ブロンバーグの「ジャコ称賛」盤
ベーシストがリーダーのアルバムは面白い。ベーシストがリーダーのアルバムには、テクニックを重視した、その特徴的な演奏テクニックを全面に押し出した内容のものも多くある。テクニックの多彩さを追求するものもあれば、ベースの楽器自体のバリエーション(ピッコロ・ベースやチェロなどの活用)を追求したものもあって、聴いてみるとなかなかに面白い。
Brian Bromberg『Portrait of Jaco』(写真左)。2002年のリリース。当時のファーストコール・ベーシストの一人、ブライアン・ブロンバーグの「ジャコ・パストリアス名演作品集」。ジャコはエレベのイノベーターであり、早逝のレジェンドである。そんなジャコの作品をメインに、ブロンバーグがベースを弾き倒したアルバムである。
これだけ徹底的にジャコの作品を弾き倒したトリビュート盤はあまりない。ブロンバーグの優れたところは、ジャコの作品をジャコ風にベースを弾くのでは無く、自分流に置き換えて、ジャコのそれぞれの作品を弾き倒している。この自分流に置き換えて、というところがミソ。ジャコの作品を取り上げることで、ジャコをトリビュートしつつ、自分流のベースを弾くことで、ちゃっかり、ブロンバーグのベースを全面に押しだして、アピールしている。
ブライアンは様々なタイプのベースを駆使している。ピッコロ・ベースをはじめ各種ベースを採用して、それぞれのタイプのベースの可能性を改めて引き出している。テクニックは申し分無い。ジャコはエレベのイノベーターであったが、ここでのブロンバーグはアコベも弾いているところが面白い。アコベならではの響きや音が、ジャコのエレベとは違ったニュアンスに聴こえて、とっても興味深い。
バックを支えるミュージシャンも、Bob Mintzer (sax)、Alex Acuna (per)、Jeff Lorber(el-p) などの名手もゲスト参加していて、コンテンポラリーな純ジャズな、端正で締まった内容の演奏が繰り広げられている。グループ・サウンドとしても質が高く、聴き応えがある。単なるベーシストのテクニックのショーケース的な盤に留まっていないところが、好感度ポイントである。
このアルバム、「低音シリーズ」の一枚らしく、ベースについては、しっかりとした質の良いの良い重低音で録音されている。ベースを弾き倒しているアルバムなので、これだけしっかりとベースの音が録音されていると、ベースの音色、テクニック双方を十分に堪能できる。ジャズ・ベースの音に魅力を感じるジャズ者の方々にお勧めの好盤。
« 「ネオ・スピリチュアル」の先駆 | トップページ | ゴルソン・ハーモニーを楽しむ »
コメント