音楽喫茶『松和』の昼下がり・61
ジャズはやっぱりライブだろう。即興演奏が個性のジャズである。やはり、一期一会のライブ演奏が一番、ジャズを感じることが出来る。ライブ演奏を体感するには、ライブスポットやコンサートに出かける必要があるのだが、仕事を持っている以上、そんなに時間の自由は無い。
そうすると、ライブ盤の存在が実に貴重な存在になる。ライブの雰囲気や内容を追体験できるライブ盤は、とても大切な存在である。『Jazz At the Santa Monica Civic '72』(写真)。ジャズの白眉のライブ盤の一枚である。
キーマンは「ノーマン・グランツ」。ジャズ界の敏腕プロデューサーで、1940〜50年代のジャズシーンは、この人抜きには語れない。スイング時代から継続されるビッグバンドやジャズ・ボーカルなど、ベーシックなモダン・ジャズの隆盛はグランツ抜きには語れない。そんなグランツ、1960年代には、フリー・ジャズが台頭した米国ジャズ・シーンに愛想を尽かし、欧州に移住。
グランツのジャズは「明るく楽しいエンタテインメント」。眉間にしわをよせた様な、小難しいフリー・ジャズなどとは相容れ無い。しかしながら、フリー・ジャズが迷走を始めた1970年代初頭から、片隅に追いやられていたベテラン・ジャズメンたちが復権を果たす訳だが、それにひと役かったのが、グランツがジャズシーンへ復帰して創設したレーベル「Pablo」。
1972年8月、グランツは西海岸のサンタモニカ・シビック・オーティトリアムで、JATP復活のコンサートを大々的に行った。その時の模様をライブ録音したアルバムが、この『Jazz At the Santa Monica Civic '72』。メインアクトはカウント・ベイシー・オーケストラ、オスカー・ピーターソン・トリオ、エラ・フィッツジェラルド、トミー・フラナガン・トリオ(エラの伴奏を担当)。
すっごく良い雰囲気のジャズ演奏が全編に渡って展開される。どの演奏をとっても「モダン・ジャズ」なのだ。どの演奏にもエンタテインメント漂い、モダンでダイナミックでポップ。聴いていて単純に楽しい。全く小難しく無い。
全編2時間35分、ジャズの良いところがギッシリとこのライブ盤に詰まっている。どこから聴いても「モダン・ジャズ」。しかも、演奏のレベルは高度。テクニックも優秀。それでもそれが耳につくことは無い。ただただ聴いていて楽しい。LP時代は、LP3枚組のボックス・アルバムとして発売された。
LPの1〜2枚目には、カウント・ベイシー・オーケストラやオスカー・ピーターソン等が収録されていて、これはこれでとってもポップで楽しいのだが、とりわけ、その内容が素晴らしいのが、3枚目のエラ・フィッツジェラルド。カウント・ベイシー・オーケストラ+トミー・フラナガン・トリオという豪華なバックを従えて、歌いまくるエラはとても素敵だ。ポップで楽しいエラ。僕はこのライブ盤でエラを見直した。
ただ単に部屋で流しているだけで、ジャズの良いところが追体験できる。ライブ盤として白眉の出来。「ジャズを聴かせて」と要求されたら、この盤をかける。逆にこのライブ盤を聴いて、ジャズを感じることが出来なかったら、他の何を聴いても、その人はジャズを感じることは出来ないだろう。このライブ盤には「モダン・ジャズ」がギッシリと詰まっている。
東日本大震災から6年9ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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