「クリフォードの思い出」の名演
リー・モーガンは天才トランペッターであった。初リーダー作は18歳での作品。テクニックは優秀、演奏スタイルは既に確立されていた。途方も無く巧いトランペッター。しかも、そのテクニックをひけらかすこと無く、良い方向に活かして、スタンダード曲、自作曲を様々な表現を用いて、歌心豊かに聴かせてくれる。
1956年が初リーダー作リリースの年。ハードバップのスタイルがほぼ確立されていた頃。いわゆる「安定の時期」にモーガンは表舞台に立った訳で、モーガンはただただ、ハードバップのスタイルに身を委ねて、テクニックを駆使して、歌心豊かなトランペットを吹くだけで良かった。よって、この時代、モーガンは、ジャズの歴史に影響を与える様な「変革」を旨としたアルバムとは全く無縁であった。
ということで、この時代、モーガンの初期のリーダー作を聴く楽しみは、アルバム収録曲の中で「これ一曲」という秀でた名演を目当てに聴き進める、この一点に尽きると僕は思う。そういう意味で、リーダー作第2弾の『Lee Morgan Sextet, Vol. 2』の「ウィスパー・ノット」がそんな位置づけの秀でた名演の1曲であった。
『Lee Morgan Vol. 3』(写真左)。1957年3月24日の録音。BNの1557番。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Benny Golson (ts), Gigi Gryce (as, fl), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Charlie Persip (ds)。モーガンのトランペット、ゴルソンのテナー、グライスのアルトの3管フロントにピアノ・トリオ。セクステット構成である。収録曲は全て、ゴルソンの手になるもの。さしずめ「ゴルソン・トリビュート」盤である。
そんな収録曲で、曲の出来、演奏の出来が白眉なものが、3曲目の「I Remember Clifford」。邦題「クリフォードの思い出」。1956年、交通事故で非業の死を遂げたクリフォード・ブラウン追悼の名曲である。これがまあ、溜息をつきたくなる様な名演なのだ。「ゴルソン・ハーモニー」のアレンジをバックに、モーガンはブリリアントで優しく豊かなトランペットで、情感を込めつつ吹き上げていく。美しい。こんな美しいトランペットの音色はなかなか無い。
決して大向こうを張る様なテクニックをひけらかしている訳では無い。それでもこの名演でのモーガンのトランペットは、とびきりテクニックが豊かで歌心が溢れていることが直ぐ判る。ゴルソンのアレンジ、それを演奏するメンバー、いずれも素晴らしいが、飛び抜けて素晴らしいのが、モーガンのトランペット。モーガン初期の名演と言い切らせていただきたい。
東日本大震災から7年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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