ながら聴きのジャズも良い・13
若い頃、このアルバムの情報を見た時、節奏の無い、売らんが為に大衆に迎合したヒット曲のカヴァー集と思い込み、ジャズとして聴く価値無し、とバッサリと切り捨ててしまいました。全く、見識の浅いことです。しかし、40歳半ばを過ぎて、このアルバムを初めて聴いた時、若い頃の浅はかな判断を恥じました。
Nina Simone『Here Comes The Sun』(写真左)。1971年のリリース。1960年代後半から1970年代初頭の楽曲のカヴァーが中心のポップなジャズ・ボーカル盤である。アレンジが優れていて、今の耳で聴いてもあまり古さを感じない。ニーナ・シモンの歌唱も正統なジャズ・ボーカルというよりは、さらりとしたポップなボーカルで聴き易い。
当時のヒット曲のカヴァー集ってよくよく考えると、そもそもジャズ・スタンダード曲って、当時のミュージカルや映画のテーマ曲のカヴァーがメインで、昔から、ジャズって、その時代その時代のヒット曲や流行曲をカヴァーし、スタンダード化しているんですね。それを思うと、このニーナ・シモンのカヴァー集って「アリ」ですよね。
収録曲を見渡せば、純粋な「ビートルズのカヴァー盤」では無いことが判る。しかし、冒頭のジョージ・ハリソンの名曲「Here Comes The Sun」の素晴らしい歌唱を、素晴らしいアレンジがとっても印象的で、それが故、この盤は「ビートルズのカヴァー盤」の一枚として挙げられることが多い。
確かに、この冒頭「Here Comes The Sun」のニーナの歌唱は落ち着いてはいるが、しっかりと気持ちが入っていて、この楽曲の持つ魅力を最大限に引き出している。シンプルではあるが、純粋な「信じることへの喜び」「活かされていることへの穏やかな歓喜」が滲み出てくる。ジョージの「信仰」へのシンプルな想いが、ニーナの歌唱を通じて再認識する。「回向」という言葉がピッタリな歌唱。
2曲目以降は、今をときめくボブ・ディランの名曲「Just Like A Woman」、J.J.ウォーカーの「Mr. Bojangles」、ジェームス・テイラーの「Angel Of The Morning」、8. フランク・シナトラの大ヒット曲「My Way」など、当時のロックやポップスの名曲の数々をカヴァーしています。
このボーカル盤、さらりと聴き流すのに最適な内容で、そのアレンジ力、歌唱力には感心します。音楽というもの、まずは聴き易く判り易いのが大切な要素。そういう意味では、このニーナの当時のヒット曲のカヴァー集、良い感じだと思います。とにかく聴き易い。我がバーチャル音楽喫茶『松和』では「ながら聴き」のボーカル盤として重宝させていただいています。
震災から5年9ヶ月。決して忘れない。まだ5年9ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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