フュージョン・ジャズも奥が深い
「フュージョン・ジャズは時代の徒花だった。フュージョン・ジャズには中身が何も無かった」なんて言い放つ年配のジャズ評論家がいて、驚いたことがある。おいおい、あなた達、1970年代から1980年代前半にかけては「フュージョン・ジャズはジャズの最先端」とか「フュージョン・ジャズは良い」なんて、評論を書きまくっていたのではないの?(笑)。
しかし、当方にとっては「フュージョン・ジャズは時代の徒花」なんて思ったことは無い。その方法論、そのアレンジ、その演奏形態など、立派なジャズの一ジャンルを担っていると思う。21世紀になった今でも、スムース・ジャズでは無い、明らかにフュージョン・ジャズの雰囲気が色濃いアルバムがリリースされているのだから、フュージョン・ジャズもしっかりと市民権を得ているとして良いだろう。
David Benoit & Marc Antoine『So Nice』(写真左)。そんな「スムース・ジャズでは無い、明らかにフュージョン・ジャズの雰囲気が色濃い」アルバム。つい先月のリリース。GRP時代の盟友デヴィッド・ベノワとマーク・アントワンのコラボ盤。デヴィッド・ベノワと言えば、フュージョン初期より現在に至るまで、フュージョン〜スムース・ジャズのトップ・ピアニストとして活躍。マーク・アントワンは、ジプシーの血を引くフランス出身のフュージョン〜スムース・ジャズのギタリスト。
余裕の熟練プレイヤーの再会セッション。ベノワのピアノ&キーボードは聴けば直ぐに判る個性が魅力。心地良いエコーがかかって独特の響きが良い。ベノワ独特の手癖というか、お決まりの節回しというのもあって、ベノワのピアノは填まったら最後、とことんまでである。アントワンのギターはアコギ中心。ちょっと聴くと「アール・クルーかな」なんて思うが、クルーより柔らかでエッジが丸い。アントワンの名前、ほんとに久し振りに聴いた。
このベノワとアントワンのコラボは「フュージョン・ジャズ」である。音の響き、アレンジ、アドリブ展開、どれをとっても、しっかりと「フュージョン・ジャズ」しているところが良い。そして、この盤、アントニオ・カルロス・ジョビン「Só Danço Samba」、マルコス・ヴァーリ「So Nice(Summer Samba)」といったボサノバ&サンバの名曲のカバーが散りばめられているところが面白い。
演奏のレベルも高く、アレンジも秀逸。聴き応え十分はフュージョン・ジャズ盤。こういうフュージョン・ジャズの好盤が、2017年に制作されリリースされるのだから、フュージョン・ジャズも奥が深い。二人の写真をあしらっただけの平凡なジャケットだけが玉に瑕かなあ。このジャケットだと、一般の人達は、なかなか触手が伸びないのではないか。でも、この盤はフュージョン・ジャズの好盤。安心して耳を傾ける事が出来ます。
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