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2017年11月22日 (水曜日)

モード奏法の最終結論のひとつ 『Schizophrenia』

爽やかに捻れ、悠然とモーダルに吹き上げる「テナーの怪人」ウェイン・ショーター。真顔で「自分は宇宙と交信しながらテナーを吹いている」とカミングアウトし、どこでどうしたらそういうフレーズになるか、全く、凡人の我々には判らないのだが、他のテナーには絶対に無い、爽やかに捻れた「正統派」テナーのアドリブ・フレーズを聴かせてくれる。

そんなショーターの面目躍如的なアルバムが、Wayne Shorter『Schizophrenia』(写真左)。1967年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ts), Curtis Fuller (tb), James Spaulding (fl, as), Herbie Hancock (p), Ron Carter (b), Joe Chambers (ds)。タイトルの『Schizophrenia』とは「統合失調症」、いわゆる分裂した精神状態の意。おおよそ、ジャズのアルバムのタイトルではない(笑)。

こんなにモーダルで捻れた、当時最先端のモード・ジャズなのに、フロントにばりばりハードバッパーのカーティス・フラーがトロンボーンを担当しているところが面白い。目新しいところとしては、アルトにジェームス・スポルディングが参加、健闘している。そして、意外と、ハービー×ロン×ジョーチェンのリズム・セクションがカッ飛んでいる。
 

Schizophrenia

 
前作の『Adam's Apple』は捻れに捻れ、思いっきりモーダルしていると思ったのだが、なんと、この盤ではその度合いが更に増している。もうハードバップ時代のストレートでシンプルなアドリブ・フレーズは存在しない。全てが捻れ、全てがモードしている。もはやコードという概念は存在しない。そういう意味で、モード・ジャズの最先端をいく演奏がギッシリ詰まっている盤、と言える。

演奏の雰囲気はモードを基調としたジャズ・ロック。モードを基調としているので、ジャズ・ロック的雰囲気とは言え、俗っぽくなく、判り易くは無い。思いっきりモーダルな演奏が8ビートを採用している、という形容の方が判り易いのでは無いか。この盤では、ハービーのピアノが異様に格好良い。躍動的であり、美しくもあり、硬軟自在、伸縮自在の完璧モーダルなアドリブ・ソロを聴かせてくれる。これがまた良い。

僕は、旧来のモーダルな演奏がメインの純ジャズ系のショーターのアルバムの中では、この盤が一番好きなのだが、日本では意外にマイナーな存在に甘んじている。1990年代、日本では廃盤状態。僕は、1999年米国はサンフランシスコのタワレコでリマスター再発CDを入手して狂喜乱舞。ホテルに帰って、パソコンで聴いた『Schizophrenia』の音は忘れられない。 

 
 

★東日本大震災から6年8ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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