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2017年2月28日 (火曜日)

こんなアルバムあったんや・77 『In Out and Around』

とあるジャズ喫茶のマスターのジャズ盤紹介本にこのアルバムがあった。どっかで見たことがある、どっかで聴いたことがある、と思うのだが、とんと思い出せない。うむむ聴きたい、と思っていたら、2000年にリイシューされた。アルバム・ジャケットは似ても似つかないものになったけど(笑)。

Mike Nock『In Out and Around』(写真左)。1978年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Mike Nock (p), George Mraz (b), Al Foster (ds), Michael Brecker (ts)。いやはや、この面子を見れば、この盤に触手が伸びるのも判る。聴いてみたい、そんな気にさせる魅惑的なパーソネルである。

マイク・ノックはニュージーランド出身の白人ピアニスト。クライストチャーチ生まれ。1960年にロンドンに渡る。’61年にダウンビート誌の奨学金でバークリー音楽院に入学。以降、ボストンのクラブのハウス・ピアニストとして活躍。’70年代後半、アコースティック・ジャズに立ち戻り活動。この『In Out and Around』はその時代の録音である。

マイク・ノックはピアニストとしては、日本ではマイナーな存在。しかしながら、その瑞々しいタッチと硬質でクリスタルな響きのピアノは聴き心地がとても良い。アドリブ・フレーズも奇をてらったところは全く無く、ニュージーランド出身らしく、ファンクネスは殆ど感じられない、透明感溢れる誠実な展開で、聴いていてほのぼのする。
 

In_out_and_around1

 
そして、ベースがジョージ・ムラツ。太いしなやかなアコベ。重心の低い強烈に安定感のあるウィーキング・ベース。ドラムが多彩でしなやかなドラミングを提供するアル・フォスター。このベース&ドラムが「半端ない」のだ。ここに瑞々しいタッチと硬質でクリスタルな響きのマイク・ノックのピアノが加わる。相当にレベルの高い、柔軟性の高いリズム・セクション。

そんなマイク・ノックのピアノ・トリオをバックに、なんとあの伝説のテナー奏者、マイケル・ブレッカーが全編に渡って、バリバリに吹きまくるのだ。テクニック最高、音の太さ切れ味最高、ブリブリ、バリバリ、テナーを吹きまくる。マイケル自身が当時のインタヴューで「最近、最もジャズ的に優れた演奏をしたのがマイクノックの作品だよ。」と語っていたのを思い出した。至極納得。

マイク・ノックは、1940年生まれなので、今年で77歳。現在では、オーストラリア・ジャズの重鎮として、まだまだ現役と聞く。日本ではマイナーな存在に甘んじてはいるが、こんなに素敵な純ジャズ盤を残しているのだ。この『In Out and Around』は、1970年代のメインストリーム・ジャズの好盤として、もっと評価されても良い盤だと思います。

こういう盤がごろりと転がっているのだから、ジャズは隅に置けない。この盤、昼下がりの人のほとんどいないジャズ喫茶で、ボリュームを上げて聴きたい盤です。マイケル・ブレッカーのテナーにぶっ飛び、ジョージ・ムラツのベースに下半身を揺さぶられ、アル・フォスターのドラミングに覚醒し、マイク・ノックのピアノに癒される。好盤です。

 
 

★震災から5年11ヶ月。決して忘れない。まだ5年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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