パーランというピアニスト
この人のピアノは、ジャズ者初心者の頃からずっと気になっていた。聴いてみると判るんだが、何か右手のフレーズの紡ぎ方がユニーク。三連符の積み重ねというか、スイング感とスピード感を増幅させる短い指回し。指を3本だけ使った様なローリング。加えて、独特の間。決して長いフレーズを弾きまくることは無い。パッと短いフレーズを弾き、独特の間があって、またパッと短いフレーズが続く。「行間を読む」様な独特な「間」。
そのピアニストとは「ホレス・パーラン(Horace Parlan)」。少年時代にポリオを患い、そのために部分的に右手が変形。そのリハビリのために始めたというピアノが高じてジャズ・ピアニストへの道を歩んだ、という異色のジャズ・ピアニスト。左手のブロック・コード弾きでグイグイ押しまくる。そこに、右手の指2本が使えない状態で、右手のスイング感とスピード感を増幅させる指回し。
左手のブロック・コードがアーシーでジャジー。右手のスイング感とスピード感を増幅させる短い指回しが、粘らないスッキリとしたファンクネスを醸し出す。そして、左手も右手も、独特の個性的な「間」があって、この「間」が、ジャジーな雰囲気を強調する。そんなホレス・パーランのピアノって、クラシックの世界では絶対にあり得ない。ジャズだからこそ光る、ホレス・パーランの個性。
Horace Parlan『Movin' & Groovin'』(写真左)。1960年2月29日の録音。ホレス・パーランの初リーダー作。ちなみにパーソネルは、Horace Parlan (p), Sam Jones (b), Al Harewood (ds)。ブルーノート・レーベルでは珍しいピアノ・トリオ。このピアニストの個性をしっかり聴かせたい、と思う時に、総帥のアルフレッド・ライオンはピアノ・トリオを選択するのだろうか。
ジャズにおいては、初リーダー作ほど、そのジャズメンの個性を正確に表したものはない。というが、確かに、この初リーダー作は、ピアノ・トリオというフォーマットも相まって、ホレス・パーランのピアノの個性を最大限に表している。しかも、パーランの個性が他のピアニストとどう違うのか、それがとても良く判る選曲もこの盤の良さ。渋いスタンダード曲を選んでいる。曲選びの巧みさ。この盤の特徴でもある。
初リーダー作ということもあってか、相当気合いが入って弾き回している。録音した時点で、弱冠29歳の若さ。その若さ故、オーバードライブ気味に危うい部分もあるが、破綻ギリギリのスリリングなアドリブ・フレーズが、これまた揺るぎの無い個性だったりする。良い初リーダー作だ。一聴の価値あり。ちなみに2017年2月23日、ホレス・パーランは永眠している。86歳だった。
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