ECMの「困ったチャン」な盤
ECMレーベルは、欧州のジャズ・レーベルなんだが、1969年の設立なので、ニュー・ジャズと呼ばれる類の内容のアルバムが多くある。中には「これ、どう聴いても、現代クラシックでしょう」な内容のアルバムもあって、こうなるともはやジャズ盤としては扱えない。困ったものである。それでも、ECMレーベルのカタログにはしっかりと存在している。ECMレーベルの音を理解する為にも、一聴する必要はある。
例えば、Keith Jarrett & Jan Garbarek『Luminessence』(写真左)。1974年4月29, 30日の録音。ECM1049番。パーソネルを見渡すと、Jan Garbarek (sax), Südfunk Symphony Orchestra Stuttgart とだけ。シュトゥットガルト放送交響楽団の演奏をバックに、ガルバレクのサックス・ソロという内容である。あれ、アルバムのジャケットにあるのは「Keith Jarrett と Jan Garbarek」。キースは何処にいった。
回答、キースは作曲だけで、ピアノを弾いていないので注意! である。シュトゥットガルト放送交響楽団の演奏は、全てキースの作曲によるもの。看板に偽りあり、という感じだが、意外と内容は良い。このアルバム、ガルバレクのフリー・インプロビゼーションがメインで、ガルバレクのサックスが、キース作の美しい弦楽の中で印象的に響いている。ガルバレクのフリー・インプロがメインということで、辛うじて、この盤は「ジャズ盤」として愛でている。
次に、Keith Jarrett『In The LIght』(写真右)。1973年2月の録音。ECM 1033/34番。LP時代、2枚組の大作。ちなみにパーソネルは、一応、Keith Jarrett (p), Willi Freivogel (fl), Ralph Towner (g) と名を連ねてはいるが、ここでも、Südfunk Symphony Orchestra Stuttgart, The Fritz Sonnleitner Quartet(弦楽四重奏), The American Brass Quintet の名前が挙がっている。
そう、この盤も、基本的には、キース作曲の楽曲が、シュトゥットガルト放送交響楽団の演奏をメインに、弦楽四重奏や金管四重奏の演奏によって繰り広げられるユニークなもの。キースのピアノが入るものもあるが、その時のキースのピアノはクラシックもしくは現代音楽的なタッチ。さすがに僕は、この盤は「ジャズ盤」としては扱えない。といって、クラシックもしくは現代音楽としては、ちょっと「過剰」な内容で、繰り返し聴くにはちょっと辛い。
但し、さすがにキースの作曲なる楽曲は、それぞれ、しっかりとキースの音の個性、節回しが反映されている。ピアノ・インプロビゼーションに置き換えたら、さぞかし映えるだろうなあ、という曲がズラリと並ぶ。ECMの総帥、マンフレート・アイヒャーはちょっと変わり者。そして、キース・ジャレットも音楽家としてちょっと変わり者。変わり者同士が意気投合してジャズ・レーベルに残した「不思議な困ったチャン」な盤。キース者として、キースを深く知るには一聴の価値あり。
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