「音が良い」ということは尊い
アルバム鑑賞において「音が良い」ということは尊いことである。ジャズ発祥約100年、ジャズには古い録音が多々ある。古い録音であればあるほど録音の質は落ちる。それでも演奏が良いと録音の質には目をつぶって、我慢してその素晴らしい演奏に耳を傾ける。
硬派なジャズ者の方々の中には「ジャズの良し悪しに録音の質は関係無い」と言い切る人もいる。でも、ですね。録音の質が良ければ良いほど、楽器演奏のテクニックの良さ、楽器の出す音の響き、ニュアンスの豊かさの詳細がダイレクトに伝わってくる。録音の質の良さは、ダイレクトにその「ジャズの良さ」を明確に伝えてくれる。
まあ、一言で言うと「ジャズも録音の質が良いに越したことは無い」ということですね。録音の質の良し悪しって、ジャズにとっては、その「ジャズの良し悪し」の正しい理解をしっかりサポートしてくれる、そんな役割でしょうか。
『The Earl Klugh Trio, Volume. One』(写真左)。1991年のリリース。ちなみにパーソネルは、Earl Klugh (ac-g), Ralphe Armstrong (ac-b), Gene Dunlap (ds)。ありそうで無かった「ナイロン弦でのジャズ・ギター」。そんなありそうでなかったことを実現したナイロン弦の名手アール・クルーが1991年リリースしたトリオ編成のアルバム。
アール・クルーと言えば、フュージョン・ジャズの人、というイメージが強い。アコースティックな純ジャズを好んでやるタイプでは無い。そもそもアコギという楽器自体、意外と「音の表現力」という面で、他の楽器と比べて劣るところがある。しかも、ナイロン弦である。音の表現の幅は意外と狭い。そういう面で、アコースティックな純ジャズで勝負するにはちょっとハンデが大きい。
しかし、アール・クルーは敢えて、この盤ではドラム+アコベとのトリオ編成で、かつスタンダード曲を全面的に取り上げ、内容的にかなり純ジャズなアルバムになっています。演奏の質はライトでアーバンなフュージョン・タッチなものですが、出てくる音は間違い無く「純ジャズ」なのが凄く良い。
この盤、抜群に録音の質が良い。アコベがブンブン唸りを立てて響き、ドラムのスネア、シンバルの音は生々しくダイナミズム抜群。そこにアール・クルーのテクニック豊かな「ナイロン弦なジャズ・ギター」がフロントに座る。オール・アコースティック楽器での音の響き、ニュアンス豊かなスタンダード演奏の饗宴。躍動感、透明感抜群の純ジャズである。
決して黒く無く、決してファンクネス過多でも無い。ライトでアーバンな、落ち着いた大人の純ジャズ、という面持ちが実に良い。アール・クルーのメロディラインは美しく音色も繊細。それをこの盤は「録音の質の良さ」でしっかりと豊かに聴かせてくれる。好盤です。
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