ながら聴きのジャズも良い・33
ジャズのアルバムについては、毎月、コンスタントに新盤がリリースされている。そんな中で、ジャズ・スタンダード曲だけを演奏する企画盤は、基本的に「志が低い」とされる。特に、有名な「どスタンダード」と言われる曲ばかりを演奏するジャズメンのアルバムは、ジャズ者中堅〜ベテラン筋から、基本的に敬遠される傾向にある。
余りに皆が知っている「どスタンダード曲」で固めた曲は、いかにもジャズ者初心者若しくは、ジャズについては全く素人向けのアルバムに感じてしまい、ジャズをある程度聴き込んで来た、ジャズ者中堅〜ベテランの方々については「今更、こんな初心者向けのアルバムなんて聴けるかい」ってな感じで、聴かず嫌い風に敬遠してしまうのだ。
New York Standards Quartet『Sleight of Hand』(写真左)。2017年5月のリリース。New York Standards Quartet(以降、略して「NYSQ」)のサード盤。ちなみにパーソネルは、Tim Armacost (ts, ss), David Berkman (p), Daiki Yasukagawa (b), Gene Jackson (ds)。サックスがフロントのオーソドックスなカルテット構成。
NYJQはグループ名の通り、ジャズ・スタンダード曲を演奏する「企画型のカルテット」。このカルテットがガンガンにジャズ・スタンダード曲を次々と演奏しまくるのだから、聴く前から思わず敬遠気味になってしまう。しかし、ジャズ・スタンダード曲ばかりを弾きまくる企画型グループの先駆としては、キース・ジャレットの「スタンダーズ・トリオ」があって、これが我が国でも絶賛され続けているのだから、NYJQを無視する訳にはいかないなあ、と思うのだ。
端正なアレンジと演奏が良い感じ。昔の企画型スタンダード演奏グループは幾つかに聴かれた「カクテル風ジャズ」に陥らず、しっかりとメインストリーム・ジャズしつつ、ジャズ・スタンダード曲の原曲を、キースの様に思い切りデフォルメすること無く、原曲のイメージをしっかりと残しながら、今のジャズのネオ・ハードバップ風のアプローチや響きを織り込む展開は意外と聴き応えがある。
日本人ベーシスト、安ヵ川大樹も良い音だしている。メンバーそれぞれ、良い音を出していて、この盤、メインストリームな純ジャズとして、ネオ・ハードバップな好盤として、十分に鑑賞に耐える。どこかで聴いたことのあるフレーズ満載の「どスタンダード曲」がメインなので、「ながら聴き」に最適。今年の酷暑に、エアコンの効いた部屋の中での「ながら聴き」が、意外と涼を呼んで良い感じである。
東日本大震災から7年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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