こんなアルバムあったんや・102
まず、レオ・リチャードソン(Leo Richardson)という名を知らない。どうも英国ジャズのサックス奏者らしい。どうりで知らないはずだ。ジャケットの雰囲気を見ても、実にレトロっぽくて、リリース年が2017年。これは1970年代辺りの英国ジャズのリイシュー盤だと思った。
Leo Richardson『The Chase』(写真左)。2016年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Leo Richardson (ts), Rick Simpson (p), Mark Lewandowski (b), Ed Richardson (ds)。ラストの8曲目にのみ、 Alan Skidmore (ts) が、2曲目と4曲目にのみ、Quentin Collins (tp) が加わる。
レオ・リチャードソンは英国の若手テナーサックス奏者。これがデビューアルバムとのこと。1曲目の「Blues for Joe」を聴けばビックリする。どこから聴いても、正統なハードバップなジャズが思いっきり展開されている。しかし、録音が良い。ということで、この盤、実は最初聴いた時は、1970年代の隠れハードバップ盤だと思った。
ストレート・アヘッドな純ジャズ一本のアルバム。テナーはテナーらしい音を出し、ピアノはモーダルに堅実なバッキングでフロントを支え、ベースはブンブン音を立て、ドラムは硬軟自在にポリリズムを叩き出す。1960年代中盤〜後半のモーダルなハードバップがこの盤に詰まっている。こんなアルバムが、新盤として2017年にリリースされた、という事実に驚く。
よくよく聴くと、アドリブ・フレーズや、バックのリズム&ビートに今風な雰囲気が漂っていて、どう考えても1960年代中盤〜後半には無かった響きがところどころに聴かれて、そこでやっとこの盤が、1970年代のハードバップ盤のリイシューで無いことに気がつく。気がついた時はビックリした。いわゆる「ネオ・ハードバップ」にまだ、これだけの「ジャズ表現の工夫の余地」が残っていたとは恐れ入った。ジャズは奥が深い。
プレイスタイルは、コンテンポラリーかつストレート・アヘッド。これが英国ジャズから生まれたことにまた驚く。英国と言えば、ジャズの正統なスタイルは「ビ・バップ」と言い切るほどの硬派なジャズ者の集まる国である。そこで生まれ出でた、この「ネオ・ハードバップ」盤。これが「格好良い」のだ。次作が楽しみ。こういう盤が新盤でリリースされるから、ジャズって奥が深くて面白い。
« 意外と無名な盤だけど好盤です | トップページ | The Chuck Rainey Coalition »
コメント