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2017年12月の記事

2017年12月31日 (日曜日)

それでは皆様、良いお年を

いよいよ、暮れも押し詰まりの「大晦日」。今年もあっと言う間に終わりを迎えました。本当にあっと言う間でした。歳を重ねる毎に一年が過ぎるのが、どんどん速くなる感じです。

今年も様々なジャズのアルバム、70年代ロックのアルバム、70年Jポップのアルバムを聴き進めてきました。ブログに載せたアルバムはどれもが印象深く、これ1枚、これ10枚を選ぶのは難しいですね。今年も良い音楽に出会えた確立の方が高かったです。

ジャズの世界では、まだまだ聴き込んでいないジャズメンが何人かいるのに気がつきました。例えば、ボビー・ハッチャーソンやホレス・パーラン、アンドリュー・ヒル、ジョー・ヘンダーソンなど、聴いてはいますが、今一度、聴き直す機会の少なかったジャズメン達です。

来年はこれらの「通好みの」中堅どころをしっかりと聴きこんでいこうか、と思っています。どう聴き込むか、考えつつ、アルバムの存在を確認するのが、実はとても楽しい。聴き直しって、計画を立てる段階が一番楽しいですね。

さあ、来年は戌年。堅実に忠実にジャズの音世界を深掘りしていこうと思います。また、来年もバーチャル音楽喫茶『松和』をよろしくお願いします。

ブログは昨日からお正月休み状態です。家を離れて、ちょっと遠いところに逗留しております。来年は1月3日から、ブログを再開する予定です。お楽しみに。

それでは皆様、良いお年を・・・。
 
 

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東日本大震災から6年9ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年12月29日 (金曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・67

年の瀬である。今日でやっと本業の方が終わった。今年のジャズのアルバム鑑賞も大詰め。今年のブログの最後のアルバムは何にしようか、を考える。フッと思いついた名前が「ミシェル・ペトルチアーニ/Michel Petrucciani (1962年12月28日 – 1999年1月6日)」。ミシェル・ペトルチアーニ=愛称「ペト」。今年の締めは「ペト」だな。

Michel Petrucciani『Trio in Tokyo』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Michel Petrucciani (p), Steve Gadd (ds), Anthony Jackson (b)。1997年11月に行われた「ブルーノート東京」でのライヴ演奏を収録した音源。ペトが亡くなる2年前の録音。良い音、良い雰囲気で収録されている。

生まれつきの骨形成不全症という障害を克服し、フランス最高のジャズ・ピアニストとなった「ペト」。障害のため、身長は成長期になっても1メートルほどにしか伸びず、しかも様々な病気にも悩まされ、同年代の普通の少年ができるようなことは一切できなかったため、彼の関心はもっぱら音楽、ジャズに向けられる。
 

Trio_in_tokyo  

 
ペトのピアノは素晴らしい。太く重く力強いタッチ、それでいて流麗かつメロディアス。フレーズの雰囲気はビル・エヴァンス直系だが、彼の奏でるフレーズは「唯一無二」。明らかにペトならではの個性が溢れている。暫く聴き進めると必ずペトと判る、唯一無二の個性。硬軟自在、千変万化、縦横無尽に、ペトはピアノを弾きまくる。

ガッドの縦ノリのダイナミックなドラミングに惚れ惚れする。ズトンズトトンと魅力的な縦ノリのビート。これがペトのフレーズを鼓舞しまくる。アンソニーの超弩級の野太いベースラインにも耳を奪われる。ペトのアドリブ・フレーズをポジティブに誘うグルービーなベースライン。躍動感溢れるリズム・セクションがこのライブ演奏のキモである。

CD1枚分、1時間ほどのパフォーマンスの記録しかないので、ちょっと物足りない。もっともっと聴いていたい。そんな気を強くさせる、とても優れたピアノ・トリオのライブ盤。オリジナル曲の中でただ一曲、とんでもなく異彩を放つ、マイルスの「So What」。硬派に捻れた「So What」。ペトの持つ才能の素晴らしさを僕達に教えてくれる。

 
 

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2017年12月28日 (木曜日)

日本人によるエレ・ファンク

菊地雅章の『Susto』は「耳に優しい」エレ・マイルスであり、「聴き易い」エレ・ファンクであった。エレ・マイルスからファンクネスを抜いて、混沌としたグルーブを再整理し、重量級のリズム&ビートを軽量にし、ジャジーで複雑なフレーズをポップで判り易くした様な音世界。

実は、この『Susto』と対になる、『Susto』と同様に「耳に優しい」エレ・マイルスであり、「聴き易い」エレ・ファンクであるアルバムがある。『Susto』の次作であるこの盤。菊地雅章『One Way Traveller』(写真左)。1980年11月の録音。1982年のリリース。僕は社会人ほやほやで、このアルバムは『Susto』と併せて良く聴いた。

ちなみにパーソネルは、菊地雅章 (key), 日野皓正 (cor), Sam Morrison (ss), Steve Grossman (ss,ts), Hassan Jenkins (b), Gass Farkon (g), Billy Paterson (g), James Mason (g), Butch Campbell (g), Marlon Graves (g), Ronald Drayton (g), Richie Morales (ds), Victor Jones (ds), Aiyb Dieng (per), Airto Moreira (per), Alyrio Lima (per)。ほとんど、前作『Susto』と同じメンバー。
 

Oneway_traveller

 
というのも、この『One Way Traveller』と『Susto』とは録音日が同じ。そりゃ〜メンバーは同じだな〜。アルバムに詰まっている音世界は『Susto』と同じ。エレ・マイルスよりも、整然としていて見通しが良い。エレ・マイルスは、混沌としたところがあり、耳に過度の刺激になる「毒」の要素がところどころに漂っているのだが、『One Way Traveller』は健康的である。

もちろん、ファンクネスは希薄である。音とリズムの洪水ではあるのだが、すっきりとしていて聴き易いエレ・ファンクである。菊地雅章のキーボードも判り易く個性的。シンセの使い方も非常に健全である。日野皓正のトランペットは明らかにマイルス風で、これはちょっとなあ、と苦笑い。

『One Way Traveller』は『Susto』の後に続けて聴くのが一番。『Susto』では印象的なキーボードはフェンダー・ローズ。この『One Way Traveller』での印象的なキーボードはシンセサイザー。菊地のキーボード・ワークは素晴らしい。しかし、これだけのメンバーを集めて、演奏させてみて、このファンクネスの希薄さは面白い。日本人のエレ・ファンクやなあ、と妙に納得する。

 
 

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2017年12月27日 (水曜日)

日本人によるエレ・マイルス

我々は音楽のプロでは無い。プロでも無い我々が、プロの創り出す音を悪く評することはマナーに反する、と常々自戒している。では、音楽のプロはプロの創り出す音を悪く評しても良いのか。それも違うだろう。プロはプロ同士、相手の成果に対しては敬意を払うべきだろう。悪く評したければ言葉にしなければ良い。相手を悪く評する言葉は決して発信せず、自分の心の中にしまっておけば良い。

僕はこの人が雑誌などで語る、他のジャズメンのアルバムやパフォーマンスをケチョンケチョンにこき下ろす記事を何度も目にし、かなりの嫌悪感を覚え、この人の創作する音楽さえも避けてしまうようになった。歯に衣を着せない物言いは良いのだが、あまりに他のジャズメンを悪く評し過ぎで、それが活字となって残るのだから始末が悪い。

しかし、この盤だけは良く聴いた。菊地雅章『Susto(ススト)』(写真左)。1980年の録音。ちなみにパーソネルは、菊地雅章 (key,synth), 日野皓正 (cor,bolivian flute), Steve Grossman (ss,ts), Dave Liebman (ss,ts,a-fl), Richie Morales (ds), Yahya Sediq (ds), Hassan Jenkins (b), James Mason (g), Marlon Graves (g), Barry Finnerty (g), Alyrio Lima (per), Aiyb Dieng (conga), Sam Morrison (wind driver), Ario Moreira (per), Ed Walsh (synth prog)。しかし、よくこれだけのメンバーを集めたものだ。
 

Susto_1

 
この盤の音世界は、一言で言うと「1970年前後のエレ・マイルス=マイルスのエレ・ファンク」である。しかも、エレ・マイルスからファンクネスを抜いて、混沌としたグルーブを再整理し、重量級のリズム&ビートを軽量にし、ジャジーで複雑なフレーズをポップで判り易くした様な音世界。とにかく聴き易い。ジャズ初心者にとっては、本家本元のエレ・マイルスは「聴くと疲れる」。しかし、この盤のライトなエレ・マイルスは聴き易かった。若い頃、ジャズ者初心者の頃、この盤は聴いた。

面白いのは、米国ジャズメンが中心なのにファンクネスが希薄なこと。リズムも軽量級になること。これは日本人リーダーの指示だったのか、それとも日本人リーダーだから、それにジャズメン達が自発的にそのイメージに合わせたのか。しかし、力作ではある。収録された4曲、いずれの出来は良い。特に印象的なのは、リズム&ビートで一気に聴かせる「Circle/Line」、前奏のローズの音が印象的なエレクトリックなレゲエ・ジャズ「Gumbo」。

「Susto(ススト)」 とは、ポルトガル語で”驚き”という意味。今の耳で聴いても、1980年にこういうエレ・マイルスの再構築イメージの好盤が日本人の手で創作されていたとは素晴らしいことである。アルバム全体に心地良い迫力とテンションがあって、それでいてスッキリとしてポップ。ちなみに、菊地雅章が、Fender Rhodes Pianoを弾きまくっているアルバムとしては、この『Susto』が最後の作品とのこと。この盤はローズの音を愛でるに適した好盤でもある。

 
 

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2017年12月26日 (火曜日)

スティングの「冬のソング集」

こういう落ち着いた雰囲気のボーカル盤が、寒い冬にはグッと心に響く。こういう盤を聴いていると、ジャズとかロックとか、音楽の種類を分類する「ジャンル」なんて、全く意味の無いものだと思ってしまう。良い音楽と悪い音楽。音楽はその2種類だけ。そして、出会えるならば、その「良い音楽」と出会いたい。

Sting『If on A Winter's Night ...』(写真左)。2009年10月のリリース。1977年結成の英国のロックバンド「ポリス(The Police)」でデビューしたスティング。担当はベースとボーカル。1984年にバンドの活動が停止。1985年、ソロ活動を本格的に開始。ロックとジャズの融合、そしてポップスとのクロスオーバー。スティングの音世界は実にユニークである。

そんなユニークなスティングの音世界。この『If on A Winter's Night ...』の盤の中にてんこ盛り。この盤のキャッチフレーズが「スティングが全ての音楽ファンに贈る大人のためのアルバム」。う〜ん、確かに。この盤の音世界は「大人のロック」であり、「大人のジャズ」であり、「大人のポップス」である。
 

If_on_a_winters_night

 
クリスマス・キャロルの名曲「ガブリエルのお告げ」や「チェリー・トゥリー・キャロル」を始めとして「冬はゆっくりとやってくる」「このような美しい薔薇はない」「コールド・ソング」「ハーディ・ガーディ・マン」等々、クリスマスにまつわる「美しい曲」がズラリと並ぶ。これらの美しい曲をスティングの素敵なボーカルで唄い上げられていく。敬虔な、それでいてポップな大人の音世界。

スティングのコンサートで脇を固めるギタリスト、ドミニク・ミラーが参加。トランペットにクリス・ボッティ、ヴァイオリンにダニエル・ホープ。民族楽器のフィドルやスコティッシュ・ハープ、バグ・パイプなども加わって、英国のルーツ・ミュージックの音世界が厳かに漂う、ロックとジャズの融合がここにある。

いや〜、とっても良い雰囲気のアルバムです。内容的にはクリスマス盤として認定しても良いのですが、この寒さの厳しい真冬の季節にピッタリの「季節盤」として、出来るだけ長い期間、聴き続けたい好盤だと感じました。とにかく、スティングの唄声がとっても素敵に響きます。

 
 

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2017年12月25日 (月曜日)

ソウルのクリスマス・ソング集

音楽についてはちょっと変わった子供だった気がする。時は1970年、小学6年生の時だと記憶している。親父のラジオをくすねて、こっそり聴き始めた音楽放送。NHKだったと思う。夜の10時過ぎだったか、洋楽・軽音楽を中心に様々な音楽を流していた。これを聴くのが、ほんと楽しくてねえ。歌謡曲には無いビートと旋律。ラジオを通じて米国を感じていた。

そんな色々な西洋音楽の中で、妙に心に響く音楽があった。まずは、フランク・シナトラやナット・キング・コールなどの男性ジャズ・ボーカル。ダンディズム溢れる彼らの歌声はむっちゃ格好良かった。そして、ソウル・ミュージックである。このオフ・ビートの「ノリ」、心地良いファンクネス。日本の歌謡曲より、格好良く心地良い音世界がそこにあった。

ソウル・ミュージック。米国においてアフリカ系アメリカ人のゴスペルとブルースから発展、1960年代を頂点とする,アメリカ黒人の現代的な大衆音楽。以前よりR&Bと呼ばれ、後にブラコンと呼ばれる。ゴスペル由来のコード進行、たたみかけるような覚えやすいリズム、コール・アンド・レスポンス、即興の多用、ジャズにも通じる黒人の感性を洗練されたサウンドで表現する音楽形態である。ソウル・ミュージック好きが切っ掛けとなって、ジャズも好きになり、短い間だがジャズ・ピアノも教えて貰った。
 

Soul_christmas_2

 
中学に入って、ブラスバンドでアルト・サックスも吹けるようになった。どうにも黒人系の音楽が大好きで堪らない。自分でも変わった子供だ、と思った(笑)。オフビート、ゴスペル、コール・アンド・レスポンス、そして、ファンクネス溢れるボーカル。どれもが心に響くソウル・ミュージックの要素。

そんなソウル・ミュージックをベースとしたクリスマス盤が『Soul Christmas』(写真左)。ジャケット違いで曲数も多い「ソウル・クリスマス」盤もあるが、「ジ・オリジナル」と付くのはこの盤。1968年当時のジャケットもレトロっぽくて懐かしい。スタックスと袂を分かつ前のアトランティック配給の数々のアーティストを集め、クリスマスの曲を実に楽しそうに演奏している。

レイ・チャールズ、クラレンス・カーターやジョー・テックス、ソロモン・バーク等々、ソウル・ミュージックを彩るスターの数々。そうそう、キング・カーティス、オーティス・レディング、カーラ・トーマス、ウィリアム・ベル、ブッカー・T&MGズの曲ももちろん入っています。

ジャズの合間の耳休め。とっても楽しいソウル・ミュージックのクリスマス・ソング集。今年はこの盤で「メリー・クリスマス」。

 
 

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2017年12月24日 (日曜日)

クリスマス企画のジャズを流す

今年もクリスマス・イヴである。我が家では毎年、クリスマスについては、過度な反応はしない。せいぜい、小さなブッシュドノエルと出来の良いシュトレンを手に入れて、ちびちび食するくらいである。音楽もあまりクリスマスを意識はしない。それでも、クリスマスの1週間前からは、ちょっとだけ、クリスマス企画のジャズを流して楽しんだりする。

今年の選盤の中で、これは良いなあ、と感心したのがこのアルバム。『A Dave Brubeck Christmas』(写真左)。変則拍子の名曲「テイク・ファイブ」の作者として演者として有名なジャズピアニスト、デイヴ・ブルーベックが1996年、当時76才の時に発表したソロ・ピアノによるクリスマス曲集である。

我が国では長年、ブルーベックは「スイングしない凡なピアニスト」とされてきた。しかし、である。僕は学生時代、今を去ること30余年前から、デイブ・ブルーベックを聴いてきたが、スイングしないなんてとんでもない。ブルーベックは横にスイングしない。ブルーベックはスクエアにスイングする。それを感じることが出来ないと、ブルーベックのピアノを楽しむ事は出来ない。
 

A_dave_brubeck_christmas

 
このソロ・ピアノ集は、ブルーベックのピアノが、前へ前へ出ること無く、自己主張が希薄で厳かなプレイに終始しているので、強く感じることは無いが、やっぱりスクエアにスイングしている。ウトウトしながら聴いていても、明らかにブルーベックな雰囲気が漂ったピアノ・ソロである。

加えて、クリスマス・ソングに相応しい、落ち着いた荘厳さを底にしっかりと偲ばせた、ちょっと小粋なアレンジを施されていて、聴き心地が良く、飽きが来ない。ジングルベルをテーマにした1曲目「"Homecoming" Jingle Bells」とラス前の「"Farewell" Jingle Bells」では、クリスマス休暇で故郷へ帰る「ワクワクとした気持ち」と、休暇が終わって故郷を後にする時の「心寂しい気持ち」を表現しており、そんなアレンジのセンスも抜群である。

クラシック・ピアノの経験を持つブルーベックならではの、クラシック風のテーマ提示と、最大の個性であるスクエアなスイング感溢れる、厳かな雰囲気を湛えたアドリブ部の対比が素敵な演奏の数々。今年のクリスマス・シーズンは、このブルーベックのソロ・ピアノがヘビー・ローテーション。それでは皆さん、メリー・クリスマス (^_^)v。

 
 

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2017年12月23日 (土曜日)

チックとガッドの新プロジェクト

チック・コリアは、僕のお気に入りピアニストの筆頭。1941年生まれなので、今年で76歳。結構な高齢になってきたのだが、まだまだ現役。もはや「生きたレジェンド」状態なのだが、まだまだ時代の最先端をいく、コンテンポラリーな純ジャズを中心に活動している。そんなチックがドラムのスティーヴ・ガッドと組んで、新しいバンドを立ち上げた。

Chick Corea & Steve Gadd『Chinese Butterfly』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p, key), Steve Gadd (ds), Lionel Loueke (g), Steven Wilson (sax, fl), Carlitos Del Puerto (b), Luisito Quintero (per)。チック・コリアとスティーヴ・ガッドという巨匠二人による新プロジェクトのデビュー盤。日本で11月22日発売。世界に先駆けて日本大幅先行発売である(海外は来年の1月18日のリリース予定)。

もともとチックは、ガッドのドラムと相性が良い。たまにしか組まないのだが、組んだ時のパフォーマンスはどれもが素晴らしい出来。切れ味良く固いタッチのチックのピアノに、縦ノリの柔軟度の高いガッドのドラミングは、硬のチック、軟のガッドという対比で相性が良いのだと理解している。
 

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このチックとガッドの新しいコラボの成果である『Chinese Butterfly』においても、その相性は抜群で、演奏全体の雰囲気としては、アコに拘らずエレに偏らない、アコとエレが見事に融合したフレッシュなサウンドが良い。現代のコンテンポラリーな純ジャズとは「かくあるべし」と言う感じの示唆に富んだ展開の数々が魅力的。

ジョン・マクラフリン作が1曲目、ルエケとチック・コリア作が7曲目、他は全曲コリア作。どの演奏もチックとガッドの相性がとても良いことが良く判る。メロディアスでメリハリが効いていて、硬軟自在、変幻自在、まあ、チックとガッドが組んでのコンテンポラリーな純ジャズである。悪かろう筈が無い。

6曲目「Return To Forever」の再演では、アース・ウィンド・アンド・ファイアーのフィリップ・ベイリーがゲスト参加している。この辺が今回の新プロジェクトのキモなのかなあ、と睨んでいる。現在における成熟した「Return to Forever」を再現するつもりなのかなあ、とボンヤリと感じた次第。次作が楽しみである。

 
 

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2017年12月22日 (金曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・61

ジャズはやっぱりライブだろう。即興演奏が個性のジャズである。やはり、一期一会のライブ演奏が一番、ジャズを感じることが出来る。ライブ演奏を体感するには、ライブスポットやコンサートに出かける必要があるのだが、仕事を持っている以上、そんなに時間の自由は無い。

そうすると、ライブ盤の存在が実に貴重な存在になる。ライブの雰囲気や内容を追体験できるライブ盤は、とても大切な存在である。『Jazz At the Santa Monica Civic '72』(写真)。ジャズの白眉のライブ盤の一枚である。

キーマンは「ノーマン・グランツ」。ジャズ界の敏腕プロデューサーで、1940〜50年代のジャズシーンは、この人抜きには語れない。スイング時代から継続されるビッグバンドやジャズ・ボーカルなど、ベーシックなモダン・ジャズの隆盛はグランツ抜きには語れない。そんなグランツ、1960年代には、フリー・ジャズが台頭した米国ジャズ・シーンに愛想を尽かし、欧州に移住。

グランツのジャズは「明るく楽しいエンタテインメント」。眉間にしわをよせた様な、小難しいフリー・ジャズなどとは相容れ無い。しかしながら、フリー・ジャズが迷走を始めた1970年代初頭から、片隅に追いやられていたベテラン・ジャズメンたちが復権を果たす訳だが、それにひと役かったのが、グランツがジャズシーンへ復帰して創設したレーベル「Pablo」。

1972年8月、グランツは西海岸のサンタモニカ・シビック・オーティトリアムで、JATP復活のコンサートを大々的に行った。その時の模様をライブ録音したアルバムが、この『Jazz At the Santa Monica Civic '72』。メインアクトはカウント・ベイシー・オーケストラ、オスカー・ピーターソン・トリオ、エラ・フィッツジェラルド、トミー・フラナガン・トリオ(エラの伴奏を担当)。
 

Jazz_at_the_santa_monica_civic_72

 
すっごく良い雰囲気のジャズ演奏が全編に渡って展開される。どの演奏をとっても「モダン・ジャズ」なのだ。どの演奏にもエンタテインメント漂い、モダンでダイナミックでポップ。聴いていて単純に楽しい。全く小難しく無い。

全編2時間35分、ジャズの良いところがギッシリとこのライブ盤に詰まっている。どこから聴いても「モダン・ジャズ」。しかも、演奏のレベルは高度。テクニックも優秀。それでもそれが耳につくことは無い。ただただ聴いていて楽しい。LP時代は、LP3枚組のボックス・アルバムとして発売された。

LPの1〜2枚目には、カウント・ベイシー・オーケストラやオスカー・ピーターソン等が収録されていて、これはこれでとってもポップで楽しいのだが、とりわけ、その内容が素晴らしいのが、3枚目のエラ・フィッツジェラルド。カウント・ベイシー・オーケストラ+トミー・フラナガン・トリオという豪華なバックを従えて、歌いまくるエラはとても素敵だ。ポップで楽しいエラ。僕はこのライブ盤でエラを見直した。

ただ単に部屋で流しているだけで、ジャズの良いところが追体験できる。ライブ盤として白眉の出来。「ジャズを聴かせて」と要求されたら、この盤をかける。逆にこのライブ盤を聴いて、ジャズを感じることが出来なかったら、他の何を聴いても、その人はジャズを感じることは出来ないだろう。このライブ盤には「モダン・ジャズ」がギッシリと詰まっている。

 
 

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2017年12月21日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・94

僕の大のお気に入りのエレジャズ・バンド「Weather Report(=略してWR)」。印象的なフレーズや美しい旋律を伴った秀曲が多々あるのだが、徐々にカバーが増えてきている。ジャズって、1950年代からスタンダード曲というものがあるんだが、新しい時代の、いわゆる「ネオ・スタンダード」と呼ばれる曲があまり出てこない。印象的なフレーズや美しい旋律を伴ったWRの曲なんて、カバーに最適だと思うんだがなあ。

と思っていたら、こんなピアノ・トリオ作が出た。クリヤ・マコト, 納浩一, 則竹裕之『Acoustic Weather Report』(写真左)。2015年の作品。改めてパーソネルは、クリヤ・マコト (p), 納浩一 (ac-b), 則竹裕之 (ds)。純日本編成のピアノ・トリオ。WRの音楽を、あえて生楽器、それもピアノ・トリオでリアレンジすることにより、元祖WRの魅力を再発見しようというコンセプトで始ったとのこと。

WRの音世界の魅力は、電気楽器による、サイケデリックかつダイナミックな表現、分厚いユニゾン&ハーモニーなんだが、ピアノ・トリオ化に当たって、この魅力をバッサリ切り捨て、曲の持つ「印象的なフレーズや美しい旋律」を前面に押し出す、なんとも大胆かつ繊細なアレンジが見事である。
 

Acoustic_weather_report_2

 
しかし、よくまあアレンジを「やり切ったなあ」と感心する。もともとWRの曲は構造的に「難曲」が多く、コピーする分になんとかなるのだが、ピアノ・トリオなどでカバーする場合、WRの曲の持つ「複雑な構造」をどうアレンジし、表現するかが鍵になる。実はこの「複雑な構造も持つ」ところが、WRの曲の最大の個性でもあるのだ。これを省略したり、アレンジし損ねると、演奏自体が、何をやっているのか、判らなくなる危険性がある。

とにかく完コピしていないところが潔い。WRの曲が持つ個性的な部分だけを取り出して、シンプルに演奏する。この「潔さ」がこの盤の「キモ」である。トリオ演奏自体のレベルも相当に高い。上質のピアノ・トリオ。演奏を聴いていると、本場米国の有名なピアノ・トリオの演奏なのかと思ってしまうのだが、これがまあ「純日本製」なのだ。思わず口元が綻び、思わず胸を張りたくなる様な素晴らしい演奏。

収録されたどの曲も魅力的な演奏ばかりだが、とりわけ、冒頭の「キャノン・ボール」、2曲目の「エレガント・ピープル」、7曲目の「ヤング・アンド・ファイン」辺りが、かなりの「聴きもの」。アレンジが優秀なので、何度聴いても飽きが来ない。今回の収録曲以外の「他の曲」をカバーした「続編」を期待したい。

 
 

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2017年12月20日 (水曜日)

アンサンブルの良さが際立つ

リターン・トゥー・フォーエヴァー(Return to Forever=以降RTF)のオリジナル・メンバーであり、チック・コリアの盟友である「スタンリー・クラーク(Stanley Clarke)。エレベとアコベ、両刀使い。エレベのブンブン唸りとチョッパー、そして、ギターの様に旋律を奏でる弾き回しは、エレベのイノベーターの一人として差し支えないだろう。

アコベも上手い。弦と胴をブンブン唸らせながら、低音から高音まで、フルスケールでアドリブ・ソロを弾く様は、これはこれで素晴らしいもの。そんな両刀使いのベースを堪能出来る、スタンリー・クラークのソロ・サード盤がこれ。Stanley Clarke『Journey to Love』(写真)。 1975年の作品。パーソネルからチック・コリアの名前がアコピのみに後退し、キーボードには、ジョージ・デュークの名前がフィーチャーされている。

冒頭から「ファンキー・フュージョン」なエレ・ジャズが展開される。クラークのファンキーなエレベが心地良い。音の雰囲気は、チックがいないにも関わらず、第2期RTFのファンキー・フュージョンの雰囲気を踏襲しているようだ。不思議なんですが、スタンリー・クラークだって、RTFのオリジナル・メンバーであり、作曲だってする。当然、アレンジにも参加するだろう。
 

Journey_to_love

 
そういう意味で、クラークのソロ盤に第2期RTFの音の雰囲気が漂うって、当たり前のことだと思うんだが、如何だろう。このクラークのソロ第3弾は、上質のファンキー・フュージョンなエレ・ジャズがギッシリと詰まっているのだ。本家の第2期RTFの演奏と比較しても遜色は無い。逆に、クラークのベース・ソロがフューチャーされているので、クラークのベースを感じるには打って付けのアルバムである。

パーソネルを見渡していると、ジャズの世界ではちょっと異質のギタリストの名前があるのに気が付く。あの三大ロック・ギタリストの一人「Jeff Beck(ジェフ・ベック)」がタイトル曲と「Hello Jeff」に客演している。ベックは自身のライヴでクラークの曲「Power」を演奏したことがあり、その後クラークの自宅を訪れて共演を希望したという。

ふむふむ。ジェフ・ベックのストラトが響き渡ってますね。さすが、ロック・インストって感じで弾きまくっています。トーンの特異さで聴かせてしまう独特の演奏は聴きものです。そして、全編に渡ってアレンジが実に上手い。演奏全体のアンサンブルの良さが際立つ好盤です。フュージョン・ジャズの傑作の一枚として、もっと採り上げられても良い好盤だと思います。

 
 

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2017年12月19日 (火曜日)

ハバードの真摯なセカンド盤

初リーダー盤『Open Sesame』で、神妙かつ堅実なブロウを披露、その才能を遺憾なく発揮したフレディ・ハバード。しかし、彼の高テクニックで自由奔放なブロウは「抑制」状態だったことは否めない。それが証拠に、この初リーダー作は、ハバードの抑制のトランペットを評価する反面、ブルージーな雰囲気を増幅させる、ティナ・ブルックスの哀愁のブロウを評価する声も高かった。

それでは、とブルーノートの総帥アルフレッド・ライオンはリーダー作第2弾をセットアップする。Freddie Hubbard 『Goin' Up』(写真左)。1960年11月の録音。ブルーノートの4056番。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Hank Mobley (ts), McCoy Tyner (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。初リーダー作とは打って変わって、第一線級の人気ジャズメンで周りを固める。

テナーのモブレー、ベースのチェンバース、ドラムのフィリー・ジョー。もとマイルス楽団のスター・ジャズメン達。相手にとって不足は無い。ピアノだけは初リーダー作同様、当時、まだまだ駆け出し若手のマッコイを継続している。恐らく、マッコイのピアノは伴奏上手だけあって、ハバードにとって吹きやすかったのだろう。
 

Goin_up

 
この盤でのハバードは吹きまくっている。初リーダー作では「抑制」したが、このセカンド盤ではテクニックを駆使して、しっかりと吹きまくっている。フロントのパートナーにテナーのモブレーがいるので、胸を借りる感じで、テクニックを駆使しつつ、ハバードは力強くトランペットを吹いている。併せてハバードに刺激されて、相対するモブレーが、何時になく溌剌としているのが面白い。

ベースのチェンバースは太いベースでビートを支え、ドラムのフィリー・ジョーは、迫力のドラミングでフロントを鼓舞する。アタックにメリハリのあるマッコイのピアノは、ノリが良くフロントをスイングさせる。さすがに第一線級のジャズメン達である。ハバードのハイテクニックでしっかりしたブロウをしっかりと受け止めている。故にハバードのトランペットが映えに映える。

この盤でのハバードは真摯である。まだまだ前面に出て目立ちたがることは無い。第一線級の先輩ジャズメン達を相手に、真摯に胸を借りるつもりで、相手に敬意を表しつつ、思い切ってぶつかっていくようにトランペットを吹きまくるハバードは実に愛らしい。密度の濃い、ハイテクニックなブロウは決して耳に付かない。どころか、耳にとても心地良い。

 
 

東日本大震災から6年9ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年12月18日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・115

若い頃、フレディ・ハバードが苦手だった。周りが超一流のジャズメンの場合はまだ大人しくしているんだが、周りが自分より若い、もしくは、一段低いレベルのジャズメンだったりすると、途端に前へグイグイ出て吹きまくる。とりわけ、自分がリーダーのアルバムについては、絶対に前へ出て目立ちまくって吹きまくる。

これが凄く耳につく時があって、ハバードのリーダー作は敬遠していた。当方も歳をとって、ハバードの目立ちたがり屋もそれはそれで可愛いところがあるよな、と思えるようになって、何時の頃からか、そう50歳を過ぎた頃から、ハバードのリーダー作をしっかりと聴く様になった。これがまあ、とにかく上手い。歌心よりも何よりもテクニックよろしく目立ちたがる、吹きまくる。

しかし、そんなハバードにも、初リーダー作の時代があった。Freddie Hubbard『Open Sesame』(写真左)。1960年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Tina Brooks (ts), McCoy Tyner (p), Sam Jones (b), Clifford Jarvis (ds)。よくよく見れば、実にユニークな人選である。まず、ベテランな先輩ジャズメンがいない。基本的に若手から中堅で固めている。

さすがにハバードの初リーダー作である。当時23歳。さすがに若い。確かに、この若さで、周りをベテランな先輩ジャズメンで固めたら、バリバリとテクニック良く吹きまくる、ハバードの個性が陰る危険性がある。恐らく、ブルーノートの総帥アルフレッド・ライオンはそのリスクを未然に防いだ感がある。
 

Open_sesame

 
決して、前に出てバリバリに吹きまくることは無い。他のメンバーの音を良く聴きながら、時にユニゾン&ハーモニーに溶け込み、アドリブ・ソロに入っても、吹きまくることは無い。堅実に確実にテクニック豊かなアドリブ・ソロを吹き進めていく。これだけ、神妙でかつ堅実なハバードは後にも先にも、このリーダー作のみと思われる。

しかし、抑制の美と言う言葉があるが、このハバードの初リーダー作を聴いていて、その「抑制の美」を強く感じた。テクニックも抜群、馬力もあって、となれば、この初リーダー作の様に抑制の美を発揮しつつ、しっかりと歌心を追求する、としていけば、恐らく、マイルスの逆鱗に触れることもなかったろうに、とつくづく思う。

アルバムの演奏全体に漂うマイナー調、どっぷりブルージーな雰囲気は、思いっきり「ジャズ」を感じることが出来る。ハバードのトランペットもしっかりとブルージーに鳴り響く。そして、ティナ・ブルックスのちょっとマイナーにピッチがズレたような哀愁のブロウがそんなブルージーな雰囲気を増幅させる。昔、我が国のジャズ喫茶の人気盤だったと聞くが、それも十分に合点がいく。

ブルーノート・レーベルの音が満載。ハードバップの良いところがギッシリと詰まった好盤である。この盤を聴く度に「ハードバップ・ジャズ」ってこういう演奏を言うんやなあ、と感心する。ジャケットもしっかりとブルーノートしていて、やっぱりこの盤はいいなあ、と思うのだ。この盤でのハバードは「粋」である。

 
 

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2017年12月17日 (日曜日)

あっさりとしたオルガンの音色

この人のオルガンは非常に特徴がある。従来のジャズ・オルガンにあるものが全く備わっていない。いわゆる「どファンキー」なニュアンスが全く感じられず、レスリー・スピーカーを駆使した、ぐわーっと迫り来るオルガン独特の迫力も無い。あっさりとしたオルガンの音色が実に個性的。

そのオルガニストとは、ラリー・ヤング(Larry Young)。若いジャズ者の方々には全く馴染みの無い名前であろう。それもそのはずで、ラリー・ヤングは、1940年10月生まれなんだが、1978年3月、37歳で鬼籍に入っている。今から、もう40年も前のことになる。それでも、プレスティッジとブルーノートを中心に、十数枚のリーダー作を残してくれているので、彼のユニークなオルガンを追体験することが出来る。

そんなラリー・ヤングのあっさりオルガンを追体験できるアルバムが、Larry Young『Unity』(写真左)。1965年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Larry Young (org), Woody Shaw (tp), Joe Henderson (ts), Elvin Jones (ds)。ショウのトラペットとヘンダーソンのテナーを2管フロントに据えたオルガン・ジャズである。
 

Unity

 
ラリー・ヤングのオルガンは「オルガン界のコルトレーン」と形容される。しかし、この盤では、フロントにショウとヘンダーソンを迎え、ヤングは伴奏に徹している感がある。しかも、ドラムにはあのポリリズムの巨匠、エルヴィン御大が据わっているので、ダイナミズムは御大に任せている。つまり、この盤では、ヤングの新しい感覚の「オルガンの伴奏」が聴けるのだ。

決して前に出ることの無い、あっさりとしたオルガンなんだが、ソロ・パートに入ると、コルトレーンばりの「シーツ・オブ・サウンド」で弾きまくる。この弾きまくりを聴くと「オルガン界のコルトレーン」の形容に合点がいく。そして、伴奏に回った時のあっさりとした、それでいてしっかりツボを押さえたオルガンはスマートで、実に趣味の良いもの。

あっさりとしたオルガンの音色は、従来のジャズ・オルガンの音からすると、あきらかに対極にある音。それが、ラリー・ヤングのオルガンの個性。しかし、ソロ・パートに入ると、いきなり「オルガン界のコルトレーン」に変身し、「シーツ・オブ・サウンド」で弾きまくる。この人のオルガンは聴いていて面白い。他のアルバムも絶対に体験せねばならない。

 
 

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2017年12月16日 (土曜日)

ビッグバンド・ジャズは楽し・43

ジャズのライブでの花形的存在が「ビッグバンド」。ジャズとして、商業ベースに乗ったビッグバンドの出現から、そろそろ100年、経つのではないだろうか。何時の時代にもビッグバンドは存在し、ビッグバンドはジャズにとって不可欠な存在であった。ジャズをずっと聴き続けていると、時々、ビッグバンドに耳を傾けてスカッとしたい瞬間が必ずやってくる。

Christian McBride Big Band『Bringin' It』(写真左)。2017年9月のリリース。グラミー賞を受賞した『The Good Feeling』から6年振り。クリスチャン・マクブライド、待望のビッグ・バンド第二弾! オーソドックスな、従来からの伝統的なビッグバンド・ジャズの音世界が心地良い。ジャケットも良好。このジャケットを見ただけで、中の音の優れ度合いが想像できる位だ。

6年振りの第2弾とのこと。前作『The Good Feeling』の出来が非常に良かっただけに、第2作目のリリースまで、6年も空いたのが意外。やはり、ビッグバンドはコストがかかり過ぎるのかな。でも、今回の第2弾『Bringin' It』を聴いていると、しっかりと準備し、人選もしっかりとして、用意周到、満を持してのリリースであることをビンビンに感じる。
 

Bringin_it_1

 
ジャズのビッグバンドともなれば、ユニゾン&ハーモニーの迫力とドライブ感、切れ込むアドリブフレーズ、というど迫力な感じがするのだが、このクリスチャン・マクブライドのビッグバンドは、従来のジャズのビッグバンドのコモンセンスとちょっと趣が違う。大阪弁で言う「シュッとしている」、そして、迫力よりは「小粋でお洒落」でカッチリしている。

マクブライドはベース奏者として、従来通りの高い実力を発揮しつつ、バンドリーダーとしての統率力を遺憾なく発揮している様だ。このビッグバンドのアレンジはとても個性的。しっかりとジャズの伝統に根ざしながら、最近のコンテンポラリーな純ジャズの要素を積極的に採り入れ、融合させている。ある意味、本作はマクブライドから純ジャズ者の方々への贈り物であろう。

純ジャズを基本とした演奏の数々は聴き応え十分。米国ルーツ・ミュージックの要素をそこはかと無く取り込みながら、クリスチャン自身のアレンジも、ビッグバンドとしてのクォリティも、前作と比較して、かなりのレベルでのパワーアップが図られているところに好感を覚える。本当にジャズの伝統、ジャズの基本に忠実で真摯なビッグバンド・ミュージックである。

 
 

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2017年12月15日 (金曜日)

第1期RTFの裏の好盤です。

なんやかんや言いつつ、エレベ(エレクトリック・ベース)については、スタンリー・クラークがずっとお気に入りである。スタンリー・クラーク(Stanley Clarke)。1951年6月生まれ。今年で66歳。チック・コリア(Chick Corea)の下、あの伝説のエレジャズ・バンド「リターン・トゥー・フォーエバー(Return to Forever=RTFと略)」のオリジナル・メンバーとして有名。

クラークは、アコベもエレベもいける両刀遣い。どちらの楽器に関しても一流である。テクニックがどうの、という次元を超越した、とにかく格好良いベーシストです。とりあえずペンタで速弾き、3フィンガー高速6連弾き、エモーショナルコード弾き、スラップしまくる、弦を手で叩きまくる、などなどの必殺技を繰り出す繰り出す。後進のベーシストに多大な影響を与えました。

Stanley Clarke『Children of Forever』(写真)。1972年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Stanley Clarke (b), Chick Corea (key), Pat Martino (g), Lenny White (ds), Arthur Webb (fl), Dee Dee Bridgewater, Andy Bey (vo)。ギターにパット・マルティーノ、ボーカルにディー・ディー・ブリッジウォーターの参加が目を惹く。
 

Children_of_forever

 
スタンリー・クラークの「RTF」在籍時にリリースした初リーダー作。内容的に「第1期RTF」の雰囲気そのままです。ボーカルが違う、ギターいたっけ、というところはありますが、基本は明らかに「RTF」。キーボードがチック、ドラムが後のRTFメンバーのレニー・ホワイト、加えて、エキゾチックでスピリチュアルなボーカル入り、そして、主役のクラークのベースがブンブン唸るので、どうしても「第1期RTF」を想起します。

しかし、出来は良い。確かにチック・コリア主導で事実上はチックのリーダー盤といって差し支えない内容ではあるが、ベースは絶対にスタンリー・クラークでないと成立しない音世界ではあるので、チックの影響が色濃いとはいえ、クラークのリーダー作として差し支えない。パット・マルティーノのギターもなかなかの活躍。ボーカルのディーディーとベイのボーカルの雰囲気がフュージョン。

スピリチュアル&クロスーオーバーな音作りが、今の耳にはユニークです。特にアコピのアコベの存在が面白い効果を醸し出していて、唯一無二のコンテンポラリーな純ジャズに仕上がっています。「RTF」の延長的な作品であるため、ファンの間ではこれをクラークのソロとカウントしないらしいが、それでも、RTFの裏の好盤のして、この盤は聴き応えがあります。

 
 

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2017年12月14日 (木曜日)

ECMレーベルらしい音・7

ECMレーベルの初期の頃のアルバムには「フリー・ジャズもの」が多い。恐らく、1970年代前半、欧州のジャズ界は「フリー・ジャズ」のブームだったんだろう。というか、欧州のジャズ者の方々は「フリー・ジャズもの」が好きだ。一定量のフリー・ジャズ者が何時の時代にも存在するみたいだ。

Jan Garbarek『Triptykon』(写真左)。1972年11月の録音。ECM1029番。ちなみにパーソネルは、Jan Garbarek (ss, ts, bs, fl), Arild Andersen (b), Edward Vesala (perc)。ノルウェー出身のサックス奏者、ヤン・ガルバレクの5枚目のリーダー作。ECMレーベルでは、『Afric Pepperbird』『Sart』に続く3枚目。

ECMレーベル独特の、抑制の効いた、切れ味の良い怜悧な音世界が個性の「フリー・ジャズ」が全編に渡って展開されている。コルトレーンの様ではあるが、コルトレーンの様な「汗飛び散る様な熱気」は全く無い。この盤は「青く怜悧な熱気」に覆われている。随所にエキゾチックなルーツ音楽の要素が散りばめられていて、欧州のフリー・ジャズやなあ、と妙に感心したりする。
 

Triptykon  

 
ガルバレクのサックスはコルトレーンのマナーを踏襲しているが、演奏時のアドリブ・フレーズの展開や旋律の調子は、何となく「オーネット・コールマン」の様な雰囲気を感じる。欧州フリー・ジャズの特徴なんだが、米国フリー・ジャズのいいとこ取りをしつつ、音世界の雰囲気は明らかに「欧州」な雰囲気を前面に押し出す。このガルバレクのフリー盤も同様に傾向をしっかり踏襲している。

ラストのノルウェー民謡である「Bruremarsj」が実に良い雰囲気。典型的な欧州フリー・ジャズの展開を踏襲していて、聴いていて、とても楽しい。素朴でメロディアス、ルーツ・ミュージックな雰囲気がプンプンして、フリーなアドリブ展開も全く気にならずに、楽しんで聴ける。こういう欧州ルーツ・ミュージックをベースにしたジャズ演奏って、勿論、米国には無いもので、ECMレーベルのアルバムの良い個性でもある。

しかし、これだけ徹底したフリー・ジャズって、どれだけ、一般のジャズ者の方々に訴求するのだろう。欧州ではそれなりに市民権は得ている、とは言うが、人数はかなり絞られるのでは無いだろうか。ガルバレクのフリーなテナーはテクニックが確かなので、耳触りでは無い。ECMレーベルのフリー・ジャズを知るのに、格好の一枚である。

 
 

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2017年12月13日 (水曜日)

明らかに新しいジャズ・オルガン

昨日に引き続き、この人のオルガンも、ほんのりファンキーなんだけど「軽快でスッキリ」している。逆に、アグレッシブで音の太い、ストレートな音がこの人の個性。従来のジャズ・オルガンの音からすると、あきらかに対極にある音。この人とは、サム・ヤヘル(Sam Yahel)。1970年生まれだから今年で47歳。バリバリの中堅オルガニスト。

『Yaya3』(写真左)というアルバムがある。Yaya3=ヤヤ・キューブド(cubedは数字の3乗)と読む。2002年の作品。ちなみにパーソネルは、Joshua Redman (ts), Sam Yahel (org), Brian Blade (ds)。ヤエルがNYのジャズ・クラブ「スモールズ」で行なっていたライヴにジョシュアが参加して、このプロジェクト=Yaya3 は立ち上がった。

このプロジェクト=Yaya3の実質的なリーダーは、サム・ヤヘル。そして、このヤヘルのオルガンが実に魅力的なのだ。こってこてのファンクネスはかなり希薄。つまり、オルガンの演奏スタイルは、ジャズ・オルガンの大御所、ジミー・スミスの様なものでは無く、オルガンのコルトレーンと呼ばれたラリー・ヤングに近い。軽快でスッキリ、アグレッシブで音の太い、ストレートな音。
 

Yaya3

 
ストイックなまでにアグレッシブなオルガンの音色は、ストレートなグルーブ感を生み出して、シャープにうねる。音の雰囲気とくすみは明らかにジャズのものであり、このアルバムでのヤヘルのオルガンは、ストレート・アヘッドな純ジャズ系のオルガンである。コマーシャルに走らず、あくまで硬派にモード・ジャズを極めていく。

そんなヤヘルのオルガンに、ジョシュアのテナーが魅力的に絡む。ジョシュアのテナーは、コルトレーンとロリンズを足して2で割って、ロリンズ寄りに個性を寄せた感じ。硬派でストレートではあるが歌心に富んだテナーは、他に有りそうで無い個性。それが、軽快でスッキリ、アグレッシブで音の太い、ストレートなヤヘルのオルガンに絡むのだ。新しいオルガン・ジャズの響きが芳しい。

そして、そんな二人を鼓舞する、ポリリズミックな千手観音ドラミングのブライアン・ブレイド。硬軟自在、緩急自在なドラミングが、旋律をアドリブ・ラインを自由度高く司るフロント二人を手厚くサポートする。そして、アルバムを聴き終えた後、耳に一番残っているのはヤヘルのオルガン。現代の、明らかに新しいジャズ・オルガンの音である。

 
 

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2017年12月12日 (火曜日)

軽快でスッキリしたオルガン奏者

ジャズ・オルガンが大好きである。もしかしたら、ピアノより好きかもしれない。ジャズにおいて、オルガンとは「こってこてファンキー・ジャズ」の必需品。特に、オルガンの音を「シュワシュワ」揺らす装置、レスリー・スピーカーなどを使って、ハモンド・オルガンを太い音で「グワ〜ッ」とやると、もうそこは漆黒ファンキーの世界。

もともとハモンド・オルガンの音って、協会のゴスペルの伴奏をする楽器というイメージがあって、その音そのものが「ファンキー」なんですよね。フット・ペダルでベース・ラインを押さえる演奏家も多く、このベース音が、これまた太い低音鳴り響き、ブンブンいう音がやっぱり「ファンキー」なのだ。

しかし、この人のジャズ・オルガンは、ファンキーなんだけど「軽快でスッキリ」している。ファンクネス度合いもベッタベタなファンクネスというよりは、ライトなファンクネス。オーバー・ファンクな音世界が苦手なジャズ者の方々が一目置く存在。その名は「シャーリー・スコット(Shirley Scott)」。ジャズ界では稀少の女性のオルガン奏者である。

Shirley Scott『On A Clear Day』(写真左)。1966年1月の録音。"Queen of the Organ"と呼ばれたシャーリー・スコットのリーダー盤。ちなみにパーソネルは、Shirley Scott (org), Ron Carter (b), Jimmy Cobb (ds)。シャーリー・スコットは、ベースは本職のベーシストに任せて、オルガンで旋律を弾くタイプ。
 

On_a_clear_day

 
ベースを本職のベーシストに任せているので、ベース・ラインが柔軟でバリエーション豊か。演奏全体に音の陰影と緩急をしっかりと与えている。ベースの生音というのは、結構、切れ味良くスピード感があるので、耳にもたれない。所謂オーバー・ファンクに陥ることは無い。ここがシャーリーのオルガンの「ミソ」で、ベースを本職のベーシストに任せることで、オルガンの演奏自体が、ァンキーなんだけど「軽快でスッキリ」するのだ。

ジミー・コブのドラミングも見事。オルガンのアドリブ・フレーズって、音が伸びるので、ピアノの様に歯切れ良く、間が空くことが少ない。そういう連続した音の羅列を、鼓舞するが如く、刺激するが如く、歯切れの良い硬軟自在なドラミングは、シャーリーのファンキーなんだけど「軽快でスッキリ」なオルガンに相性抜群である。

選曲もスタンダード中心で、ライトな感覚のシャーリーのオルガンがしっかりと馴染む。シャーリーの軽快なオルガンが、軽快なスイング感を供給してくれる。決して、オーバー・ファンクに偏って耳にもたれることは無い。ファンキーなんだけど「軽快でスッキリ」したオルガンだからこそ、ボサノバの名曲、アントニオ・カルロス・ジョビンの「Corcovado」をカバーすることだって出来るのだ。

 
 

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2017年12月11日 (月曜日)

こんなアルバムあったんや・93

最近のネットのダウンロード・サイトって、とっても便利。時々、サイトの中を彷徨って、これは、という盤に出会ったら、試聴をかまして吟味する。そうやって「こんなアルバムあったんや〜」とビックリするやら、感心するやら、今まで聴いたことの無い盤に出会って、感謝感謝である。

Allan Holdsworth『Blues for Tony』(写真左)。そうやって、ダウンロード・サイトで出会った好ライブ盤。2009年のリリースになる。かつてホールズワースが在籍していた、トニー・ウィリアムス・ニューライフタイムの再現ライブ。トニーは1997年2月に亡くなっているので、このライブは、亡くなったトニーに捧げる演奏を記録したものになる。

2007年5月のヨーロピアン・ツアーの模様を収めたもので、パーソネルは、Allan Holdsworth (g), Alan Pasqua (key), Chad Wackerman (ds), Jimmy Haslip (b) のカルテット構成。凄まじいばかりのハイテクニックを駆使してのエレ・ジャズではあるが、決してフュージョンでは無い。演奏を聴けば判るが、明らかに硬派な純ジャズ系のエレ・ジャズ。
 

Blues_for_tony

 
収録曲は、ホールズワースが在籍していた、トニーのニューライフタイム名義のアルバム『Believe It』に収録されている「Fred」「Proto-Cosmos」「Red Alert」を中心に、メンバーのオリジナル曲を併せて全11曲。CD2枚組のボリュームですが、全演奏時間は90分程度で、演奏のテンションが高くて、内容もバラエティに富んでいるので、一気に聴いても飽きることは無い。充実にライブ演奏です。

スピード感を十分、それぞれの楽器の音もタイトで切れ味良く、とても気持ち良く聴けます。特にホールワースのギターは絶好調で、切れ味良く、クイックに捻れ、ポジティブな音は「ホールワースやなあ」と感心し笑みがこぼれるばかりの強烈な個性です。パスクアのキーボードも素敵に歪みつつ、切れ込むような疾走感を伴ってガンガン弾きまくります。

この弾きまくるホールワースは、あらゆるロック・ギターの演奏を吹っ飛ばしてしまうばかりの迫力とテクニック。しかも、アドリブ・フレーズにも聴きどころ満載で、こんなライブ盤が2009年にリリースされていたなんて、とにかくビックリしました。以前のニューライフタイムの演奏よりも緻密で高度。聴きどころ満載の好ライブ盤です。

 
 

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2017年12月10日 (日曜日)

「動」の宇宙人的モードの演奏

ショーターのディスコ・グラフィー上では、『Speak No Evil』と『The All Seeing Eye』の間を埋める音源で、黒魔術っぽい怪しげで神秘的な宇宙人モードから、正統派な限りなく自由度の高い宇宙人モードへの移行期の音がここにある。Wayne Shorter『The Soothsayer』(写真)。1979年、日本での発売時の邦題が『予言者』。

1965年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ts), Freddie Hubbard (tp), James Spaulding (as), McCoy Tyner (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。録音当時はお蔵入りになった盤。1979年にようやくリリースされている。3管編成でアレンジが非常に凝っている。ショーターの捻れた音世界満載。

『Speak No Evil』と『The All Seeing Eye』の間を埋める、という意味では、この『Et Cetera』と『The Soothsayer』が、当時「お蔵入り」の兄弟盤の様な位置づけで存在しており、この『Et Cetera』は「静」の宇宙人的モードの演奏が収録されている。ちなみに『The Soothsayer』は「動」の宇宙人的モードの演奏が収録されている。この盤においてショーターは絶好調である。
 

The_soothsayer

 
ショーターのテナーは、「動」の宇宙人的モードを繰り出して、捻れに捻れる。この「捻れ」が絶品。フロント3管のパートナーの一人、アルトのジェームズ・スポルディングも大健闘。60年代に活躍したセッション・ミュージシャンなんだが、力感豊かに疾走感溢れるアルトが見事。スポルディングのアルトは、パーカーの影響が感じられない新しいタイプのアルト。どちらかと言えば、ハードバップ後期のコルトレーンの様だ。

トランペットのハバードは、とにかく上手い。しかし、ハードバップ期の様に、俺が俺がと前へ出て目立ちに目立つということは無い。但し、ハバードが大人になった訳では無いようだ。ハバードの上手さが埋もれてしまうほどに、ショーターの「捻れ」が凄まじく、スポルディングの力感溢れるプレイが圧巻なのだ。ハバードは埋もれぬよう、懸命にトランペットを吹き上げる。

フロントを支え煽るリズム隊、トニーのドラム、ロンのベース、タイナーのピアノの内容も素晴らしい。トニーとタイナーは初顔合わせらしいが、全く違和感無く、一体となってフロントを煽っている。この盤も『Et Cetera』同様、録音当時、何故お蔵入りになったのか、理解に苦しむ。モードがベースの新主流派の演奏の良いところが満載。怖じけず入手して後悔の無い、ジャズ者中級者向けの好盤です。

 
 

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2017年12月 9日 (土曜日)

マクドナルド・ドゥービーの始め

ドゥービー・ブラザース。訳して「大麻兄弟」。振り返ってみれば、凄いネーミングのバンドである。1960年代後半から1970年代まで、ウェストコースト・ロックを代表するバンドのひとつ。1982年に一旦、解散したが、1989年、正式に再結成し、今日に至る。

バンド当初の野性味あふれる快活なギター・ロック("オリジナル・ドゥービー"と僕は呼ぶ)から、途中、マイケル・マクドナルドの加入により、R&Bの影響を受け、洗練されたAOR色の強いものへと変化("マクドナルド・ドゥービー"と僕は呼ぶ)。硬軟併せ持った、二つの顔を持つ、ウェストコースト・ロックの代表格。

オリジナル・ドゥービー時代からのファンの方々からすると、どうもこの後半のマクドナルド・ドゥービーは許せない変化らしい。が、僕は、オリジナル・ドゥービーも好きだが、マクドナルド・ドゥービーはもっと好きだ。で、マクドナルド・ドゥービーは、どのアルバムから出現したのか。

The Doobie Brothers『Takin' It To the Streets』(写真左)。邦題『ドゥービー・ストリート』。1976年3月のリリース。前作の『Stampede』より、元スティーリー・ダンのジェフ・バクスターとマイケル・マクドナルドが参加したことにより、ドゥービーのサウンドは大きく変化する。明らかにR&Bの影響を受け、洗練されたAOR色の強いものへと変化。ギターバンドから、キーボードが効果的に活躍するAORバンドに変身している。
 

Takin_it_to_the_streets_1

 
冒頭の「Wheels of Fortune(運命の轍)」、2曲目の「Takin' It to the Streets(ドゥービー・ストリート)」を聴けば、その変身度合いが良く判る。これだけ聴けば、これ誰がやってんの、となる。実は、この『ドゥービー・ストリート』のリリース当時、このアルバムをレコード屋でかかっているのを聴いた時、始めはドゥービーの音とは思わなかった。

曲が進むにつれ、オリジナル・ドゥービーの曲想の曲が流れてきたりするが、マクドナルドのキーボードが絡むと(特にフェンダー・ローズが絡むと)、途端にマクドナルド・ドゥービー色に染まる。これが当時は不思議で堪らなかった。どうして、マクドナルドのキーボードが絡むだけで、音がR&B基調のAOR色の色濃いものになるのか。

もともと、オリジナル・ドゥービー時代から、曲毎にファンキーな要素が織り込まれていて、マクドナルドのキーボードの絡みで、そのファンキー色が増幅されて「R&Bの影響を受け、洗練されたAOR色の強いもの」へと変化する、ということが何と無く判ったのは、この盤のリリース後、3〜4年後、大学に入って、ジャズを聴き初めてからである。

マクドナルド・ドゥービーへの転換点のアルバムはこの『ドゥービー・ストリート』。特にタイトル曲の「Takin' It To the Streets」の切れ味の良いファンキーなリズム&ビートとゴスペルチックなコーラス、疾走する爽快感。これがマクドナルド・ドゥービーの真骨頂。今の耳にも、このアルバムは色褪せない。マクドナルド・ドゥービーも無茶苦茶、格好良いのだ。

 
 

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2017年12月 8日 (金曜日)

37回目のジョンの命日である

ジョンの命日である。1980年12月8日 22時50分、自宅アパートのダコタ・ハウス前で、マーク・チャップマンの凶弾に倒れた。享年40歳。レノンの死亡時に病院のタンノイ・スピーカーから流れていた曲はビートルズの「オール・マイ・ラヴィング」だったという。僕は当時、大学3回生。そうか、あれから37年の月日が流れたことになるのか。

今年は「37年」という中途半端な経過年なので、ジョンの命日はほとんど話題になっていない。ちょっと淋しい気がする。それでも、今年も命日を偲んで、ジョンのソロ盤をかけて、ジョンの在りし日を偲んでいる。今年の選盤は、John Lennon『Walls And Bridges』(写真左)。邦題『心の壁、愛の橋 』。1974年9月のリリース。全米1位・全英6位・日本14位を記録。

この盤については、深夜ラジオから流れて来た、当時のシングル盤「Whatever Gets You Thru The Night(真夜中を突っ走れ)」が切っ掛け。僕はこの曲が大好きで、FMからエアチェックして、映画研究部の部室で、必ず一人の時、この曲を大音量で聴いていた。そこへ、先代部長Nさんがヒョッコリと顔を出して「ジョン聴いてんのか」。
 

Walls_and_bridges_1

 
僕は圧倒的にジョンが好きで、先代部長のNさんもそうだった。二人で密かに意気投合し、翌日、僕はこのシングル曲が収録されている『Walls And Bridges』をNさんから借り受けた。当時、ダビングさせて貰ったカセットは、僕にとって、宝物のひとつであった。振り返れば、ほんと必ず二人の時に(時々Muさんが加わる)、Nさんとジョンのアルバムを聴いたなあ。しかし、そのNさんも、もうこの世にいない。

「#9 Dream(夢の夢)」も名曲だと思う。1975年のリリース。全英23位、全米9位を記録。音の丸みと浮遊感が素敵で、それでいて、演奏のメインはしっかりと骨太にアレンジされている。暖かい空気に包まれたような感じの中で、ジョンの印象的なフレーズがクッキリと浮かび上がる。そんなアレンジが秀逸。何度繰り返し聴いても飽きの来ない優れもの。

僕達は、決してジョンを忘れる事は無い。今年のジョンの命日は『Walls And Bridges』で鎮魂。ジョンが亡くなって、37年が過ぎた。僕もあれから37歳、年を取った。しかし、世界の状況は「あの頃」とあまり変わってはいない。ジョンの命日になると、日々の忙しさに追われて忘れていた、ある「疑問」がフッと頭に浮かぶ。「本当に人類は進歩しているのだろうか」。

 
 

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2017年12月 7日 (木曜日)

青く燃える様なモーダルな演奏

ウェイン・ショーターは、宇宙と交信しながらアドリブ・インプロビゼーションを展開する。本人がインタビューで度々言及しているので、本当のことなんだろう(笑)。しかし、ショーターのモーダルなアドリブ展開を聴くと、その並外れた変則感と聴いたことの無い音の使い方と重ね方があまりにユニークで、もしかしたら本当に宇宙人と交信しながら演奏しているのか、と思ってしまう。

Wayne Shorter『Et Cetera』(写真)。1965年6月の録音。しかし、録音当時は「お蔵入り」。1980年に初めて陽の目を見た。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ts), Herbie Hancock (p), Cecil McBee (b), Joe Chambers (ds)。ハービーをピアノに据えたリズム・セクションをバックに、なんと、この盤、ショーターのテナーがワンホーンのカルテット構成。

ショーターのテナーがワン・ホーンなので、ショーターのテナーが心ゆくまで感じ、楽しめる。ショーターのディスコ・グラフィー上では、『Speak No Evil』と『The All Seeing Eye』の間を埋める音源で、黒魔術っぽい怪しげで神秘的な宇宙人モードから、正統派な限りなく自由度の高い宇宙人モードへの移行期の音がここにある。
 

Etcetera

 
『Speak No Evil』と『The All Seeing Eye』の間を埋める、という意味では、この『Et Cetera』と『The Soothsayer』が、当時「お蔵入り」の兄弟盤の様な位置づけで存在しており、この『Et Cetera』は「静」の宇宙人的モードの演奏が収録されている。ちなみに『The Soothsayer』は「動」の宇宙人的モードの演奏が収録されている。

ブルーノートの録音・蓄積の「発掘王」マイケル・カスクーナは本作をショーターの「最高作の一つ」と称え、何故当時発売されなかったか謎だと語っている。この盤では、ショーターの静かに青く燃える炎の様なモード演奏を聴くことが出来る。マクビーのベースは音域広く、かなり個性的。チェンバースの叩き出すドラミングは重力感抜群。ハービーは何かに取り憑かれたかのように、限りなくモーダルな演奏を切れ味良く展開する。確かに僕もカスクーナの意見に激しく同意する。

静謐に展開するモードなアドリブ展開の中に、青く燃える様な熱気を感じるモーダルな演奏。他に無い、ショーターならではの独特の個性。ショーターのアルバム鑑賞の中で、この『Et Cetera』はマスト・アイテム。録音当時「お蔵入り」で、後にリリースされた、ということで、この盤を「訳あり演奏」盤と見切ってはいけない。

 
 

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2017年12月 6日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・114

ファンキー・ジャズにおいて、米国ルーツ・ミュージックの中で切っても切れない音楽要素が「ゴスペル」。米国の黒人教会で歌われている歌唱。誰か一人が歌い出し、皆が総立ちになり、手を叩いたりステップを踏んだりしながら、声を張り上げて全身全霊で歌う様は、生で聞けば圧巻。

この「ゴスペル」の歌唱の中で「コール・アンド・レスポンス」や「コーラスの独特な響き」「躍動するビート感覚」をジャズに織り込むと、不思議とあらまあ、ファンキー・ジャズになるのである。もともと「ゴスペル」の音世界は「ファンクネスがこってこて」なので、この「こってこてなファンクネス」の存在がファンキー・ジャズに不可欠な要素なのだ。

このゴスペルの要素を大々的に導入して、ジャズ・ピアノソロとして1枚のアルバムに仕立て上げた盤が、Cyrus Chestnut『Spirit』(写真左)。ピアノ・トリオでの演奏活動を中心に行なっているチェスナットが、珍しくソロ・ピアノを選択したアルバムです。タイトル通り、この盤ではスピリチュアル〜ゴスペル系の曲を集めたもの。
 

Cyrus_chestnut_spirit  

 
トリオ演奏の時の様に、豪快にスイングするプレイとは異なった、ゆったりしたテンポで、ゴスペル独特のファンクネス溢れる、黒く美しい旋律をシンプルに弾き進めるチェスナットは意外と魅力的です。恐らく、ゴスペルって、チェスナットのルーツ音楽の1つなんでしょうね。実にエモーショナルに、実に厳かに、ゴスペルちっくな曲をソロ・ピアノで弾き進めていきます。

ソロ・ピアノであるが故の静的な厳かな響きと旋律。静謐なスピリチュアル・ジャズ。9曲目のサイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」のカバーが目を惹きますが、他の曲はゴスペルや賛美歌のオーソドックスな名曲みたいで、ほんと、米国ルーツ・ミュージック好きの私にとっては、もう耳が惚れ惚れしてしまう、印象的なソロ・ピアノ集です。

トリオ演奏の時の様に、豪快にスイングするプレイが身上のチェスナットが、これだけ陰影豊か、硬軟自在、緩急自在にソロ・ピアノを弾き進めるとは思いませんでした。チェスナットのポテンシャル、恐るべしです。こってこてファンキーなゴスペルの要素がてんこ盛りのこの盤、ファンキー・ジャズの最右翼に位置する好盤だと思います。

 
 

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2017年12月 5日 (火曜日)

ECMレーベルらしい音・6

西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。そんな、アイヒャー自らの監修・判断による強烈な「美意識」が独特の個性で、ECMレーベルにしかない音世界というものが存在する。

例えば、Ralph Towner with Glen Moore『Trios Solos』(写真左)。1972年11月の録音。ECM1025番。ちなみにパーソネルは、Ralph Towner (g, p), Glen Moore (b), Paul McCandless (oboe), Collin Walcott (tabla)。タウナーとムーアの共同名義のアルバムですが、このメンバー構成は、当時の「Oregon」オリジナル・メンバーですね。

恐らく契約の関係で、ECMレーベルから「Oregon」名義でアルバムをリリース出来なかったのでは無いかと推察しています。しかも演奏フォーマットは、トリオとソロの2種類。4人合わせての演奏は無いんですよね。しかし、この盤で奏でられている音世界は、まさしく「Oregon」そのものです。
 

Trios_solos

 
この音世界がECMレーベル独特の「美意識」と呼べるもので、とりわけ、ラルフ・タウナー(写真右)の美しいメロディーと繊細かつ力強いタッチのギターが素晴らしい。ECMレーベルの「美意識」を12弦ギターで紡ぎ上げていきます。この12弦ギターのパフォーマンスが圧倒的。4曲目「1×12」、7〜9曲目の「Suite: 3×12」の12弦ギター1本だけの演奏は凄いテンションで凄まじいばかり。 

音の洪水である。しかしながら、怜悧な音の洪水で姦しさは全く無く、静謐感をしっかりと留めているところが印象的。ニューヨークでの録音であるが、リミックスを施して完全にECMレーベルの音世界に仕立て上げている。これが不思議。ECMレーベルの音のマジックである。独特なエコーを伴って、その音空間は広め、楽器毎の分離は良好、定位感は抜群。ECMレーベルらしい音の「美意識」がここにある。

ファンクネスは皆無。透明感と静謐感がメイン、かつ自由度の限りなく高い「ニューエイジ・ジャズ」。初期ECMレーベルでのタウナーのリーダー作の「Diary」や「Solo Concert」などと並んで、珠玉の逸盤です。ほんと、ECMレーベルらしい音がぎっしりと詰まっています。聴き応え満点です。

 
 

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2017年12月 4日 (月曜日)

ライト感覚なファンキー・ジャズ

ファンキー・ジャズは聴いていて心地良い。ハードバップのフォーマットで、ファンキーな要素を前面に押し出して、ポップなアドリブ・フレーズを繰り出して、とにかく聴いて楽しい、聴いて心地良い音世界を展開する。あっけらかんと純ジャズを楽しむのなら、ファンキー・ジャズは最有力の演奏フォーマットだろう。

Blue Mitchell & Junior Cook 『Quintet Sessions "The Cup Bearers" / "Junior's Cookin'" 』(写真)。この盤には、その「ファンキー・ジャズ」の良いところがギッシリと詰まっている。このCDはクック名義の『Junior’s Cookin’』(Jazzland JLP-958) 、ミッチェル名義の『The Cup Bearers』(Riverside RLP 9439) をカップリングしたもの。

パーソネルは、1曲目〜7曲目の『Junior’s Cookin’』は、1961年4月と12月の録音で、Blue Mitchell(tp), Junior Cook(ts), Dolo Coker(p), Gene Taylor(b), Roy Brooks(ds)。8曲目〜14曲目の『The Cup Bearers』は、1962年8月の録音で、Blue Mitchell(tp), Junior Cook(ts), Cedar Walton(p), Gene Taylor(b), Roy Brooks(ds)。ピアノ以外は、当時のホレス・シルヴァー5重奏団のレギュラー・メンバー。
 

Quintet_sessions_the_cup_bearers_ju

 
ホレス・シルヴァー御大のピアノが無い分、ファンキー・ジャズとしての「ファンクネス度合い」は若干軽くなる。逆にライトになった分、ポップで聴き易く判り易い演奏になっているように感じる。また、親分のシルヴァーがいない分、ミッチェルのトランペットやクックのサックスがフィーチャーされているところが面白い。というか、現金やなあ(笑)。

ミッチェルのトランペット、クックのサックスは、決してテクニック的には突出して優れている訳では無い。時に拠れるし、時に詰まったりする。それでも、ミッチェルのトランペット、クックのサックスは、とってもファンキーな音色を醸し出す。そのファンクネス溢れる音色が、ユニゾン&ハーモニーが全くのところ「ファンキー・ジャズ」なのだ。

ピアノのドロ・コーカー、シダー・ウォルトンの存在が「ミソ」で、シルヴァー・クインテットの時よりも、醸し出されるファンクネスがあっさりしていて、演奏全体がスッキリしているところがこのメンバー編成の面白いところでしょう。ファンキー・ジャズのど真ん中からちょっとポップに外れたところにある盤で、そういう意味では「ジャズ者中堅」向けかな。隠れた好盤です。

 
 

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2017年12月 3日 (日曜日)

リトル・フィートのセカンド盤

シンプルな手触りのするファースト盤。米国南部のルーツ・ミュージックの要素、1960年代後半、米国西海岸で流行だったサイケデリック・ミュージックの要素など、様々なジャンルの音楽のエッセンスを取り込み、得意のロックンロール仕様に仕立て上げた、と言う感じの、ごった煮感満載の、ちょっと荒っぽい感じのするアルバムでデビューを飾った「リトル・フィート」。

そんなリトル・フィートが、バンドの音楽性をほぼ固めたセカンド盤が、Little Feat『Sailin' Shoes』(写真)。1972年のリリース。このセカンド盤『セイリン・シューズ』は、ファーストアルバムのごった煮感を整理して、カントリーはカントリーらしく、 ブルースはブルースらしくやっていて、全体的に整然として、ちょっと綺麗な感じする。

完全に開き直っていない感じがなんとももどかしいのだが、当時のウエストコースト・ロックの視点から見ると、ドゥービー・ブラザースをさらにラフにしたような、男気満点で決して迎合しない、タイトな演奏が良い感じ。前作のごった煮感を整理して、生々しさやブルース色には欠けるが、多彩な音作りとキャッチーさを増した楽曲を収録している。
 

Sailin_shoes  

 
ソング・ライティングも手慣れてきて、キャッチャーなフレーズを持った曲が取り揃いつつあり、 とにかく聴き所満載なアルバムです。リトル・フィート入門アルバムには最適では無いでしょうか。しかし、このアルバムも商業的には全く不振だったそうです。評論家には絶賛されたらしいんですが。う〜ん、判るような気がするなあ。売れるには、まだ渋すぎる。

このセカンド盤から採用された、ネオン・パークの作なるジャケットが印象的である。実は高校時代(1975年かな)、初めて、このセカンド盤のジャケットを見た瞬間、購入意欲が一気に減退した(笑)。当時は高校生、このセンスが理解できなくても仕方が無い。今では、お気に入りのデザインの一枚である。

しかし、このセカンド盤も商業的成功に恵まれないまま、一旦、2枚のアルバムをリリースして解散状態になってしまうのだから、当時のリトル・フィートは運が無かった。しかし、ブルース、ブギウギ、ロックンロールとアメリカン・ルーツ・ミュージックと呼ばれるものなら、なんでも吸収し消化していく貪欲さと西海岸ロック独特の開放感は、そのままでは終わらなかった。再起して、次作で傑作をものにするのだ。

 
 

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2017年12月 2日 (土曜日)

ドラムが活躍するフリー・ジャズ

ECMレーベルが立ち上がったのが1969年。当時、ジャズ界の演奏トレンドは「フリー・ジャズ」。ロックの台頭に押されて、ポップス・ジャンルのマイナーな存在に追いやられつつあったジャズ。そのロックの要素を取り込んで、新しいジャズを創造する傍ら、即興演奏の側面を極限まで突き詰めたフリー・ジャズが当時の演奏トレンドになっていた。

米国ジャズでのフリー・ジャズは、オーネット・コールマンから始まり、コルトレーンが牽引した、本能の赴くまま、スピリチュアルでエモーショナルなインプロビゼーションを旨とし、熱気溢れる激しいブロウが特徴。不協和音も出しまくって、とにかく「五月蠅い」。

演奏の本質を理解出来れば、これはこれで立派なジャズなんだが、この不協和音と嘶くようなブロウは、一般の音楽ファンを遠ざけた。まあ、耳当たりは良くないよな。ECMレーベルの初期の頃のカタログには、そんな時代背景を反映して、このフリー・ジャズな演奏がメインの盤が多く存在する。

しかし、ECMレーベルは欧州のジャズ・レーベル。ECMのフリー・ジャズは欧州のフリー・ジャズのスタイル。現代音楽風の要素も見え隠れする、静謐で怜悧、インパクトと間を活かしたビートレスの即興演奏。熱いブロウを繰り広げることもあるが、短時間で冷たく熱気を帯びたブロウなのが特徴。米国ジャズの様に汗飛び散る熱気では無い。
 

Conception_vessel

 
Paul Motian『Conception Vessel』(写真左)。ECM1028番。1972年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Paul Motian (ds, perc), Keith Jarrett (p, fl), Sam Brown (g), Leroy Jenkins (vln), Becky Friend (fl), Charlie Haden (b)。若き日のキース・ジャレットとチャーリー・ヘイデンが参加している。さすがECMレーベルである。

ポール・モチアンは伝説のドラマー。特に、ビル・エヴァンス、スコット・ラファロとのトリオ演奏が有名で、独特の空間と間を生かしたドラミングは唯一無二。ブラシ・ワークやシンバル・ワークも繊細かつ躍動的。ジャズ・ドラマーの中でも、理知的なドラミングが個性だったと理解しています。そんなポール・モチアン、1970年代は、ECMレーベルで活躍していたんですね。

このアルバムでは、徹頭徹尾、欧州式のフリー・ジャズを展開しています。リーダーがドラマーな分、ドラムが活躍します。ドラムが活躍するフリー・ジャズって、ありそうでない。この盤はそういう面でも貴重な存在です。フリー・ジャズである分、モチアンのドラミングの妙というか特徴が如実に出ています。

ドラムが活躍する欧州式フリー・ジャズ。適度なテンションが盤全体に漂っていて、最後まで飽きの来ないフリーな演奏に感心します。こういう演奏をしっかり記録しているECMレーベル、なかなかやりますね。

 
 

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2017年12月 1日 (金曜日)

ちょいヘビロテなボーカル盤

ジャズの新作の中で、コンスタントにリリースされ続けるボーカルもの。ボーカルは人気があるんでしょうね。歌詞もあるし、歌って判り易いからなあ。様々なキャリアの新人がどんどん出てきて、どんどん消えていく。コンスタントにデビューするのだが、長続きせず、その名前が消えていくのが早いのもボーカルものの特色。

そんなボーカルものの中で、しっかりと地に足着けて、長くキャリアを紡ぎ上げているボーカリストもいる。例えば、女性ボーカルの中では「ダイアン・リーヴス(Dianne Reeves)」がそんな存在。1987年に『Dianne Reeves』でデビュー以来、現在に至るまで、30年に渡って、女性ボーカル界の中でメジャーな存在であり続けている。

そんなダイアンが昨年リリースしたライブ盤が、Dianne Reeves『Light Up The Night: Live In Marciac』(写真左)。コンコード移籍第2作になる。2016年夏に南仏のマルシアックで開催されたジャズ祭でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Dianne Reeves (vo), Peter Martin (p), Romero Lubambo (g), Grégoire Maret (harmonica), Reginald Veal (b), Terreon Gully (ds)。
 

Light_up_the_night_1

 
ダイアンの歌唱が素晴らしいのはもちろんのこと、このライブ盤の良さは「選曲」。女性ジャズ・ボーカルというと、いきおい「有名スタンダード曲」がメインになりがちだが、このライブ盤は違う。ネオ・スタンダード曲とも言うべき、最近のポップスや、昔のジャズ・インストのレジェンド曲など、いままであまり取り上げられなかった曲を積極的にチョイスしている。

フリートウッド・マックの全米No.1ヒット「Dreams」や、マイルス・デイヴィス「All Blues」、ウェイン・ショーター「Infant Eyes」、パット・メセニーの壮大な名曲「Minuano(Six Eight)」、さらにはマリ・ミュージックの「Beautiful」など、どれも小粋で内容のあるアレンジに乗って、今や女性ジャズ・ボーカリストのレジェンドとなったダイアンが、実に楽しそうに唄い上げていく。

ナチュラルでポップ。大御所となったダイアンの聴いて楽しいボーカル盤。ネオ・スタンダード曲の選曲がズバリ当たって、リラックスしてライト感覚で聴けるところが粋。ながら聴きにも適していて、意外とこのボーカル・ライブ盤、ちょくちょく聴く、ちょいヘビロテなアルバムになっていたりする。こういうボーカル盤って親しみ易くて良いよね。

 
 

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