キースのヨーロピアン4の旗揚げ
さて、いよいよ、キース・ジャレットの「ヨーロピアン・カルテット」を語る時が来た。キースは奇妙なことに、1970年代をメインに、米国系ジャズメンで固めた「アメリカン・カルテット」と、欧州系ジャズメンで固めた「ヨーロピアン・カルテット」という、2つのカルテットを同時進行していた(その合間合間にソロ・ピアノもやっていた)。
どうしてそんな面倒くさいことをしたのか、本人にしか判らないが、僕にとっては今でも謎である。アメリカン4とヨーロピアン4で、演奏する内容が全く違っていれば、それぞれの地域のジャズメンの特質を活かしたものなんだな、ということになるが、これが、まあ、アメリカン4とヨーロピアン4で、意外と同じイメージの曲をやっていたりするのだ。比較して聴いてみると、キースの挑戦と実験、そして、試行錯誤が感じられて面白い。
Keith Jarrett『Belonging』(写真左)。キースの「ヨーロピアン・カルテット」の旗揚げ盤である。1974年4月24ー25日の録音。ECMからのリリース。ちなみにパーソネルは、Keith Jarrett (p), Jan Garbarek (ts, ss), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds)。フロント1管、サックスに、ECMの看板男、テナーのヤン・ガルバレクを擁している。ベースのダニエルソン、ドラムのクリステンセンは、硬質で透明度の高い、明確にヨーロピアンなリズム・セクション。
冒頭の「Spiral Dance」は、明らかにヨーロピアンなニュー・ジャズ風。それでも、リズム&ビートは実にブルージーでアメリカン。そんなハイブリッドな魅力的な楽曲をキースは、ヨーロピアンな響きを湛えたピアノを弾きまくる。そこに、明らかにヨーロピアンな響きを湛えたガルバレクのテナーが参戦する。この瞬間が実にスリリング。音は硬質で透明度が高い。リズムもエッジが適度に立っている。ヨーロピアンな響き。
続く2曲目の「Blossom」は一転、ヨーロピアンなフリー・ジャズの世界に突入する。フリーキーな演奏については、ガルバレクが強力でピカイチ。ガルバレクのフリーキーなブロウで、曲全体は一気に北欧化する。キースの存在が薄れる中、3曲目の「Long as You Know You're Living Yours」は、アーシーでゴスペルチックな米国ルーツ音楽風の展開。それを欧州系のジャズメンが追従する。
ニュー・ジャズ風の演奏、フリー・ジャズな演奏、アーシーでゴスペルチックな米国ルーツ音楽風な演奏、いずれもアメリカン4でもやっていた演奏。しかし、このヨーロピアン4、ガルバレクのテナーの威力が強力で、ガルバレクのブロウ一発で、演奏は一瞬にしてヨーロピアンな色に染まる。リーダーのキースより目立つガルバレク。この関係が今後どう影響するのか。それが楽しみに感じる、ヨーロピアン4ファースト盤である。
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