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2018年8月の記事

2018年8月31日 (金曜日)

オールド・スタイルなウィントン

ウィントン・マルサリスの考えるジャズは基本的に判り難い。聴き手に迎合することは一切無い、どころか、聴き手を教育する、というか、聴き手を教え導く様なアプローチが見え隠れする。選曲だって、アレンジだって、それまでの通常のジャズとは異なるアプローチをするのだから、何というのか、とても「取っ付き難い」のだ。

Wynton Marsalis『Standard Time, Vol. 2: Intimacy Calling』(写真左)。1991年3月のリリース。録音は1987年9月と1990年8月の2回に分かれる。ちなみにパーソネルは、Wynton Marsalis (tp), Wessell Anderson (as), Todd Williams (ts), Marcus Roberts (p), Robert Hurst, Reginald Veal (b), Jeff "Tain" Watts, Herlin Riley (ds)。ウィントンの「スタンダード曲集」の第2弾である。 

選曲からして、ちょっと変わっていて、全編、スローからミッドテンポの曲ばかりで占められている。オールド・スタイルなディキシーランド・ジャズの雰囲気が色濃い演奏から、クールでニュー・ジャズな音の響きが芳しい演奏まで、幅広な展開になっているのが特徴。選曲はアルバム・タイトルからも判る様に「スタンダード曲」ばかりであるが、有名どころから、知る人ぞ知る、までバリエーションに富んでいる。
 

Standard_time_vol2

 
この盤では「オールド・スタイル」なジャズの演奏を再現している。ニューオリンズ・ジャズからスイング・ジャズ辺り。この盤では、ビ・バップは全く無縁。ハードバップもゆったりしたテンポで、決して速いフレーズを吹き回したり、ハイノートを吹き上げたりはしない。静的で理知的で、ハイテクニックなトランペットが響き渡っている。

ピアノのマーカス・ロバーツが良い音を出している。ちょっとウィントンには悪いが、ウィントン抜きのピアノ・トリオの演奏「East of The Sun」が絶品。ロバーツのピアノは理知的でちょっと捻れている。この理知的なところがウィントンのトランペットと実に良く合う。逆に、捻れているところは、絶対にウィントンにはぶつけない。ロバーツのソロで、ロバーツはその「捻れ」をモードに変えて変幻自在に弾きまくる。

静的で理知的で、ハイテクニックな「スタンダード曲集」である。アルバム全体の雰囲気は実にアーティスティック。逆に、ジャズの持つエモーショナルで熱い展開は全く無くて、聴いていて不完全燃焼に陥り兼ねない部分はあるにはあるんですが、アルバム全体の出来も抜群で、これはこれで、トランペットの「スタンダード曲集」として大いに評価出来る盤です。

 
 

東日本大震災から7年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年8月30日 (木曜日)

「ウィントン」とは何だったのか

ジャズ・トランペッター、ウィントン・マルサリス(Wynton Marsalis)は1961年生まれなので、もう今年で57歳になる。あの衝撃の初リーダー作『ウィントン・マルサリスの肖像』が1981年、ウィントンが20歳の時なので、もうあれから37年が経ったことになる。ちなみに、僕は23歳。大学4回生の頃である。しかし、こうやって改めて見てみると、ウィントンと僕って3歳しか違わない。いわゆる同世代なのだ。

ウィントンは、1980年代半ばからの「純ジャズ復古」のリーダー格。以降、ネオ・ハードバップの牽引役として活躍。しかし、ハードバップがジャズの一番優れた姿とする姿勢はジャズの世界で軋轢を生む。一時期は、生前、まだまだ現役で活躍していた「エレ・マイルス」を公然と批判。ジャズに対する「裏切り者」呼ばわりしたのだから穏やかで無い。しかし、そこは帝王マイルス。反論一言「俺たちが30年も前にやっていた昔の音を再現して何が創造的なんだ?」。

ジャズって即興が旨の音楽で、クラシックと違って同じ演奏は2度と無い。つまり、学校の試験問題みたいに絶対的な評価基準が無い。自分のスタイルを評価するのは全く問題無いが、他のスタイルを批判しても、その理由については全く説得力が無い。聴く人が違えば評価もガラッと変わる、それがジャズなのだ。ウィントンって聡明なので、そんなこと判っていたはずなのに、なぜ、ハードバップ以外はジャズでは無い、なんてこと言っちゃったのか。その発言以来、ウィントンは現在までずっと曲解されたままである。
 

Marsalis_standard_time_vol1  

 
Wynton Marsalis『Marsalis Standard Time, Vol.1』(写真左)。1986年の録音。1987年のリリース。ちなみにパーソネルは、Wynton Marsalis (tp), Marcus Roberts (p), Robert Leslie Hurst III (b), Jeff "Tain" Watts (ds)。ウィントンのトランペット、ワンホーンのカルテット構成。タイトル通り、ウィントンがスタンダード曲ばかりを吹きまくっている。当時、思いっきり話題になったリーダー作である。併せて、賛否両論の嵐となったアルバムでもある。

確かに上手い。相当に上手い。過去のハードバップ演奏をよく聴き込み、よく研究している。ハードバップ演奏の良いところを集めて凝縮し、新しい響きのハードバップを「再構築」している。そう「再構築」している。「構築」はしていない。しかも響きが、アドリブの展開が良い意味で「人工的」。知力を尽くして、今までのハードバップ演奏の中で、一番、印象的な音を自らの高テクニックで再現している。言い換えると、良い意味で「頭を使ったジャズ」。

この「頭を使ったジャズ」が賛否両論を生む。以来、ウィントンは恐らくジャズメンの中で、極端に好き嫌いの差が激しいジャズメンになる。しかし、この盤のリリースから32年が経って、ウィントンが大好きだ、と言うジャズ者の方に出会うことは殆ど無い。純ジャズ復古のリーダー格でありながら、ネオ・ハードバップを牽引しきれず、現代の「新しいニュー・ジャズ」には感心すら寄せない。では、この「ウィントン」とは何だったのか。彼のスタンダード集のシリーズを聴き直しながら、今一度、考えてみたい。

 
 

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2018年8月28日 (火曜日)

これも魅力的なジャズ・ベース盤

ジャズ・ベーシストのリーダー作は幾つかのケースに分かれるが、聴き応えがあるのは、リーダーとして自分の音世界をプロデューサーの様に創造していくケースだろう。自らのベースはあまり前面に出ることは無くて、ベースのテクニックを披露するのは要所要所に留める。自らはその音世界の創造を支える側に回るのだが、セルフ・プロデュースの手腕が優れていればいるほど、優れたジャズ・ベーシストのリーダー作として成立する。

例えば、この盤はそういう系統のジャズ・ベーシストのリーダー作だろう。Tom Kennedy『Just Play』(写真左)。2012年9月25日の録音。2013年のリリース。トム・ケネディは、アコベとエレベの両刀使い。特にこの盤ではアコベが素晴らしい。ちなみにパーソネルは、Tom Kennedy(b) Dave Weckl(ds) Renee Rosnes(p) George Garzone(ts)のカルテットをメインに、Mike Stern, Lee Ritenour(g) Tim Hagens(tp) John Allred(tb) Steve Wirtsz(ts)が曲毎に客演しています 。

中堅どころの強者揃い。これだけのメンバーが揃えば、アルバムの良し悪しについては、後はリーダーのプロデュース能力次第ということになるのですが、この盤、トム・ケネディのリーダーシップについては申し分ありません。それぞれの楽器が、それぞれの個性通りに魅力的なパフォーマンスを展開してくれています。これは、このレコーディング・セッションの「狙いと基本的考え方」が明確で、メンバー全員の一致した理解によるものだと思います。
 

Just_play  

 
この盤では、リーダーのトム・ケネディはアコースティック・ベースに専念しているのだが、このアコベが実に良い。音も良い、テクニックも良好、特に、演奏の底を支えるビート感が抜群に良い。これはフロントに立つ楽器としてはやりやすいでしょうね。それが証拠に、この盤、選曲としては、スタンダード曲+ジャズメン・オリジナル曲で構成されていますが、特にスタンダード曲のクールな躍動感が魅力的です。トム・ケネディのアコベのビートが実に見事に効いています。

リズム・セクションのパートナーとしては、共演歴の長いデイヴ・ウェックルがドラムを担当し、理知的でリリカルなピアノにリニー・ロスネスが座ります。このリズム・セクションが強力で、堅実でオーソドックスなリズム&ビートを供給しつつ、意外と今の新しいネオ・ハードバップの響きを供給してくれています。意外とファンクネスがしっかり漂うところも良いなあ。

最近の純ジャズって、ファンクネス排除、スイング感排除な音作りが多いのですが、この盤は例外で、かなりオーソドックスな純ジャズの響きです。冒頭からの「Airegin」「Moanin' 」「he Night Has A Thousand Eyes」の大スタンダード曲3連発は何度聴いてもグッときますね。あまりに「どスタンダード」なので、聴く前はちょっと警戒しますが、聴いてみて、かなり今の新しいネオ・ハードバップな音がメインで、ホッとします。好盤です。

 
 

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2018年8月27日 (月曜日)

スタンリーの「RTF」な最新作

ベーシストのリーダー作は聴いていて面白い。ベースという楽器の性格上、ジャズ演奏において、フロント楽器を担うことは無い。音のバリエーションが狭いので、旋律弾きを担当することはあるが、相当なテクニックの持ち主に限る。リーダーとして、グループサウンズにケアしつつ、自分のやりたいジャズの演奏トレンドを追求するケースがほとんどになる。

Stanley Clarke Band『The Message』(写真左)。今年6月のリリース、フュージョン・ジャズ系のベーシストのレジェンド、スタンリー・クラークの4年振りの新作。スタンリー・クラークと言えば、1960年代後半、ニュータイプの純ジャズ・ベーシストとして頭角を現し、1970年代前半には、チック・コリアのReturn to Forever(RTF)を結成。アコベとエレベの両刀遣いのバカテク・ベーシストとして人気を博した。

1970年代後半には、ジャズ・ファンクをメインにスタイルを鞍替え。1980年代に入ると、ほとんどブラコン化して、ジャズ・ベーシストとしての面影は無くなった。同時に僕自身、彼のベースには全く興味が無くなって、その名前も忘れ去っていた。が、この5〜6年前から、コンテンポラリーな純ジャズに戻って来たみたいで、まだまだブラコンの影がちらつくが、まずまずのリーダー作をリリースし始めた。そして、今回の最新作である。聴いて思わず「ニンマリ」。
 

Stanley_clarke_the_message

 
これって「RTF」やん。昔々、自分のリーダー作では「もうRTFの音は追求しない。RTFの音はチックの音だ」なんて拗ねていた。しかし、彼のアコベとエレベの両刀遣いのバカテク・ベースは、RTFの音の中でこそ活きる、というか、RTFの音の中でこそ映える。ブラコン的な音の中では、他のバカテク・ベーシストとの違いが出てこない。しかもパターンが画一化していて、はっきり言って面白く無い。

若手メンバーを中心にしたメンバー構成で、これもスタンリー・クラークには珍しいこと。今までは、気心知れた先輩〜同年代のミュージシャンとの共演がほとんどだったので、彼がリーダーとして、若手ジャズメンとガップリ組んだアルバムを作るとは思わなかった。そう、スタンリー・クラークは、このアルバムで「リーダーとして、グループサウンズにケアしつつ、自分のやりたいジャズの演奏トレンドを追求」しているのだ。

この最新作に詰まっている、現代の「RTFの音」のイメージに思わず、ウキウキ。コンテンポラリーな純ジャズに回帰した様なスタンリー・クラークの最新作はなかなか良い内容だ。スタンリーいわく「私の話より、バンド・メンバーの話を紹介してほしいんだ」。確かに、若手メンバーをメインにした演奏はなかなかのレベル。次の作品が期待出来ます。

 
 

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2018年8月26日 (日曜日)

絶頂期クルセイダーズのライブ盤

しかし、今年の夏は「酷暑」である。これだけ蒸し暑い日が続く夏は記憶が無い。いつもなら、午前中、朝8時〜10時の間とか夕方5時以降、1時間程度の散歩が可能なはずなんだが、今年はこれらの時間帯では「身の危険」を感じる蒸し暑さ。散歩どころの騒ぎでは無い。よって、今年の夏は完全に運動不足である。よって「痩せない」(笑)。

昨日から、フュージョン・ジャズ全盛時代の夏に、酷暑に耐えながら聴き親しんだアルバムを幾枚か、聴き直している。今日は、The Crusaders『Live in Japan』。1981年のリリース。邦題『音楽会』。1981年1月18日、東京NHKホールでの日本ツアー最終日の演奏を収録。ちなみにパーソネルは、Barry Finnerty and Roland Bautista (g), Rafael Cruz (perc), Alphonso Johnson (b), Wilton Felder (ts), Joe Sample (key), Stix Hooper (ds)。

当時、人気絶頂のクルセイダーズの来日ライブ盤。確かこのライブ音源についてはライブ盤の発売前にFM放送でオンエアされたので、ばっちりエアチェックをして良く聴いていました。レコードとしてライブ盤が1981年にリリースされた時には、演奏が結構編集カットされていて、唖然とした記憶があります。
 

The_crusaders_live_in_japan

 
そのCDについては、1993年にリイシューされ、LP時代に惜しげも無くカットされた、それぞれのソロの部分も復元され、完全盤・世界初CD化と相成った訳で、なんだかホッとした思い出があります。イントロダクションでのメンバー紹介など、時代を感じさせる部分も多々ありますが、意外と録音はまとまっていて、クルセイダーズのファンクネス溢れる躍動感が何とか捉えられています。

冒頭がジョー・サンプルのソロ盤からの「虹の楽園(Rainbow Seeker)」なのが「意味深」。冒頭からなかなか熱い演奏で、さすが、当時人気絶頂だったのが良く判る演奏です。クルセイダーズ独特の粘りのあるファンクネスでは無く、スマートなファンクネスとクールなオフビートがメインで、往年のクルセイダーズ者からすると「オヨヨ」と肩すかしを食らう感じがします。

このライブ盤、選曲と演奏全体の雰囲気からすると、クルセイダーズのライブ盤というよりは、ジョー・サンプルのソロ・ライブ盤と誤解してしまうほど、ジョー・サンプルの音のカラーが色濃く出ています。それが原因の「スマートなファンクネスとクールなオフビート」。絶頂期のクルセイダーズのライブ盤としては、ちょっと不完全燃焼気味。LPではソロが結構切り刻まれているので、このライブ盤についてはCDがマストでしょう。

 
 

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2018年8月25日 (土曜日)

硬派なワシントン・ジュニア盤

今年の夏は蒸し暑さ半端ない。もうバテバテである。こんな酷暑、あったかなあ、と思うんだが、しっかり振り返ると、僕達の大学時代にも相当暑い夏があったような記憶がある。ちょうどジャズを聴き始めて、2〜3年目。昔々、フュージョン・ジャズ全盛時代の夏に、酷暑に耐えながら聴き親しんだアルバムを幾枚か、聴き直してみた。

Grover Washington, Jr.『Skylarkin'』(写真左)。1980年のリリース。ちなみにメインのメンバーは、Grover Washington Jr. (sax, fl, syn), Richard Tee (ac-p, el-p), Eric Gale (g), Marcus Miller (b), Idris Muhammad (ds), Ralph MacDonald (perc)。ベースに若き日のマーカス・ミラーが入っている。ドラムのムハマドと合わせて、独特のリズム&ビートを供給しているところが面白い。

この『Skylarkin'』は人気盤『Winelight』前の盤で、ワシントン・ジュニアの盤の中では地味な存在なのだが、『Winelight』を遙かに凌ぐ、グルーヴ度は満点な盤である。この独特のグルーヴ感は、リチャード・ティーのピアノ、マーカス・ミラーのベース、イドリス・ムハマドのドラム、ラルフ・マクドナルドのパーカッションという、結構ユニークな組合せのリズム・セクションに依るところが大きい。
 

Skylarkin  

 
ワシントン・ジュニアお得意のソフト&メロウな雰囲気のサックス・プレイの中に、ビターでハードなブロウもあって、意外と内容的に硬派なフュージョン盤に仕上がっている。ソフト&メロウなムードに流されない、メインストリーム・ジャズの雰囲気を残した、硬派なジャズの雰囲気が見え隠れするところが僕は気に入っている。聴いていても、なんだか背筋がピンと伸びる感じ。

リズム&ビートも実に個性的。少なくとも、ソフト&メロウの基調とする「甘い」リズム&ビートでは無い。若き日のマーカスの元気溢れるチョッパー、ラルフの躍動感溢れるカウベル。ファンクネス濃厚なティーのエレピ。そこに、ムハマドのアーシーなドラムが絡んで、通常のフュージョン・ジャズとはちょっと異なる、独特のグルーヴ感を持ったリズム&ビートが聴きもの。エリック・ゲイルのギターも良いアクセントとなっています。

この盤、コンテンポラリーな純ジャズな雰囲気を持った、硬派なフュージョン盤として、聴き応えのあるものです。水彩画の様なジャケットが、どうしても甘々なソフト&メロウなフュージョン盤というイメージを醸し出していて、ちょっと損をしている盤ですが、このジャケット・デザインに騙されることなかれ。ワシントン・ジュニアのリーダー作と聞いて、甘々なソフト&メロウなフュージョンを想起して敬遠するには勿体無い、隠れ好盤だと思います。

 
 

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2018年8月24日 (金曜日)

新しい音的要素の「異種格闘技」

この5年くらい前からだろうか。少なくとも、感覚的には、2010年代に入ってから、その傾向は顕著になったと感じている。いわゆる「21世紀のニュー・ジャズ」のムーブメントである。ジャズはもともと「異種格闘技」が得意な音楽ジャンル。他の音楽ジャンルの音を取り込むのが得意。

この2010年代に入ってから、ボイスやスピリチュアル、ノイズやラップを取り込んで、新しい響きを獲得した「21世紀のニュー・ジャズ」がトレンドになりつつある。1980年代後半からの「純ジャズ復古」の様に、過去のジャズの演奏スタイルの焼き直しというか、深化を旨とした動きとは異なり、もともとジャズの特質である「異種格闘技」な面を見直した、新たな「融合」を旨とした演奏トレンドである。

Donny McCaslin『Fast Future』(写真左)。2015年のリリースであるが、この盤も、そんな「異種格闘技」な面を見直した、新たな「融合」を旨とした演奏トレンドをベースとしている佳作である。ちなみにパーソネルは、Donny McCaslin (ts), Jason Lindner (el-p, ac-p, syn) Tim Lefebvre (el-b), Mark Guiliana (ds), David Binney (vo, syn), Nina Geiger (vo), Nate Wood (g), Jana Dagdagan (spoken word) 。 
 

Fast_future_1

 
ボーカルと朗読。ボーカルについては、激情的では無い、温和で穏やかなスピリチュアルな要素を表現する為に存在し、spoken word=朗読 が、ジャズにとっては「新しい響き」。リズム&ビートは、全く「従来のジャズ」っぽくない。まず、スインギーな4ビート、若しくは8ビートが存在しない。スイングせず、ファンクネスは希薄な、新しいジャズのリズム&ビート。20世紀の時代の様に「欧州ジャズ」専門では無い、ファンクネスが希薄な、パルシヴな4ビート&8ビート。

アドリブ・フレーズの基本は、力感溢れる漂う様な広がる様なモード演奏。演奏全体の雰囲気は明らかにジャズであるが、フレーズの特徴は「明るくポップ」。リズム&ビートは「従来のジャズ」っぽくないが、限りなく「多彩」。リズム&ビートに関しても「異種格闘技」。他の音楽ジャンルのビートを上手く取り入れて、ジャジーなビートに融合させている。

新しい音的要素の「異種格闘技」とリズム&ビートの「異種格闘技」。21世紀のニュー・ジャズは、新たな「異種格闘技」的な、他の音楽ジャンルからの「新たな音の要素の融合」が基本。ダニー・マッキャスリンのテナーも良い音してるし、ティム・ルフェーヴルのエレベも新時代のエレベの音。ジェイソン・リンドナーのピアノ&シンセが要所要所で効いていて、「21世紀のニュー・ジャズ」の音は心地良い。

 
 

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2018年8月23日 (木曜日)

往年のマントラが甦った様な新作

ジャズの世界でも、複数人で構成されるボーカル・グループの存在については、そんなに数は多くない。パッと考えて、パッと浮かぶグループ名は、スイングル・シンガーズとマンハッタン・トランスファーくらいしか思い浮かばない。まあ、ジャズ・ボーカルは「ピン」でやるに十分で、グループでやる意味があまり無いことがその理由なんだろう。

マンハッタン・トランスファー(以下「マントラ」と略す)は大のお気に入りである。もともと、マントラのデビュー盤が1975年。FMで聴いて、一発でお気に入りになった。大学に入って、本格的にジャズを聴き始める中で、マントラのアルバムも幾枚か所有するようになる。『Extensions』『Mecca for Moderns』『Bodies and Souls』などがお気に入り盤である。

そんなマントラが今年の3月、9年ぶりの新アルバムをリリースした。マントラといえば、2014年にグループの創設者であったティム・ハウザーが亡くなり、同年にトリスト・カーレスが新たに加入。この新作は、2009年の『TKhe Chick Corea Songbook』以来、トリスト・カーレス新加入後、初のオリジナル・アルバムになる。
 

Manhattan_tranfer_the_junction  

 
そのアルバムは、Manhattan Transfer『The Junction』(写真左)。リーダーのティム・ハウザーが逝去した後、マントラの音世界はどう変わったのか、興味津々でアルバムを聴く。するとまあ、マントラらしいダイナミックでフレッシュなコーラスを聴くことが出来る。4人のハーモニー中心のアレンジが素晴らしい。トリスト・カーレス新加入が「吉」と出たようだ。

打ち込みを加えたアレンジは今風で、そのサウンドは現代ジャズのど真ん中。決して「懐メロ」では無い。今のジャズとしてのマントラの音がここにある。1曲目の「Cantaloop (Flip Out!)」を聴けば、それが良く判る。ハービー・ハンコックの「Cantaloupe Island」をベースにしたUS3のヒット曲「Cantaloop (Flip Fantasia)」のマントラ・ヴァージョン。新しい響き。創造的な内容。実に格好良い。

カーレスの声が声域も声質もポールとあまり変わらないので、区別が付きにくいのが難点と言えば難点だが、女性ボーカルを加えた、往年のマントラ・コーラスの響きを聴けば、あんまり気にするほどのことは無い。往年のマントラが甦った様な新作。我々「マントラ者」からすれば、この盤、実に嬉しいプレゼントです。さあ、旧作を一気に聴き直してみようか。

 
 

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2018年8月22日 (水曜日)

フュージョン志向な純ジャズ盤

昨日のブログでご紹介した、Rainbow Featuring Will Boulware『Crystal Green』。1976年5月の録音だった。ギター・ベース・ドラムが伝説のフュージョン・バンド「スタッフ」のメンバー。加えて、趣味の良い端正なキーボードのブールウェア、パーカッションにラルフが担当。そこに、マイケル・ブレッカーの素敵なテナーが全編に渡って響き渡る。

そんなフュージョン志向な純ジャズ風な演奏が素敵な盤だったが、それから26年経って、Will & Rainbowの再会セッションが実現した。Will & Rainbow『Over Crystal Green』(写真左)。2002年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Will Boulware (p,key), Will Lee (b), Steve Gadd (ds), Peter Bernstein (g), John Werking (syn), Michael Brecker (ts), Randy Brecker (tp), Bob Berg (ts)。

ブールウェアのアレンジが冴えに冴えていて、『Crystal Green』も『Over Crystal Green』も同じ雰囲気で、とても上質なフュージョン風な純ジャズが展開されている。特にガッドのドラミングが、Will & Rainbowのリズム&ビートをバッチリ決めている。縦ノリのオフビートなドラミング。『Crystal Green』も 『Over Crystal Green』もガッドらしさ満載である。
 

Over_crystal_green_1  

 
『Crystal Green』では、テナーはマイケル・ブレッカーの全ての楽曲で担当していたが、この『Over Crystal Green』では、マイケルとボブ・バーグが担当を分け合っている。ただ、ボブ・バーグもマイケルの音に近いブロウで、適当に聴いていたら、どっちがどっちか判らない。それでも、どちらも素敵なテナー、実直で正統派なテナー。聴いていて惚れ惚れする。

ブールウェアのアコピが良い。リリカルで端正な味のあるピアノ。彼のピアノとキーボードが純ジャズな雰囲気を湛えていて、アルバム全体が「フュージョン志向な純ジャズ」な雰囲気に染まる。そして、趣味の良いギターやなあ、と思って聴いていたら、若き日のバーンスタインでした。僕が最近、注目して聴いているギタリスト。こんなところにいました。今回、初めて知りました。

この盤も、日本のジャズ・レーベル「Eighty-Eight's」からのリリースで、プロデューサーはもちろん「伊藤八十八」。こういう「フュージョン志向な純ジャズ」風な盤が日本のジャズ・レーベルからリリースされていることが嬉しい。『Crystal Green』と『Over Crystal Green』、どちらもフュージョン志向な純ジャズ盤として、今での愛聴盤の2枚です。

 
 

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2018年8月21日 (火曜日)

硬派でジャジーなフュージョン

学生時代、ジャズを聴き始めて、まだ2〜3年しか経っていない頃、リアルタイムで聴いたフュージョン・ジャズが無性に聴きたくなる時がある。1970年代後半から1980年代前半、当時はフュージョン全盛期、基本的に良質なフュージョン・ジャズのアルバムが多数、リリースされていた記憶がある。たまには「あれぇ」と首を傾げたくなるような内容のアルバムもあったが、時が経つにつれ、そういう駄盤はすっかり忘れてしまった。

人って良い思い出しか覚えていないと言うが、自分にとっては、音楽については「良い音楽」しか覚えていない様な気がする。自分にとっての「悪い音楽」って、全く覚えていないんですよね。僕だけかなあ。だから、思い出に残っているアルバムについては、是非とも入手したくなる。しかし、タイムリーにリイシューされれば幸せなんだが、時々、強く思い出に残っているのに、なかなかリイシューされない盤があったりして、狼狽えたりする。

また、昔、突如いきなりリイシューされた時に思い切って入手した後、全く音沙汰無く、再リイシューされない盤も沢山ある。特に、フュージョン・ジャズの好盤にこの傾向を強く感じる。そう、この盤についても、以前、リイシューされた時、思い切って入手しておいて「良かったなあ」とつくづく思う好盤である。フュージョン・ジャズのアルバム紹介にもあんまりその名前が挙がらないんだが、これ、好盤です。
 

Crystal_green

 
Rainbow Featuring Will Boulware『Crystal Green』(写真左)。1976年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Will Boulware (p, key, syn), Michael Brecker (ts), Cornell Dupree, Eric Gale (g), Gordon Edwards (el-b), Steve Gadd (ds), Ralph MacDonald (perc)。ギター・ベース・ドラムが伝説のフュージョン・バンド「スタッフ」のメンバーである。そこに、趣味の良い端正なキーボードのブールウェア、パーカッションにラルフが担当。

このリズム・セクション系のメンバーを見渡しただけでも、この盤、凄えなあ、と思うんだが、このリズム・セクションをバックに、凄く印象的なテナーが鳴り響く。そう、このフュージョン盤、このアートで理知的なコルトレーンっぽい、端正で正統派なテナーが聴きものなのだ。このテナーが凄く良い。当時、誰かなあ、と思ってパーソネルを確認したら、若き日のマイケル・ブレッカーでしたとさ。このフュージョン盤でのマイケルのテナー、凄く良い。

この盤、実は日本のジャズ・レーベル「East Wind」からのリリース。当時、流行だったソフト&メロウなフュージョン盤とは一線を画する、メインストリーム基調の硬派でジャジーなフュージョンは、決して甘さに流れない、メリハリ効いた切れ味の良い演奏。時代を越えて「今の耳」にも十分に訴求する内容だ。

 
 

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2018年8月20日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・127

ジャズには様々なスタイルがあって、色々聴き込んだりするのだが、結局、どこかでハードバップな盤に戻ってくる。ハードバップは純ジャズを代表するスタイル。1950年代前半から現れ始め、1950年代後半がピーク。1960年代に入って、ファンキー・ジャズやソウル・ジャズ、モード・ジャズに分岐していくのだが、源は「ハードバップ」。この純ジャズの基本である「ハードバップ」な盤は、ジャズ者の精神安定剤的な役割を果たしている。

Curtis Fuller『Soul Trombone』(写真左)。1961年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Curtis Fuller (tb), Freddie Hubbard (tp), Jimmy Heath (ts), Cedar Walton (p), Jymie Merritt (b), Jimmy Cobb (tracks 2-6), G. T. Hogan (track 1) (ds)。Impulse! 9000 seriesのA-13盤。適度なファンクネスが心地良い、上質のハードバップ盤である。

リーダーのCurtis Fuller(カーティス・フラー)はトロンボーン奏者。ビ・バップ時代後期から活躍した、J.J.Johnson(ジェー・ジェー・ジョンソン)と双璧のジャズ・トロンボーンのレジェンド。JJよりも音が丸くて優しいところが良い。音は丸いが音程はしっかりしていて、優しい音にはしっかりと「芯」が入っていて、音のインパクトが心地良い。僕はフラーのトロンボーンが大好きだ。
 

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フラーのトロボーン盤の優れどころは、ブルーノート・レーベルの諸作に多数あるが、実は、この盤の様に「インパルス・レーベル」にも「ある」。この『Soul Trombone』などは、フラーのトロンボーンを心ゆくまで堪能できる「優れもの」盤だ。丸く力強い音で、ピッチは確かで、バルブ・トロンボーンの様に速いフレーズを吹き上げる。むっちゃ格好良いトロンボーンである。

バックのミュージシャンの優秀な強者職人揃い。特に、テナーのジミー・ヒースが良い音を出している。ウォルトン、メリット、コブのリズム・セクションも良い。堅実かつエネルギッシュ、繊細で柔軟。目立たないが、じっくりと聴いていると、その良さがジンワリ伝わってくる。えっ、ハバードですか。ここでも無駄なくらいに「多弁」です(笑)。

1曲目の「The Clan」と5曲目の「Dear Old Stockholm」が僕のお気に入り、かな。インパルス・レーベルらしいジャケットも良い雰囲気。録音は1961年。ファンキー・ジャズとして括って良いくらい、適度なファンクネス漂う、素敵なハードバップ盤です。タイトル通り「ソウルフル」な展開も良し。好盤です。

 
 

東日本大震災から7年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年8月19日 (日曜日)

晩夏にピッタリのフュージョン盤

一昨日辺りから、一気に涼しくなった。9月上旬から中旬の陽気とかで、お盆の頃の猛暑日の日々の蒸し暑さを思い出すと、隔世の感がある。最高気温35度に馴れてしまっていたので、最高気温29度なんて聞くと、思いっきり涼しく感じる。完全に今年の酷暑に「洗脳」されている感じがする(笑)。いわゆる「晩夏」の雰囲気濃厚な、この週末であった。

「晩夏」のフュージョン・ジャズ。ふと頭に浮かぶのは、THE SQUARE『脚線美の誘惑』(写真)。1982年11月のリリースであるが、僕は1983年の夏から暫くの間だ、夏それも8月の後半から9月の中旬にかけて、やたらこのアルバムを聴いた思い出がある。なんか、僕の頭の中では「晩夏」のフュージョン、というイメージが出来上がっていて、ちょっと涼しい風が吹き始める「晩夏」の季節にこの盤を良く聴く。

THE SQUARE(ザ・スクエア)は、カシオペアと並んで、日本のフュージョン・バンドの双璧的存在。テクニックに優れてはいるが、楽曲のフレーズがポップでキャッチャーで聴き易いところが個性。カシオペアと比べて、ちょっと「俗っぽい」のだが、これが良い。それが「ザ・スクエア」の個性である。
 

Kyakusennbi_no_yuwaku

 
この「ザ・スクエア」の個性が確立された盤が、この『脚線美の誘惑』だと僕は思っていて、ザ・スクエアが聴きたいなあ、と思うと、まずはこの盤を聴く。ザ・スクエアはキーボードがメインの音作り、というイメージがあるが、この盤はそのイメージを確立させている。和泉宏隆のキーボードが要所要所で実に効いている。冒頭の「ハワイへ行きたい」など、和泉のキーボード・ワークがとても印象的。

キャッチャーな楽曲も多く収録されているところも良い。当時、コマーシャルで採用された「CHANGE YOUR MIND」(日立マクセル)、前述の「ハワイへ行きたい」は、FM東京の音楽番組『ソニーデジタルサウンド』のテーマ曲に採用された。タイトル曲の「脚線美の誘惑」もポップでキャッチャーな楽曲で、そういうところもこの盤の良いところ。

ボーカルものも1曲のみに縛られ、純粋にインストゥルメンタルな演奏を楽しめるところもグッド。デジタル録音にいち早く対応し、アルバムの音の良さも特筆もの。タイトル『脚線美の誘惑』のイメージ通りの脚線美を強調したイラストをあしらったジャケットも実に良い。ザ・スクエアの初期を代表する一枚として、晩夏の雰囲気にマッチするフュージョン盤として、この季節にピッタリの好盤です。

 
 

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2018年8月18日 (土曜日)

CTIレーベルからの純ジャズ盤

昨日より、いきなり涼しくなった千葉県北西部地方。やっと猛暑日から解放された。まあ、来週から、また蒸し暑さは戻るらしいが、一時でもこの涼しい状況は嬉しい限り。ホッとする。逆に、いきなり涼しくなったので、猛暑の時の疲れがドッと出たのか、今日は体調が思わしく無い。人間の体とはややこしい。

涼しくなると、ジャズを聴くのが楽しくなる。特に本格的な「純ジャズ」。硬派な熱い「純ジャズ」といきたいところだが、先に書い た様に、今日は猛暑の時の疲れが出たのか、体調が思わしく無い。硬派な熱い「純ジャズ」は、そっと避けて、ライトな純ジャズを選盤する。1970年代のクロスオーバー・ジャズの老舗レーベル、CTIレーベルからの選盤である。

Art Farmer & Jim Hall『Big Blues』(写真左)。1978年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (flh), Jim Hall (g), Michael Moore (b), Steve Gadd (ds), Mike Mainieri (vib), David Matthews (arr)。時代はフュージョン・ジャズ全盛の頃。双頭リーダーのファーマーとホールはハードバップ時代からのベテラン。バックのリズム・セクションとヴァイブは若手。
 

Big_blues  

 
クロスオーバー・ジャズの老舗レーベルのCTI、純ジャズ系のアルバムも多数リリースしている。バックのリズム・セクションは、確かに電気楽器を活用した当時の流行、クロスオーバー〜フュージョン・ジャズの音ではあるんだが、ビートは「4 or 8ビート」。リーダーやフロントにハードバップ時代からの強者ベテランを配し、旧来のハードバップと流行のクロスオーバー〜フュージョン・ジャズの良いところを合わせた、新しい響きの「純ジャズ」を聴かせてくれる。

この盤、フリューゲル・ホーンのファーマーとギターのホールが絶好調。実に覇気のある、ポジティブな演奏を聴かせてくれる。冒頭からの2曲「Whisper Not」「A Child Is Born」はスタンダード、ホールの小粋な自作曲をはさんで、ラストはクラシック系、ラベルの管弦楽曲「Pavane for a Dead Princes(亡き王女のためのパヴァーヌ)」のジャズアレンジ。なかなかに魅力的な演奏で、1970年代の純ジャズって、ちょっと微妙な雰囲気なんですが、この盤は例外。

バックのフュージョン系のリズム・セクションが良い。縦ノリのガッドのドラムに堅実なムーアのベース。神妙に純ジャズなフレーズを弾きまくるヴァイブは誰あろう、フュージョンの伊達男マイニエリである。この盤でのマイニエリ、実に良い。やれば出来るじゃないか。嬉しい発見である。「亡き王女のためのパヴァーヌ」のアレンジがなかなかの内容なのだが、若き日のマシューズでした。

 
 

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2018年8月17日 (金曜日)

テテ・モントリューの初期の傑作

ジャズの聴き始めて40年。それでもまだまだ、聴き込んでいないジャズメンはいる。たまたま聴く機会に恵まれなかったケースがある。リーダー作がなかなか再発されなかったり、CD化されなかったりで、そもそもアルバムが流通していないケース。このピアニストは、リーダー作がなかなか再発されなかったことで、計画的に聴き直しを進めことが出来なかった。

このピアニストのアルバムもそんな中のひとつ。まず、リーダー作が流通してない。まとめて聴き直したいなあ、と長年思ってきてが、なかなかそうはならない。これはもう駄目かなあ、と半ば諦めかけていたら、ダウンロード・サイトで、この人のリーダー作を相当数、見ることが出来る様になった。喜ばしいことである。

Tete Montoliu『Piano for Nuria』(写真左)。1968年の録音。ちなみにパーソネルは、Peter Trunk (b), Albert Heath (ds), Tete Montoliu (p)。スペインが輩出した盲目の天才ピアニスト、テテ・モントリューのMPS盤。ほぼ、デビュー盤に近い。いわゆる「メジャー・デビュー」盤である。
 

Piano_for_nuria

 
テテのピアノは一聴すると、セロニアス・モンクに似ていると感じる。しかし、モンクに比べて、音の飛び方がノーマルで、安定したスイング感がある。タッチは太い。高速な手捌きは無いが、堅実な手捌きで安定感が抜群。テテは1933年生まれだから、この盤を録音した時は35歳。若手から中堅に差し掛かる、ピアニストとして充実した時期。さすが堅実で安定感のあるピアノである。

本作ではスタンダード・ナンバーを弾きまくっていて、テテのピアノの特徴が良く判るのも、この盤の良さである。スタンダード・ナンバーを弾くにつけ、テテはスインガーなピアノではなく、モードな香りが漂う、当時としてモダンな、新しい響きがメインのピアノであることが良く判る。

モンクっぽくてモンクでは無い。独特の音の飛び方をするアドリブ・フレーズも含めて、テテのピアノの個性が満載である。そういう意味で、この盤はテテの初期の傑作の一枚でしょう。ジャケットは地味ですが、ジャズ・ピアノ好きなジャズ者の方々については、避けて通れない、聴き体験必須のピアノ・トリオ盤です。

 
 

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2018年8月16日 (木曜日)

仏のアコーディオン・ジャズです

ジャズは色々な楽器に適用する。というか、様々な楽器でジャズを演奏することが出来る。楽器であり、旋律を演奏することが出来れば、メイン楽器で活躍することが出来る。それほど、ジャズとは自由度の高い音楽ジャンルであり、応用力の高い音楽ジャンルである。つくづくそう思う。今回は「アコーディオン」。

ダニエル・ミル(Daniel Mille)。フランスのアコーディオン奏者である。ピアソラ作品集1993年アルバム『河岸にて』でデビュー。ジャズのアコーディオン奏者と言えば、僕は「リチャード・ガリアーノ」しか知らない。今回、このフランスのアコーディオン奏者を知った。そして、調べてみて、ジャズのアコーディオン奏者って、意外といる、ということが判った。

Daniel Mille『Après la pluie』(写真左)。2005年のリリース。ちなみにパーソネルは、Daniel Mille (accordion), Rémi Vignolo, Sylvain Romano (b), Isabelle Cordier (cello), Pascal Rey (ds, perc), Stéphane Belmondo (flh, fr-horn, tp),Eric Légnini (p), Catherine Pacheu (viola), Marc Aidinian, Véronique Ragu (vln)。
 

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パーソネルを見渡せば、ビオラやバイオリンの弦楽器を上手く活用した、ニュー・ジャズな編成。アルバムの音を聴けば、従来のスインギーなジャズの要素が全く無い、いわゆる、4ビートやファンクネスが皆無の、内省的でリリカルな演奏がギッシリと詰まっている。ミルのアコーディオンが哀愁を帯びた、リリカルな音色で内省的に旋律を奏でる。決して熱くない。クールで静的なアコーディオンの音色。

加えて、ステファン・ベルモンドのフリューゲル・ホーンの音色が味わい深い。ミルの哀愁を帯びた、リリカルで内省的なアコーディオンにぴったりと寄り添うように、フリューゲル・ホーン独特の柔らかく丸い音色で、リリカルに内省的に吹き上げる。このミルのアコーディオンとベルモンドのフリューゲル・ホーンの共演が見事。

リズムカルでハイテンポな楽曲は全く無い。冒頭の「Intro - Après la pluie...」から「L'ultimo Giorno」まで、静的で内省的でリリカルな演奏が続く。しかし、適度なテンションが張っていて、それぞれの楽器のテクニックが高く、硬軟自在、変幻自在な演奏が展開されるので、飽きることは決して無い。充実した欧州のニュー・ジャズ盤である。

 
 

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2018年8月15日 (水曜日)

ソフト&メロウなマンジョーネ

夏の思い出のフュージョン・ジャズ。1980年の夏だったかと思う。このアルバムは良く聴いた。時はフュージョン・ジャズの大ブームの後期。ソフト&メロウなフュージョン・ジャズが売れに売れていた。このアルバムもそう。今思えば、なんでこのアルバムが売れに売れたのか、良く判らないところがあるが、とにかく、このアルバムは、1980年の夏、僕達のヘビロテになっていた。

Chuck Mangione『Fun and Games』(写真左)。1979年のリリース。ちなみにパーソネルは、Chuck Mangione (flh,el-p), Grant Geissman (g), James Bradley, Jr. (ds,perc), Charles Meeks (b), Bill Reichenbach Jr. (tb),  Chris Vadala (fl,sax)。1977年の『Feels So Good』の大ヒットで一躍、有名ジャズメンの仲間入りをしたマンジョーネの佳作。

まずは冒頭の「Give It All You Got」。邦題は「栄光をめざして~1980ウインター・オリンピックのテーマ」。ABCスポーツで使われた、1980年のレイクプラシッド冬季五輪のテーマソング。当時、フュージョン・ジャズの寵児として有名ジャズメンであったマンジョーネ。ここでも良い演奏しています。特に、彼のトレードマークのフリューゲル・ホーンの音が柔らかくて優しい。
 

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2曲目以降の楽曲も、どれもが「ソフト&メロウ」なフュージョン・ジャズの魅力溢れる演奏の数々。今の耳で聴いても、マンジョーネのフリューゲル・ホーンは柔らかで優しく優雅で、AORライクなバック演奏のアレンジと相まって、典型的なソフト&メロウなフュージョン・ジャズを展開している。やはり、この盤をソフト&メロウなフュージョン・ジャズの好盤としているのは、マンジョーネのフリューゲル・ホーン。

クリス・バダラのサックス&フルートも明確に「ソフト&メロウ」なフュージョン・ジャズの音をしている。しかも、エモーショナルなブロウが心地良く、力感あるダンディズム溢れるテナーとフルートの調べは聴いていて惚れ惚れする。ここにマンジョーネのフリューゲル・ホーンが絡むのだ。何をどう演奏しても「ソフト&メロウ」なフュージョン・ジャズに仕上がってしまう。

今ではあまり語られないマンジョーネの『Fun and Games』であるが、どうして、今の耳で聴いても、上質のフュージョン・ジャズで聴き応え十分。マンジョーネ以外、僕としては良く知らないメンバーばかりなんですが、結構、高度で内容のあるバック演奏で、今回、久し振りに聴き返したのですが、いや〜感心しました。しばらく、この盤、バーチャル音楽喫茶『松和』ではヘビロテですね。

 
 

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2018年8月14日 (火曜日)

ベンソンのブラコンAOR盤

ジャズの世界で「唄って弾きまくる」ギタリスト、と言えば、ジョージ・ベンソン(George Benson)である。デビューから暫くは、ウェス・モンゴメリーの後継として、先進的に弾きまくる純ジャズなギタリストだった。が、フュージョン・ジャズの大流行の波に乗り、もともと余芸だった「唄う」部分を前面に押し出し始めた。

そして「ソフト&メロウ」なAORの流行に乗って、「唄って弾きまくる」ギタリストとして、フュージョン・ジャズの代表的存在として売れに売れた。余芸とは言え、ベンソンのボーカルは一級品。弾きまくるギターは超一級品。その個性の組合せで奏でる「ソフト&メロウ」なフュージョン・ジャズは強力な訴求力があった。

1980年代に入って、ベンソンは「唄って」の部分の割合を上げ始める。「ソフト&メロウ」なフュージョン・ジャズから、ブラック・コンテンポラリー(ブラコン)へのシフトである。リーダー作を重ねる毎にボーカルの度合いを上げていった。それに比例して、ベンソンの人気は上がっていった。そして、このアルバムを聴いた時には「もはやベンソンはジャズには戻ってこないだろう」と思った。
 

2020

 
George Benson『20/20』(写真)。1985年1月のリリース。フュージョン・ジャズの大流行が終焉を迎え、スムース・ジャズへの変換と「純ジャズ復古の大号令」がかかった頃。ベンソンは、フュージョン・ジャズの斜陽に合わせて、ブラコンへのシフトを進めていった。そして、このアルバムでブラコンへのシフトを完遂する。

もはやこのアルバムはジャズでは無い。ジャズの要素を色濃く仕込んだブラコンである。それでも、ベンソンのボーカルはジャズ出身の正統なものであり、ジャズの耳にも違和感無く楽しめる内容になっているところが素敵である。特にボーカル・ナンバーがいすれも「白眉の出来」で、ギターについても、短いフレーズではあるが、ハッとするような切れ味の良いソロを弾いていて、なかなか楽しませてくれます。

ロバータ・フラック、パティ・オースティン、ジェイムス・テイラーら豪華なゲスト陣もなかなかの「聴きどころ」を提供してくれています。デジタル化の影響も最小限に留めていて録音もまずまず。この盤、ベンソンの代表盤の一枚に挙げてもよいくらい、充実した内容になっていると思います。

 
 

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2018年8月10日 (金曜日)

フリゼールの野心的なリーダー盤

ビル・フリゼール(Bill Frisell)のギターが好きだ。ビル・フリーゼルは1951年米国生まれのギタリスト。玄人筋では、現代の最高峰のギタリストの一人と評価されているが、こと我が国では全くといっていいほど人気が無い。しかし、この人のギターを聴くと、即興演奏としてのギターって、こういうのを言うんだろう、と強く思う。とにかく、即興性の高いギターが最大の個性である。

といって、この人のギターを「ジャズ・ギター」と定義して良いものか、とも思う。フリゼールのギターは自由度が高く、そのフレーズは適度に捻れ、牧歌的な長閑さが特徴。モード奏法の自由度を徹底的に高くしつつ、浮遊感が強くコードに縛られない柔軟なフレーズを展開する。そして、そのフレーズは、常識的に流麗なものでは全く無く、即興性高く適度に外れる。

僕はフリゼールのエレギを「ギターのモンク」と形容する。ジャズ・ピアノの奇才、セロニアス・モンク。彼のピアノをエレギに置き換えた様な、フリゼールの即興性に溢れ限りなく自由度の高いフレーズを、適度に外れた音で連発する。バックのビートは絶対に4ビートでは無い。フリゼールのエレギに合わせた、無ビートに近い自由度の高いビート。つまり、これが「ジャズ」と呼んで良いのか、とついつい考えてしまう。
 

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Bill Frisell『This Land』(写真左)。1992年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Bill Frisell (g), Don Byron (cl, b-cl), Billy Drewes (as), Curtis Fowlkes (tb), Kermit Driscoll (el-b, ac-b), Joey Baron (ds)。フロントに、ドン・バイロンのクラリネット、カーティス・フォルクスのトロンボーンが目を引く。

アメリカン・ミュージックの歴史を辿る様な、米国ルーツ・ミュージックのオンパレード。カントリー、フォーク、ジャズ、ブルース、ラグタイムなど、米国ルーツ音楽の要素が要所要所に散りばめられている。エレギ、クラリネット、トロンボーン、アルト・サックスが絡みに絡んだ、ディキシーランド・ジャズの様な、自由度と即興性が限りなく高いアドリブ展開が凄まじい。

これを「ジャズ」と呼ぶか、という議論もあるだろう。しかし、この自由度と即興性の高さ、閃きと反応のアドリブの応酬。そして、様々な米国ルーツ音楽を取り込み融合する。これは広い意味で「ジャズ」だろう。ディキシーランド・ジャズの様な響き即興性はジャズの源を探る様でもあり、意外とこのアルバム、フリゼールにとって、意外と野心的なリーダー作ではないか、と思うのだ。

 
 

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2018年8月 9日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・103

ジャズの有名レーベルの盤をカタログ番号順に聴き進めて行くと、今まで、全く聴いたことが無かった盤に出会うことがある。思わず、こんなアルバムあったんや、なんて嬉しくなる。ジャズの有名レーベルの盤なんで、内容はそれなりにある。聴いてみて、そのパーソネルの組合せに感心したり、演奏されているスタイルに思いを馳せてみたり、興味津々である。

インパルス・レーベルの聴き直し、である。Chico Hamilton『Man from Two Worlds』(写真左)。カタログ番号A-59。1963年12月11日の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts, fl), Gabor Szabo (g), Albert Stinson (b), Chico Hamilton (ds) 。時は1963年。ハードバップ黄金時代は過ぎ去って、ハードバップを基本にジャズの多様化が始まった頃。この盤も例に漏れず、実に変わった盤である。

実は、今回、インパルス・レーベルの盤をカタログ順に聴き直していて、この盤の存在に初めて気がついた次第。今回、初めて聴いた。そもそも、リーダーのドラマー、チコ・ハミルトンのことを余り知らない。米国西海岸ジャズを代表するドラマーの一人ということは知っていたが、リーダー作は1950年代の数枚程度。今まで、僕にとって、リーダー作を聴く機会に恵まれないドラマーであった。
 

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1950年代の米国西海岸ジャズの代表的ドラマーなので、あまり革新的なことはしないタイプと勝手に思っていたが、この盤を聴いて、その考え方は一気に変わった。まず音を聴いて、なんやこれ、と思ったのが「ギターの存在」。これは一度聴いたら、必ず覚えている。ガボール・ザボである。ガボール・ザボをギタリストに招聘している。

テナー・サックスとフルートの音も、これは誰だ、と思う。コルトレーンの様でコルトレーンでは無い。聴き易いコルトレーン。コルトレーンの良いところ、聴き易いところだけをピックアップした様なプレイ・スタイル。おお、これはもしや、チャールズ・ロイドではないか。当時はまだ駆け出しのロイドである。そんなロイドをフロント楽器に招聘している。

出てくる音は、新しい響きのするハードバップ。大衆受けを目指したファンキー・ジャズやソウル・ジャズの微塵も無い。硬派なメインストリームな純ジャズ路線。そこに、ザボのエスニック&なジプシー的な、不思議な響きのするギター、聴き易い、穏やかなスピリチュアルなテナー、それを支える柔軟かつ多彩なドラミング。加えて、この演奏、ピアノレス・カルテットである。野心的な純ジャズ路線極まりない、聴き応えのある盤である。

 
 

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2018年8月 8日 (水曜日)

この盤も「新しいクールな何か」

従来のジャジーなリズム&ビートからの脱却。新しいクールな響きのモーダルなフレーズ。ジャズではあるが、今までのジャズでは全く無い。ボイスやノイズをもジャズに取り込み、融合する。やっと、ジャズに「新しいクールな何か」が現れ出で始めた。明らかに「ジャズの進化」だと僕は感じている。

Christian Scott『Stretch Music (Introducing Elena Pinderhughes)』(写真左)もそんな「新しいクールな何か」の一枚である。2015年9月のリリース。この盤も明らかに従来のジャズとは全く異なり、スインギーな横乗りの4ビートや、パルシブでファンキーな8ビートの採用は全く無い。従来のジャズの基本要素だった「スインギーなオフ・ビート」は全く見向きもせず、最終的にビートを排除。拡がりと緩やかな抑揚をベースとしたビートが特徴。

この盤の音世界については、他のジャンルの音楽との「融合」がベース。フリー・ジャズから現代音楽の音の要素を取り込みもあつつ、新しい雰囲気のリズム&ビートは、明らかにR&Bからブラコンなど、ブラック・ミュージックのグルーヴ感濃厚。それでいて、ファンクネスは希薄。従来のジャズにあった「粘り」や「黒さ」の要素は見当たらない。スッキリと切れ味の良い、透明度溢れる柔らかなエコーが「拡がりと緩やかな抑揚をベースとしたビート」を増幅する。
 

Stretch_music  

 
とりわけ、クリスチャン・スコットのトランペットの音が素敵である。とても良く鳴り、エッジが丸く、音の芯が「優しい」。それでいて、音の伸びが良くて、ロング・トーンは「スーッ」と伸びる。テクニックは確かで、アドリブ・フレーズの淀みが無い。このトランペットが「新しいクールな何か」なフレーズを印象的に吹き進めていく。

彼の音は「陰鬱で憂鬱が見え隠れする」ダークなテイストが個性とされるが、この盤ではその従来のテイストは明らかに後退している。各曲の音がポジティブで外向的で、アーバンで夜の雰囲気が漂う穏やかなサウンドにどこか仄かな明るさを感じる。エレナ・ピンダーヒューズ(Elena Pinderhughes)のフルートもとても印象的。その他のメンバーについては、僕の知っているメンバーはいない。

それでも、このアルバムを通じて判るのは、この盤のバックバンドって、結構な力量の持ち主ばかりが参加していて、明らかに新しく、高テクニックなバッキングを供給している。そんなバッキングを得て、この盤では、クリスチャン・スコットはとても気持ち良く「新しいクールな何か」を包含した、新しいトランペットのフレーズを聴かせてくれるのだ。

 
 

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2018年8月 7日 (火曜日)

ジャズ・トレンドの分水嶺

1980年代のハードバップ回帰、いわゆる「ネオ・ハードバップ」のムーヴメントを捉えて、帝王マイルスは「昔のジャズを焼き直して、何が面白いのか」とバッサリ切り捨てたのを覚えている。「過去の音楽を再びやるなんて、俺には考えられない。常に自分がクールと思う新しい音を追求する」。この革新性こそ、ジャズなんだな、と心底感心したことを覚えている(俺の音をジャズと呼ぶな、と帝王に怒られそうだが・笑)。

確かに、1980年代の「純ジャズ復古」のムーブメント以来、過去の音のトレンドの焼き直し、深化はあったが、新しいクールな何か、がジャズに現れ出でたか、と問えば、答えは「ノー」。もはや、ジャズは深化はするが進化はしない、のでは無いかと思っていたら、この5年ほど前から、そんな「新しいクールな何か」がジャズに現れ出で始めた。

ロバート・グラスパーやカマシ・ワシントンを中心とするムーブメントである。ジャズがメインなんだが、R&B、ロック、ヒップホップ、レゲエ、ブルースまで様々なジャンルを融合、ボイスやノイズを新しいソロ楽器の様に扱い、ボーカルに意味を持たせて「スピリチュアル」な響きを前面に押し出す。そして、一番特徴的なのは「リズム&ビート」の扱い。従来のジャズの基本要素だった「スインギーなオフ・ビート」は全く見向きもせず、最終的にビートを排除。
 

Keyon_harrold_the_mugician  

 
これを僕は「リズム&ビートのモード化」と呼んでいるが、拡がりと緩やかな抑揚をベースとしたビートが特徴。その上に、緩やかで音を選び間を活かした、落ち着いたアドリブ・フレーズが展開される。今までのモダン・ジャズの「正反対」なアプローチの数々。2010年を越えて、やっと「新しいクールな何か」がジャズに現れ出で始めた。

Keyon Harrold『The Mugician』(写真左)。2017年10月のリリース。新世代のジャズ・トランペッター、キーヨン・ハロルドの最新アルバム。いや〜、クールである。まさに、「新しいクールな何か」がこのアルバムに詰まっている。ジャズがベースではあるが、リズム&ビートがジャズでは全く無い。全く新しいクールなリズム&ビート。全く新しい響きのモーダルなトランペット。

従来のジャジーなリズム&ビートからの脱却。新しいクールな響きのモーダルなフレーズ。ジャズではあるが、今までのジャズでは全く無い。ボイスやノイズをもジャズに取り込み、融合する。やっと、ジャズに「新しいクールな何か」が現れ出で始めた。従来のモダン・ジャズと、これからの「ネオ・モダン・ジャズ」。意外と2010年辺りが、ジャズのトレンドの分水嶺になっていくのかも知れない。

 
 

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2018年8月 6日 (月曜日)

The Chuck Rainey Coalition

チャック・レイニー(Chuck Rainey)。米国のベーシスト。セッション・ベーシストとして、ソウル、R&B、ジャズ、クロスオーバーを中心に幅広いジャンルで活躍。ボーダーレスなベースで、それぞれの音楽ジャンルに適したフレーズを弾き分ける。それでいて、音色と手癖はレイニーなれではのもので、セッション・ベーシストとしても、純粋にベーシスト単独としても優れた才能の持ち主であった。

Chuck Rainey『The Chuck Rainey Coalition』(写真左)。1972年のリリース。ちなみにパーソネルは、Chuck Rainey (b), Bernard Purdie, Herb Lovelle, Jim Johnson, Ken Rice (ds), Billy Butler, Cornell Dupree, Eric Gale (g), Richard Tee (org,p), George Stubbs (p), Montego Joe, Specs Powell, Warren Smith (per), Trevor Lawrence (ts), Melvin Lastie (tp) 。

パーソネルはじっくり眺めると、後の「伝説のフュージョン・バンド」、スタッフの主要メンバーが名を連ねている(ドラムのスティーヴ・ガッド以外)。他のメンバーもクロスオーバー・ジャズからフュージョン・ジャズの強者ばかりで、このアルバムのセッション、結構、充実していたんやろうなあ、と思う。本当に皆、楽しそうに演奏しているのが良く判る。
 

The_chuck_rainey_coalition_1  

 
録音年は1972年。クロスオーバー・ジャズが台頭していた頃。演奏のアレンジはまだ「もったり」していて、洗練されていない。切れ味も不足しているし、メリハリも弱い。それでも、レイニーのベースをメインに、演奏全体のグルーヴ感は、後のフュージョン・ジャズに直結するものだ。

楽曲とアドリブ・フレーズの「ソフト&メロウ感」も、後のフュージョン・ジャズを先取りした様な雰囲気。こういう演奏が1972年にリリースされていたことに驚く。鑑賞前提の演奏、ながら聴きをしながら演奏テクニックに興ずる。そんなフュージョン・ジャズのプロトタイプがこのアルバムの中に詰まっている。

それにしても、チャック・レイニーのベースはいつ聴いても「痺れる」。ピチカートのグルーヴ感、裏ビートを効果的に使った個性的なフレーズ、印象的なピッキング・ハーモニクス。どれもが、後のエレクトリック・ジャズにおけるエレベの先進的奏法を先取りしている。アルバムの演奏の内容は発展途上だが、後のフュージョン・ジャズの演奏の基本形が、このアルバムのセッションでほぼ固まっている。面白い盤である。

 
 

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2018年8月 5日 (日曜日)

こんなアルバムあったんや・102

まず、レオ・リチャードソン(Leo Richardson)という名を知らない。どうも英国ジャズのサックス奏者らしい。どうりで知らないはずだ。ジャケットの雰囲気を見ても、実にレトロっぽくて、リリース年が2017年。これは1970年代辺りの英国ジャズのリイシュー盤だと思った。

Leo Richardson『The Chase』(写真左)。2016年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Leo Richardson (ts), Rick Simpson (p), Mark Lewandowski (b), Ed Richardson (ds)。ラストの8曲目にのみ、 Alan Skidmore (ts) が、2曲目と4曲目にのみ、Quentin Collins (tp) が加わる。

レオ・リチャードソンは英国の若手テナーサックス奏者。これがデビューアルバムとのこと。1曲目の「Blues for Joe」を聴けばビックリする。どこから聴いても、正統なハードバップなジャズが思いっきり展開されている。しかし、録音が良い。ということで、この盤、実は最初聴いた時は、1970年代の隠れハードバップ盤だと思った。
 

Leo_richardson_the_chase

 
ストレート・アヘッドな純ジャズ一本のアルバム。テナーはテナーらしい音を出し、ピアノはモーダルに堅実なバッキングでフロントを支え、ベースはブンブン音を立て、ドラムは硬軟自在にポリリズムを叩き出す。1960年代中盤〜後半のモーダルなハードバップがこの盤に詰まっている。こんなアルバムが、新盤として2017年にリリースされた、という事実に驚く。

よくよく聴くと、アドリブ・フレーズや、バックのリズム&ビートに今風な雰囲気が漂っていて、どう考えても1960年代中盤〜後半には無かった響きがところどころに聴かれて、そこでやっとこの盤が、1970年代のハードバップ盤のリイシューで無いことに気がつく。気がついた時はビックリした。いわゆる「ネオ・ハードバップ」にまだ、これだけの「ジャズ表現の工夫の余地」が残っていたとは恐れ入った。ジャズは奥が深い。

プレイスタイルは、コンテンポラリーかつストレート・アヘッド。これが英国ジャズから生まれたことにまた驚く。英国と言えば、ジャズの正統なスタイルは「ビ・バップ」と言い切るほどの硬派なジャズ者の集まる国である。そこで生まれ出でた、この「ネオ・ハードバップ」盤。これが「格好良い」のだ。次作が楽しみ。こういう盤が新盤でリリースされるから、ジャズって奥が深くて面白い。

 
 

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2018年8月 4日 (土曜日)

意外と無名な盤だけど好盤です

今年の夏は酷暑である。とにかく蒸し暑い。通勤の往き帰り、特に最寄りの駅から自宅までの徒歩が辛い。加えて、最寄りの駅から会社までの徒歩が辛い。汗だくだくになる。家に帰り着いて、就寝前のひととき、エアコンの効いた涼しい部屋の中で、ゆったりとした気分で聴くECMレーベルの諸作は格別なものがある。

極力、電化サウンドを排除し、アコースティックな表現を基本とし、限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音をベースにした、欧州ジャズのお手本の様なECMレーベルの諸作。酷暑の夏、エアコンの効いた部屋の中で聴くECMレーベルのアルバムは、非常に心地良い。確かに、夏の夜はECMレーベルのアルバムを選ぶことが多い。

Jan Garbarek-Bobo Stenson Quartet『Witch-Tai-To』(写真左)。1973年11月27日の録音。ECM 1041番。ちなみにパーソネルは、Jan Garbarek (ts, ss), Bobo Stenson (p), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds)。ECMレーベルのお抱えリズム・セクション、ボボ・ステンソン・トリオをバックに、これもECMレーベルの看板サックス奏者、ヤン・ガルバレク、フロント1管のカルテット構成。
 

Witchitaito

 
ヤン・ガルバレクの透明度溢れる、クリスタルで硬質な、切れ味の良く伸びの良いサックスが素晴らしい。ガルバレクのサックスの音が鳴り響くだけで、その音世界は「ECMレーベルの音世界」に染まる。ガルバレクのサックスは硬軟自在、伸びの良い柔軟なフレーズを繰り出していく。特にその「飛翔感」は彼独特の個性。これが非常に涼しげで「清涼感」抜群。

バックのボボ・ステンセンのピアノ、パレ・ダニエルソンのベース、ヤン・クリステンセンのドラム、このECMお抱えのリズム・セクションの音も実に印象的。ガルバレクと同様に、透明度溢れる、リリカルで硬質なステンセンのピアノ。これがガルバレクのサックスと実に相性が良い。絵に描いた様なECMレーベルの音。清涼感抜群、間の静謐感を活かした、独特のアドリブ・フレーズ。

ダニエルソンのベースは重量感溢れ、弦の響きが心地良い。クリステンセンのドラムは堅実かつ多彩。正確でタイトなリズム&ビートを叩き出す。このECMお抱えのカルテットの繰り出すフレーズのインスピレーションとバリエーションは特筆もの。ファンクネス皆無な、間を活かしたオフビート。欧州ジャズの典型的な音世界がこのアルバムに詰まっている。意外と無名なアルバムだが好盤である。

 
 

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2018年8月 3日 (金曜日)

ジミー・スミスの「別の顔」

オルガン・ジャズを聴き進める上では、ジミー・スミス(Jimmy Smith)は外せない。ジミー・スミスは、オルガン・ジャズの祖であり、最大のレジェンドである。オルガン・ジャズと言えば、ジミー・スミス。オルガン・ジャズについては、ジミー・スミスだけを聴いていれば良い、とまで極論するジャズ者の方もいるくらいである。

確かにそれはあながち間違いではない。ジミー・スミスのアルバムに入っている、オルガンの弾き方、音色、雰囲気の全てが、オルガン・ジャズのお手本となるものばかり。ジミー・スミス以降のオルガン・ジャズは、ジミー・スミスの弾き方、音色、雰囲気を踏襲した「フォロワー」ばかり。ジミー・スミスの個性を踏襲しながら自らの個性を織り交ぜる「変化、深化」の積み上げである。そんなジミー・スミスのリーダー作であるが、どれが良いのか。

実はどれもが良いので、オルガン・ジャズを極めるには、ジミー・スミスのリーダー作を全部聴いて下さい、と言った方が早い、と思っている。事実、僕も今までにジミー・スミスのリーダー作は結構な数を聴き込んでいる。彼のリーダー作の7割は聴いたことがあるかな。ジミー・スミスのリーダー作には駄盤は無い。どれもが水準以上のもの。晩年のプレイはちょっとマンネリ気味ではあったが、それでも演奏テクニックやアドリブの弾き回しは超一品であった。
 

Root_down  

 
さて、そんなジミー・スミスのリーダー作の中で、最近のお気に入りは、Jimmy Smith『Root Down』(写真)。1972年2月8日、ロサンゼルスは、The Bombay Bicycle Clubでのライブ録音。目を引くのは、Wilton Felder (b)。クルセイダーズのベーシストウィルトン・フェルダーがベースを担当している。ということは、R&B志向のオルガン・ジャズかな、と思うんだが ・・・。

冒頭の「Sagg Shootin' His Arrow」のオルガンを聴くと、これってプログレッシブ・ロックか、と感じる。ドラムもロック調の乾いたオフビードなもの。そこに、ウィルトン・フェルダーの粘るベースが絡んでくる。そして、極めつけは、アダムスのエレギ。ワウワウ・ペタルを駆使しつつ、攻撃的でファンキーなリフを繰り返す。思わずエレ・マイルスを彷彿とさせる、エレクトリック・ジャズの響き。リズム&ビートは乾いたロック・ビート。コレってプログレやん(笑)。

攻撃的なプログレ的雰囲気を内包しながら、この盤の音世界は「ジャズ・ロックなオルガン・ジャズ」。エレ・マイルスに刺激を受けたのか、1970年代前半のロック・ムーブメントに触発されたのか、このジミー・スミスのリーダー作はかなりロックしている。あのこってこてファンキーなオルガン・ジャズが得意のジミー・スミスがこんな攻撃的なプログレ風のオルガンを弾き倒すとは。ジミー・スミスのアナザー・サイドを楽しむ事の出来る「好ライブ盤」である。

 
 

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2018年8月 2日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・126

ジョージ・ウォーリントン(George Wallington)は、1924年10月27日、シチリア島パレルモ生まれ。1993年に68歳で鬼籍に入っている。1940年代前半から1950年代にかけて、ジャズ・ピアニストとして活躍。1960年に家業を継ぐためジャズ界から引退。1980年半ばに一時期復帰したが、活躍のメインは1950年代。当然リーダ作は少なく十数枚に留まる。サイドマンとしても10枚程度。

しかし、このピアニスト、リーダー作数枚で、ジャズ史に名前を残している。その一枚が、George Wallington『Jazz for the Carriage Trade』(写真左)。1956年1月20日の録音。プレスティッジのPRLP 7032番。ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp), Phil Woods (as), George Wallington(p), Teddy Kotick(b), Bill Bradley as Arthur Taylor (ds)。ハードバップ中期、フロント2管のクインテット構成。

この盤が、聴けば判るのだが、プレスティッジ・レーベルでの録音らしからぬ、演奏全体が端正で活力漲り、流麗かつダイナミック。ブルーノート・レーベルの様に、リハーサルにもギャラを払って、幾度もリハーサルを重ねて、この盤の録音本番に至ったのでは、と思う位に、素晴らしい演奏の数々。これだけ楽器がしっかり鳴って、テクニック優秀、歌心満点なアルバムって、プレスティッジ・レーベルにはなかなか無い。
 

Jazz_for_the_carriage_trade_1  

 
冒頭の「Our Delight」を聴けば、フロントの2管、トランペットとアルト・サックスが絶好調なのが判る。これだけ力強く、良く鳴るトランペットって誰なんだ、と思って首を捻りながらパーソネルを見て「えっ、これがドナルド・バードなん」とちょっとビックリ。そして、流麗で唄うが如く、歌心満点なアルト・サックス。これ誰なんや、とパーソネルを見れば「フィル・ウッズかあ」と思わず感嘆の声を上げる。

リーダーのウォーリントンのピアノは知的なバップ・ピアノ。洗練されたフレーズでフロントの2管を温和に支える。決して、大立ち回りはしない。決して前へは出ない。堅実なベースとドラムと相まって、とても趣味の良いバッキングを実現している。これが見事。こんなに知的で粋なリズム・セクションを得て、フロントの2管は唄うが如く語るが如く、雄弁にポジティブに端正で堅実なアドリブ・フレーズを展開する。

ジャケットはちょっとレトロ調だが、これはこれで実に味がある。このジャケット・デザインも、やっつけデザインが得意な(笑)プレスティッジ・レーベルらしからぬ優れたもの。典型的なハードバップのお手本の様な純ジャズが展開されていて、実に聴き応えがある。プレスティッジ・レーベルらしからぬ、端正でまとまった、ダイナミックかつ繊細なハードバップ。全編に渡って聴き所満載です。

 
 

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2018年8月 1日 (水曜日)

マーカスの考える「融合音楽」

マイルスの最後の相棒、ベーシストのマーカス・ミラー。僕はミラーのエレベが結構、お気に入り。マーカスのマイルス追悼盤だった『The Sun Don't Lie』(1993年)を聴いて以来、ずっとマーカスのリーダー作を追いかけている。ベーシストの腕前は超一級品。しかも、マイルスが重用した様に、アレンジとプロデュース力も超一級品。そんな彼のリーダー作はどれもが聴き応え十分。

そんなマーカス・ミラーの最新盤がリリースされた。Marcus Miller『Laid Black』。今年6月の最新作。前作『Afrodeezia』以来、約3年ぶりとなる最新作。ゲストに、セラ・スー (vo) / トロンボーン・ショーティ (tb) / ジョナサン・バトラー (g, vo) / TAKE6 (vo) / カーク・ウェイラム (fl, ts) を迎えて、最新のアーバン・ミュージック、ヒップホップ、トラップ、ソウル、ファンク、R&B、ジャズを取り入れた内容。

アルバムを聴くと良く判るが、コンテンポラリー・ジャズの最新形の音が満載。マーカスの卓越したベース・プレイが唸りを上げる。自由奔放に唄うが如く、囁くが如く、魅力的なベースラインを刻み続けていく。まず、このマーカスのベース・プレイが、この盤の聴きどころ。現代のジャズ・エレベの最高峰のプレイがこの盤に詰まっている。
 

Laid_black  

 
もう一つも魅力は「現代のジャズ」を見事に現出した音作りである、ということ。ジャズはもともと違うジャンルの音楽との融合が得意な音楽ジャンルで、今まで「異種格闘技」的な名盤は数々あるが、この盤は従来の融合要素である「ソウル・ファンク・R&B・ブルース」そして「ロック」をベースとして、最新の音楽要素、ヒップホップ、トラップ、ネオ・スピリチュアルを取り込んだ、最新のフュージョン・ミュージックとなっている。

これだけの「異種格闘技」的要素を取り込むと、楽曲としてバラバラなイメージになりがちなのだが、マーカスの場合、そうはならない。卓越したアレンジとプロデュース力を駆使して、様々な「異種格闘技」的要素を融合した、見事な「総合音楽」として、僕達の耳に届けてくれる。まさに「マーカス・ミラーの考える融合音楽」である。

当然、音の底は「ジャズ」。この盤を聴くと、ジャズという音楽ジャンルは、他の音楽ジャンルの音要素に対して、懐が深く裾野が広いことを再認識させてくれる。マーカス・ミラーは、1959年6月生まれで、今年59歳。来年は還暦で、ジャズ・ミュージシャンとしても成熟の域に到達した、若きレジェンドとなりつつある。そんな実感をしっかりと持たせてくれる、この最新作の内容である。

 
 

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