ボブ・ジェームスの一里塚な盤
ボブ・ジェームスを聴き直している。ボブ・ジェームスのアルバムには、それぞれの時代の「節目」を象徴するようなアルバムが幾つかある。クロスオーバーからフュージョンへの転換点、アナログ録音からデジタル録音への転換点、アレンジャーからピアニストへの転換点。それぞれの転換点で、ボブ・ジェームスは「節目」となるようなアルバムをリリースしている様に思える。
さて、時は1984年。時代はアナログ録音からデジタル録音への過渡期。デジタルの録音って、アナログの録音ノウハウとは全く異通用しないらしく、おおよそのジャズメンは相当にデジタル録音に苦戦していた。加えて、シンセサイザーを含めた電子楽器も度合いは違うこそすれ、デジタル化の波が押し寄せ、アナログとは全く異なった音の「質」に適応するのに、これまたかなり苦戦を強いられていた。
Bob James『12』(写真)。そんな1984年のリリース。ボブ・ジェームスは1939年生まれだから、リリース当時45歳。ミュージシャンとして脂ののりきった、そして、丁度、人生の折り返し地点を過ぎた辺り。1974年、クロスオーバー・ジャズから頭角を現し、フュージョン・ジャズの「顔」として活躍したボブ・ジェームスの1つの到達点の様なアルバム。
クロスオーバーからフュージョン・ジャズまで、それぞれの場面場面でのボブ・ジェームスの音楽的成果をこの『12』という一枚のアルバムに凝縮しているかの様な内容。冒頭の「No Pay, No Play」のファンクネス、ロス五輪の公式テーマ曲にも採用された、エレ・フュージョン感が満載の2曲目の「Courtship」。はたまた、打ち込みやシンセを多用、デジタル時代を象徴したような、3曲目の「Moonbop」。
そして、打って変わって、ボブ・ジェームス節全開、アコギの音が印象的な、ソフト&メロウな名演「Legacy」など、聴きどころ満載である。そして、この盤でもほとほと感心するのは、ボブ・ジェームスのデジタル録音、デジタル楽器への適応度の高さ。仄かにデジタル臭さは残るが、同じ時代の他のアルバムに比べると、アナログ録音との違和感が圧倒的に少ない。音の太さと厚さ、音のエッジの滑らかさ、どれをとっても秀逸。
この盤、ボブ・ジェームスにとって、アナログ録音からデジタル録音への転換点での、節目となるアルバムだと僕は思う。ボブ・ジェームスはこの盤『12』を最後にCBSからワーナーに移籍することになる。この後、暫くはボブ・ジェームスは、アレンジャーがメインのスタンスから、キーボード奏者の立ち位置に徐々に力点を移したアルバムを順次リリースすることになる。
東日本大震災から7年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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