「ベルリン三部作」の第一弾。
ここ千葉県北西部地方、今シーズンの冬は寒い。厳寒な日が際限なく続いている。雪も結構積もった。朝夕の通勤の服装は、通常の冬の一番寒い時に着る服装を12月からずっと着続けている。空もスカッと青空という日が少ない。どんより鉛色の雲が立ちこめる日が多い。寒々とした鉛色の空を窓に見ながら、部屋の中でジッと音楽に耳を傾けている。
こういう冬の寒空の季節、学生時代から必ず聴く「70年代ロックのアルバム」が幾枚かある。気温の上がらない下宿の部屋の中で、炬燵に入ったまま、本を読みながら聴いたアルバム。選盤するアルバムは、面白い事にこの冬の時期にしか選盤しないものがほとんど。恐らく、この寒々とした鉛色の空を窓に見ながら、部屋の中でジッと耳を傾けるのにピッタリなアルバムなんだろう。
David Bowie『Low』(写真左)。後に「ベルリン三部作」と呼ばれることになる作品群の第1弾。1977年の作品。米国における麻薬浸けの生活からの脱却を目的にベルリン入りしたボウイが、ブライアン・イーノと共に創り上げた傑作。ブラック・ミュージックの影響を感じさせた前2作とは全く異なった、クラフトワークやタンジェリン・ドリームをはじめとした独プログレの影響を強く感じさせる内容になっている。
独プログレ的な、クールなシンセサイザー・サウンドが、荒涼とした冷たく暗い雰囲気を作り出している。後半のアンビエントな展開には、当時の「壁の街」ベルリンの、どこか陰鬱な雰囲気が漂っている。この「荒涼とした冷たく暗い雰囲気」と「どこか陰鬱な雰囲気」が実にクールなのだ。他のポップな商業ロックを「躁」とするなら、この盤の音世界は「鬱」。この「鬱」がクールなグラム・ロックがこの盤に詰まっている。
アルバム前半でも歌詞は少なく、後半に至ってはインスト曲のみ。当時、明らかに前衛で先進的な内容であり、アーティスティックである。オレンジのバックに、ダッフルコートの襟を立てて髪をオレンジに染めたボウイの横顔が凄く良い。中に詰まっている音世界を十分にイメージさせてくれるジャケットの雰囲気も凄くクール。
躁状態の調子っぱずれなギターのリフ、いきなり出てくるフリージャズの様なアブストラクトなフレーズ、浮遊感溢れるシンセの音。ブライアン・イーノの個性も、この盤では良い方向に作用している。しかし、このアルバムを最終的に「決め」ているのは、ボウイのプロデュースの力。「鬱」がクールなグラム・ロックは、寒々とした鉛色の空を窓に見ながら、部屋の中でジッと耳を傾けるのにピッタリなのだ。
東日本大震災から6年10ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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