッときますね。あまりに「どスタンダード」なので、聴く前はちょっと警戒しますが、聴いてみて、かなり今の新しいネオ・ハードバップな音がメインで、ホッとします。好盤です。
東日本大震災から7年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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