こういうソロ・ギターは粋である
ギター・ソロって、ちょっと苦手であった。ギターって、音の線が細いところがあるので、演奏される曲の旋律が良く聴きとれないところがある。ましてや、ソロ・ギターになると、ギターの構造上、伴奏と旋律を同時に弾くことが出来ないので、どうしても演奏全体の線が細くなる。好んで聴くところまでに至らなかった。
が、この人のソロ・ギターを聴いてから気が変わった。その音が薄くなる弱点を、ジョー・パスは超絶技巧なテクニックを駆使しつつ弾きまくり、音を敷き詰め、演奏全体の音の密度を濃くした。この工夫によって、このジャズ・ギターのソロ・パフォーマンスについては、結構、ダイナミックな展開を楽しめるのだ。そんなジョー・パスの隠れ好盤がこれ。
Joe Pass『I Remember Charlie Parker』(写真左)。1979年2月の録音。ソロ・ギターの名手、ジョー・パスの好盤である。このアルバム、ジャズ盤紹介本では、まず見たことが無い。しかも、この簡単な、味もしゃしゃらも無いジャケットである。僕がこのアルバムを知ったのは、ジャズを聴き始めてから10年以上経ってからである。
これは実に渋いソロ・ギター盤です。ジョー・パスはガット・ギターで語りかけてきます。気品高く、しみじみと語りかけてきます。夜の静寂にピッタリの極上のソロ・ギターです。一人で静かに聴くのがピッタリの雰囲気。これがまあ、こういうソロ・ギターは粋である。
このアルバムは「企画盤」。チャーリー・パーカーゆかりの曲を選曲しているのですが、チャーリー・パーカーらしい高速フレージングを聴かせる「ビ・バップ」な曲というよりは、バラード曲を中心にしっとりと曲の良さを味わわせてくれる内容です。チャーリー・パーカーのバラード曲に注目してソロ・ギターで攻める、というのは、なかなか無い「企画盤」です。
このジョー・パスのソロ・ギターで、チャーリー・パーカーゆかりのバラード曲を演奏してもらうと、パーカーのバラード曲の良さがはっきりと判ります。恐らく、ジョー・パスの演奏テクニックがなせる技でしょう。旋律の美しさがはっきりと判ります。加えて、ジョー・パスのアドリブ部も流麗で、このアドリブ部もパーカーの作曲か、と思ってしまうほど。
演奏内容は、しっかりとしたメンストリーム・ジャズであり、それでいて挑戦的。地味ではあるが、旋律の展開の仕方など、決して古く無い。モーダルに展開するところもあれば、スイングに展開するところもある。ジャズのスタイルの新旧を織り交ぜながら、ジョー・パスならではの個性が溢れている。
実に渋い、実に小粋なソロ・ギターである。しかも、バラード集。夜の静寂を感じながら、一日を振り返りながら、今日のラスト盤に相応しい好盤。しっとりしみじみ、語りかける様なソロ・ギター。この盤って、ジャズ喫茶で聴くよりも、一人でしっとりと聴くに相応しい「隠れ好盤」です。
震災から5年9ヶ月。決して忘れない。まだ5年9ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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