サイケデリック・ジャズの好盤
1960年代後半は、ジャズにとって激動の時代。ビートルズを筆頭としたロックの波に押され、ジャズはポピュラー音楽の中での人気に翳りが見え始め、多様化が進んで演奏スタイルは迷走状態。加えて、メインストリーム・ジャズの牽引者の一人、精神的支柱的存在のジョン・コルトレーンが逝去するという、ハプニングにも見舞われた。
そんな中、ポピュラー音楽の中での地位を確保し続けるべく、ジャズとロックの融合、いわゆる「クロスオーバー・ジャズ」へのシフトが始まりだしたのが、1960年代の終わり。当時、ロック界の演奏トレンドであった「サイケディック」な要素を取り込んで、サイケデリックなジャズ演奏も目立ってきた。今の穏健な「スピリチュアル・ジャズ」にも通じる、観念的で幻想的な音世界が特徴。
ジャズを聴きだした頃、ジャズ者初心者の頃は「何ていい加減なアプローチなんだ」なんて思ったりしたが、今の耳で聴くと、意外とテクニックもしっかりしていて、アレンジも工夫がみられ、意外と鑑賞に十分に耐えるアルバムが一定数あることに気がついた次第。ハードでシリアスなジャズの合間に聴く「サイケデリック・ジャズ」は意外と耳休めに丁度良い塩梅なのだ。
そんな「サイケデリック・ジャズ」の好盤の一枚が、Steve Marcus『Tomorrow Never Knows』(写真)。1968年のリリース。ちなみにパーソネルは、Steve Marcus (sax), Mike Nock (p), Larry Coryell (g), Bob Moses (ds), hris Hills (b)。 ラリー・コリエルがギターで参加、ドラムがボブ・モーゼス。当時のクロスオーバー・ジャズ寄りのメンバー構成。
その昔、ジャズのプレーヤーがビートルズを演奏するということで話題になった盤らしい。そのビートルズの曲の1曲が、なんとジョンのサイケデリック・ロックの代表曲「Tomorrow Never Knows」である。聴く前は「え〜っ」と思ったんだが、聴いてみると、スティーブ・マーカスのサックスが適度にサイケデリックしていて、意外と「Tomorrow Never Knows」のジャズ化に成功している。
他の曲も同様で、恐らくテクニックがしっかりしているのだろう、サイケデリックなアドリブ展開にも破綻すること無く、なかなか聴き応えのある展開に持ち込んでいて立派である。少なくとも耳触りにはならない。十分に鑑賞に耐える、クロスオーバー・ジャズの先駆的な演奏内容に感心する。
バーズの「Eight Miles High」、ドノバンの「Mellow Yellow」、ハーマンズ・ハーミッツの「Listen People」、そしてビートルズの「Rain」と、当時のロックの人気曲をクロスオーバー・ジャズとしてアレンジし、まずまずの成果を収めている。サイケデリック・ジャズだからといって、敬遠するのは勿体ない。意外とリラックスして聴けるクロスオーバーなジャズ盤として楽しめます。
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