地域の拡がりとしての深化
世界的に見て、ジャズ人口って増えているんだろうか。少なくとも、ジャズの裾野は広がっている。基本的には米国中心だったジャズだが、欧州各国に渡り、日本にも中南米にも渡り、豪州にも渡り、もはやジャズは世界的な拡がりを持つ、クラシックに比肩する裾野の拡がりを持った音楽ジャンルになっている。
例えば、David Sanchez『The Departure』(写真左)。1993年11〜12月の録音。ちなみにパーソネルは、David Sanchez (sax), Tom Harrell (tp), Danilo Perez (p), Andy Gonzalez, Peter Washington (b), Leon Parker (ds), Milton Cardona (per)。サックス&トランペット2管フロントのパーカッション入りセクステット。
硬派なメインストリーム・ジャズである。胸の空くような、切れ味の良い自由度の高い演奏がてんこ盛りである。演奏に耳を傾けていると、そこはかとなく「中南米」な雰囲気が見え隠れする。明らかに米国や欧州、日本などのジャズとは雰囲気が違う。それもそのはず。リーダーのDavid Sanchez=デビッド・サンチェスはプエルトリコ出身のテナー奏者なのだ。
このアルバム『The Departure』は、サンチェスのデビュー盤。ジャズは初リーダー作に、そのジャズメンの個性がはっきりと表れるというが、確かにこのアルバムを聴くと、他のジャズメンとは異なる個性がそこかしこに感じるのだ。僕にとってはまだまだ勉強しなければならないジャンルである「ラテン・アメリカの伝統音楽」な雰囲気が独特の個性である。
僕がジャズを聴き始めた頃、今から40年ほど前、メインストリームなジャズに、ラテン・アメリカの伝統音楽の要素が融合されるなんて、思ってもみなかった。明らかにジャズ表現のバリエーションが深化していると感じる。ジャズは世界的な地域の拡がりの中で、各国の伝統音楽と融合し、そのバリエーションを深化させている。
明らかに新しい響きのするメインストリーム・ジャズ。サンチェスのサックスが理知的で爽快。とても良く考えられたサックスの展開。もう一方のフロント、トム・ハレルのトランペットも良い音を出している。こういう硬派でメインストリームなジャズが、プエルトリコの優れたサックス奏者によって創造される。ジャズの国際化、地域の拡がりとしてのジャズの深化を目の当たりにする。そんな実感をひしひし感じる好盤である。
東日本大震災から6年6ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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