ビートルズのカヴァー集・3
1962年10月のデビューから、一気に世界最高のロックバンドにまでのし上がったビートルズ。その人気は凄まじく、ジャズの世界でも、ボサノバ・ジャズの流行の後、1960年代半ばからビートルズの解散する1970年くらいまで、猫も杓子もビートルズのカヴァー曲を、という時代があった。
例えば、ジャズ・ビッグバンドの老舗中の老舗のこのバンドですら、ビートルズ曲のカヴァーに手を染め、ビートルズ曲のカヴァー盤までリリースしている。Count Basie『Basie's Beatle Bag』(写真左)。1966年のリリース。1964年がビートルズの初の北米上陸だったから、全米では人気絶頂の時期でのリリースになる。
いやはや、あのジャズ・ビッグバンドの老舗カウント・ベイシー楽団である。あのカウント・ベイシー楽団までもが、ビートルズのカヴァー集を出すのか、とこのアルバムの存在を知った時には、改めて、当時のビートルズの人気の凄さを再認識したものだ。
ただ、このアルバムを聴いていて、ジャズ・ビッグバンドの老舗カウント・ベイシー楽団としての矜持をほのかに感じるのは、このカヴァー集のアレンジは、そんなに趣向を凝らした、優れたものでは無いということ。恐らく、このアルバム、レコード会社からの強い要請があって、あんまり乗り気のしないまま、制作されたのでは無いか、と想像している。
選曲も、とにかくビートルズのヒット曲ばかりがズラリと並ぶ。ビートルズの楽曲はコードのチョイス〜進行がかなりユニークなものが多く、ジャズとしてアレンジして良い曲と、ジャズとしてアレンジすると魅力が半減する曲とが混交している。ヒット曲だからといって、全てがジャズ化に向いているか、というとそうでは無い。
そういう意味でカヴァーする楽曲の選定からアレンジまで、あんまり「力」が入っていないように感じるカヴァー盤ではある。がしかし、じゃあ、これが全くの平凡盤かというとそうでないところに、これまた、老舗カウント・ベイシー楽団としての矜持をほのかに感じるのだ。
アレンジは平凡なんだが、それぞれの楽曲でのアドリブ・ソロはなかなか気合いが入っている。先にも書いたが、ビートルズの楽曲はコードのチョイス〜進行がかなりユニークで、このジャズには全く無いであろう、ユニークなコード進行をベースにアドリブ・ソロに突入すると、結構、テクニックと経験がものを言う。そこが恐らくジャズメンのプロ意識とプライドを擽るのではないだろうか。
アルバム・ジャケットもジャズ・ビッグバンドらしからぬもの。楽団の総帥、カウント・ベイシー翁を囲む子供たち。このデザインがなぜ、ビートルズの楽曲のカヴァー集のデザインなのか、甚だ疑問である。何か当時の狼狽・困惑を良く表していると思って、思わず苦笑してしまう(笑)。
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