チャールズ・ロイドの新作に想う
1960年代後半、60年代後半にサンフランシスコを中心として発生した「[
LOVE&PEACE 」の思想や動き、いわゆるフラワー・ムーブメントの波に乗って、この人のサックスは受けに受けた。判り易いコルトレーン、というか、まずまずの力量のテナーマンが、コルトレーンをパクったら、ちょうど聴き易いものになった、という感じのテナー。
コルトレーンが完全フリーに走る前、自由度の高いモード・ジャズを前提としたスピリチュアルなブロウ。これを聴き易く吹き、加えて、バックのリズム・セクションが、キースのピアノ、デジョネットのドラム、マクビーのベースという凄いもので、このスピリチュアルなテナーを鼓舞し、スピリチュアルな雰囲気を増幅する。それが、フラワー・ムーブメントの音楽的ニーズと合致して受けに受けた。
そのテナーマンとは、Charles Lloyd(チャールズ・ロイド)。僕は大学時代、1980年だったと思う。このチャールズ・ロイドのテナーを初めて聴いた。聴いた印象は確かに小粒なコルトレーンで、コルトレーンより平易で判り易い。僕はこの判り易さが好きでは無かった。それなら、コルトレーン本人の演奏を聴いた方が良い。
僕は、バックのリズム・セクションの瑞々しさを聴きたい時だけ、チャールズ・ロイドの当時の諸作を聴いた。しかし、である。1970年代、その人気がフェードアウトし、それに合わせてロイド本人も話題になることがほとんど無かった。もはや完全に過去の人になったかに思われていたが、2015年、ブルーノートに移籍しての第1弾『Wild Man Dance』から復活し始めた。
折しも、モード・ジャズを基調とした、爽やかで判り易いスピリチュアル・ジャズがちょっとしたブームになりつつある頃。このブームに乗った所がある。ブームに乗るのが上手い人だ(笑)。
そんなロイドの今年の最新作が、Charles Lloyd『Passin' Thru』(写真左)。爽やかで判り易いスピリチュアル・ジャズの静かなブームの下、よいタイミングでのリリースである。ロイドって、普通に吹くだけで、演奏スタイルはモード一本(それ以外のバリエーションは無い)。昔取った杵柄、モードのコルトレーンをパクる様に吹くと、直ちに「爽やかで判り易いスピリチュアル・ジャズ」になるのだ。
この盤では、ロイドは無理して吹いていない。昔ながらに昔の様に吹く。小粒のコルトレーンの様に吹く。すると、演奏の雰囲気は「爽やかで判り易いスピリチュアル・ジャズ」。今の時代のニーズに合致して、この盤、意外に受けています。
1970年代以降、40年以上が経過して、コルトレーンのフォロワーは大量に存在する。もはやコルトレーンのパクリはパクリで無くなった。モードなコルトレーン・スタイルは、今やテナー吹きのスタンダードなスタイルの一つとなった。今の時代にまた受け始めたロイド。本人はほとんど意識していないと思うが、本当にブームに乗るのが上手い人だ(笑)。
東日本大震災から6年5ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
« ジャキー・マクリーンは進化の人 | トップページ | 好盤なばかりがジャズでは無い »
コメント