ピアノ・トリオの代表的名盤・62
ジャズ者初心者の頃、このアルバムを初めて聴いた時は、そんなに凄いアルバムとは思わなかった。ピアノ・トリオなんだけど、何だかベースの音が多い。なんだかベースの音が多いなあ、というのが最初の印象(笑)。それでも、かのピアノ・トリオの雄、ビル・エバンス・トリオのライブ盤なので、有り難がって聴いていた。
なぜベースの音が多いのか。この盤が、ベースのスコット・ラファロの追悼盤の位置づけだということをその後、知った。なるほど、だからベースの音が多いのか。しかし、よくよくこのライブ盤を聴いていると、ピアノの音とベースの音とドラムの音が同じ割合を占めているのに気がついた。
このライブ盤とは、Bill Evans『Sunday at the Village Vanguard』(写真左)。1961年6月25日、NYのライブハウス、ビレッジ・バンガードでの伝説のライブ録音。改めて、ちなみにパーソネルは、Bill Evans (p), Scott LaFaro (b), Paul Motian (ds)。かの伝説のピアノ・トリオである。
かのビル・エバンスの名ライブ盤『Waltz for Debby』と対をなすライブ盤である。今では、この1961年6月25日のビレバガでのライブ音源は、演奏順を忠実に守ったコンプリート・ボックス盤も出ているのだが、演奏の音の「密度」という点では、やはりこの『Sunday at the Village Vanguard』と『Waltz for Debby』の二枚構成が優れている。
この伝説のピアノ・トリオは、何が伝説かというと、それまではピアノ・トリオの場合、ピアノがメイン、ドラムとベースはバックでリズム&ビートを刻むというバランスが基本だった時代に、ピアノとベースとドラムが対等な立場でインプロビゼーションを展開する、という今では当たり前のことを初めて実現し、レコーディングに残した、というのが伝説と呼ばれる所以である。
しかし、面白いのは、他の伝説のビル・エバンス・トリオのアルバムでは、なかなかこの「ピアノとベースとドラムが対等な立場でインプロビゼーションを展開する」が判り難い。逆に、このラファロの追悼盤の位置付けの『Sunday at the Village Vanguard』では、その「ピアノとベースとドラムが対等な立場でインプロビゼーションを展開する」がとっても判り易い。
ベースの音が他のアルバムと比べて多いからだろう。ベースの音は地味なので、ピアノの音やドラムの音と比べて、同じバランスに聴こえるには、このライブ盤くらい「なんだかベースの音が多いなあ」と感じる位のバランスが丁度良いのかもしれない。
そういう意味で、この『Sunday at the Village Vanguard』は、ピアノとベースとドラムが対等な立場でインプロビゼーションを展開する」を体感出来る格好のアルバムだと言える。
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最近つくづく思っているのですが、ロックのあのクリームの原点は実はこのスコットラファロ在籍のトリオだったのでは?と。
クリームのジャックブルースとジンジャーベイカーはもともとはジャズ志向でしたので、当然このラファロの奔放闊達なスタイルは知っていたはず。
「クリーム自伝」には一切ジャズとの関連は語られていませんが、私は最近勝手にこの説を唱えています。笑
ちなみに、SJ誌は当時のクリームのライブを絶賛し、ディスクレビューも
見開きで紹介していましたね。
投稿: おっちゃん | 2017年8月31日 (木曜日) 04時47分