ECMレーベル独自の音世界
「ネイチャー(自然)」な響きを持つジャズと言えば「ECMレーベル」である。ECMレーベルには、スイング感や4ビート感を強調しない、印象的なフレーズやリズムをメインに、自然の景観や雰囲気を想起させるアルバムが多数存在する。ジャズというか、即興演奏というか、現代音楽というか、環境音楽というか、ジャズと呼ぶには、いささか抵抗のあるアルバムも多々存在する。
Art Lande with Jan Garbarek『Red Lanta』(写真左)。1973年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Art Lande (p), Jan Garbarek (ss, bs, fl)。ピアノとサックス&フルートのデュオ演奏である。アート・ランディは、当時「キース、バイラークに次ぐ、EMCが発見した第三の俊英ピアニスト」との位置づけ。ヤン・ガルバレクは、ECMも看板テナー奏者。
アルバム・ジャケットからして「ネイチャー(自然)」を強く意識する雰囲気。ジャズに対して、こういうジャケットって、ECMレーベルだけだろうな。冒頭「Quintennaissance」で出てくる音は、ファンクネス皆無、一聴するとクラシックの様な、それでいて、仄かなオフビートのタッチ、リラックスしたライトなピアノ・ソロ。キース、バイラークに比べて、アクが無く、素直で流麗なタッチ。
まずはそこに、ガルバレクのフルートが絡む。ガルバレクのフルートは、素直でエモーショナルな、音的には明らかに欧州的な、ファンクネス皆無の流麗かつ透明度の高いフルート。曲によっては、ソプラノ・サックスで、はたまたバリトン・サックスで、ランディのリラックスしたライトなピアノに絡む。この「絡み」が絶妙で、聴き心地がとても良い。
クラシックの様に端正なランディのピアノ。しかし、それは即興演奏を旨としており、ファンクネス皆無であるが、ピアノのフレーズはジャズの香りが濃厚に漂う。決して重く無い、切迫感皆無、適度にリラックスしたミッド・テンポのシンプルな響きのピアノ。フリーでもなければスピリチュアルでも無い。一言で言うと「ネイチャー(自然)」な響き。
この盤はECMレーベルでしか為し得ない類の音世界を満載している。スイング感や4ビート感を強調しない、印象的なフレーズやリズムをメインに、自然の景観や雰囲気を想起させるアルバムの最右翼的な存在である。何もスイング4ビートだけがジャズの条件ではない。「ネイチャー(自然)」な響きを持つジャズもジャズ。ECMらしいジャズ盤として、長年、愛聴してきた盤である。
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