マーカスの考える「融合音楽」
マイルスの最後の相棒、ベーシストのマーカス・ミラー。僕はミラーのエレベが結構、お気に入り。マーカスのマイルス追悼盤だった『The Sun Don't Lie』(1993年)を聴いて以来、ずっとマーカスのリーダー作を追いかけている。ベーシストの腕前は超一級品。しかも、マイルスが重用した様に、アレンジとプロデュース力も超一級品。そんな彼のリーダー作はどれもが聴き応え十分。
そんなマーカス・ミラーの最新盤がリリースされた。Marcus Miller『Laid Black』。今年6月の最新作。前作『Afrodeezia』以来、約3年ぶりとなる最新作。ゲストに、セラ・スー (vo) / トロンボーン・ショーティ (tb) / ジョナサン・バトラー (g, vo) / TAKE6 (vo) / カーク・ウェイラム (fl, ts) を迎えて、最新のアーバン・ミュージック、ヒップホップ、トラップ、ソウル、ファンク、R&B、ジャズを取り入れた内容。
アルバムを聴くと良く判るが、コンテンポラリー・ジャズの最新形の音が満載。マーカスの卓越したベース・プレイが唸りを上げる。自由奔放に唄うが如く、囁くが如く、魅力的なベースラインを刻み続けていく。まず、このマーカスのベース・プレイが、この盤の聴きどころ。現代のジャズ・エレベの最高峰のプレイがこの盤に詰まっている。
もう一つも魅力は「現代のジャズ」を見事に現出した音作りである、ということ。ジャズはもともと違うジャンルの音楽との融合が得意な音楽ジャンルで、今まで「異種格闘技」的な名盤は数々あるが、この盤は従来の融合要素である「ソウル・ファンク・R&B・ブルース」そして「ロック」をベースとして、最新の音楽要素、ヒップホップ、トラップ、ネオ・スピリチュアルを取り込んだ、最新のフュージョン・ミュージックとなっている。
これだけの「異種格闘技」的要素を取り込むと、楽曲としてバラバラなイメージになりがちなのだが、マーカスの場合、そうはならない。卓越したアレンジとプロデュース力を駆使して、様々な「異種格闘技」的要素を融合した、見事な「総合音楽」として、僕達の耳に届けてくれる。まさに「マーカス・ミラーの考える融合音楽」である。
当然、音の底は「ジャズ」。この盤を聴くと、ジャズという音楽ジャンルは、他の音楽ジャンルの音要素に対して、懐が深く裾野が広いことを再認識させてくれる。マーカス・ミラーは、1959年6月生まれで、今年59歳。来年は還暦で、ジャズ・ミュージシャンとしても成熟の域に到達した、若きレジェンドとなりつつある。そんな実感をしっかりと持たせてくれる、この最新作の内容である。
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