珍しいドリューのソロ・ピアノ
SteepleChaseレーベルは、欧州の「ブルーノート」と言っても良い「欧州発ハードバップ」の宝庫である。特に、1970年代の欧州の純ジャズをしっかりと押さえている。加えて、ジャズ好きが立ち上げたジャズ・レーベルだけに、コマーシャルに走らず、ジャズ者が「お〜っ」と唸るような、ツボを押さえた好盤が多い。
Kenny Drew『Everything I Love』(写真左)。SCS 1007番。1974年のリリース。デンマークはコペンハーゲンでの録音。この盤、ジャケットを見れば一目瞭然なのだが、ケニー・ドリューのソロ・ピアノ盤である。これ、ケニー・ドリューとして、有りそうで無い、稀少な記録である。
ソロ・ピアノはピアニストの個性が露わになる。ドリューのピアノはバップなピアノ。テクニックに走ること無く、疾走感に走ること無く、どこか典雅で、そこはかとなくファンクネス漂う、切れ味の良いタッチが個性。フレーズは端正が故に、イージーリスニングに流れそうになるが、これがならない。左手にジャジーなビートが仄かに香り、右手の回りがそこはかとないオフビート感覚。
それが故に、ソロピアノであっても、イージーリスニングに聴こえない。立派にジャズしているドリューのソロ・ピアノ。大向こうを張る、大掛かりな展開やテクニックがある訳では無い、どちらかと言えば、落ち着いた、ちょっと地味なものではあるが、彼のフレーズは滋味に富んでいる。
展開はいたってシンプル。複雑なアレンジや展開は皆無。自作曲ではなかなか判らないが、スタンダード曲については、そのシンプルな展開が良く判るが、決して飽きることは無い。一度聴いたら、2度3度、また聴きたくなる、「味のある小粋な」シンプルさ。シンプルさの中に、しっかりとアレンジの「技」が隠されているようだ。
この盤を聴くと、ケニー・ドリューというピアニストは隅に置けないなあ、という気持ちになる。キースの心の赴くままに弾きまくるソロ・ピアノとは対極な、ジャズの基本、ジャズの常識をしっかりと踏まえた、堅実確実な純ジャズ基調のソロ・ピアノである。こんなドリューのソロ・ピアノが記録されているとは。SteepleChaseレーベル侮りが足し、である。
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