驚きのコルトレーンの未発表音源
鬼籍に入ったジャズのレジェンド達については、多くのマニアが存在する。よって、それぞれのレジェンドの死後も、生前の録音音源が発掘され、未発表音源としてリリースされる。リリースに関して、本人の意向も全くお構いなしに、である。本人はあの世に行ってしまっているので、意志の確認のしようも無い訳だが、それにしても余りに不躾では無いのか、と思ったりする。しかも、その未発表音源って、オークションにかけるとそれなりの値段が付くのだから、胡散臭くて仕方が無い。
まあ、どんな音源であっても、購入に至るマニアが存在するのだから、仕方が無いと言えば仕方が無い。商売になるのであれば、レコード会社はその音源を商品化し、リリースするんだろう。でも、未発表音源というのは、生前、ミュージシャン本人にとって、何かリリースしたくない問題があったからこその未発表音源であって、そういうことからすると、不躾にリリースし続けるのは如何なものか、と思ってしまう。
John Coltrane『Both Directions at Once : The Lost Album』(写真左)。未発表音源のリリースでは一番有名ではないか、と思われるジョン・コルトレーン。コルトレーンの死後、約50年、つまり半世紀が経過している訳で、さすがにもう無いだろう、と思っていたら、またまた発掘されてリリースされた。いやはや、まだあるもんなんですなあ。それも、全くの「未発表音源」。この音源テープは、妻のナイーマが所有していたそうで、2005年、ナイーマの遺族からのオークションへの出品で、この音源が発見された次第。
1963年3月6日の録音。『John Coltrane & Johnny Hartman』の録音前日に録音されたものだと言う。ちなみにパーソネルは、John Coltrane (sax), Jimmy Garrison (b), Elvin Jones (ds), McCoy Tyner (p) 。伝説のカルテットである。また、この音源は過去に海賊盤などでも一切世に出たことがない、完全な「未発表音源」であること。失敗録音では無く、当時、コルトレーンが作曲した新曲を含む、リリースを前提に録音された音源であるということに価値がある。しかし、何故、この音源が未発表になったんだろう。
1962〜3年辺りというと、過去に所属したレーベル(プレスティッジ、アトランティック)より、ストックされていた音源が一気にリリースされていたこともあり、インパルスからすると、同じ様な内容のアルバムをリリースしても、コスト倒れになる可能性があって、知らず知らずのうちにリリースのタイミングを逸したのでは無いかと推測されている。
聴けば確かに、このまま収録順を決めてアルバム化できるだけの完成度の高い「未発表曲」ばかりである。当時、既にフリーに傾きつつあった、限りなくフリーに近いモーダルな熱いブロウでは無く、『Ballads』『Duke Ellington & John Coltrane』『John Coltrane & Johnny Hartman』など、バラード曲メインの落ち着いた、モーダルな内容であることにちょっと驚く。聴き易い、魅力的なサックスを吹き上げていくコルトレーンがこの盤に溢れている。
★東日本大震災から7年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
« カマシの『Heaven and Earth』 | トップページ | ジャズ喫茶で流したい・124 »
コメント