アートなグラム盤『The Slider』
1970年代前半、グラムロック(gram rock)のブームがあった。魅惑的であることを意味する英語の「glamorous」の「glam」を取ってのネーミング。「中性的なファッションや振る舞いを施し、単純で原始的なビートやキャッチーなサウンドをみせていたのがグラムロック」(Wikipadiaより引用)。
僕の中学時代である。親父の仕事の関係で岡山にいた。深夜ラジオに填まりだした頃で、小さなトランジスタラジオで、大阪の放送、ヤンリクやヤンタン、そして、東京のオールナイトニッポンを聴いていた。パーソナリティーのトークも楽しみなんだが、流れてくるシングル・レコード、特に英米ポップス&ロックに魅了された。
そんな中、意外とグラムが好きだった。特に、マーク・ボラン率いる「T. Rex」が大好きで、「T. Rex」のシングルがかかるとワクワクした。「T. Rex」とは、英国のグラムロック・バンド。1947年生まれのマーク・ボランがリーダー。グラムロックの大ブームの中心にいたバンドである。僕は、1970年代初頭、岡山の片田舎でグラム・ロックにどっぷり填まった。
そんな「T. Rex」、アルバムを聴くようになったのは高校時代。僕は親父の仕事の関係で大阪にいた。そして、かの「映研」にて、どっぷりとロックに填まっていた。中学時代から「T. Rex」が好きだった、とカミングアウトしたら、翌日、かのMu先輩がこのアルバムを貸してくれた。T. Rex『The Slider』(写真)。1972年の作品。
「T. Rex」名義のオリジナル盤は9枚あるが、僕はこの『The Slider』が一番好きだ。リフ一発勝負の楽曲ばかりであるが、これが全く以て「癖になる」。リフ一発勝負なんで「躁状態」の曲ばかりがと思いきや、T.Rexの場合、楽曲によって「陰影」がある。躁状態の楽曲と鬱状態の楽曲があって、これが程良くブレンドされて、バンド・サウンドが立体的に表現されているアルバムがこの『The Slider』だと僕は感じている。
「Metal Guru」とか「Telegram Sam」なんていうキャッチーな楽曲は明らかに「躁状態」。天下無敵のリフ一発勝負で、爆発的なエネルギーを秘めた極上のグラム。かと思いきや、「Mystic Lady」や「The Slider」のちょっと影のある曲は「鬱状態」。この収録された楽曲の「陰影」がこのアルバムの特徴で、グラムは単純、という評価を一掃する。
単純に「T. Rex」のヒット曲を、つまり「躁状態」の楽曲だけを聴きたければ『Great Hits』を選盤すれば良いのだが、これだけでは「T. Rex」の真の姿を見極めることは出来ないだろう。常々、グラムはアートだと思っているが、アーティスティックな「T. Rex」を感じるには『The Slider』は最適な盤だろう。単純な「リフ一発勝負野郎」ではないことが判る。
ジャケット写真については、当時、リンゴ・スターの撮影と思われていたが、実はトニー・ヴィスコンティの撮影だったなんて、伝説の一部が現実に引き戻される話もあったが、それでも、このジャケットに残されたマーク・ボランのアップはアーティスティック。派手なグラムの裏に潜む「寂寞感」を表しているようで、今でも見る度にしみじみとする。
東日本大震災から6年7ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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