ジャズ喫茶で流したい・114
ファンキー・ジャズにおいて、米国ルーツ・ミュージックの中で切っても切れない音楽要素が「ゴスペル」。米国の黒人教会で歌われている歌唱。誰か一人が歌い出し、皆が総立ちになり、手を叩いたりステップを踏んだりしながら、声を張り上げて全身全霊で歌う様は、生で聞けば圧巻。
この「ゴスペル」の歌唱の中で「コール・アンド・レスポンス」や「コーラスの独特な響き」「躍動するビート感覚」をジャズに織り込むと、不思議とあらまあ、ファンキー・ジャズになるのである。もともと「ゴスペル」の音世界は「ファンクネスがこってこて」なので、この「こってこてなファンクネス」の存在がファンキー・ジャズに不可欠な要素なのだ。
このゴスペルの要素を大々的に導入して、ジャズ・ピアノソロとして1枚のアルバムに仕立て上げた盤が、Cyrus Chestnut『Spirit』(写真左)。ピアノ・トリオでの演奏活動を中心に行なっているチェスナットが、珍しくソロ・ピアノを選択したアルバムです。タイトル通り、この盤ではスピリチュアル〜ゴスペル系の曲を集めたもの。
トリオ演奏の時の様に、豪快にスイングするプレイとは異なった、ゆったりしたテンポで、ゴスペル独特のファンクネス溢れる、黒く美しい旋律をシンプルに弾き進めるチェスナットは意外と魅力的です。恐らく、ゴスペルって、チェスナットのルーツ音楽の1つなんでしょうね。実にエモーショナルに、実に厳かに、ゴスペルちっくな曲をソロ・ピアノで弾き進めていきます。
ソロ・ピアノであるが故の静的な厳かな響きと旋律。静謐なスピリチュアル・ジャズ。9曲目のサイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」のカバーが目を惹きますが、他の曲はゴスペルや賛美歌のオーソドックスな名曲みたいで、ほんと、米国ルーツ・ミュージック好きの私にとっては、もう耳が惚れ惚れしてしまう、印象的なソロ・ピアノ集です。
トリオ演奏の時の様に、豪快にスイングするプレイが身上のチェスナットが、これだけ陰影豊か、硬軟自在、緩急自在にソロ・ピアノを弾き進めるとは思いませんでした。チェスナットのポテンシャル、恐るべしです。こってこてファンキーなゴスペルの要素がてんこ盛りのこの盤、ファンキー・ジャズの最右翼に位置する好盤だと思います。
東日本大震災から6年8ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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