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2018年1月 4日 (木曜日)

ジョーヘンの初リーダー盤

ジャズのアルバムの中で、まだまだ聴き込んでいないジャズメンが何人かいるのに気がつきました。例えば、ボビー・ハッチャーソンやホレス・パーラン、アンドリュー・ヒル、ジョー・ヘンダーソンなど、聴いてはいますが、今一度、聴き直す機会の少なかったジャズメン達です。そんな中から、新春のトップバッターは「ジョー・ヘンダーソン」。

Joe Henderson、略して「ジョーヘン」。若い頃から今に至るまで「ジョーヘン」で通してます(笑)。1937年4月生まれ。2001年6月に惜しくも鬼籍に入りました。64歳。早過ぎる逝去でした。初リーダー作が1963年、26歳の時でしたから、ちょっと遅咲きでしょうか。ハードバップ後期から頭角を現し、1960年代前半での初リーダー作ですから、新主流派の範疇のテナーマンです。

その初リーダー作が、Joe Henderson『Page One』(写真左)。1963年6月の録音。ブルーノートの4140番。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Joe Henderson (ts), McCoy Tyner (p), Butch Warren (b), Pete La Roca (ds)。トランペットのケニー・ドーハムだけがビ・バップ時代からのベテラン。他の4人は新主流派の若手。

この盤、冒頭の「Blue Bossa」の存在が何かとクローズアップされることがほとんど。このマイナー調のボサノバ曲が、1960年代のジャズ者の心を揺さぶったのか、当時から、この曲が良い、この曲が良いという評論ばかり。ケニー・ドーハムが、ハード・バップとボサノヴァのミックスで作曲したものとされている。でも、そんなに良い曲かしらん。
 

Page_one  

 
親しみ易いマイナー調の旋律は聴きやすいが、1970年代以降、リアルでジャズを聴いてきた僕達の世代からすると、以前の日本の演歌を聴くような感じがする。聴き易く親しみ易いマイナー調の旋律なんやけど、ちょっと古くて野暮ったいなあ、という感じなのだ。この「Blue Bossa」の存在よりも、演奏全体の新主流派一歩手前の趣味の良いハードバップな雰囲気が魅力。

主役のジョーヘンのテナーは「す〜っ」と伸びる、ビブラート無しのストレートなブロウが特徴で、ちょっと聴いてだけでは「コルトレーンか」と思う。しかし、ブロウの勢いが弱いというか「優しい」。優しく「す〜っ」と伸びる、ビブラート無しのストレートなブロウなのだ。決して、コルトレーンの様にダイナミックに雄々しくテナーを吹き上げない。ジョーヘンは、優しくジェントルにテナーを吹く。

モーダルなタイナーのピアノ、太く堅実なウォーレンのベース、堅実でポリリズミックなラロカのドラムは、いかにも新主流派のリズム・セクション。タイナーのピアノがあまりに個性的で、特にバラード曲では「これって、コルトレーンの伝説のカルテットの音か」と錯覚してしまうほど。それでいて、ジョーヘンのブローはまだ「捻れて」はいない。ハードバップゆずりのストレートなブロウに終始している。

まだまだ、ジョーヘンのテナーは固い。それでも、後に繋がる「優しく、す〜っと伸びる、ビブラート無しのストレートなブロウ」は、この初リーダー盤でしっかりと確認できる。ドーハムのトランペットだけが、旧来のハードバップの雰囲気を引き摺っていて、これはこれで個性的。ドーハムの存在が、他の4人の若手新主流派の音をグイグイ惹き立てるのだから、組合せの妙って面白い。

 
 

東日本大震災から6年9ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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